2003.04.14〜2003.12.15更新

 

2003年度「国語史」講義の歩み

 

本日の講義内容及び事務連絡

 冬季課題、来年一月十九日〔月〕までです。リポートは5枚くらいをめどにし、これに図絵や資料(調査図版)などを別に添付して提出しましょう。
 夏季課題、提出日は9月末日までです。リポートは5枚くらいをめどにし、これに図絵や資料(調査しに赴いた先(図書館・博物館)での図版など)を別に添付して提出しましょう。遅れて出す場合は、必ず、その旨をご連絡願います。

2003.12.15(月)の講義内容
 冬季課題について:延慶本『平家物語』六卷の漢字表記を考察してみる。方法は、単漢字一字を選択し、それについて実際の資料と活字資料とを比較しながら、その相違点を明確にして行きます。資料については、この時間に作業用の「テキストデータ」を配布します。
 まとめた報告書については、来年一月十九日〔月〕までに提出願います。

2003.12.08(月)の講義内容
35、 『義経記』判官びいき。[192頁]。中世⇒「牛若丸像の裏に」「大の弁慶あやまった」「紅涙をしぼる切腹場面」

2003.12.01(月)の講義内容
21、 『平家物語』貴族の挽歌。[119頁]。中世⇒「人生の“星の時”」「生臭い人間のドラマ」「めくら法師の台本」 について。

2003.11.17(月)の講義内容
13、 『源氏物語』後宮の光と影。[77頁]。古代⇒「光源氏は年金受給者」「落ちにくい女」「宮内庁にある完本」
についてお話しします。

2003.11.10(月)の講義内容

8、『伊勢物語』王朝の色好み[52頁]
古代⇒「もう一つの『伊勢物語』」「胸しめつけられる叙情」「女心に灯火を……」
についてお話しします。

2003.10.20(月)の講義内容

04、『万葉集』もう一つの日本。[32頁]。古代⇒「古雅なリズム感」「激しい慕情表現」「最古の写本は御物」について考察します。

 


2003.10.20(月)の講義内容

01、『古事記』(国宝真福寺本) 島根県出雲・松江を経て帰京したこともあって、松江にゆかりの小泉八雲(ラフディオ・ハーン)についてお話しをしました。小泉八雲は、東大教授チェンバレンの翻訳した『古事記』を読み、これに触れる意味から、そして、出雲神話に見られる『古事記』の記載について今般取り上げてみました。


2003.10.06(月)の講義内容

53、 『仮名手本忠臣蔵』義理一遍。[285頁]。近世⇒「古武士の面目」「男でござる」「内ゲバで上演中止」について講義します。

 江戸時代元禄の事件譚を鎌倉時代に設定して巧妙かつ町人衆の心をつかむ筋書き、これがどのようにして、歌舞伎そして浄瑠璃の演劇舞台のなかで育まれていったのか、その時代性と人々のことばの意識をも考察していきます。


2003.09.29(月)の講義内容

66、 『北槎聞略』鎖国の悲劇。[352頁]。近世⇒「漂流の記録」「感動的な別離のシーン」「将軍家秘匿の原本」について講義します。


2003.09.22(月)の講義内容

67、 『東海道中膝栗毛』男の解放地。[357頁]。近世⇒「明治版の弥次喜多」「二百文の女を求めて」「続編ふくめて二十一年」について講義します。作者十返舎一九、そして道中する「弥次」と「喜多」の物語。現代のなかでどう受け止められるのやら、考察していきます。


2003.07.14(月)の講義内容

国語史夏季課題
−「江戸の印刷出版文化とことばについて」−
 今年、江戸開府四百年を迎え、さまざまなイヴェント事業が実施され始めています。そこで、今般この国語史における前期講義内容として、現代に近い国語史作品資料を中心に江戸文化とかかわりを解説してきました。そして、愈々迎える夏休み期間における取り組み課題としまして、まさにこの江戸の文化に焦点をあてて、考察を深めていただきたいというのがこの夏季課題取り組みとしての動機づけです。
 日本における江戸四百年という人々のくらしと文化における大きな特徴としましては、貴族文化から武家文化、そして、この江戸における町人文化という歴史の流れのなかで顕著な特徴はといえば、「印刷出版」活動という文化形態の変容を大いに考えておかねばなりません。ここで、現代の私たちの社会文化の基盤ともなったこの「印刷出版」とことばとが、どのような連関性をもって、この時代を映し出す文化的営みとなっていたのかをそれぞれが考えてみてもらいたいということです。
 さて、この課題の題目を「江戸の印刷出版文化とことばについて」とし、この出版文化を担う人たちは、「町人」といわれます。現代の私たちは、この「町人」を音読みして「チョウニン」と読んでいますが、当時の読みは混種読みで「まちニン」と呼称したようです。京都には「町衆(まちシュウ)」というグループがこの以前に誕生していました。まだ、講義では江戸時代前期の作家とその作品資料について触れずじまいでありますが、上方を中心に活躍しました大坂の井原西鶴の作品『好色二代男』で、この「町衆」と「町人」との差異について述べている段がありますので紹介しておきます。
平城の袖鑑に能(よき)衆、分限者、銀持とて是に三つのわかち有。俗言に能衆といふは代々家 職も なく名物の道具を伝へて、雪に茶の湯、花に歌学、朝夕世の事業をしらぬなるべし。又分限といふ 所に人もゆるして、商売はやめず、其家の風を手代にさばかせ、其身は諸事をかまはぬなるべし。 金持ちといふは近代の仕合、米のあがりを請(うけ)、万の買置又は銀借、 自身に帳面も改むるなる べし。十千貫目あればとて、是等を歴々の中にまじはることなし。 この西鶴が示す「能(よき)衆」こと、 「町衆」は、物売りによって金銭を儲ける分限者や金銭を貸してその利息を取り立てる「銀持」ではありません。いわば、伝統性に導かれた文化の主人公ともいえましょう。今でも伝えられている「道」が付く「茶道」「華道」「歌道」を教える、これらの文化活動家を「町衆」と称しその営みを捉えています。世俗のことばで「能衆」というのですが、金銭的な経済基盤はどうなのかとなってきます。これらの文化活動家たちは庶民文化というよりは、先の時代の公家そして武家社会という時代の流れのなかでも保持され、大きな激動の世の中を掻い潜ってきた貴族文化を世襲し、新たに異なりをも摂取しつづけてきたいわば文化人であると同時に知識人の集団という意識で考えてよいと思います。社会通念でいうところの「士農工商」という枠組みでは見えない人々たちです。この「町衆」は、その後見人である人々が皇族を中心とする公家人から、武家の棟梁そして、町づくりの旦那衆とその階級は下層化して来ていますが、その技量は決して錆びついていないという自負を持っていました。この伝統性(紙と墨という道具により、秘伝書を常に所持)という自負が《冨》を生み出し、彼らの生活とその文化を支えてきたのです。
 時代は、道具と技術との革新化であり、現代でいえば、電子媒体による文書という新たなる文字媒体を生み出し、これをより効率的に稼動させていく進捗思考が働いているのと同様に、この江戸時代を通じて時代は印刷出版そのものがこれに相当するといっても過言ではないでしょう。画期的な技術革新であり、これらの印刷技巧が筆と紙で記述していたお家流にも大きく波動してきたことも事実でしょう。寛永時代には、まず京都に出版した書物を商う書店、今で云う本屋が現れます。これが、本店から支店へとチェーン化が進み、大坂そして江戸にも延びていきます。この延びは大きな城下町にも拡大していきました。仙台の伊達家、金沢(加賀)の前田家、名古屋(尾張)の徳川家などと拡張は続いていきます。この結果を検証するには、当時出版された書物の最後に刊行年月日と併記された版元及び売り見世の名を見れば一目瞭然でしょう。
 これに伴い、書物の材料である紙が大量消費され、手漉き和紙の技術者も当然増員されていきます。その生産量はウナギのぼりという感でした。今も電子媒体が普及するなかでPC技術者が時代のニーズに呼応するかのように増員されてきているのに等しい現象が江戸の印刷出版文化だと捉えてよいでしょう。
 当然、書物の書き手である作家も時代と共に増員を要求されてきます。著作業という職種が江戸時代後半には誕生してきていて、十返舎一九、山東京伝、曲亭馬琴などの時代を担う作家たちが江戸の印刷出版文化の申し子といえましょう。冨(智慧と財政)ある町人が江戸の経済をリードし、これに武士の組織が支えられていたという関係をただ、身分の上下関係だけでとらえていたのではわからないことなのです。支配階級を、基辺の町衆でもって動かすとでもいう、文化的生産事業がこの江戸には根付いています。
 そこで刊行された書物の内容はどうかといえば、教養書、啓蒙書がその主流にあり、これに大人の娯楽書(黄表紙)のみならず子女の娯楽書(赤本)とあって、その広がりには目を見張ります。ここで、啓蒙書ひとつ取り出してみても、ことばの使い方、漢字の書き方、読み方、用字の選び方、手紙の書き方といったまさに実用書の領域を構築しています。“読み、書き、話す”という言語生活そのものが基盤にしっかりあって、これに金銭の算術方法も加わり、今で云えば文部科学省が示唆する文教政策にあたる教養内容が網羅され、いわば百科全書として出版されています。その名も「○○重宝記」や「○○訓蒙(きんもう)圖彙」という名で呼ばれ、続々と登場しています。
 これらを、武家社会のための需要と供給のためというのでは成り立たないものがあります。ここには町人社会の需要と供給があってこそ、そのひとつ、ランクを高めた品質向上性のブランド嗜好の彩色刷り書物や絵巻物(奈良絵本風書画・巻物・冊子)が編纂されるという構図式を理会しておきたいのです。この経済効果を高める上でも幕府が最も力を注いだ政策がこの識字層の増員につながる教養書、啓蒙書の普及でありました。これらの書籍は、寺子屋で取扱われ、その教育は江戸府内にあって、千を越す数が設置されていたことからも窺い知ることができます。寺子屋では、「読み、書き、そろばん」の実用教育を通じ、儒教道徳の精神をも養い醸し出しています。こうした読めて書くことのできる町人たちが長けて、幕府の政治を批判したり、落書やかわら版を見てはその治安状況や生活問題の情勢を敏感にキャッチし、これに応じた動きを有する能力をいつのまにやら血と肉の通う体内に受け容れていたのです。
 当然、この江戸の文化人だけでなく、町民たちも日に日に移動を余儀なくされていきます。遠くにいる縁者との交信も始まります。江戸には、上方から流入してきました文化と冨の担い手の旗手である商人たちが大勢います。彼らは、金銭を往復させる運搬から、手形一枚で受け取る為替といった貨幣制度をたちまち紙と筆を用いて実施するのです。ここには書簡・徃来物が多発してきます。これを即座に送る飛脚屋業もこれらの冨にささえられ頻繁になっていきます。この飛脚は、ただ書簡を届けるだけではないのです。道々、見聞した時事やうわさや事件を伝えていく報道スクープ人としてしだいに脚光を浴びていきます。川柳に「飛脚屋と 本屋の前は 人だかり」というまさにこの時代背景を伝えている句が見えています。
《課題内容》
 さて、ここで課題ですが、自分自身で上記の内容を受けて、江戸のことばを嗅ぎ出すのが一番面白く、楽しいのですが、ここで江戸事情を各自が疑問に思ったり、また、もっと深く調べてみたいという意識をまずお持ち願いたいということですので、下記ことば群をもってリポートを作成することをまずなさっていただきます。
 『徃来物』(江戸時代の手紙書簡の手本)と『節用集』→『永代節用無盡藏』(江戸時代の家庭教養学の手本)や『江戸年中行事』などから、江戸の町人が生活全般で用いてきている
用語ことば
青切り、朝商い。朝帰り。阿堵物。油徳利。編み笠。あみ舟。洗い張り。主(あるじ)。あんか。行灯。按摩。侠客(いさみ)。伊勢参り。潮来。一里塚。居続け。今戸焼き。入相。入山形。色里。いろは。印判。印籠。うちごうか。馬。浮気。うんどん器。永日。夷講。絵馬。閻魔様。花魁。扇。岡場所。小笠原流諸礼之式。おしゃべり。おそれいりやのきしもじん。おそれ入山がた。鬼。おまんま。お神酒。おもいれ。女遊学操鑑。かいづめ。顔見世。かかり船。学問。駈け落ち。掛取り。駕籠。菓子壷。かしわもち。火事頭巾。かすみ。刀かけ。鞨鼓。門松。銅盥。かねつき堂。紙衣。紙花。髪結い。軽業。寛永通宝。漢学。簪。神田明神。看板額。きいたふう。祇園祭礼。菊見。起請文。義太夫。切手。狐拳(きつねけん)。きぬぎぬ。杵(きね)。客者評判記。木遣り。灸。狂歌師。御慶。切り落とし。金魚鉢。金銀。銀つかい早割。金時。食摘(くいつみ)。くぎぬき。籤(くじ)。楠。薬指。口。口入れ。口取肴(くちどりざかな)。工面。鞍。毛。芸者。傾城。げじげじ。下女。げびぞう。削りかけ。間(けん)。見一掛割。犬悦の割。けんか。乾坤。元服。拳(けん)。鯉。格子。荒神。香爐。五性(ごしょう)。故人観相之圖。小袖頂戴の圖。五大力(ごだいりき)。炬燵。こっぷ。小つぶ。小判。御幣。虚無僧。薦(こも)。小紋帖。小指。語呂合言葉。権(ごん)。渾天儀。こんべらばあ。こんみょう。紺屋。西國大名。賽の河原。逆気(さかき)。盃。酒手。肴。月代(さかやき)。櫻草。酒。さし。琉球芋(さつまいも)。さとうつぼ。差分。三味線。鮫小紋。鞘。猿田彦。三光尉(さんこうじょう)。三すくみ。山王神社。さんぼうこうじん。三文判。しうわりと。色紙。地女(じおんな)。地方坪割(じかたつぼわり)。式亭。地口(じぐち)。獅鼻(ししばな)。磁石。地蔵菩薩。舌切り。じだんだ。七変目(しちへんもく)。実語教。芝居。芝居小屋。芝居幕。島田。勺(しゃく)。釋門。しゃにかまえ。しゃんしゃん。重詰(じゆうづめ)。酒呑童子。壽老人。しゅろ箒。升。將棊。消息往来。小篆。しょうぶかわ。定紋。浄瑠璃。女郎。女郎買。女郎屋。証文。知らぬ顔の半兵衛。尻食え観音。じれ子さん。しわい。しわんぼう。腎虚(じんきょ)。新造。しん太郎。身代。ずいき。水車。水道尻(すどうじり)。ずきんかぶり。すけん。すし。爵(すずめ)。硯蓋。頭痛鉢巻。寸。誓詞。青銅。雪駄(せった)。雪隠(せっちん)。節用集。せなあどの。船頭。煎餅袋。せんぼ。銭。惣嫁(そうか)。宗匠。相場割(そうばわり)。草履。そこり。そとごうか。蕎麦切り。染小紋。そんりょう。鯛。太鼓持ち。大小。大尽舞。大全歌字盡。大篆(だいてん)。高砂。鷹匠(たかじょう)。高提灯。宝船。たそやあんどん。立君(たちぎみ)。たどん。七夕。谷風。たぬき。煙草。足袋。太夫。短冊。団十郎。竹生島。茶。茶釜。茶屋。茶碗。中三(ちゅうさん)。中人(ちゅうにん)。朝鮮之仮名。蝶々売り。長命丸。重陽の節句。猪牙船(ちょきぶね)。猪口。月囲い。月の異名。つけのぼせ。辻君(つじきみ)。土蜘蛛。鼓(つつみ)。角。つの大師。つぶて。つらがまえ。釣り舟。鶴亀。庭訓徃來。てかけ。手木前(てこまえ)。手相。手代(てだい)。手の筋早見。てれつく。天蓋(てんがい)。天眼鏡。天水桶(てんすいおけ)。天王。天王建(てんのうだて)。天文。田樂。でんほう。斗。童子專用寺子調法記。道中。唐人。唐土の鳥。当流小唄。吐逆。毒だて。とぐり。屠蘇。とちめんぼう。どてぶし。とぼそ。冨本節。虎拳(とらけん)。銅鑼焼き。酉(とり)。頓首(とんしゅ)。仲裏(なかうら)。仲之町。中指。名頭(ながしら)。七伊呂波(ななついろは)。名乗字。なべかぶり。生酔(なまよい)。難字和解。南天。南鐐。仁王門。にぎり飯。二朱銀。荷足舟(にたりぶね)。女房。人相。糠袋(ぬかぶくろ)。抜参笠(ぬけまいりがさ)。鼠半切(ねずみはんきり)。根付(ねつけ)。年中行事。年中通用文章。能。俳諧。端歌。はけついで。箱火鉢。聯(はしらがくし)。八割掛割術。初午(はつうま)。鼻。鼻ッかけ。はなぼろ。歯磨き。早飛脚(はやびきゃく)。春駒(はるこま)。番傘。番小屋。番頭。火入れ。ひしゃく。びた。ひってん。人差し指。ひなし。火縄筥(ひなわばこ)。火吹竹。姫糊。拍子木。毘沙門。福耳。武鑑。福祿壽。ふさぎ。蓋茶碗。舟。舟まんじゅう。振り袖新造。ふる。分毫字様(ぶんごうじよう)。文銭(ぶんせん)。分別。へそくり。へっつい。偏冠構字盡。弁慶。ほうかむり。棒突き。棒引き。ほうらい。頬かっぶり。拂子(ほっす)。ほまち。本朝鋳銭之圖。まくら言葉。待兼山。待ち伏せ。抹香。まとい。まぶ。まみえ。萬載。万燈。巳。見返り柳。見立て。道行き。見附柱(みつけばしら)。壬生。三升の紋。むかで。虫。むじな。妄書(むだがき)。胸算用。目。目薬。飯。面。餅。元結い。ものきぼし。もの前。ももんじい。文(もん)。紋(もん)。紋日(もんび)。匁。やかまし。奴天窓(やっこあたま)。奴たこ。柳。夜發(やほつ)。やぼてん。山鉾巡行。遣手(やりて)。幽霊。湯屋。養老。養老の滝。吉田町。吉原。吉原言葉。吉原細見。夜鷹。仍而如件(よってくだんのごとし)。四手駕籠(よつてかご)。米饅頭(よねまんじゅう)。頼光。利勘(りかん)。流行とぐり詞。両。呂律(りょりつ)。礼儀作法。六尺棒。路考。和中散(わちゅうさん)。和藤内(わとうない)。割り床
から一つ乃至三つ語を選び、これを元に現代人の観察実態と対照しながら報告書をまとめてみましょう。リポートは5枚くらいをめどにし、これに図絵や資料(調査しに赴いた先(図書館・博物館)での図版など)を別に添付して提出します。提出日は9月末日までとします。遅延、そしてこの課題提出をお忘れないきようお勉めくだされ!
※関連HPリンク:「江戸連」「寺子屋(大江戸雑学)」「練馬の伝統工芸」「江戸の町」「江戸文字の源流

2003.07.07(月)の講義内容

69、 『南総里見八犬伝』勧善懲悪、名詮自性。[367頁]。近世⇒「馬琴の遺跡」「八千枚の大ロマン」「明治の書生も熱狂」

 江戸時代後期の、読本(よみほん。文字を中心とした「読ませる」小説。稗史ともいう)の第一人者。江戸時代最大の文豪。代表作『南總里見八犬傳』は 1814年(四十八歳)から 1842年(七十六歳)まで28年かかって書かれた壮大な伝奇物語。九十八巻百六冊という日本古典文学では最長の作品でもある。連載途中に失明し息子の嫁のお路(おみち)に口述筆記させて完結させた。

 時代は、今から500年以上昔の「室町時代」の中頃、今の千葉県の南端安房国(あわのくに)の一隅に落ち延びた里美義実は、智略をもって山下定包(さだかね)を滅ぼし瀧田城を手に入れたが、その折いったんは助けると約した妖婦玉梓(たまずさ)を重刑に処した。玉梓の怨霊は、已後長きにわたり里美家に祟りを加えることとなる。やがて、領主義実は、娘伏姫(ふせひめ)をもうけたが、館山城主安西景連と不和を生じ危殆(きたい)に瀕した際、飼犬の八房(やつふさ)に向かって、敵将の首をとってきたら姫の婿にしようと一時の戯言を吐いた。八房はこの言を信じ、単身景連の首を噛み切り戻ってくる、これにより奇勝を博し、終に安房一国の国主となった。しかし、玉梓に対する食言に次いで、このとき義実が八房に与えた妄語の罪は、同じく里美家の悲劇を招く因となってしまう。八房に眷恋された伏姫は相共に冨士の山中に入て暮らすうちに、犬の気を受け懐妊するに至る。これを恥じて自害して果てた姫の疵口からは白気が立ち上り、その襟に掛けていた数珠の「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の八文字を彫った水晶八つの大玉が「気」とともに燦然と輝き空高く飛び上がり、散り散りになり遠く飛び去ってゆく。
 伏姫の婚約者であった金碗大輔(かなまり だいすけ)は髪を切り丶大法師(ちゅだいほうし)となって飛び去った八つの玉を探す旅に出る。やがて、関八州(関東)各地に、犬で始まる名を持ち、体に牡丹のあざがあり(犬の八房には八つの牡丹の痣があった)、文字の浮きでる玉を持つ若者が生まれる。「気」だけで生まれた八人の子が「形」を成したのである。
 別々の場所に生まれながら宿縁に導かれて集まり、やがて里見家に仕える。里見家は関東管領・扇谷定正(おうぎがやつ さだまさ)等の諸将連合軍に攻められ、水陸両面で戦うが八犬士の活躍等により圧勝。その功をもって里美義成の姫を室に八犬士はそれぞれ城主となる。
 

2003.06.30(月)の講義内容 →休講


2003.06.23(月)の講義内容

71、小林一茶『おらが春』について

2003.06.16(月)の講義内容

74、江戸の笑劇花暦八笑人−茶番の流行 「なんとでも鰯ツし」 ギャグとドタバタ−
について、ことばの歴史などを含め、考察していきましょう。

2003.06.09(月)の講義内容

75、 『東海道四谷怪談』生への執念。[398頁]。近世⇒「お岩狂死の真相」「水の流れと人の身は」「幽霊笑いの秘伝」
について考察します。

2003.06.02(月)の講義内容

為永春水『春色梅暦』について進めていきます。

 作者はこの作により声名を博し、自ら人情本の元祖と誇号した。主人公丹次郎を中心に織りなされる深川芸者の恋と意気地を描く。《岩波文庫・上袖書き》
 江戸末期の頽廃した情痴の世界を描き一派を開いたその作風は現代の写実的風俗小説の源泉となっている。興味ある多くの挿絵を付す。《岩波文庫下・袖書き》
よね「わちきやァ最(もふ)、知れめへかと思つて胸がどきどきして、そしてもふ急(いそ)ひで歩行(あるひ)たもんだからァゝ苦しい、《上・20頁》
丹「米八、その薬を茶碗へついでくんな。胸がどきどきするから。《上・29頁》
金も養家へいれ仏事(ぶつじ)、それから宅(うち)へ出入もならず、音信不通とされたのは、みんな此方(こっち)がふつゝかゆゑ、《上・23頁》
よね「(前略)随分わちきも側で気を付(つけ)てゐますけれども、何をいふにもおまはんのことを少(ちつと)はかんぐて居る{このかんぐるとはすいりやうしてゐるといふぞくごなり。}ものだから実(じつ)にしにくふございまさアな。《29頁》

2003.05.26(月)の講義内容

北越雪譜』の中半部から説明します。 岩波文庫に所載され、読者が選ぶ一〇〇冊のなかにこの書物が入りました。鈴木牧之と『北越雪譜』出版刊行までの歩み、雪国越後塩沢の生活模様(「かんじき」によるナンバ歩行、雪室、雪による遭難と熊のこと)、そして雪の結晶(六花)などについてお話しを進めて、最後にこの書物の有する国語資料としての特徴について講義しました。

 

 ここで閑話休題、辺り一面雪景色のことを「銀世界(ギンセカイ)」と表現しますが、この白い雪景色をなぜ、「銀世界」と表現するのでしょうか、「白(ハク・しろ)」と「銀(しろがね)」連関性を日本人がいつ頃もち合わせるに至ったのかを考えて見ては如何でしょうか?これを「白銀の世界」とも言います。また類語表現として、「月世界」という表現がございますが、これも青白い月光の夜景色を言います。読みは、「ゲツセカイ」か「つきセカイ」かあなた方の今後の調査を期待します。

 来週は、為永春水『春色梅暦』について進めていきます。


2003.05.19(月)の講義内容

江戸繁盛記』の後半部を説明します。そのあと、北国の情念『北越雪譜』について入っていきます。同じ江戸時代というなかでも江戸という空間を離れた北国での暮らしぶりをどのように活写し、人々に理解してもらおうと努めたのか?作者鈴木牧之の人物像についても考察していきます。

 


003.05.12(月)の講義内容

 『江戸繁盛記』を読んでみます。今年、江戸開府400年という節目の年を迎え、両国にある江戸博物館を中心に、さまざまな催しが行われています。新年の朝日新聞には、この近未来の予告を載せていて、多くの人々にさまざまな意味で江戸の文化という関心をめぐらしてきています。こうしたなかにあって、まさに江戸に花咲き、誇ったように、上方文化とは異なる江戸独自の文化が育まれ、熟成された様子をものの見事に書き留めた作品がこの『江戸繁盛記』です。作者は、「寺門静安」で、彼の筆録した世界から当時の文化事情を知ることになり、江戸町民における日本語文字認知能力をも伺い知ることができます。果ては、歌舞伎・文楽、落語・講談などの芸能文化を包含した世界がそこにはあります。
 この11冊仕立ての本が、今日長い年月のなかでいかに受容されてきたのかを学習し、この繁盛記の記録あふれる世界から近世江戸で育まれた日本語の歴史が垣間見られることをこの時間のなかで考察して見ましょう。

2003.04.28(月)の講義内容
 連関資料『特命全權大使米歐回覽實記』について、先週すべて解説できなかったので、取り上げていきます。当代の地名漢字表記についてみても、米國〔亞米利加〕の加利福尼(カリホルニヤ)州の桑方斯西哥(サンフランシスコ)、薩列明度(サクラメント)、費拉特費(ヒラドルヒヤ・ヒラトルヒヤ・ヒラテルヒヤ)、細白里(シベリヤ)、尼哇達(ネヴァタ)、鹽湖地(ソールトレイキ)、新約克(ニユーヨルク)、華盛頓(ワシントン)、落機(ロッキー)、市高俄(チカゴ)、聖路易(セントロイス)、密斯失比・密士失比(ミスシッピ)河、波士敦(ボストン)、尼亞吉拉(ナイアギラ)邑、武達(ユタ)など。
 外国語を漢字のふりがなに示した用例

 「所有産(プロパテイ・プロペテー)」「部屋(ルーム)」「華毯美榻(カーヘットチェヤ)」「大理石(マーブル)」「書記房(オフイス)」「秘馬(カーペット)」「玻璃(ビードロ)」「石鹸(サボン)」「引火(マッチュ)」「火(ストーブ)」「旅舘・逆旅(ホテル)」「公苑(パーク)」「禽獣園(ヂョーロチ)」「草木園(ボクニック)」「博物館(ミシャム)」「日曜日(ソンデー)」「銀行(パーク・バンク)」「昼食(ロンチ)」「洋琴(ビヤナ・ヒヤノ)」「市場(マーケット)」「運上所(コストンハウス)」「漆粉・鉛漆(ペンキ)」「蒸氣軸車(ロコモチーフ)」「回樓(ガルリー)」「湿電(ガルハン)」「金剛石(ダイヤモント)」「隧道(トンネル)」「開拓地(テリートリー)」「経験(プラチカル)」「學知(タオリック)」「橋(ブレツチ)」「貿易都(シチー)」「楓樹(メーピレ)」「驛站(ステーション)」「知事(メヨ・カバナル)」「資本金(カヒトル)」「遊園(スクワヤ)」「大享宴(レセプション)」「専賣(パテント)」「褒章(メタイル)」「水星(マルキル)」「木星(ジュビタル)」「海棉(スポンヂ)」「火酒(アルコール)」「街車(オミニュビス)」「券子(チェッキ)」「噴水(ホンティン)」「議事堂(カビトル)」「運河(カナール)」「外套衣(オブルコート)」「會食堂(ダイニンクルーム)」「愛國心(パテリヲチック)」など。


2003.04.21(月)の講義内容

 近代への架け橋『航米日録』について&最初に情報センターの使用手続きについて、再度説明。
 岩波文庫本『特命全權大使米歐回覽實記』などの資料と比較検討を試みます。
 「一 此書は、遣歐米特命全權大使、東京を發し、太平洋を航し、米國に留り、壓瀾的(アタランチック)洋を經て、英蘓兩部を回り、歐陸に渡り、佛、白、蘭、普、露、、瑞典の奥を經歴し、を回して、日耳曼地方より、以、、瑞士を回り、佛の南部をすき、地中海より、紅海、亞刺伯(アラビヤ)、印度、支那の諸海を航して、東京に復命するまて、日日目撃耳聞せる所を筆記す、明治四年辛未十一月十日に起り、六年九月十三日に止る、(即西暦專八百七十一年十二月十二日より同七十三年九月十三日まて)すへて全一年九个月二十一日の星霜にて、米歐兩洲著名の都邑は、大半回歴を經たり」という例言する書です。

2003.04.14(月)の講義内容
 最初に情報センターの使用手続きについて、再度説明しましす。
 続いて、講義ガイダンス内容の確認

講義のねらい
 音韻・文字・文法・語彙・敬語・文体・言語生活といった分野を常に据える形態で、古代から現代までの“ことばの歴史”を現代人の眼で、しかと見据えていくことを目的としています。そのなかで、古代から現代までに伝わる国語資料についての現状の把握が第一となります。そして、どう時代区分されているのかを知りましょう。そのうえで、將來どのように日本語学の研究そのものが世界に向けて一つの重要性を持ち、どのように発展していくかを認識していただきます。
講義の歩み》 ※作品資料の確認は、→【年表】を参照。

第1回の講義内容 近代への架け橋『航米日録』 について&最初に情報センターの使用手続きについて、再度説明

第2回の講義内容 『特命全權大使米歐回覽實記』における外国語地名や文化語彙の漢字表記とその傍訓カタカナ表記

第3回の講義内容 寺門静軒『江戸繁盛記』その1

第4回の講義内容 寺門静軒『江戸繁盛記』その2

第5回の講義内容 鈴木牧之『北越雪譜

 

第6回の講義内容 為永春水『春色梅暦

第7回の講義内容 75、 『東海道四谷怪談』生への執念。[398頁]。近世⇒「お岩狂死の真相」「水の流れと人の身は」「幽霊笑いの秘伝」

第8回の講義内容 74、滝亭鯉丈『花暦八笑人−茶番の流行 「なんとでも鰯ツし」 ギャグとドタバタ−

第9回の講義内容 小林一茶『おらが春

10回の講義内容 休講

11回の講義内容 69、 曲亭馬琴『南総里見八犬伝

12回の講義内容 夏季課題の取扱いについて説明しました。

13回の講義内容 67、 『東海道中膝栗毛』男の解放地。[357頁]。夏季課題の提出日は9月末日。

14回の講義内容 66、 『北槎聞略』鎖国の悲劇。[352頁]。近世⇒「漂流の記録」「感動的な別離のシーン」「将軍家秘匿の原本」

15回の講義内容 53、 『仮名手本忠臣蔵』義理一遍。[285頁]。近世⇒「古武士の面目」「男でござる」「内ゲバで上演中止

16回の講義内容 『正法眼蔵』山は是れ山 水是水。〔山水経〕

17回の講義内容 『蒙古襲来絵詞』について

18回の講義内容 『徒然草』について

19回の講義内容 35、 『義経記』判官びいき。[192頁]

20回の講義内容 乱世庶民の夢『御伽草子』浦島太郎(浦島伝説浦島太郎伝説の謎)・ものくさ太郎・鉢かづき・酒呑童子一寸法師一寸法師

21回講義内容 江戸上方 井原西鶴 元禄の英雄『好色一代男
22回講義内容 48、 松尾芭蕉『奥の細道』風雅のこゝろ。[260頁]。

23回講義内容 庶民のサロン『浮世風呂』〔362頁〕

24回講義内容 69.勧善懲悪『南総里見八犬伝

25回講義内容 『古事記』(国宝真福寺本)/『日本書紀』「卷子本、東洋文庫所蔵の卷第廿四・皇極期の参照画像写真」万葉集』について(現存『万葉集』の最善本の内容、「万葉仮名」という文字表記)06.天女幻想『竹取物語』《32頁》 『伊勢物語』(書名・作者そしてこの作品構成、真字本『伊勢物語』、大正時代に吉井勇作竹下夢二絵『新譯絵入伊勢物語』)について 『土左日記』(爲家本と定家本との異なり)について 『源氏物語』(人物系図・京大付属図書館蔵中院本『源氏物語』漢字の頻度を考察) 『大鏡』について 『方丈記』鴨長明の自筆本についてその表記形式及び内容について 『平家物語』について 鎌倉時代の『吾妻鏡』について(源頼朝・頼家・実朝そして北条政子とその一族) 『小倉百人一首』 について

 

 

 《講義評価とその方法

 前期と後期それぞれにリポゥト課題を用意します。これを紙出し&FD(ネットへの添付資料)にして、最終締め切り日に提出します。

 提出の際には、提出の年月日の記入。学籍番号。氏名を必ずファイル名と内容資料に必ず添えてください。
 ご自分が調査した関連語句(書名・人名・用語など)の記入とそれに関わるネットリンク、画像処理についても要確認(著作権問題)をお願いします。

 また、短期大学国文学掲示板のご利用を期待します。皆様方の声と管理担当者である萩原の考えや日程をここに反映させて、学習支援及び学習意欲の向上をめざすことが本来の目的です。ここに記載された内容は、すべてこちらで管理運営しています。今後、この授業内・外を問わず、この書き込みを通じて授業評価にも大きく反映させて行きますのでご承知願います。

教科書》インターネット公開型テキスト“国語史”[URL http://www.komazawa.-u.ac.jp/~hagi