研究レポート

DATE:2016.12.20研究レポート

禅の書や水墨画に魅せられ来日 大田垣蓮月や池大雅の生き方に迫りたい

文学部英米文学科 モート, セーラ 教授

美術史を学ぶうち、屏風、掛け軸や根付に興味を持ち、もっと日本文化と日本美術を学びたいと来日。1年の予定がすでに15年を過ぎ、趣味でお茶や書道をこなすまでに。日本人以上に奥ゆかしい、"英国生まれの大和撫子"のような先生だ。

ロンドンで日本美術と出会い 墨の線の奥深さに魅せられる

オックスフォード大学で美術と美術史を学ぶなかで日本の美術に出会い、興味をひかれました。特に関心を持ったのは日本の禅の書、 水墨画です。 墨の線の奥深さ、墨の濃淡による表現の美しさが強く印象に残りました。

その後、 ロンドンのロイヤル ・アカデミー・ オブ ・ アーツで、 桃山時代から江戸時代にかけての日本美術を紹介する展覧会がありました。 絵画や工芸 ・ 染織 ・ 書跡などが数多く出品され、 屏風や掛軸、 書に目を奪われ、 日本美術をさらに深く研究したいと思うようになりました。

当初、1カ月ほど来日して美術館や博物館、 寺院などを見て回りましたが、帰国後、 本格的に日本美術を研究したいと、 笹川財団の助成金を得て1年間にわたり日本に滞在。 日本のよいところを知るにつれ滞在が延び、 日本で職を得て現在に至っています。

変革の時代を生きた女性芸術家 大田垣蓮月の世界

これまで、 白隠や山岡鉄舟、 谷文晁などを研究してきましたが、 現在力を注いでいるのが、 江戸後期から明治初期にかけての変革の時代を生きた女性芸術家である大田垣蓮月です。 蓮月は浄土宗の尼僧で、 すぐれた書家、 歌人、 陶芸家でもありました。 夫や子どもと死に別れ前半生は信仰と芸術、 社会へ の奉仕に身を捧げました。 蓮月の芸術は、 国内外でコレクションされ、2007年にオーストラリア国立美術館で彼女の書と陶芸の展覧会が開催されるなど、 国際的に高い評価を受けています。 そんな蓮月の作品群や、現存する書簡などを参考にしながら、 彼女の人生と芸術の関係などについて研究を進めており、 近いうちに本にまとめたいと考えています。

また、 江戸中期の文人画家である池大雅の研究も、 これから取り組みたいテーマの一つです。

本だけではなく本物に触れる 課外授業や海外研修にも積極的

駒澤大学のよい点は、 学内にすばらしい禅文化歴史博物館があること。 学生時代から禅に興味を持ち、 禅の書を研究してきた私にとって、 願ってもない環境です。 授業で坐禅があるのも駒澤ならでは。

また国際センターがあり、 学生のために海外留学支援が積極的に行われている点もよい点です。 留学するだけでなく、交換留学で日本にやってきた海外からの留学生と交流することで、 日常的に異文化を体験できることも大切ですね。

私の授業は、 英国の文化や時代背景について、 その時代の絵画なども参考にしながら学生の興味のあるテーマを取り入れ、 すべて英語で行っています。 グループ別に課題について英語で発表させ、 英語でディスカッションしているのは、 学生たちに日本語と同じように英語に慣れてもらい、 国際的な視野に立って、 将来世界で活躍してほしいからです。

知識は本だけでは身に付きません。 本物を見る目を養うためにも、 美術館や博物館に出かけています。 海外研修では、毎夏1週間大学院生とオックスフォード大学に滞在し、 ボドリアン図書館で研究テーマの本や多くの参考文献など英語の原文を読むことで、 知識を深めています。 若いうちに異文化を体験することで、 多くのことを吸収してほしいと考えています。

根津美術館での(東京都港区)でのフィールドワーク風景
文学部 モート, セーラ 教授
文学部 英米文学科 モート, セーラ 教授
東英国出身。オックスフォード大学修士。日本大学非常勤講師を経て2009年から駒澤大学に。2013年より現職。1872年設立の日本アジア協会会長も務める。

※ 本インタビューは『Link Vol.5』(2015年5月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。

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