2003.04.16〜2004.01.09更新

文献資料を読む〔近・現代編〕

講義担当:萩原 義雄

講義内容

「漫画」の歴史

 ことばとしての「漫画」

  江戸時代の葛飾北斎の世界

 

「漫画→まんが→マンガ」表記にみる異なりについて

 まんが【漫画】〔名〕連続する複数の「コマ」に、「吹き出し」や「音喩」や「声喩」「態喩」そして「変動線」などを書き入れて、話体をもって表現したもの。その多くは黒白を主体としているが、彩色画もときには併用したりする。

 

手塚治虫漫画と《参考文献資料》

手塚治虫CO.   鉄腕アトム特集   手塚治虫アニメシアタ―  手塚治虫研究・伝言板

手塚治虫 

『ジャングル大帝』『鉄腕アトム』『火の鳥』

『ブラックジャック』『リボンの騎士』など

※アトムとお話ししょう! 

どのようなお話しができるか、実際に話しかけてみてみませんか?

話した内容を、記録してみることも大切です。

 
   お奨め書籍
A> 四方田犬彦著『漫画原論〔筑摩学芸文庫1999年04月刊 〕1,200円
風船、コマ、速度の表象、黒と白の意味とは?
映画でも絵画でも小説でもない「漫画」を形作る文法とは何なのか。
漫画批評の原点となる一冊。
B> 四方田犬彦著『漫画原論〔筑摩書房1994年06月刊 〕2,330円
風船とは? ギャグとは? コマとは? 
映画でも絵でも小説でもない、漫画を形作る文法とは何だろうか。
戦後から現在までの作品を分析して語る漫画表現論。
 
 私の講義のなかでは、「漫画・まんが・マンガ」を読むに当たって、国語辞典を繙きながら読むことをしてみます。この「辞書」を繙きながら読むという過程で、多くの方はお気づきになるかわかりませんが、ご自身の言語表現における感覚そのものに大いなる変化が見られることになるでしょう。なぜならば、作り手は、作家もそうですが非常に多くの辞典や事典を用いております。どんな単簡な日常用語でも、ことばの成り立ちやその意味用法を確かめ、用例をもとめ、さらには類語表現を知ろうと努力して一つの作品を仕上げているからに他なりません。その作家(作り手)の根源境地に迫るからなのです
 
2003.05.07(水)
手塚治虫漫画全集『落盤』昭和34年9月15日発行「X 第3号 掲載」(MT319・講談社刊)
 鉱山長となった前橋(まえばし)が語る「落盤」の記憶
1,20年前の記憶を語る
 ウムおれがまだ若い頃炭坑員だった頃のことだ ある日竪穴(あな)で働いていた…〔7頁1齣〕
 ドド〔7頁5齣〕                  ※「炭坑夫」ではない
2,10年前のラジオでしゃべった「私の思い出」録音テープ
 私は十年前死ぬほどの経験をした〔10頁2齣〕
 ドド〔10頁3齣〕
3,20年前事件直後記者に話した新聞の記事        ※「談話」という語は見えない
 ドド ウワーッ!気をつけろっ落盤だっ〔10頁3齣〕
4,20年前の(前橋の)日記
 ……おれは石井に三十円借りている三十円は大金だおれには返せない〔15頁1齣〕
 石井には気の毒だが…… 石井が死んでよかった〔15頁2齣〕
 おれはもう金を返さなくてもいいのだ〔15頁3齣〕
 〔15頁4齣〕
5,ポケットの紙に書きつけた遺言     ※「紙」→「ちり紙」、※「チリ紙」ではない
 私はもう死なねばならないきょうのできごとの真相は私だけが知っている〔18頁2齣〕
 私は見たのだ前橋が………〔18頁4齣〕
 私を殺そうとして………〔18頁5齣〕
 こっそりハリの一本をぬいたのを…………〔18頁6齣〕※「梁」
 ボキ〔19頁1齣〕ボキ〔19頁2齣〕
 ドドドド 〔19頁3齣〕
 私はやっとの思いでポケットからちり紙とエンピツをとりだした…………〔20頁4齣〕
 そしてこうして真相をかき残すのだ〔20頁5齣〕
 
 ぼくですか石井の息子ですよ きさま石井の子どもだったのか!!〔21頁2齣〕
※石井の「忘れ形見」であると名乗る
 
 二十年前の話さハハハ……時効だぜ罪にゃならんよ ええ知っていますだから……〔21頁5齣〕
※ここで、語られる内容は少しずつズレを生じてきている。そして、この落盤シーンの岩の崩れ落ちるさまも少しずつ変容し、最後の真相に迫る場面では、暗黒の死の岩として描かれ崩れてきているのである。
落盤』のなかで用いられた慣用句
 こうして私と中村は九死に一生をえた〔11頁4齣〕
 「こうして私は九死に一生をえた……しかし石井は発見されたとき死んでいた」〔13頁6齣〕
※調査課題:「九死に一生をえた」の慣用句を考えてみよう。〔HPを使っての調査
故事・俗信ことわざ大辭典』(小学館刊)に、「《十のうち「死」が九分、「生」が一分の意》ほとんどが助かるとは思えないほどの危険な状態。また、そのような状態からかろうじて命が助かること。九死のなかに一生を得る※『左経記』長元四年六月七日「日來辛苦、已九死一生也」※読本『椿説弓張月』後編「もし幸にして沖ゆく船に落かかり、或は伊豆湊などへ落るときは、九死の中に一生を得るなり」」という。
※調査課題:また、別な作品からこうしたことわざ・慣用句を探してみよう。
〔例文1〕
「いいかいトビオこれが東京だ 三千万人の人がすんでいる」「その人たちがしあわせになるようにおまえは骨をおってみるんだ」「ヒャ… な… なにするんじゃい」<ボキ>「骨をおるったってほんとに骨をおるんじゃないよっ」(天馬博士)
 
〔例文2〕
「なるほど 尾行しなくてもアトムの一挙一動がわかるわけですな」(ヒゲオヤジ)
 
2003.05.14(水)
 「いいかいトビオこれが東京だ 三千万人の人がすんでいる」(天馬博士)
 ※過密都市「東京」1999年1月1日付発表 東京人口は、11,885,111人。
          2003年5月1日現在東京都の人口は、12,249,587人。
 ※人が生まれないのに人口は増加傾向ある。→原因・理由は?
1,外国人登録人口の増加
2,他県からの転入者数の増加
 ※この21世紀中に「三千万人の人」は、実際には起こらない。如何なものか?
 ※この外、「都会の緑あふれる森」は、どうなってしまうのだろうか?
「あたまの上で鳥がないていたら きみの幸福である」…(ヒゲオヤジ)
「これが武蔵野か」「わしのちいさいころはまだ雑木林があつたが」(ヒゲオヤジ)
「今では山の手の笹が谷にわずかのこってるだけで…」(ヒゲオヤジ)
「そこもビジネスセンターにうまれかわろうとしている」(ヒゲオヤジ)
  「武蔵野」は、国木田独歩『武蔵野』(1898年)の冒頭文に、「武蔵野の俤(おもかげ)は今わずかに入間郡に残れり」とあり、独歩が一枚の古地図に興味を覚えこの小説を書き始めている。そして、「武蔵野」の中心を流れている川に「多摩川」がある。
 1990年4月には、「トトロのふるさと基金」が成立しナショナル・トラスト運動が始まっている。この「トトロ」とは、宮崎 駿(はやお)監督のアニメ映画『となりのトトロ』()が発信源であり、森林保護の関心が高まりつつあることも慥だ。(音楽「風のとおり道」「五月の村」)
アトムの世界と二十一世紀社会生活の検証
テレビ電話〕一家に一台から一人に一台の時代
立体テレビ〕NHK実験段階は、「立体ハイビジョン」
壁掛けテレビ〕現状は薄型テレビ
 他に、〔シクロノメーター(位置情報サービス)〕NTTドコモ「いまどこサービス」アステル「Pナビ」〔オメガレーダー(オメガ感応器)〕
「アトムの頭の中にシクロノメーターを入れておいた 一種のレーダーだから アトムが どこにいるかすぐわかるんじゃ」(お茶の水博士)
ロボット・スクーター(自動運転自動車)〕メカトロニクス設計学
「博士おむかえにあがりました」「私は「ガラパゴ13」です」(ロボット・スクーター)
「な なんだって「ガラパゴ13」といえば…… ゴルゴニアのロボット・スクーターか」(お茶の水博士)
2003.05.21(水)
 漫画における象徴表現(オノマトペ)→「象徴語」
1,擬音語。2,擬声語。3,擬態語。4,擬容語。5,擬情語。
 「象徴表現」を題名とした作品とは
 1,擬音語
  「ドブーン」人が水中に転落した時の音
  「ブウン」蟲が飛行する翅音
  「ババババン」「グシヤーン」物体と物体とが衝突した時の音
  「かたん」アトムが倒れるときの音
  「ギーユウウウ」「ギュウゥンン」飛行機が空を飛ぶ音
  「ガタガタガタガタ」戦車(タンク)が移動するときのキャタピラ音
 2,擬声語
  「ZZZ……」眠りを表現したもの。→「鼾(いびき)」表現は日米共通
  「ゲホ ゲホ ゲホ」喉に異質な物をつまらせた表現
  「ニャオ ニャオ ニャオ」海猫の鳴き声
 3,擬態語
  「がや がや がや」人びとがざわめくさま
  「わー わー わー わー」民衆が騒ぎ立てるさま
  「モリ/\」「ガツ/\」「モリ/\」「ムシャ/\」「パク/\」食事のさま
[課題]※手塚治虫作品集と他の作家とでは、「象徴表現」の使用度がかなり異なっている。同世代の作家と現代の作家における「象徴表現」の用い方についても考察してみよう。
[課題]※実際に、漫画作品のなかから上記にあたる象徴表現を収載してみよう!
 
2003.05.28(水) 手塚治虫と音楽漫画
 「漫画映画」→「動画」→「アニメーション」という呼称変遷を考える
 横山隆一(四コマ漫画『フクちゃん』が有名)による「漫画映画」『上の空博士』、『おんぶおばけ』『ふくすけ』『ひょうたんすずめ』(東宝)
****「カラー化」****
 東映漫画映画
白蛇伝』(中国『剪燈新話』を題材)
 長編動画『西遊記』、『ある街角の物語』、そして、『鉄腕アトム』『ジャングル大帝
 「大人漫画」→政治漫画、風俗漫画、家庭漫画、ストーリィ漫画
 「子供漫画」→童話漫画、冒険漫画、……。
ある街角の物語』制作時の手塚治虫
 私のアニメ会社の第一作「ある街角の物語」をつくっていて、その映画の主人公である青年音楽家をヴァイオリニストにしようか、チェリストにしようかと迷っていた時だった。結局はチェリストにはしなかったのだが、当時、音楽喫茶に通って、カザルスの演奏を聴きつつアニメの想を練った。
 
2003.06.04(水) 手塚治虫と音楽漫画その2
 『虹のプレリュード』時は19世紀、ロシアはポーランド侵略をねらていた!激動の時代を背景に、恋に、芸術にそして祖国への愛に命を燃やす若き芸術家たちの姿を描く「虹のプレリュード」。
  RAINBOW PRELUDE
This is a story of Poland during the time it was occupied by Russian troops.A young girl,Louise,enters the Waesaw Conservatory where she meets the young Chopin and falls in love with him. Shi also gets acquainted with a young patriot named Joseph, who is fighting for the honor of Poland.Louise is struck by Joseph's patriotism.She is persuaded by Chopin to go to Paris with him but she could not forsake her country. Shetries to hide Joseph but the two are pursued by the Russan troops and finally shot to death. When Poland is occupied by Russia,Chopin describes in his music,the souls of the two patriots.
 
週刊少女コミックに短期連載
 彩色に伴う差し替え原稿の流れ
 ダンスの脚に注目してみましょう
 キャラクターの「犬」
 
 
ブラック・ジャック』ストラディバリウス
 ストラディバリウス! バイオリンの中の王者といわれるもので 現在 世界に数十個しかない その音のすばらしさは最高で日本のバイオリニスト辻久子(つじひさこ)さんは これを手に入れるために 家まで売ってお金をつくったといわれる
 
2003.06.11(水) 演劇「歌舞伎」
竹田出雲・三好松洛・並木千柳合作『義経千本桜』
   三代並木五瓶作、歌舞伎十八番の一『勧進帳』
手塚治虫『弁慶』1954年「おもしろブック」二月号別冊付録 原題「はりきり弁慶
目 次
プロロオグ〔299〕
べんけいがな、ぎなたをもってさ〔309〕
ちょうちんとつりがねはどっちがおもいか〔324〕
ひよどりごえ〔346〕
世の中つめたさ ともだちのありがたさ〔361〕
船べんけい〔371〕
ぼうずがびょうぶにじょうずにぼうずのえをかいた〔381〕
かんじん帳(上)〔389〕
かんじん帳(下)〔399〕
べんけいの立往生〔408〕
 
 0, いまから八百年前 保元・平治のいくさなどで源氏と平家が ブードン ジャンカンと いやもう かなものやの 大そうじのような 騒がしさ……
 1,うわ 待てえ よろいだけ のせちゃった
 2,特車の 先祖が つまり これじゃ
 3,これ どなたの ですか …………
 4,うる さい なあ
 5,{おかえりは ××デパートへ}
 6,公衆道徳が 守られない でこまる テ……
 7,南蛮国から 教わった 攻め方で ある
 8,やられたっ うしろから ひきょう だぞ
 9,慰問車を こわしちゃ だめだよっ
 
 10,そして 戦争に勝った平家は 都で だんだん 重い位について いばりだしましたが…… 人々は やっぱり貧乏で 苦しんでいました
 11,やーい もっと お酒を 持って こいよ
 12,いま コーヒーを いれるから 静かに おしや
 13,カマキリが ないて います こと……
 14,ありゃ イモムシ じゃよ
 15,やい ルンペン おとおりの じゃまだ どけーッ
 16,おなかが へって…… 死にそうだ
 17,うわっ 車に ひかれ たっ!
 18,でも…都の春は 毎年 おなじように やってきて サクラの花びらと いっしょに 過ぎ去っていく……
 19,プロロオグオーオーオーンオーーン
 20,  「おお ギオン ショウジャの 鐘がなる」(平家一門による会話)
 21, よし おじうえ この平山盛が 六波羅ケイサツに 命じて きっと ひっとらえて くれます(平山盛の会話)
 22,  なに…… 「べんけいが なぎなたを もって さしころした ものの身内は とどけ いづべし」……?[弁慶の会話]
 23,おお フィギュア スケート うまいぞ[ブーン]  [弁慶の会話]
 
2003.06.18(水) ことば表現を用いない(無音・無声)「まんが」の場面
 先回の継続になりますが、『弁慶』のなかで、さまざまな注目すべき点に気づかれたのは言うまでもありません。その一つとして、「掲示板」に、
文献資料を読む 投稿者:JK3016  投稿日: 6月12日(木)19時43分21秒
一つ前の投稿で「カマキリの鳴き声が聞こえなかった」と書いてあったと書きましたが、正しくは「カマキリの声が響き渡ってた」でした…。あとちゃんと鳴き声のことが書いてあるページに飛べました。
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文献資料を読む 投稿者:JK3016  投稿日: 6月12日(木)19時38分36秒
この前の弁慶の話の中で「カマキリの鳴き声が…」という所でカマキリは鳴くのか先生も分からないとおっしゃってましたがどうやら鳴くようです!このページに「カマキリの鳴き声が聞こえなかった」と書いてある所がありました。ぜひ見てください☆(もしアドレスが違ったら「カマキリの鳴き声」で検索すれば見つかります)イモムシは分かりませんでした…。
http://www.linernet.co.jp/we001006.htm
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とあって、「カマキリが ないて います こと……」を考察する手がかりとなりました。ありがとう!ところで、その文中に言う「ガラス張りの明るい部屋の中で、チョウが自由に飛び回り、カマキリの鳴き声が響き渡ります。」ですが、実際の声は、いかがなものでしょうか?「カチュカチュカチュ……」?。
《追補・雑学》
かまきり【鎌切・螳螂・蟷螂】図絵写真
@カマキリ目(網翅モウシ類)カマキリ科の昆虫の総称。頭は三角形、前胸長く、腹部肥大、触覚は短 く、糸状。前肢は鎌状の捕獲肢となり、他の虫を捕えて食う。緑色または褐色、熱帯産には紫紅な ど美しいものがある。カマギッチョウ。鎌虫。蝿取虫。疣虫。疣じり。疣むしり。疣つり虫。とうろう。 <季・秋>Aカジカ目の川魚。カジカより大きく、体長約三○センチメートルになる。美味。日本の 川に普通。アラレガコ。アユカケ。カクブツ。広辞苑』より。
mantis【mantis】
(名)〔虫〕カマキリ(praying 〜) (◆強欲・残酷の象徴)。『GENIUS英和辞典』より。
 気象「雪」と「カマキリ」
 1, カマキリが枝の下側へ巣を作ると雪が多い 
 2, カマキリが草木の下部に卵を産めば雪少なし 
 3, カマキリが高い所へ巣をかけると雪が多い 
 4, カマキリの卵が高い所にあれば大雪、低めは小雪
 
[課題] 本日のテーマである、「ことば表現を用いない無音・無声による「まんが」の場面 ですが、「平泡盛」〔303頁〕の逃げ出す様を描いたところは、先回説明したところです。このような場面を探してみては如何でしょう!。
 そこで、なぜ、こういった場面を描くとき、「ことば表現」を用いなかったのか、そこには、「まんが」における“ことばの役割”がどういうものなのかを逆に教えていることにもなるまいかということから考えてみたいと思います。この人物の表情やしぐさを誇張して描くとき、その主要箇所を思いっきり焦点化して表現しています。まさに「絵物語」として、複雑で高度な内容を読者に提供しています。弁慶に太刀を奪われ、仰天し、命からがら一人となって駆け出す姿、その烏帽子がとれかかった無様な顔、その目、瞳の奥底、そして描写は転換して後ろの襟あし、ふたたび背全体を描いています。このあと、いきなりことばが飛び出すのではなく、最初は感嘆の声「お お お」、次に「おだすげー」、「だれか おらぬかー」、「おじやずげーェ」、「おぢゃっおぢゃっおぢゃずけーッ」として、これを平山盛りが聞き違えて「お茶漬け」となるシーンが登場するのです。そして、「おちゃずけー」でなくて、「おたすけ」 と言っていることが相手に最後に伝わるのです。ことの真相は、落ち着いたところで、このあとに「京の五条の橋の上で大の男のくせものが家宝の刀を奪ったんじゃ」と語られ、山盛が「な なんですって あの名刀を…… お お おじうえともあろうひとが……」となります。
※私の見解そして、受講生のご意見を伺いたいと考えています。
 
「まんが」における無音・無声の意義
 人は常時、有声会話を続けているのではない。無言にして、深慮の淵に身を置いている時もあるのだから。では、音はどうかといえば、この世にある限り、音のない世界は現実にはありえない。そこで、なぜ音や声を消してまで表現するのか?
独自の効果
 人の声も大勢の人がひしめく雑踏の世界では、「ガヤガヤ」と表記するのが鉄則みたいな状況にある。これは聞こえているが、何も聞こえないようにすることで状況はどう取られるかと言えば、「緊迫した」場面状況をよりリアルに表現していることを暗黙の了解としてきている。手塚の作品では、「ブツダ」に、ウサギが自らわが肉を行者にささげようとするシーンがあって、ここでは、ウサギが火に身を投じる瞬間を描いた場面で「ジュ!」という象徴音だけが使われているのである。
 このサイレントとしての神性な趣きは、厳かな生命に対することがらと、人が命ある生き物を「食」として断つとき、みながそれぞれ思いを寄せていく世界でもある。
 無音・無声による絵画化技法は、日本の伝統性をもってひもとくのであれば、平安後期の高山寺蔵『鳥獣戯画』の躍動性とことば章を持たずとも、その状況を世代を経て認識できる絵画力を手塚治虫自身がすでに持ち合わせていたということである。その手法は、やがて手塚の作風を指示する石ノ森正太郎や永嶋慎二などに継承拡充されていく。
なかでも、永嶋慎二の描く「無音・無声による絵画化技法」は難解である。1970年作の「フーテン<秋の章No.4>」〔ちくま文庫、1988年刊・476頁〕の描写である。
@学校の校長室、その椅子に腰かける眼鏡をかけた紳士(学校長)、A横向きの顔画15枚(老若男女)、B帽子を被ったパイプを加えた人物(「瞳に映る青年」インから「人物上半身」アウトへ)、C街の店先の階段に腰かける一人の青年(Bの人物の瞳に映っていた、春・夏・秋・冬の四画)、D秋を思わせる夕景に飛ぶ二羽の鳥と慈味にみちあふれたお地蔵様、Dより小さな画体で最初の紳士(学校長)で終わる。この「お地蔵さま」が担う役割をここで理解しなければならないのである。いかが・・・・。
≪参考資料≫笹本 純[筑波大学芸術学系教授]研究発表「サイレントマンガ(=言葉を用いないマンガ表現)の特性と意義」日本マンガ学会、会報雑誌第三号所収(2003年.03発行)。
 
2003.06.25(水) 「まんが」における「隙間表現」について
 先週に引き続き、「カマキリが鳴いている」式の表現に着目してみましょう。画面上には、「カマキリ」の鳴き声は、まったく表現されずに読者には理解されていきます。この鳴き声は“聞きなし”であるからして書き手と読み手にとって共通の理解がなければなりません。ここで、この鳴き声を理解できる読者と理解できない読者(それ以前に、著者手塚治虫のいう「カマキリ【蟷螂】」という虫を知っているか否かが確認されねばなるまい。なぜならば、手塚はこの作品中に「カマキリ」を絵画化していないからです。いわゆる、「カマキリ」ということばで表現しているのであり、この点については、文学小説における叙述表現とまったく同じ手法ということになります)とに二分されてきます。この二分は理解者に立つ読者層にしてみれば、その場面上の聞きなしはごく自然に展開されていくのであり、“つまづき”“ひっかかり”などといった一つの“こだわり”にはならないのですが、後者の未識者にしてみれば、手塚の云うその「カマキリ」の鳴き声がどのように聞こえているのかを“知りたい”、“聞きたい”という学習意欲を促す原動力となっていることに気づかせられるのであります。人の好奇心を何気ないこの全体描写場面の一コマにあって平氏の君達と姫君との庭を賞めでながらの立ち話で、会話風にして用いたこと、それは手塚治虫の奥深い知識欲の一部を覗かせた「隙間表現」ではないかと私は考えるのです。
 今回、こうした「隙間表現」の技法を体系的に考察していきたいと考えました。
 手塚治虫のこれまで多くの作品を対象に見てきたなかで、私自身気がついたことは、絵画描写において全景からみれば何気ないところに小動物(犬・猫など)を配置登場させていました。それは場面展開とは必ずしも密接につながりを有するものではなかったのと考えてよいかと思います。これを「絵画性隙間表現」としたとき、これと同じように、「文字会話性隙間表現」がこれです。この「すきま(隙間)表現」の技法も、場面展開にあっては密接なつながりは何もないように私には考えられます。強いて云えば、現代の知識者と過去の有識者とが兼ね備えた共通する智の連動的感覚性を示唆するものであります。これ以外に何か際立った特徴点は私には見出せないからです。
 時代性を超えて、手塚治虫という作画家が古(いにしえ)と今(いま)の人間感覚とを引き合わせているというのは、この「すきま(隙間)表現」の技法が担っていると私は考えたいのです。
 作品のストーリー性からすれば、時代考証もはなはだ疑わしい世界であり、より客観視してみれば、それは手塚治虫の主観的な作画そのものでありましょう。そうしたところに、“ゆとりの間隙”を見るのです。それを江戸時代の読本作品資料でいえば、滝沢馬琴が『南総里見八犬傳』で見せた「閑話休題」式の世界とも共通しているのではないでしょうか。この「閑話休題」(まんがでは別して断わらないが)こそが作画者の憩い=至福のひとときでもあったのではないでしょうか?と私には思えてくるのであります。
 次に、こうした表現を私が考察したように、いつどのように誕生したのかをより精確に探らねばなりません。
  手塚治虫が求めてやまない宇宙観・自然観などが大いに躍動していて、人が有するところの一種の科学観を「まんが」という媒体を通して彼の作画に求めてみることも大事ではないでしょうか。
まとめ
 1、手塚治虫「まんが」作品における「隙間表現」とは。
「絵画性隙間表現」と「文字会話性隙間表現
 2、「隙間表現」がなせる世界とは
「智的好奇心」そのものをくすぐる効果
時代空間を超越した「智」の連動効果
 3、「絵画性隙間表現」とは、
小動物によるセラピーに似た癒しの効果
 4、「文字会話性隙間表現」とは、
未知なるものを既知なるものへと置換する智への刺激効果
現実直視は、自らが見て聞いて体験する自発性の促進効果
 5、「隙間表現」は作画者が有する「智的産物」であり、作画者自身の精神の安定効果剤
 
≪課題≫「絵画性隙間表現」と「文字会話性隙間表現」とを手塚治虫の作品にそれぞれが見出し、これが次世代の作風にどう受容されているのかを含めて考えてみようではありませんか。 
 
2003.07.02(水)
「まんが」における「景観表現」について
ー白黒による色彩は何を絵としたか?ー
 今週は、「色彩」の表現に着目してみよう。手塚治虫が描く人物描写が時に思いがけない人種差別を生み出し、黒人に対する差別抗議の対象となっていることを知ったのは、彼の作品『火の鳥』ー鳳凰編ーにおいてであった。人物が殺意を表出する世界で、闇に暗躍する主人公をシルエットの如くただただ真っ黒、黒く描く。その気迫は、絶たれて失われていく命の白とタイアップする。あたかも黒人が白人を襲う姿にも取れないことはない。
 また、私が気が付くことであるからすでにどなたかが指摘していることかもしれないが、時には細胞型の混載色タッチで心の葛藤における人物の命(心そのもの)が変貌・変身(心)する様相を描いている。、今までにない微細さがそこにはある。
 通常変貌・変身は、外形での変容であったが、手塚のみせた変貌・変身(心)は、内面の変容・変心であった。
 
  
 
 
 
人の心はかくもかわるものだろうかという世界をものの見事に対比して、その二局面を東大寺「鬼瓦」づくりという場面状況のなかでくっきり見せている。この「鬼瓦」だが、前にどこぞの歴史博物館で時代毎に展示されていたことを思いだした。創作者の創意工夫で、同じものは絶対ない。師匠と弟子の関係にあってでもある。淡路島が今の生産地であることもどこぞのテレビ番組で見たことがある。これを手塚は二人の佛師を通じて描き出す。
 ブチというミロク像的な体型を備えた女人がこの二人の佛師に巧みに絡んでいる。彼女もシルエットに描くことでまさにミロク其のものに表現していることを忘れてはいけない。
 
2003.07.09(水)
「まんが」における「佛教觀」について
ー経文ー
 今週も、「ブツダ」の文表現に着目してみる。經を読む大和茜丸、弥勒像を彫り続ける彼は、黙言にて次の経文を唱えている。
如是諸人等 皆已成佛道 諸佛滅度已 若人善軟心
諸法從本來 常自寂滅相 佛子行道已 ……来世得作佛………南無………
上記の経文は、『妙法蓮華經』方便品第二の偈である。何故、この經を手塚は佛師茜丸読ませたのか?
 
「輪廻」を良弁僧正(ろうべんそうじょう)が我王に語るシーンがある。
  「そのとおりじゃよ 我王 おまえさんは ちっともわるくない」
「わるいのは輪廻というやつでな」
「輪廻か… ……………」
「まあ たとえばおまえさんが 前世では なんだったか 来世では なんだろう かという ことさ」
車のまわるのを 見るがよい くるくると同じ ところをいつまでも 際限なくまわり つづけるじゃろう 人間の命もそれと おんじでな 人間が死んでも それは べつの生きものに生まれ かわって……… つぎつぎに生まれかわっては 死に また生まれかわって…… いつ果てるともなく 永久につづくのじゃ…… おまえさんも生まれるまえは べつの生きものだたんじゃ べつのな……
「そりゃあ 自分では わからんし おぼえて おらん」
「前世で死ぬとき なにもかも すっかり わすれてしまうんじゃ また おまえさんが 今生死ぬとき………」
「なんの 思い出の かけらも のこさずわすれてしま うだろうて」
「我王 人間になれる とはかぎらんぞ」
牛や馬に生まれ かわるものおる 虫けらにかわる ものもある!
なんになるかは だれも決められん… ただいえることは 前世でどんな 生きかたをした かのむくいが 来世にかかわる のじゃ そして 人間になるか 虫魚禽獣に 生まれるかが 決まるのじゃ そしてその 運命は えんえんとつづい ていく……
「人間だった ことがあるかも しれんな」
「いまから何百年も むかし …… いや 何千年ものちに 人間に生まれて いるかもしれん」「おまえさんが 人を殺めなけ れば生きられ ないことも……………… そのむごたら しい鼻の病も みんな前世 からのかかわり かもしれん」
 
《我王のつぶやき》虫けらに生まれ かわったって つまらないじゃ ねえか かげろうという 虫は たった三日しか 生きておらぬ その三日の命が…… やはり前世の因果 応報なのかも わからぬ
 ここでは、高僧良弁僧正(ろうべんそうじょう)の会話表現についても見ておかねばなるまい。現実に存在する・しないにかかわらず、いかにもそれらしく感じてしまう言葉づかい「役割語」という観点からとらえてみることである。
金水 敏『ヴァーチャル日本語役割語の謎』(岩波書店)の冒頭で、「役割語の世界への招待状」として次の問題を提示している。これを取り上げておこう。
問題 次のa〜hとア〜クを結びつけなさい。
a そうよ、あたしが知ってるわ( )        
b そうじゃ、わしが知っておる( )
c そや、わてが知っとるでえ( )
d そうじゃ、拙者が存じておる( )
e そうですわよ、わたくしが存じておりますわ( )
f そうあるよ、わたしが知ってあるよ( )
g そうだよ、ぼくが知ってるのさ( )
h んだ、おら知ってるだ( )
  ア お武家様 イ (ニセ)中国人 ウ 老博士 エ 女の子 オ 田舎者 カ 男の子 キ お嬢様 ク 関西人
として、ようこそ、役割語の世界へ!と呼び込んでいきます。
 

2003.07.14(水) 『火の鳥』乱世編の覚え書き(角川書店刊行を使用)についてお話ししました。いかがでしたでしょうか?何か、お気づきの点がございましたら、どうぞ、ご意見・ご感想などご投稿願います。また、これを持ちまして夏季休暇となりますが、休み中「マンガ博物館」や「手塚治虫記念館」などを訪問してみるのも楽しみでしょう!さらには、手塚治虫作品集から一つ乃至二つでも、三つでも作品をお選びになって、文献資料学による研究鑑賞をなさってみてください。できましたら、それをリポート化して休み明けのこの講義の時間にご提出願えましたら後期の講義に、そして国語学研究「古麻」(仮称)―文献資料を読む(近現代編)―資料リポート集発行編集に、向けていきたいと考えております。どうぞ!自由なるリポート投稿をお待ちしております。

2003.09.17(水)

 夏休みの出来事特集

「へのへのもへじ」(岩手県遠野町)&「千の風」についてお話ししました。

 

2003.09.24(水)

 「絵文字」の世界について

近年、ネットのなかでメールに「絵文字」が多く見受けられます。この絵文字について少 しく、体系的に学習してみようと思います。

   《参考HP資料》「絵文字屋

その呼称も、江戸時代にあっては、「文字絵」と表現され、その源流は中国で発祥し、本邦にあって最もポピューラなのが、前回紹介した「へのへのもへじ」(関東)と「へのへのもへの」(関西)である。その資料として、万亭応賀作、安藤広重画『狂字図句画』(安政元年(1854)刊・東京国立博物館藏)がある。このなかには、「ヘマムシヨ入道」や「山水天狗」「ぞんじまいらせ候の虚無僧」が描かれている。

 

2003.10.01(水)

 YAHOO!コミックについて先週少し前出しにして考えてみました。提供作品数:1199件。全部を読み尽くすにはかなり時間のかかることでしょうが、このなかで幾つか指摘がございましたように、電子媒体まで利用してコミック漫画を鑑賞しようという気にはなれないというご意見を頂戴しました。そこで、もしこのような電子コミックを活用できることができるとしたら、どのような使い道が考えられますか、ここでさらに考察を深めていきます。

 ここでは、次の4つの検索方法が実施できるように設定されています。

キーワード検索

  著者名、作品名などを入れてください。 
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  - 学園 - 職業、業界 - アクション、冒険
- ホラー、怪奇 - スポーツ - ロボット、SF
- 歴史、時代劇 - 恋愛 - 自然と動物
- ギャグ、コメディー - ミステリー、サスペンス - ホビー
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その内容を実際に検証する意味から、今回は歴史・時代劇(29件)を素材に考えてみます。なかでも、時代小説としても名高い池波正太郎著『鬼平犯科帳』を劇画化した作品を例に小説そして、テレビ時代劇そして映画との違いや共通点を探りつつ考察を深めていきます。

《参考HP》『鬼平犯科帳』の彩色江戸名所図絵

 『鬼平犯科帳』の世界    鬼平遊歩道    『鬼平犯科帳』フジテレビテーマ曲

 ワイド版『鬼平犯科帳(1)』立ち読みページ一覧

       『鬼平犯科帳』シリーズ    『鬼平犯科帳』の世界と橋
 
2003.10.08(水)

 「時代劇コミック」を読む

 先週、時代劇『鬼平犯科帳』(1)を元にお話しを進めてきました。さらに、今回はこの『鬼平犯科帳』シリーズから学ぶと題しまして、他の立ち読み部分から、お気づきになったことを抜粋し、これをまとめてみましょう。まとめ方ですが、

1,気がついたこと。→具体的に説明を付加する。

2,その役割効果。

3,他作品にそのような描写部分があるのか?

4,それを表現するあたり、原資料があるのかないのか。→あれば、何時頃のもので、どのような内 容なのか?

5,この気づきを他資料に応用ができるか?→応用した場合とその結果。

 来週は、4コマ漫画の世界を考えてみます。HP参考00 01

 

2003.10.22(水)更新

「黒白」から「彩色」へ
 漫画が保有してきた、黒白(時には青・緑色の単色印刷)での描写が口絵と同様に彩色が施されるようになるのはいつの頃であろうか?現代連載されている漫画でさえ、単色印刷で表現されつづけてきているのが現状である。これが、テレビアニメの世界に継承されることで彩色化に拍車がかかったことは云うまでもなかろう。そこで、単色で描写された風景画に注目して、今授業では文字が果たせない絵画の有するイメージを考察することにしたい。
 そこで、ひとつの文字言語からくるイメージを例に説明してみたい。英語辞書で「ゼブラ」、すなわち「しまうま」をひもとくと、「白地に黒の縦縞」がはいった馬と表現されている。だが、この認知はあくまで白人の認識に基づくものであり、黒人は「黒地に白の縦縞」がはいった馬と表現する。この差異を日本人はどう認知するかである。漫画では黒白&白黒で表現するのみであるからして、黄色人種である私たちは、白への傾斜が強いのかもしれない。この問題に私が気づきたのは、名古屋の徳川美術館で観た一巻の「競馬」の図絵に「シマウマ」が描かれていたことに起因する。まぎれもない江戸時代の日本の狩野派の絵師が描いたものであり、南蛮文化の影響を色濃く残すものである。
 地肌は「白」で描写するとして、髪の毛はいかがであろうか。このあたりを注目していきたい。日本人の多くは、黒髪(緑の黒髪)が主体であり、黄い髪や茶の髪、栗毛はては金髪・赤髪・青髪は歌舞伎の世界を髣髴する、いわば社会とかけ離れた異種の世界を形成しているものである。これを「漫画」に表現するとき、通常は「黒髪」だが、あるとき「白髪」が登場する。「白髪」は、老人化を意味するが、若者の白髪描写は、異邦人を意味している。
 次に「瞳」の色はどう描くだろうか?「眉毛」は、そして「唇」はと観ていただきたい。そうして先ほどの「ゼブラ」が示すイメージを私たち日本人が観て「黒」と「白」のストライプの馬を「しまうま【縞馬】」と名称したところに、考察がいくのである。さらに魚にも「縞」のはいいた魚がいるが、これは「真」と「縞」とで別分類している。「真鯛」と「縞鯛」という捉え方、こどもの童謡に「シマウマの縞をぐるぐるとって、シマウマの縞をぐるぐるとって、しましま」という歌詞があるが、この「縞」をどう描写するかで、対象物の受け止め方が大いに異なることを考えていただくものである。そのうえで、彩色が果たす役割を自らが描くことで気づき新たな発見をしてもらいたい。
 

2003.10.29(水)

 今週は、4コマ漫画の世界を考えてみます。HP参考00 01

  「四コマ漫画」の世界

構成は、実に明確で「起承転結」といった、古来からの文章表現の伝統的技法が漫画の世界に受け入れられています。
  「おこし、ながれをつくり、かわりばえを見せ、そしてまとめあげる」という、実にわかりやすく、かつ合理的な経済性を備えています。
 この技法を「四コマ漫画」では、絵画・図絵を駆使して表現します。代表的な資料としては、「新聞紙」社会面左上隅に掲載されるものがあります。この位置は、なぜここなのか?考えてみてください。他の位置では具合がよくないのか?
 次に、その手法そのものです。昔も今も、その書き方には大きな変容があるのか否か?確かに書き手はかわり、その特徴を見極めていくと、いささかの相違点を発見できます。
 たとえば、せりふ(ふうせん部分)があるかなきか?絵画における文字量はどうでしょうか?これを今回、代表的作品であるいくつかに絞って見てみます。
 世田谷桜新町地元を代表する漫画家長谷川町子さんの「サザエさん」は、四コマから動くアニメェションへと変貌を遂げましたが、その原点は「四コマ漫画」です。これが倍の八コマでも描かれ作家の表現方法が変わりました。
 

2003.11.05(水)

 今週は、現代日本の広告について考察します。題しまして「日本の広告をつくった五十人」

 「キャッチフレーズ」「アイディア」「キャンペーン」「パプリシティ」「パイオニア」「ニュース」「プロデュース」「コマソン」といった片仮名用語で代表される広告、そして従来眺めてきました“アイディアマン手塚治虫と広告”についてもお話ししてみましょう。

 手塚治虫のキャラクターと広告業界

新聞・CM「川崎製鉄・京セラ・三井海上・東京トヨタ・」

キャラクター「西部ライオンズの“レオ”」など

 ちょっと、どのくらい利用されているか探ってみる楽しみがありはしませんか?

 

2003.11.11(水)

 「手塚治虫記念館」を観にゆこう

手塚治虫記念館目次」「体験記」など。

 

2003.11.18(水)

再び『火の鳥』太陽編(上・下二冊)について

 人間は何万年も、あした生きるためにきょうを生きてきた。あしたへの不安は死への不安であり、夜の恐怖は死後の常闇の世界の恐怖とつながっていた。人間の歴史の、あらゆるときに、生きるためのたたかいがなされ、宗教や思想や文明のあらゆるものが、生きるためのエネルギーにむすびついて進歩した。「火の鳥」は、生と死の問題をテーマにしたドラマだ。古代から未来へ、えんえんとつづく「火の鳥」――永遠の生命――とのたたかいは、人類にとって宿命のようなものだ。 手塚治虫《COM1967年2月号》

 (古代)百済国王余豊璋の一族のかたわれハリマ=腐犬(くちいぬ)・犬上宿禰(いぬがみのすくね)⇔(未来)スグル〔シャドウー戦士〕

この古代と未来を結ぶ人物、ハリマ=腐犬(くちいぬ)・犬上宿禰(いぬがみのすくね)とスグルの眠りに落ちた夢のなかでの場面取扱いについて、その精神的構造について考察を試みます。

 

2003.11.26(水)

 雑誌「日本語学」12月号に掲載中の伊藤雅光さんの現代語論では、「海外」とりわけ「英語圏」での「日本漫画(アニメを含む)」嗜好が紹介されています。
 今回、この海外からみた「日本漫画事情」を考察してみます。とはいえ、市場調査を丹念に実施した結果でもありませんし、どうしたことがこのブームの発端にあるのか、さほど明確にできるものでもありません。「AKIRA
 最近、神田の古書店を訪れたとき、外国人のご夫婦が日本の美術書を購入している光景を目にしました。『伊勢物語絵巻』の複製でした。 
 

2003.12.03(水)

 いよいよ師走、この一年における四月からの講義は、日本漫画事情を手塚治虫の作品を通して見てきました。この辺で結果をまとめておきたいと思います。
 鉄腕アトム、ブラック・ジャック、火の鳥、リボンの騎士、ジャングル大帝などの手塚治虫一連シリーズをこの一人の作家がこの世に送り出してきたこと、この手塚漫画の世界から啓蒙を受けたあらゆる分野の人たち。広告媒体を通して誕生したキャラクターの数々。手塚漫画とディズニー映画→アニメーション世界へ←海外における日本アニメに対する評価。そして、漫画が実写されたモノとアニメ化とではどう異なってきているのか?その実際である漫画の原画表現をことば〔象徴語・吹き出し会話(せりふ)・文字の多様(手書き文字と活字文字)〕そして絵(無音の世界・彩色と黒白そして濃淡)を通して、それぞれが見出しえたことがらをまとめてみてください。

 

2003.12.10(水)

「漫画〔アニメ〕」の総集編
 手塚治虫を頂点とした日本漫画の世界をつぶさに探訪してきたこの一年の講義も本日をもって最終を迎えることに成りました。一年間、視野の広がりは定かではありませんでしたが、着実に一歩を踏み出せたのも若い貴女がいたからにほかなりません。心から感謝の意を表します。そして、最後と成ってリポート課題も欲張らず、貴女自身が思い描いた日本漫画の未来像をどう受け止め、見つめていくかを、これまでの手塚治虫ワールドを通じて各々のテーマを軸に何をどのように検証していくか?これを一つにまとめておくことが次につながっていくと私は考えています。世界の人々は、手塚治虫をどこでどのように認めたのか?彼の描く自然・地理・宗教・戦争・平和・生物・歴史・人間(男と女)・友情・恋愛・社会・心理・病気・機械・宇宙・生命・環境・資源などをどう自らの生き方のなかに融和できるかが大きな接点へと成っていきはしないか等など、考え合わせて行くと果てしない世界への広がりを感得できるのではないでしょうか?常に明日を見とおそうとしたとき、この思いは手塚治虫の漫画世界への扉を叩くことになるのでは……と。貴女の語る憧れと創造を常に把握しながら、己と対峙して手塚治虫自身が見極めてやまない世界がここに甦ってくるのです。
 これまで、進めてきたどのテーマでも、それ以外のテーマでも、比較論・総論でも結構ですので、「漫画・まんが・マンガ(アニメ―ション)」をさらなる近・現代の文献資料として位置付けていくうえでどう問うことができるのか?これをまんがという素材を実例に貴女の目でとらえ、まとめてください。提出物は、A4用紙でリポート五枚以上に添付参考資料など(FD提出も可能、但し必ず印刷物を添付)を添えて来年一月最初の水曜日を締めきりとして直接、担当萩原〔2−402〕にお出し願います。
 

提出物及び提出期間について

2004.01.09(金)

 これまで、進めてきたどのテーマでも、それ以外のテーマでも、比較論・総論でも結構ですので、「漫画・まんが・マンガ(アニメ―ション)」をさらなる近・現代の文献資料として位置付けていくうえでどう問うことができるのか?これを“まんが”という素材を実例に貴女の眼でとらえ、まとめてみてはいかがでしょうか。提出物は、A4用紙でリポート五枚以上、それに添付参考資料など(FD提出も可能、但し必ず印刷物を添付)を添えて、お出し願います。

 次に提出期間ですが、1月8日〜14日の1週間11:00〜16:30(但し、祝祭日及び12:30〜13:30の昼休み時間を除く時間帯)で研究室(第2研究棟−402号室)にご持参願います。

 
止め