輓 馬

*輓馬は、1dもの重さのあるソリを運び、競争する。(1dとなった理由)

@全てのレースにおいて、重さ1dのソリを引くのではない。賞金の額により600s〜800s そして、最高の1000sのソリに分けられる。ちなみに、岩見沢で最大のレースである岩見沢 記念では、重りは750sである。

*輓馬は、北海道にしかいない?

@輓馬の(ばん)と(ば)は、それぞれ馬を指す言葉であるそうだ。
@『広辞苑』には、
輓馬 主として輓曳の用に供する馬及び馬種をいう。車駕の種類・用途に
より速歩競争馬・輕輓馬・重輓馬に分かつ。
輓曳力 ひとや動物が車輌などを牽引する際に運動方向に要する力。
@元々は、土地を開拓するための材木を運ぶための馬で、どこの家でも飼っていたものであった。 その馬を輓馬と呼んでいた。そのため純粋に考えられる輓馬は、北海道にしかいないのである。 ただし、現在競争馬としては、道外でも産出されている。(例:青森県)

*サラブレッドなどの馬は乗る時は、鞍を付ける。だが、輓馬では騎手はソリに騎乗し、パドックで はなぜ、馬にそのまま乗るのか?

@パドックでは、最初馬を引いて歩く。その後、人が跨がるが気性の荒い馬には、はじめから馬に 乗って言う事を聞かせる。(騎手がソリに乗るため、馬に鞍を着ける事はしない。レース時ソリ に乗るのは、昔からの風習である。(輓馬を農耕馬として使用していたことから))

*輓営競馬のおこり−

@『輓営競馬』は、明治時代北海道の農民が御祭りで馬の力比べの競争をしたのがきっかけである。 当初は、馬の価値や力を試すための競争として始まり、2頭の馬を互いに引っ張らせ、競い合わ せていた。ソリに過重をかけて引かせる方法は、明治の終わりごろから始まり、農耕馬の祭典と して定着していったのが、輓営競馬の始まりである。

*年間で、開催地はどのように移動していくのか?

4月中旬〜5月後半
5月後半〜6月
7月 〜8月
9月 〜10月
11月 〜11月
12月 〜1月
北見
帯広
岩見沢
旭川
北見
帯広

*輓馬が、競争馬となるためには、どのような資格がいるのか?&*生産される馬に対して、需要は どれくらいなのか?

@産まれてくる馬の数と定年迄レースに出場できる馬の数を比率にすると
3歳 1000頭誕生
↓ 馬体検査 事務は、馬場管理委員が行う。
↓ 検査を受けようとする馬の調教師は、検査に立合わねばならない。
↓ 基準 体重700s以上
↓ 外貌・体形・歩様・健康状態をチェック
↓ 〈片目が視えない、耳が聞えないなど〉
800頭
↓ 病気等による
600頭
↓ 能力検査 事務は番組編成委員が取り扱う。
↓ 検査を受けようとする馬の調教師は、検査に立合わねばならない。
↓ 基準 ソリ 重さ500s (扇馬3歳−490s)
↓ このテストに合格することでレースへの出場資格が得られる。
↓ 調教番号が得られる。
↓ 年間【旭川で3回・北見で2回】実施される。
↓ 《登録検査》
↓ 旭川競馬場にて実施
250頭 レ−スに出場〜この時点ですでに75%の馬が脱落
↓ レ−ス人生の幕開け
↓ 年間獲得賞金 帯広競馬開催迄に80万円以上>
↓ 1月〜2月迄に135万円以上
↓ 獲得していない馬は、翌年能力テストが課せられる
↓ 5歳馬〜3歳時からの収得賞金額が300万円未満で、
↓ H.7の収得金額が135万円未満の馬
↓ 6歳以上〜H.5以降、通算収得金額が445万円未満で、
↓ H.7の収得賞金額が135万円未満の馬
↓ にも能力テストが課せらえる。
10歳 22頭 定年〜ここまで辿り着くのは僅か22頭
(11歳) 50頭に1頭・2%の割合しかない
この位の苛酷な競争になると、3歳迄生きることの出来なかった馬の数もいれるとレ−スに出場 出来るのは、10頭に1頭の確率だそうである。そして、定年である10歳迄現役であり続ける馬 は1000頭に1頭しか、残ることはできない。
[雌馬は7歳以下は20s減量]とあり、8歳から雄と同じであるため、実際7歳で引退する馬 が多い。出走可能馬は730頭。その730頭を守るため世代交代を促進している。子供を産むた め、繁殖能力を維持するために、若いほど能力が高いため、早期に引退を促進している。8歳頃に ピークを迎えるためである。

*サラブレッドと輓馬を比べてどうか?

@両馬の、調教する時の主なポイントを比較してみる。
『輓馬』 胸の筋肉を付ける事により、力を出せるようにする。力を付けることが、最も 重要なのである。
『サラブレッド』は早く走るために肉は少なく筋肉を締める。
それでは、馬肉<刺身にすると美味しい>は、では、どちらの馬の肉なのか?はたまた、さら に別種の馬なのか?という事で、尋ねてみると調教の仕方の違いからも分かるように『輓馬』 の肉を馬肉として食べ、『サラブレッド』の肉は、筋ばかりで食べる事は出来ないそうである。

*食事はカイバだけなのか?

@昔−藁→現在−牧草(糸で縛って筒のようにする)、えんばく、ふすま

*冬の間はどうしているのか?

@餌を普段の半分にし、筋肉を休ませる為3ヵ月間の放牧をする。

*なぜ、障害二つの200b障害レースしかないのか?

@長さが200b・障害2つであることは、岩見沢・旭川・北見・帯広の全てで共通。但し、第2 障害の位置に関してはそれぞれ異なる為、最後の直線の距離も違う。
旭川コース 砂の粒子が粗く、しまりにくいため全体的に重く力を要するコース。障害からゴ ールまでの距離が最も長く、馬のスタミナが勝敗を左右する。
帯広コース 障害の勾配がきつい。また、障害からゴールまでの距離が短いため、登坂力がも のをいうコース。スピードのある先行馬に有利である。
北見コース 障害は比較的緩く上りやすい。障害からゴールまで緩やかな上りで、距離も長い ため力を要するコース。パワーのある馬に向いている。
岩見沢コース 障害は最も高いが、砂の粒子が細かく比較的上りやすい。また、障害からゴール までの距離が短いため、スピードのある馬に有利なコース。

*どのようのして調教するのか?

@2歳になると調教を始める。まず最初は、後ろにハンドルを付け、向きを変えることができるよ うに練習する。その後、ソリの重さをだんだん重くしていく。

*平均寿命は何歳か?

@平均寿命は、20歳(人間に例えると約80歳)

*蹄鉄はしているのか?

@もちろんしている。

*何歳位になると調教を始めるのか?

@2歳位になると開始する。

*身長/体重はどの位?

@3歳時に行なわれる馬体検査においては、700s以上が基準となっている。身長については、 特に制限は無いということなので不明。であるが、おそらく3b近くあると思われる。生まれた ばかりの子馬は、身長約1b,体重約50sもある。

*馬の産地として主に何所があるのか?

@輓馬の生産地とし盛んな地方は、輓営競馬の開かれる帯広。それから、釧路である。競馬馬の生 産地は、日高方面全域に広がっている。ちなみに、競争馬の移動に際しては、必ずその馬の健康 手帳を所持することが義務とされている。

*騎手は普通のレースにも騎上できるのか?

@出来る。

*馬主・調教師・厩舎・賞金の関係

@   生産者 ──┐ 生産者と馬主が同一である場合はある。馬主が 調教師と契約する。
┌── 馬主 ───┘┃馬主、調教師のどちらかが騎手と契約する。調教師が厩務員を雇う。
│  ↑↓      ┃生産者・調教師・騎手・厩務員はそれぞれがそれぞれの職業しかなれな
│ 調教師→厩務員  ┃い。厳密な職業分離がここにはある。一方外国は、わりとオープンで、
│  ↓       ┃馬主と調教師が、5分5分で馬を買うこともある。但し、騎手が馬を持つ
└── 騎手 ことはできないというのは、日本と同じである。


獲得賞金 80l 馬主
20l──┬─10l 調教師
   ├──5l 騎手
   └──5l 厩務員

*騎乗スタイルは、どの様に変化してきたのか?(ソリに載せる重りを含む)

@昔から今にかけて随分と変化をしてきた。ちなみに現在では、騎手はソリの上に立ち上がり手に は鞭を握っている。そのスタイルはお馴染みである。重りにはコンクリートを使用しているそう だ。しかし、輓営競馬の初期の頃(つまり岩見沢競馬場がハロンズ〔場外馬券売場〕の場所に在 った頃)は、騎手は木のソリに座ったままでしかも鞭をもってはいなかった。重りの方は、カマ スに泥を詰めたものであった。

*どのようにして、馬の年齢を判別するのか?

@歯の裏側に年輪が出来るため、その年輪を数えることで馬の年齢が分かる。

*馬の種類

@ペルシュロン種───フランス北西部のペルシュ地方土着の大格馬が基礎で、
八世紀ごろから数次にわたって、アラブ種の血が入った、
気品ある輓馬である。青毛が多い。
@ブルトン種─────フランス・ブルターニュ半島原産。戦後、アングロノル
マンにかわって輸入されるようになった。馬格も大きく、 まるまると肉づきのよい、胴ののびた、筋張りのよい、 頑丈で、持久力に富む品種である。
@ベルジャン種────ベルギー・ブラバンド地方原産種をアメリカで品種改良
されたもので、栗毛・糟毛がある。栗毛の中で特に鬣、
尾毛、四肢が白いものを、尾花栗毛という。毛を短くし
てあるのが特徴。
現在、これらの馬の混血である半血種が主流になっており、今後純潔なベルジャン種・ブルトン種 ペルシュロン種はいなくなってしまう可能性もある。次に、種類別出走実頭数累年比較を表にまと めた。
種類
年度
ブル系 ベルジ ベルジ系 ペ ル ペル系 半 血 合 計
S60 39 79 486 612
S61 31 79 503 620
S62 24 78 534 640
S63 22 61 572 658
H 1 59 608 678
H 2 60 630 700
H 3 61 623 697
H 4 10 54 654 724
H 5 11 45 667 732
H 6 12 36 673 726
H 7 29 681 725

*馬の毛色

@鹿毛 体全体が赤褐色で、たて髪、尾、足の下部は黒色。黒味の具合で、黒
鹿毛、青鹿毛がいる。
@青毛 全身の毛が黒色。ペルシュロン種に多く、アラブ、サラブレッドには
少ない。
@栗毛 たて髪、尾から馬体までもが黄褐色。やや黒味がかった栃栗毛もいる
@芦毛 馬体全体に白褐色があり、若い時期は灰色に見え、年齢とともに白く
なる。芦毛は遺伝の為必ず親のどちらかが芦毛である。
ここで面白いことは、鹿毛の馬から必ずしも鹿毛の馬が生まれるとは限らないと言うこと。生まれ てくる子供は青毛でも栗毛でもありうる。ただし、芦毛は遺伝であるから芦毛の子馬の親のどちら かが必ず芦である。だから、芦毛の親馬から生まれてくる子馬の毛色は、4種類の全ての毛色にな る可能性を秘めている。
輓馬とは、漢字で「輓馬」と書く。主として、輓曳の用に供する馬及び馬種をいう。この馬を所有している人の呼び名を御存知だろうか。馬主と書いて“うまぬし”。“ばぬし”ではない。馬の指導する人のことを調教師といい、世話する人のことを厩務員という。それぞれがその職業にしか就くことはできなくなっている。厳密な職業分離がここにはある。ところが、外国はオープンで、馬主と調教師が5分5分で馬を買うこともある。但し、騎手が馬を持つことが出来ないのは日本と同じである。それでは、輓営競馬において馬の乗り手をどのように呼ぶのか、というと日本の競馬法にのっとって騎手(ジョッキー)と言うが、本来『馭(ぎょ)す』という言葉が、相応しいそうである。馬の人生には大きく分けて3通りあり、一・食肉になる、一・種馬or腫牝馬になる、一・競争馬になる。さて、一つめの道である食肉。私たちは、牛肉はごく身近なものとして頻繁に食卓にあがることもあるだろうし、食堂のメニュ−にも牛肉を用いたものが多々ある。一方、馬肉はどうであろう。どれほど消費されているのであろうか?店でもあまりお目にかかることがないのは、なぜなのか?と思う。

輓馬のルーツは?開拓されて出来た町北海道。山から木を切り出したり、農耕用に使用したり、石炭を掘出したりと用途は様々であった。また、それだけ地域・人間の生活に密着していた、ということである。当時本州に当然馬は存在したが、なぜか政府は、外国から馬を輸入した。それも、フランス・ベルギーなどのヨーロッパ諸国から。
これが何を意味しているのか、何故本州から馬を連れてこなかったのか、いろいろな角度から分析してみると緯度に注目できる。北海道はイギリスと緯度がほぼ同じ、イギリスとフランスの距離はさほどない。つまり、気候的に比べて本州よりも寒さの面などで似通っているヨーロッパが選ばれたと考えられる。

輓営競馬に対し、普段見慣れている競馬のことを平地競馬と言う。違いはいろいろな面に見られる。たとえば、平地競馬では雨が降ると重馬場。で、晴−良などと馬場の状態は変るが、輓営競馬では反対で雨が降るとソリの滑りが良くなることで、タイムが早くなる。天気の良い日は水分が少なく、タイムは遅くなる。また、平地競馬は鼻先でゴールが決まるが、輓営競馬ではソリの最後端がゴールラインを通過した時に決定する。これは、輓営競馬が「荷物を運びきる」という競技であるということと、鼻先では、ゴールで馬が止まってしまうことがあるからである。

輓営 一億円 達成馬

順位 デビュー 品 種 賞金 総額 出走回数 勝利数 重賞勝利数
@ キンタロー S,54 ペルシュロン系 牡 116,725,000 102 32 14
A マルゼンバージ S,63 ベルジャン 牡 107,517,000 182 22 10
B ヒカルテンリュウ S,60 ペルシュロン 牡 104,611,000 139 27 7
ブルトンの半血系
C タカラフジ S,58 ブルトン系 牡 103,490,000 113 27 16
D アサギリ S,62 ペルシュロン 牡 102,512,000 143 41 10
ブルトンの半血系

収得賞金上位馬 一千勝以上達成 (平成7年度迄のものである)

順位 賞金 総額 出走回数 勝利数 重賞勝利数
E ハヤホマレ 94,727,000 154 41 12
F キヨヒメ 87,992,000 166 20 6
G カイリキ 79,340,000 157 27 6
H ハイスピード 73,285,000 114 25 10
I キョウエイ 69,436,000 117 29 10
J キンタイコー 65,952,000 130 26 6
K キタノフジ 64,617,000 88 24 9
L ダイヤテンリュウ 62,282,000 71 29 11
M カゲイサム 61,791,000 120 18 6
N ミドリゴゼン 60,557,000 160 20 6
O ハクリュウ 59,411,000 107 37 12
P ニセコクイン 57,721,000 110 21 5
Q ヨウテイクイン 54,935,000 88 23 7
R ダイケツ 54,302,000 170 15 4
S フクイチ 53,326,000 117 19 3
一千勝以上達成騎手 (平成7年度迄のものである)
達成勝利数 通 算 成 績 通算勝率
金山明彦 2700 16,369戦 2,788勝 17.03%
久田 守 2000 13,202戦 2,002勝 15.16%
岩本利春 1200 11,715戦 1,272勝 10.86%
千葉 均 1200 11,101戦 1,226勝 11.04%
藤本 匠 1100 9,648戦 1,160勝 12.02%
西 弘美 1000 10,939戦 1,098勝 10.04%
坂本東一 1000 10,092戦 1,059勝 10.49%
馬の名前 馬は二つの名前を持っている
届け出先 持つ基準 決める基準
血統馬名 馬事協会 全ての馬 ・自由、登録馬名をそのまま使用
(ex繁殖馬時使用) する馬もある
登録馬名 全国地方競馬協会 馬主登録した人でないと ・カタカナ9文字以内 漢字ダメ
出走馬は所有できない ・宣伝行為となる名はダメ
ex)トヨタタロー

・馬主は5つ名前を考え申請し、同 じ名前が先に登録されていた場合 次候補の名前を選ぶ。

名前別にみる成績
《別表 参照》
今回以上のように、自分が北海道にきて初めて知った輓馬。そして、輓営競馬というものについて調べた結果である。北海道市営競馬組合の古館整さん、牧場の砂田孝一さん、馬場管理委員会、はじめ多くの方と知り合えることができた。あらゆる形で協力・資料を提供くださり、本当に感謝の念でいっぱいである。岩見沢乗馬クラブに入会して、馬を身近に感じるようになったことが、最初の動機であったのかもしれない。ただ、表を完全な形に仕上げることが出来なかったことが残念である。更に、輓馬・輓営について、これからも調べていくことで、より身近に、そして、より深く輓馬を感じることができるようになりたい。 (佐藤將宏)



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