ブータン便り NO.8

江口 卓

 3月1日から公務員の終業時間が17時に変わりました。前に3月までは就業時間が16時と書きましたが、間違いで2月いっぱいで終わりでした。17時になると、仕事の時間が長いなと感じます。すっかりブータンの生活に慣れてしまったようです。4月から大丈夫かなという不安が少し頭をよぎります。ちょっと間が空いてしまったので、1−2月の話題を少しまとめて書いておきたいと思います。

 最初は気候の話から。1月は平年よりだいぶ寒い年になりました。ブータン人もいつもの年より寒いと言って、冗談に"Global Warming"ではなく"Global Cooling"だと言っていました。1月20日にティンプーではまばらにですが少し雪が積もりました。その冬の最初の積雪の日は、習慣として休みになるのだそうで、この日は休みになりました。Snow holidayと呼ばれています。ただし、そのあとはいくら大雪が降っても休みにはならないそうです。

 2月にはいってだいぶ暖かくなり、ティンプーでは最低気温が0℃を下回る日も少なくなりました。しかし、2月16日の午後から少し強い雨が降り出し夜半まで続きました。ティンプー市内も少し高いところではこの年初めてのまとまった雪になりました(写真1)。ティンプーと中部・東部の主要都市を結ぶ道路上には、3000mを超える峠がいくつかあります。雪が降るたびにそれらの峠も通行止めになり、交通に支障が出ました(写真2)。仕事場のユシパンはティンプー市内より300mほど高いので、朝出勤したら4−5cmほど雪が積もっていました(写真3)。ただし朝から晴れたので、雪は午後にはほとんど融けてしまいました。

写真1 雪のティンプー(2011年2月17日午前7時)
写真2 シムトカで雪による通行止めの解除を待つ車列(2011年2月17日)
ティンプーから車で東へ30分ほどの所にあるドチュラ(峠)(3120m)が雪で通行止めになったため、ティンプーの南のシムトカで開通するのを待っている車の列です。朝9時前、研究所のバスを待っている時の写真ですが、11時30分過ぎに通行止めが解除になったようです。
写真3 雪のユシパン(2011年2月17日午前9時17分)
日射が強いので、道路上やコンクリート面の雪はすでに融けてしまっています。

 次に教育の話題を。公立の学校は、2月15日から新年度が始まりました。10年以上前は3月から始まっていたようですが、だんだん早くなってきたようです。新学年の始まる前の1月から2月にかけて、10年生と12年生の国家統一試験の結果発表が相次いで行われました。ブータンの学校は6年制の小学校の上にSecondary Schoolという日本でいう、中学校と高校に当たる学校があります。そのSecondary Schoolが若い方からLower、 Middle、 Higherと2年ごとに分かれていて、10年生の試験はMiddle Secondaryの卒業試験に、 12年生はHigher Secondaryの卒業試験に当たります。12年生の卒業が、日本でいう高校卒業に当たります。

 この二つの試験は、卒業の認定試験とともに上の学校への入学試験を兼ねていて、ブータンの学生にとっては将来を決める重要な試験となっています。結果の発表はインターネットで行われ、各自のIDとパスワードで試験関連のホームページにログインして自分の成績を見るようになっています。8割以上の学生が卒業試験には合格し、成績の全国上位3名は顔写真入りで名前と学校と各科目の成績が公表され、新聞やテレビでのインタビューも含め大々的に取り上げられました。

 これに対し、上の学校への進学には厳しい競争があります。12年生の場合、約7500名の受験生に対して、約6500名が卒業試験には合格しました。国立のRoyal University of Bhutanの11のカレッジの入学定員は合計1674人で、卒業生のうち約22%しか進学できません。大学への入学に関しては、各自の希望をもとに12年生の試験の結果の上位から選抜されます。このほかに、奨学生として外国の大学に進学する人や、国内の私立大学に進学する人もいますが、数としてはわずかです。国内の大学へ進学できなかった学生で大学への進学を希望する学生は、もういちど試験を来年受けなおすか、インドなどの外国の大学に私費で進学することになります。ただし、外国の大学への私費での進学は経済的に大きな負担を伴い、どの家庭でも、というわけにはいきません。日本以上に高校卒業時の試験結果が、将来の職業を含めた進路を決める大きな要因になっているので、進学を希望して国内の大学へ進めない学生とその親にとっては悩ましい問題となっています。

 最後に、2月の話題を二つ。2月は、3日と4日が新年(Losar)の休日、21日から23日が国王の誕生日で休日と、休日の多い月でした。ブータンの新年は静かな新年という印象でした。新年の休みを使って、中部のトンサとシェムガンに旅行にいきました。トンサの町のホテルが休んでいて、どうしようかと思っていたのですが、チャーターした車のドライバーの助けで、宿泊することができました。休んでいる商店も多く、新年は家族と一緒にゆっくり過ごすというのがブータンの習慣のようです。集落では、弓の大会などをやっていて、家族みんなで弓を楽しんでいる光景を多く目にしました。

 2月の21日は国王の誕生日で、23日までの3日間が休みでした。21日に、ティンプーのチャンリミタン競技場で祝典がおこなわれました。国王はガサという北部の町のお祭りに出かけていて、祝典では首相のお祝いのあいさつと学生の行進や踊りが行われました。

 ブータンの滞在も残り少なくなりましたが、約束して書いていないこともあるので、もう1回ぐらいは書きたいと思います。


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