2002.01.17

附属高校進学学習説明会 模擬授業用

「笑い」という表現

  1. 字書に見る笑い
  2. 一笑・大笑・失笑・世笑・目笑・冷笑・含笑・哄笑・侮笑・苦笑・愧笑・微笑・軽笑・誹笑・談笑・嬌笑・嘲笑・歓笑・轟笑・靨笑・開口笑・微苦笑・呵々大笑・虎溪三笑

    問いかけ:上記の熟語を各自『漢和辞典』を繙いて、調べて見ましょう。

    [文字語源]「笑」の字は離合文字にすると、「竹」と「犬」とになり、それは、「犬の頭に竹の笊(ザル)をかぶせると、犬はその目が見えなくなって、ただ後退するばかり」そのしぐさが「わらい」の素となったというのである。

  3. 唄に見る笑い表現
  4. 親はいないが元気な笑顔《赤胴鈴之助》

    のびたサカヤキさみしくなでて 新納鶴千代にが笑い《侍ニッポン》

    問いかけ:上の歌詞昭和期(終戦後)のものです。現代(平成期)の「笑い」表現の歌詞を探して見ましょう。

  5. 文章に見る笑い
  6. 1子どもが何よりも強く望んでいるのは、お金ではなくて、明るいお母さんの笑顔である。《石川達三人間の壁』朝日新聞昭和58年4月27日付》

    2笑われて、笑われて、強くなるのだ。《落書き》

    3《鈴木牧之北越雪譜』》

    4今昔、受領ノ郎等シテ、人ニ猛ク見ヱムト思テ、艶(えもいは)ズ兵立ケル者有ケリ。暁ニ家ヲ出テ、物ヘ行カムトシケルニ、夫ハ未ダ臥タリケルニ、妻起テ食物ノ事ナドセムト為ルニ、有明ノ月ノ、板間ヨリ屋ノ内ニ差入タリケルニ、月ノ光リヲ、妻ノ、己ガ影ノ移タリケルヲ見テ、「髪ヲボトレタル大キナル童盗人ノ、物取ラムトテ入ニケルゾ」ト思ケレバ、周迷テ、夫ノ臥タル許ニ迯行テ、夫ノ耳ニ指充テ、竊ニ、「彼コニ大キナル童盗人ノ髪ヲボトレタルガ、物取ラムトテ入テ立ルゾ」ト云ケレバ、夫、「其レヲバ何ガセムト為ル。極キ事カナ」ト云テ、枕上ニ長刀ヲ置タルヲ捜リ取テ、「其奴ノシヤ頚打落サム」ト云テ、起テ、裸ナル者ノ髻放タルガ、大刀ヲ持テ出テ見ルニ、亦其ノ己ガ影ノ移タリケルヲ見テ、「早ウ、童ニハ非デ、大刀抜タル者ニコソ有ケレ」ト思テ、「頭被打破ヌ」ト思ヱケレバ、糸高クハ无クテ、「ヲウ」ト叫テ、妻ノ有ル所ニ返り入テ妻ニ、「和御許ハウルサキ兵ノ妻トコソ思ツルニ、目ヲ□ ゾ極ク弊ク見ケレ。何ツカ童盗人也ケル。髻放タル男ノ大刀ヲ抜テ、持タルニコソ有ケレ。者ハ極キ臆病ノ者ヨ。我ガ出タリツルヲ見テ、持タリツル大刀ヲモ落シツ許コソ篩ヒツレ」ト云ハ、我ガ篩ヒケル影ノ移タルヲ見テ云ナルベシ。然テ妻ニ、「彼レ行テ追出セ。我レヲ見テ篩ツルハ、怖シト思ツルニコソ有メレ。我レハ物ヘ行カムズル門出ナレバ、墓无キ疵モ被打付ナバ、由无シ。女ヲバヨモ不切ジ」ト云テ、衣ヲ引被テ臥ニケレバ、妻、「云フ甲斐无シ。此テヤ弓箭ヲ捧テ、月見行ク」ト云テ、起テ亦見ムトテ立出タルニ、夫ノ傍ニ有ケル紙障紙ノ不意ニ倒レテ、夫ニ倒レ懸タリケレバ、夫、「此ハ有ツル盗人ノ■ヒ懸リヌル也ケリ」ト心得テ、音ヲ挙テ叫ケレバ、妻、■可咲ク思テ、「耶、彼ノ主、盗人ハ早ウ出テ去ニケリ。其ノ上ニハ障紙ノ倒レ懸タルゾ」ト云フ時ニ、夫起上リテ見ルニ、實ニ盗人モ无ケレバ、「障紙ノソヾロニ倒レ懸タリケル也ケリ」ト思ヒ得テ、其ノ時ニ起上リテ、裸ナル脇ヲ掻テ、手ヲ舐テ、「其奴ハ實ニハ我ガ許ニ入リ来テ、安ラカニ物取テハ去ナムヤ。盗人ノ奴ノ障紙ヲ踏ミ懸ケテ去ニケリ。今暫シ有ラマシカバ必ズ搦テマシ。和御許ノ弊クテ、此ノ盗人ヲバ迯シツルゾ」ト云ケレバ、妻「可咲」ト思テ、咲テ止ニケリ。世ニハ此ル嗚呼ノ者モ有ル也ケリ。實ニ妻ノ云ケム樣ニ、然許臆病ニテハ、何ゾノ故ニ、刀・弓箭ヲモ取テ、人ノ邊ニモ立寄ル。此レヲ聞ク人、皆、男ヲ■ミ咲ケリ。此レハ妻ノ人ニ語ケルヲ聞継テ、此ク語リ傳ヘタルト也。《『今昔物語集』本朝世俗部第廿八・立兵者、見我影成怖語第四十二》

    問いかけ:現代文学から古典文学に見える「笑い・咲い」の作品資料を探して見ましょう。

  7. 諺に見る笑い
  8. 笑う顔に矢立たず

    笑うて損した者はない

    問いかけ:「笑い」に関係する“ことわざ”を探して見ましょう。

  9. 笑いの禁忌とその作法
  10. 節分の豆を炒る時は、笑うべからず《熊本県球磨郡》

    笑いの作法

    一つ、誰にも見られないように家を出て行くこと

    一つ、家を出て行く時はうしろを振り向かぬこと

    一つ、家を出て家より高いところへ登ってゆくこと

    一つ、登り終われば、そこへ、家に背を向けて立つこと

    一つ、それだけの準備を終えた時、初めて、思いっきり笑うことが許されること

    問いかけ:日本の風俗に見る「笑い」に対する各地の習慣行事を探して見ましょう。

  11. 「わらい」と「えまい」の相違
  12. 「わらい」……否定以前の自己否定の自己転化できるという可能性のしぐさ

    「えまい」……否定以前の自己否定の自己転化できたという実現性のしぐさ

    【微笑】⇒宿願達成。

    「えくぼ【靨】」⇒顔に定着した微笑。慶賀・祝勝に常時包まれている人

    @「わらいには必ず声があり、えみには少しでも声は無い。従ってえみは看るものであり、わらいはまた壁一重の隣からでも聴ける」《柳田国男笑の本願』》

    問いかけ:「わらい」と「えみ」とは、どう異なるのでしょうか?考えて見てください。

  13. 「わらい」の表現と実際
  14. あハハハ。いヒヒヒ。うフフフ。えヘヘヘ。おホホホ。

    問いかけ:漫画などに見える笑いの表現を収集してみましょう。

  15. ユーモアのない笑い

日本人の微笑は、最初は人の心をうっとりさせる。《ラフカディオ・ハーン日本人の微笑』》

目上の人や同等な者に話しかける時、愉快な時、不愉快な時を問わず微笑している。それはなぜかといえば、「行儀作法」に過ぎないからだ。ニコニコ顔をまず、両親・親類・先生、友人、好意を寄せる人に対していつもできるかぎり気持ちの好い顔を見せるのが生活の掟なのである。たとえ、胸が張り裂けそうな時でも、勇敢にほおえむのが社会的義務である。その反対のしかつめらしい顔をしたり、不幸せなしぐさをするのは無礼極まりないと考えるからなのである。なぜなら、それは自分を愛する人たちに心配や苦痛を与えるからに他ならない。このことは、愚なる行為でもある。というのは、こちらに好意をもっていない人にも無情な好奇心を抱かせるからだ。

「街は、慎み深い微笑をたたえた人々で今日もあふれている」《ポーランド人アントニ・スロニムスキーのことば》

問いかけ:本日の「微笑み」のしぐさをあなたは、どう解釈しますか?

お答えは、メールに書いて見ましょう!