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ことばの溜め池
ふだん何氣なく思っている「ことば」を、池の中にポチャンと投げ込んでいきます。ふと立ち寄ってお氣づきのことがございましたらご連絡ください。
御前(―せン) 。〔元亀二年本229二〕
御前(―ぜン) 。〔静嘉堂本262四〕
御前(――) 。〔天正十七年本中60オ四〕
於御前遂對决任雌雄是非奉行人令取捨事書於引付窺御評定異見所令成敗也〔至徳三年本〕
於御前遂對决任雌雄是非奉行人令取捨事書於引付窺御評定異見所令成敗也〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
於テ‖御-前ニ|遂ケ‖問-答對-决ヲ|任テ‖雌-雄(シユウ)ノ之是-非ニ|奉-行-人令三取‖-捨せ事-書ヲ|於テ‖引_付_方ニ|窺ヒ‖御-評-定ノ異-見ヲ|所∨令ル‖成-敗|也〔山田俊雄藏本〕
於‖御前|遂ゲ‖對决ヲ|任セ‖雌雄(シユウ)ノ是非ニ|奉行人ニ令∨取‖捨セ事書ヲ|於テ‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見(イ―)ヲ|。所∨令ムル‖成敗|也〔経覺筆本〕
於テ御前ニ|。遂ケ‖對-决ヲ|任(マカ)せ‖雌-雄(シユウ)ノ是-非(ゼヒ)ニ|奉-行-人令メ∨取‖-捨(シユシヤ/トリスツル)。事_書(コトカキ)ヲ|於テ‖引_付ニ|。窺(ウカヽ)井‖御-評-定ノ異-見(イケン)ヲ|。所∨令‖成敗|也。〔文明四年本〕※對决(タイケツ)。取捨(シユシヤ)。
と見え、至徳三年本と建部傳内本とは、読み点を一切加えていないのに対し、文明四年本、山田俊雄藏本と経覺筆本は、読み点を施して記載している。
御前(ゴぜ/ギヨ・ヲサム、せン・マヱ)[去・平] 女(ヲンナ)盲目(マウモク)。〔人倫門655八〕
とあって、標記語「御前」の語を収載し、訓みを「ゴゼ」とし、その語注記は「女盲目」と記載するうえで、茲の意味とは合致しない語である。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』・易林本『節用集』には、標記語「御前」の語は未収載にする。
このように、上記当代の古辞書中では、『運歩色葉集』にのみ「御前」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語となっている。
463於‖御前ニ|遂‖對决ヲ|任せ‖雌雄ノ是非ニ|奉行人令メ∨取‖-捨亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定之異見ヲ|所∨令ル‖成敗|也。問注所ハ者永代沽(ウリ)券 券ハ科註ニ曰、組券也。長一尺二寸法‖十二月|、廣三寸法‖天-地人ニ|刻思カ云曰、小券短書ヲ号∨疏ト也。則賣買之札也云々。〔謙堂文庫蔵四五右F〕
とあって、標記語「御前」の語を収載し、語注記は未記載にする。
三問答ノ訴陳(ソチン)ニ|。於テ‖御前ニ|遂(ト)ゲ‖對决(タイケツ)シテ|任テ‖三問答ト云事ハ。論人訴人ト相對(サウタイ)シテ。三問答スル也。問答三度(タヒ)ノ後ハ是非ヲイハセズ。理ニ任せテ御裁許(サイキヨ)有ナリ。〔下21オ二〜三〕
御前(ごぜん)に於(おゐ)て對決(たいけつ)を遂(とげ)/於テ‖御前ニ|遂(ト)ゲ‖對决(タイケツ)ヲ| 對决とハ訴られたる者にあり。されとかゝわるへからす。〔64ウ一〜二〕
とあって、この標記語「御前」の語を収載し、語注記は未記載にする。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。〔47ウ五〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。〔85オ三〜五〕
Gojen.ゴゼン(御前) Von maye.(御前)貴人の前.〔邦訳306r〕
ご-ぜん〔名〕【御前】〔御前(みまへ)の字の音讀〕御前(みまへ)。御前(おまへ)。御面前。天子に申し、貴人に云ふ。天子には「御前の試み」御前の内取」今も、御前會議あり。蔡?の獨斷に「天子所在曰二御前一」とあり、和漢、暗合なり。西宮記、十一月、五節舞姫人人「頭、持二硯紙等一、候二御前一定レ之」(蔵人頭(くらうどのとう)なり)吾妻鏡、一、治承四年八月六日「召三邦道、昌長等於二御前一、有二卜筮一」(源頼朝)蜷川親元日記、文明十七年八月十五日「奉行衆出仕、飯尾大和入道、清備中入道、云云、以上御前衆」(足利義尚)「御前公事」(徳川)〔0687-4〕
訴陳(―チン) 。〔元亀二年本152五〕〔静嘉堂本166五〕
令召進之時者被封下訴状番三問答訴陳〔至徳三年本〕〔建部傳内本〕
令召進之時者被封下訴状番三問答訴陳状〔宝徳三年本〕
令ル‖召_進せ|之時ハ被レ∨封(フウ)シ‖-下訴-状ヲ|調ヘ‖三-問三-答ノ訴-陳ヲ|〔山田俊雄藏本〕
令‖召進|之時ハ被∨封(ホウ)ジ‖-下セ訴状ヲ|番イ‖三問答ノ於訴陳ヲ|〔経覺筆本〕
令(シメ)ン∨召‖-進(シン)せ者之ヲ|時ハ被レ∨封(フウ)せ‖_下(クタ)サ訴-状ヲ|番(ツカ井)‖三-問○{三}-答ノ訴-陳ヲ|〔文明四年本〕
訴陳(ソチン/ウタヱ、ノブル・ツラナル)[去・○] 。〔態藝門404五〕
とあって、標記語「訴陳」の語を収載し、訓みを「ソチン」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
訴陳(ソチン) 。〔弘・言語進退門122六〕
訴訟(ソせウ) ―論(ロン)。―陳(チン)。〔永・言語門101七〕
訴訟(ソせウ) ―論。―陳。〔尭・言語門92二〕〔両・言語門112三〕
とあって、弘治二年本が標記語「訴陳」の語を収載し、他本は標記語「訴訟」の冠頭字「訴」の熟語群として収載する。また、易林本『節用集』には、
訴陳(ソチン) ―訟(セウ)。―人(ニン)/―状(ジヤウ)。〔言辞門101四〕
このように、上記当代の古辞書に、「訴陳」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
462就‖違背ノ散-状ヲハ者直ニ被レ∨下‖-知于訴人ニ|令ルノ∨召‖-進之ヲ|時ンハ被∨封‖-下訴状ヲ|番(ツカイ)‖三問答ノ訴陳ヲ| 三問答ハ直ニ召符ヲ被∨下之処ニ、論人違-背シテ不∨參、直ニ訴人ニ爲ス‖下知ヲ|。若又參則封‖-下訴状|、遂‖三問答ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右D〕
とあって、標記語「訴陳」の語を収載し、語注記は未記載にする。
三問答ノ訴陳(ソチン)ニ|。於テ‖御前ニ|遂(ト)ゲ‖對决(タイケツ)シテ|任テ‖三問答ト云事ハ。論人訴人ト相對(サウタイ)シテ。三問答スル也。問答三度(タヒ)ノ後ハ是非ヲイハセズ。理ニ任せテ御裁許(サイキヨ)有ナリ。〔下21オ二〜三〕
三問答(さんもんとう)の訴陳(そぢん)を番(つが)ひ/番ヒ‖三問三答之訴陳ヲ| 番ハつかふと訓して互に問つ答(こたへ)つするをいふ也。三問答の云るハ凡の事大抵(たいてい)三度にして定る物ゆへ三と云屹(きつ)と三度に語りたるにはあらす。陳ハ此訳ハケ根/\と言訳(いひわけ)る事也。問と訴とハ訴たる者にあり。答と陳とハ訴られたる者にあり。されとかゝわるへからす。〔64オ七〕
とあって、この標記語「訴陳」の語を収載し、語注記は「陳は、此訳はケ根/\と言訳る事なり。問と訴とは、訴へたる者にあり。答と陳とは、訴へられたる者にあり。されどかゝわるべからず」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。▲番二三問三答之訴陳ハ初めて出す訴状を初問(しよもん)とし其答(こたへ)を初答(しよたふ)といふ。此(かく)のごとく凡三度(と)訴人(そにん)と相手方(あひてかた)と互(たかひ)に問答(もんだふ)の言葉(ことば)を番(つか)ふをいふ。陳(ちん)ハ相手方の言訳(いひわけ)也。〔47ウ七〜八〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。▲番二三問三答之訴陳ハ初(はじ)めて出す訴状を初問(しよもん)とし其答(こたへ)を初答(しよたふ)といふ。此(かく)のごとく凡三度(ど)訴人(そにん)と相手方(あひてかた)と互(たかひ)に問答(もんだふ)の言葉(ことば)を番(つが)ふをいふ。陳(ぢん)ハ相手方の言訳(いひわけ)なり。〔85オ六〜85ウ一〕
Sochin.ソチン(訴陳) 告訴.文書語.〔邦訳568l〕
そ-ちん〔名〕【訴陳】訴状と、陳状と。又、原告と被告との申立。目安。解状。太平記、十三、龍馬進奏事「訴人、日日に、滅じて、訴陳徒らに閣ける」同、三十五、青砥左衞門事「地下の公文と、相模守と訴陳に番ふ事あり」〔1154-3〕
令召進之時者被封下訴状番三問答訴陳〔至徳三年本〕〔建部傳内本〕
令召進之時者被封下訴状番三問答訴陳状〔宝徳三年本〕
令ル‖召_進せ|之時ハ被レ∨封(フウ)シ‖-下訴-状ヲ|調ヘ‖三-問三-答ノ訴-陳ヲ|〔山田俊雄藏本〕
令‖召進|之時ハ被∨封(ホウ)ジ‖-下セ訴状ヲ|番イ‖三問答ノ於訴陳ヲ|〔経覺筆本〕
令(シメ)ン∨召‖-進(シン)せ者之ヲ|時ハ被レ∨封(フウ)せ‖_下(クタ)サ訴-状ヲ|番(ツカ井)‖三-問○{三}-答ノ訴-陳ヲ|〔文明四年本〕
三問三答(サンモンサンタフ/ミタビ、フン・トフ、ミタビ、コタウ)[平去・去・平去・入] 。〔態藝門794二〕
とあって、標記語「三問三答」の語を収載し、訓みを「サンモンサンタフ」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
三問(サンモン) ―答(タウ)/渤レ―天ヲ。〔永・言語門178七〕
三問(――) ―答。〔尭・言語門167八〕
とあって、標記語「三問三答」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、標記語「三問三答」の語は未収載にする。
このように、上記当代の古辞書に、「三問答」としてより「三問三答」の語で収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本には「三問答」として見えている語である。
462就‖違背ノ散-状ヲハ者直ニ被レ∨下‖-知于訴人ニ|令ルノ∨召‖-進之ヲ|時ンハ被∨封‖-下訴状ヲ|番(ツカイ)‖三問答ノ訴陳ヲ| 三問答ハ直ニ召符ヲ被∨下之処ニ、論人違-背シテ不∨參、直ニ訴人ニ爲ス‖下知ヲ|。若又參則封‖-下訴状|、遂‖三問答ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右D〕
とあって、標記語「三問答」の語を収載し、語注記は「三問答は、直に召符を下され、之の処に、論人違背して參らず、直に訴人に下知を爲す。若し又、參る則は訴状を封じ下し、三問答を遂げるなり」と記載する。
三問答ノ訴陳(ソチン)ニ|。於テ‖御前ニ|遂(ト)ゲ‖對决(タイケツ)シテ|任テ‖三問答ト云事ハ。論人訴人ト相對(サウタイ)シテ。三問答スル也。問答三度(タヒ)ノ後ハ是非ヲイハセズ。理ニ任せテ御裁許(サイキヨ)有ナリ。〔下21オ二〜三〕
三問答(さんもんとう)の訴陳(そぢん)を番(つが)ひ/番ヒ‖三問答之訴陳ヲ| 番ハつかふと訓して互に問つ答(こたへ)つするをいふ也。三問答の云るハ凡の事大抵(たいてい)三度にして定る物ゆへ三と云屹(きつ)と三度に語りたるにはあらす。陳ハ此訳ハケ根/\と言訳(いひわけ)る事也。問と訴とハ訴たる者にあり。答と陳とハ訴られたる者にあり。されとかゝわるへからす。〔64オ七〕
とあって、この標記語「三問答」の語を収載し、語注記は「三問答の云るは、凡その事大抵、三度にして定る物ゆへ三ど云ひ屹と三度に語りたるにはあらず」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。▲番二三問三答之訴陳ハ初めて出す訴状を初問(しよもん)とし其答(こたへ)を初答(しよたふ)といふ。此(かく)のごとく凡三度(と)訴人(そにん)と相手方(あひてかた)と互(たかひ)に問答(もんだふ)の言葉(ことば)を番(つか)ふをいふ。陳(ちん)ハ相手方の言訳(いひわけ)也。〔47ウ七〜八〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。▲番二三問三答之訴陳ハ初(はじ)めて出す訴状を初問(しよもん)とし其答(こたへ)を初答(しよたふ)といふ。此(かく)のごとく凡三度(ど)訴人(そにん)と相手方(あひてかた)と互(たかひ)に問答(もんだふ)の言葉(ことば)を番(つが)ふをいふ。陳(ぢん)ハ相手方の言訳(いひわけ)なり。〔85オ六〜85ウ一〕
標記語「三問答」「三問三答」の語は未収載にする。これを現代の『日本国語大辞典』第二版にも、標記語「さんもん-さんとう【三問三答】〔名〕中世、鎌倉・室町幕府の訴訟手続きで、訴人(原告)の訴状に対して論人(被告)が陳状を裁判所に提出する問答が三回にまで及んでなされること。このことを三問三答を番(つが)うという。なお訴人が三回の問答で申し残したことがあれば、追加申状として上申することができた。また、訴訟は必ずしも三問三答に及ばないで、中間で和議が成立することがあり、この和解の契約書を和与状という」とあって、『庭訓徃來』のこの語用例を記載する。
詳(ツマヒラカ) 。番(同) 。〔元亀二年本161八〕※「審」の「宀」を欠画した語で静嘉堂本をもって確認できる。
令召進之時者被封下訴状番三問答訴陳〔至徳三年本〕〔建部傳内本〕
令召進之時者被封下訴状番三問答訴陳状〔宝徳三年本〕
令ル‖召_進せ|之時ハ被レ∨封(フウ)シ‖-下訴-状ヲ|調ヘ‖三-問三-答ノ訴-陳ヲ|〔山田俊雄藏本〕
令‖召進|之時ハ被∨封(ホウ)ジ‖-下セ訴状ヲ|番イ‖三問答ノ於訴陳ヲ|〔経覺筆本〕
令(シメ)ン∨召‖-進(シン)せ者之ヲ|時ハ被レ∨封(フウ)せ‖_下(クタ)サ訴-状ヲ|番(ツカ井)‖三-問○{三}-答ノ訴-陳ヲ|〔文明四年本〕
番(ハン) ツカヒ/手―數次第也。隻 同。〔黒川本・員數門、中24ウ八〕
番 ツカフ/手―。結 同。〔黒川本・疉字門、中26ウ八〕
番 ツカヒ/手/數次第也。隻 同。一―唱和集/鴛鴦一―具也。他作鴛鴦。〔卷第四・員數門598五〕
番 ツカフ/手―。結 同。〔卷第四・辞字門621三〕
番(ツガイ/バン)[平・平上・去] 隻(ツガイ)同。〔數量門415一〕
とあって、標記語「番」の語を収載し、訓みを「ツガイ」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
双(ツカイ・ツルムル) 鳥一―。粥(同)。〔弘・言語進退門129六〕〔尭・言語門96七〕〔両・言語門118六〕
双(ツガイ・ツルムル) 鳥ノ一―。粥(同)。〔永・言語門106四〕
とあって、標記語「粥」語を収載し、訓みを「つがい」とする。また、易林本『節用集』には、
番(ツガヒ) 一―。〔言辞門107一〕
このように、上記当代の古辞書に、「番」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
462就‖違背ノ散-状ヲハ者直ニ被レ∨下‖-知于訴人ニ|令ルノ∨召‖-進之ヲ|時ンハ被∨封‖-下訴状ヲ|番(ツカイ)‖三問答ノ訴陳ヲ| 三問答ハ直ニ召符ヲ被∨下之処ニ、論人違-背シテ不∨參、直ニ訴人ニ爲ス‖下知ヲ|。若又參則封‖-下訴状|、遂‖三問答ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右D〕
とあって、標記語「番」の語を収載し、語注記は未記載にする。
違背(イハイ)散-状(サン―)ニ者。直(ヂキ)ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。令ル‖召(メシ)-進セ之ヲ時者。被サレ∨封(フウ)シ‖-下ノ訴状ヲ|番(ツガヒ)‖違背(イハイ)散状(サン―)ト云ハ。奉書ヲ付テ罪(ツミ)ノ輩(トモカラ)ヲタヽス処ニ上ヲ恐(ヲソ)レズ其(ソノ)状ヲ物ナシニシテ引破(ヒキヤブ)リ。結句(ケツク)其ノ使ヲ。チヤウチヤクシナンドスルヲ云フナリ。〔下20ウ八〜21オ二〕
番(ツガヒ)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)/被サレ∨封(フウ)シ‖-下ノ番ヲ| 訴人前出したる訴状を封し訴人の相手に見せて其の答を違也。〔64オ七〕
とあって、この標記語「番」の語を収載し、語注記は未記載にする。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。〔47ウ五〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。〔85オ三〜五〕
Tcugai.ツガヒ(番) 四肢とか骨とかの関節,戸などの蝶番,など.§Tcugaiga fanareta.(番が離れた)物と物とを結びつけてあったものが解けて離れる,または,はめてあった蝶番が外れる.§また,比喩.好機,あるいは,よいしおどき.例,Tcugaiuo mite mo<so<zu.(番を見て申さうず)好い折を見て,あるいは,好機を見て,お話しよう.→Tcugai,o<.〔邦訳625r〕
つが-ひ〔名〕【番】(一){番(つが)ふこと。組むこと。名義抄「番、ツガヒ」欽明紀、十四年六月「遣二内臣一使二於百濟一、云云、勅云、所請軍者隨二王所一レ須、別勅二醫博士、易博士、暦博士等一、宜依番(ツガヒ)上下(マヰテキマカル)一、令二上件色(シナ)ノ人一、正當二相代年月一、宜下付二還使一相代上」(二)番ひたるもの。くみあひ。つぎめ。ふし。骨節。關節。「腰の番」(三){禽獸の牝牡一對。匹偶。源氏物語、四十四、橋姫6「池の水鳥どもの、云云、つがひ離れぬを羨ましく眺め給ひて」檜垣嫗集、「一つがひ、ならはざりける、鴛鳥の、みづから來たる、ものと知らなむ」〔1305-3〕
訴状(―ジヤウ) 。〔元亀二年本152五〕
詐状(―シヤウ) 。〔静嘉堂本166五〕
令召進之時者被封下訴状番三問答訴陳〔至徳三年本〕〔建部傳内本〕
令召進之時者被封下訴状番三問答訴陳状〔宝徳三年本〕
令ル‖召_進せ|之時ハ被レ∨封(フウ)シ‖-下訴-状ヲ|調ヘ‖三-問三-答ノ訴-陳ヲ|〔山田俊雄藏本〕
令‖召進|之時ハ被∨封(ホウ)ジ‖-下セ訴状ヲ|番イ‖三問答ノ於訴陳ヲ|〔経覺筆本〕
令(シメ)ン∨召‖-進(シン)せ者之ヲ|時ハ被レ∨封(フウ)せ‖_下(クタ)サ訴-状ヲ|番(ツカ井)‖三-問○{三}-答ノ訴-陳ヲ|〔文明四年本〕
訴状(ソジヤウ/ウタヱ、カタチ)[去・去] 。〔態藝門404五〕
とあって、標記語「訴状」の語を収載し、訓みを「ソジヤウ」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
訴状(―ジヤウ) 。〔弘・言語進退門122六〕
とあって、弘治二年本だけが標記語「訴状」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、
訴陳(ソチン) ―訟(セウ)。―人(ニン)/―状(ジヤウ)。〔言辞門101四〕
このように、上記当代の古辞書に、「訴状」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
462就‖違背ノ散-状ヲハ者直ニ被レ∨下‖-知于訴人ニ|令ルノ∨召‖-進之ヲ|時ンハ被∨封‖-下訴状ヲ|番(ツカイ)‖三問答ノ訴陳ヲ| 三問答ハ直ニ召符ヲ被∨下之処ニ、論人違-背シテ不∨參、直ニ訴人ニ爲ス‖下知ヲ|。若又參則封‖-下訴状|、遂‖三問答ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右D〕
とあって、標記語「訴状」の語を収載し、語注記は未記載にする。
違背(イハイ)散-状(サン―)ニ者。直(ヂキ)ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。令ル‖召(メシ)-進セ之ヲ時者。被サレ∨封(フウ)シ‖-下ノ訴状ヲ|番(ツガヒ)‖違背(イハイ)散状(サン―)ト云ハ。奉書ヲ付テ罪(ツミ)ノ輩(トモカラ)ヲタヽス処ニ上ヲ恐(ヲソ)レズ其(ソノ)状ヲ物ナシニシテ引破(ヒキヤブ)リ。結句(ケツク)其ノ使ヲ。チヤウチヤクシナンドスルヲ云フナリ。〔下20ウ八〜21オ二〕
訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)/被サレ∨封(フウ)シ‖-下ノ訴状ヲ| 訴人前出したる訴状を封し訴人の相手に見せて其の答を違也。〔64オ七〕
とあって、この標記語「訴状」の語を収載し、語注記は未記載にする。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。〔47ウ五〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。〔85オ三〜五〕
そ-じゃう〔名〕【訴状】訴訟(うつたへ)の文書(かきもの)。訴牒。宋書、竟陵王誕傳「竝如二訴状一」御成敗式目「就二訴状一遣二召文一事」 建武以來追加「一、奉行人直請取二訴状一披露事」常照愚草「一、公樣方江訴状の目安を捧事、武家は、杉原也、公家門跡は、引合を被レ用、然に、常コ院殿樣(足利義尚)御代、關東管領上杉四郎と、仁木兵部大輔(丹波仁木事)相論之時、目安、何も、引合也、汲古(伊勢常照の父、貞宗)へ、不審申處、古今、引合にも被レ調、云云、又、杉原も被レ用也、三職、山名なども、又、一色なども、引合に、目安の例在レ之と」評定所留役覺書「訴状下げ相願ひ候」〔1152-1〕
封(フウズル) 。〔元亀二年本228六〕
封(フウス) 。〔静嘉堂本261七〕
封(フウスル) 。〔天正十七年本中59ウ七〕
令召進之時者被封下訴状番三問答訴陳〔至徳三年本〕〔建部傳内本〕
令召進之時者被封下訴状番三問答訴陳状〔宝徳三年本〕
令ル‖召_進せ|之時ハ被レ∨封(フウ)シ‖-下訴-状ヲ|調ヘ‖三-問三-答ノ訴-陳ヲ|〔山田俊雄藏本〕
令‖召進|之時ハ被∨封(ホウ)ジ‖-下セ訴状ヲ|番イ‖三問答ノ於訴陳ヲ|〔経覺筆本〕
令(シメ)ン∨召‖-進(シン)せ者之ヲ|時ハ被レ∨封(フウ)せ‖_下(クタ)サ訴-状ヲ|番(ツカ井)‖三-問○{三}-答ノ訴-陳ヲ|〔文明四年本〕
封(ホウ)フ 府容反/フウス。〔黒川本・人事門中102ウ五〕
封 フ/フウス。〔卷第七・人事門52六〕
封(フウズル/ツヽム)[平入] 。〔態藝門651六〕
とあって、標記語「封」の語を収載し、訓みを「フウズル」とし、その語注記は未記載にする。そして、「下」は久部の態藝門に自動詞「クダル」のみを収載する。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
封(フウスル) 。緘(同)。〔弘・言語進退門181五〕
報(ホウス) 果―。封(同) 。〔弘・言語進退門36四〕
封(ホウス) 。〔永・言語門36三〕〔尭・言語門32九〕〔両・言語門39八〕
とあって、標記語「封」の語を収載し、訓みを「フウする」と「ホウス」と両訓で収載が見られる。また、易林本『節用集』には、
緘(フヽズル)。封(同) 。〔言辞門152四〕
このように、上記当代の古辞書に、「封下」の複合動詞の語としては未収載であり、「封」の語で収載が見られ、また古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語を分化した掲載は下記に示す『日葡辞書』に見えている。
462就‖違背ノ散-状ヲハ者直ニ被レ∨下‖-知于訴人ニ|令ルノ∨召‖-進之ヲ|時ンハ被∨封‖-下訴状ヲ|番(ツカイ)‖三問答ノ訴陳ヲ| 三問答ハ直ニ召符ヲ被∨下之処ニ、論人違-背シテ不∨參、直ニ訴人ニ爲ス‖下知ヲ|。若又參則封‖-下訴状|、遂‖三問答ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右D〕
とあって、標記語「封下」の語を収載し、語注記は未記載にする。
違背(イハイ)散-状(サン―)ニ者。直(ヂキ)ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。令ル‖召(メシ)-進セ之ヲ時者。被サレ∨封(フウ)シ‖-下ノ訴状ヲ|番(ツガヒ)‖違背(イハイ)散状(サン―)ト云ハ。奉書ヲ付テ罪(ツミ)ノ輩(トモカラ)ヲタヽス処ニ上ヲ恐(ヲソ)レズ其(ソノ)状ヲ物ナシニシテ引破(ヒキヤブ)リ。結句(ケツク)其ノ使ヲ。チヤウチヤクシナンドスルヲ云フナリ。〔下20ウ八〜21オ二〕
訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)/被サレ∨封(フウ)シ‖-下ノ訴状ヲ| 訴人前出したる訴状を封し訴人の相手に見せて其の答を違也。〔64オ七〕
とあって、この標記語「封下」の語を収載し、語注記は未記載にする。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。〔47ウ五〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。〔85オ三〜五〕
Fu<ji,zuru,ita.フウジ,ズル,ジタ(封じ,ずる,じた)書状の封をする.§また,しるしを付ける,あるいは,封印をする.〔邦訳273r〕
Cudaxi,su,aita.クダシ,ス,イタ(下し,す,いた) ある物を下ろす,または,高い所から低い所へ下降させる,あるいは,送る.※原文にはDecer a algua cousa,とあるが,文中のaは不要であろう.→Icadaxi;Men(免).〔邦訳162r〕
ふう・ず〔他動、左變〕【封】(一)封をなす。ふうじる。漢書、平帝紀、註「傳信、封以三御史大夫印章一」同、張毆傳「上二具獄事一、有レ可レ郤、郤レ之、不可者、不レ得レ巳、爲涕泣、面而封レ之、其愛レ人如レ此」嬉遊笑覧、三、書畫「永禄の頃までは、世間に、状文さへ包みて封ずることなし」櫻の林(千家尊澄)二「例の聞書も書き終へたれば、封じてんと思ふ折しも」(二){神佛の通力を以て禁錮(とど)む。封じ込む。諸國里人談(菊岡沾涼)五「開山上人、蛙の聲は學問の妨なりと封ぜられたり、一山の蛙今以て鳴かず」源氏物語、三十四、下、若菜、下72「もののけに向ひて物語し給はんもかたはらいたければ、ふうじこめて」十訓抄、下、第十、第六十五條「術者これを聞きて、龍の泣くぞと思ひて、心に龍の聲とどむる符を作りて、これを封じてけり」 (三)閉じこむ。和漢朗詠集、上、春「摎梅北面雪封寒」卯花園漫録(石上宣續)二「蟇目の守封じやう有り、則この守を封じ置き、人にも與へ、又重ねて己蟇目を行ふ時の守も、この時封じ置く」〔1721-1〕
くだ・す〔他動、四〕【下・降】〔下(くだ)るの他動、いたる、いたす。きたる、きたす〕(一)下(くだ)るやうにす。下(した)へ遣(や)る。さぐ。おろす。拾遺集、十一、戀、一「大井川、くだす筏の、みなれ棹、みなれぬ人も、戀しかりけり」(二)都より、田舎へ行かしむ。(のぼすの(三)を見よ)沙石集、二、上、第四條「田舎よりも、國の物のぼせ、京よりも、いろいろの物くだしなんどして」(三)賜ふ。與ふ。下賜。延慶本平家物語、二、中、三位入道鵺射事「御衣(おんぞ)を下させたまふ」(四)筆を、紙におろして、書く。下筆。宇治拾遺物語、九、第二條「繪師、云云、筆をくださむとするに」(五){貶(おと)す。さぐ。退くる。字鏡、7「〓(K+歩)、久太須」沙石集、六、上、第七條「我が身の非を知らず、持戒の人をばくだし」「位一級をくだす」(六)勝ちて、我れに從はす。降參せしむ。「敵を降す」城を降す」(七){さげわたす。申しわたす。下附す。源氏物語、七、紅葉賀30「おほやけ事、多く奏しくだす日にて」(八)大便を、通ぜしむ。瀉。「下剤にてくだす」水を呑み過(す)ぎて、腹をくだす」〔0527-3〕
{執筆}書与問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符下就違背散状者直被下知于訴人〔至徳三年本〕
執筆書與問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符就違背散状者直被下知于訴人〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
執-筆書‖_与ル問-状ノ奉書ヲ於訴-人|之時及テ‖兩-度ニ|無-音タラハ仰テ‖使-節(シ―)ニ|被レ∨下‖召_符(フ)ヲ|就テハ‖違-背散-状ニ者直ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。〔山田俊雄藏本〕
執筆書‖与ヘル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時及‖兩度ニ|无音ナラハ者仰テ‖使節ニ|被∨下‖召シ符ヲ|就テ‖違背散状ニ者直ニ可∨被∨下‖-知于訴人|。〔経覺筆本〕
執-筆書(カキ)‖_与(アタユ)ル問(モン)-状ノ奉書ヲ|於テ∨訴-人(ソ―)ニ之時キニ及∨兩-度。有|無-音ニ者。仰テ‖使-節(シせツ)ニ|被レ∨下∨召{文ヲ}符ヲ|就キ∨‖違-背(イ―)ノ散-状(サン―)ニ|者。直(チキ)ニ被レ∨下知于‖訴-人ニ|。〔文明四年本〕
散状(サンジヤウ/チル、カタチ)[上・去] 。〔態藝門790八〕
とあって、標記語「散状」の語を収載し、訓みを「サンジヤウ」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
散用(――) ―状。――。―向。〔永・言語門178八〕
散用(サンヨウ) ―状。―向。――。〔尭・言語門167九〕
とあって、永祿二年本・尭空本は標記語「散用」の冠頭字「散」の熟語群として「散状」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、
散用(サンヨウ) ―乱(ラン)。―動(ドウ)。―失(シツ)/―機(キ)。―善(ぜン)。〔言辞門180五〕
このように、上記当代の古辞書に、「散状」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
462就‖違背ノ散-状ヲハ者直ニ被レ∨下‖-知于訴人ニ|令ルノ∨召‖-進之ヲ|時ンハ被∨封‖-下訴状ヲ|番(ツカイ)‖三問答ノ訴陳ヲ| 三問答ハ直ニ召符ヲ被∨下之処ニ、論人違-背シテ不∨參、直ニ訴人ニ爲ス‖下知ヲ|。若又參則封‖-下訴状|、遂‖三問答ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右D〕
とあって、標記語「散状」の語を収載し、語注記は未記載にする。
違背(イハイ)散-状(サン―)ニ者。直(ヂキ)ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。令ル‖召(メシ)-進セ之ヲ時者。被サレ∨封(フウ)シ‖-下ノ訴状ヲ|番(ツガヒ)‖違背(イハイ)散状(サン―)ト云ハ。奉書ヲ付テ罪(ツミ)ノ輩(トモカラ)ヲタヽス処ニ上ヲ恐(ヲソ)レズ其(ソノ)状ヲ物ナシニシテ引破(ヒキヤブ)リ。結句(ケツク)其ノ使ヲ。チヤウチヤクシナンドスルヲ云フナリ。〔下20ウ八〜21オ二〕
違背(ゐはい)散状(さんじやう)に就(つゐ)て者(ハ)/就テ‖違背散-状者 是ハ訴人の相手上を恐れす不敵(ふてき)のふるまひをするをいえるなり。違背とハ上の命にそむき召に應せさるをいふ。散状とハ回状の奉書を紛失(ふんしつ)なとしたるをいふ。〔64オ一〜二〕
とあって、この標記語「散状」の語を収載し、語注記は「散状とは、回状の奉書を紛失などしたるをいふ」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。〔47ウ五〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。〔85オ三〜五〕
さん-じゃう〔名〕【散状】〔交名(ケウミヤウ)の人人の許に散らす意にてもあるか(散米(サンマイ)の、散)〕朝廷にては、諸人の姓名を、一紙に列載して、廻達する文書。武家にては、多くは、將軍出行の供奉人の人員を定めて、廻達せしむるなどに云へり。江家次第、十二、開二奉幣使と串一儀「上卿著二仗座一、召二外記一、被レ問二使等散状一」(奉幣使等の姓名を、一紙に連署せしなり)吾妻鏡、四十二、建長四年七月十四日「來月放生會、御參宮供奉人、散状廻レ之、云云」同、四十三、建長五年正月二日「明日依レ可レ有三御行始于二相州御亭一、(北條時頼邸)今夕被レ催二供奉人一、是以二元日著庭衆一所レ被レ撰也、云云、令三朝夕(テウジヤク)雜色(ザフシキ)等、廻二其散状一」官位稽籍雜鈔、「散状、記二人交色一、得二下知一、以二其中ノ人一、定二其事一也、記二其交名状一、謂二之散状一」(古事類苑、散状)〔0840-3〕
違背(イハイ) 俗ニ作耿字誤歟。〔元亀二年本10四〕
違背(イハイ) 俗作耿字誤歟。〔静嘉堂本1四〕
違背(―ハイ) 俗作耿字誤歟。〔天正十七年本上3オ三〕
{執筆}書与問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符下就違背散状者直被下知于訴人〔至徳三年本〕
執筆書與問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符就違背散状者直被下知于訴人〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
執-筆書‖_与ル問-状ノ奉書ヲ於訴-人|之時及テ‖兩-度ニ|無-音タラハ仰テ‖使-節(シ―)ニ|被レ∨下‖召_符(フ)ヲ|就テハ‖違-背散-状ニ者直ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。〔山田俊雄藏本〕
執筆書‖与ヘル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時及‖兩度ニ|无音ナラハ者仰テ‖使節ニ|被∨下‖召シ符ヲ|就テ‖違背散状ニ者直ニ可∨被∨下‖-知于訴人|。〔経覺筆本〕
執-筆書(カキ)‖_与(アタユ)ル問(モン)-状ノ奉書ヲ|於テ∨訴-人(ソ―)ニ之時キニ及∨兩-度。有|無-音ニ者。仰テ‖使-節(シせツ)ニ|被レ∨下∨召{文ヲ}符ヲ|就キ∨‖違-背(イ―)ノ散-状(サン―)ニ|者。直(チキ)ニ被レ∨下知于‖訴-人ニ|。〔文明四年本〕
違背 怨敵部/ヰハイ。〔黒川本・疉字門中57ウ二〕
違背 〃例。〃勅。〃格。〃期。〃乱。〃衆。〃紛。〃濫。〃犯。〔卷第五・疉字門234四〕
違背(イハイ/ソムク・タガウ、せナカ・ソムク)[去・去] 。〔態藝門17五〜六〕
とあって、標記語「違背」の語を収載し、訓みを「イハイ」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
違背(イハイ/―、ソムク) 。〔弘・言語進退門13一〕
違背(―ハイ) 。〔永・言語門8三〕
違乱(イラン) ―背。―約。―衆朋友。/―変。―例。―期。―犯。〔尭・言語門6五〕
違乱(イラン) ―背(ハイ)。―約(ヤク)。―衆(シユ)朋友。―変(ヘン)/―例(レイ)。―期(ゴ)。―犯(ボン)。〔両・言語門8二〕
とあって、弘治二年本・永祿二年本は標記語「違背」の語を収載し、他二本は「違乱」の冠頭字「違」の熟語群として収載する。また、易林本『節用集』には、
違變(イヘン) ―背(ハイ)。―犯(ボン)/―乱(ラン)。〔言辞門122四〕
このように、上記当代の古辞書に、「違背」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
462就‖違背ノ散-状ヲハ者直ニ被レ∨下‖-知于訴人ニ|令ルノ∨召‖-進之ヲ|時ンハ被∨封‖-下訴状ヲ|番(ツカイ)‖三問答ノ訴陳ヲ| 三問答ハ直ニ召符ヲ被∨下之処ニ、論人違-背シテ不∨參、直ニ訴人ニ爲ス‖下知ヲ|。若又參則封‖-下訴状|、遂‖三問答ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右D〕
とあって、標記語「違背」の語を収載し、語注記は未記載にする。
違背(イハイ)散-状(サン―)ニ者。直(ヂキ)ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。令ル‖召(メシ)-進セ之ヲ時者。被サレ∨封(フウ)シ‖-下ノ訴状ヲ|番(ツガヒ)‖違背(イハイ)散状(サン―)ト云ハ。奉書ヲ付テ罪(ツミ)ノ輩(トモカラ)ヲタヽス処ニ上ヲ恐(ヲソ)レズ其(ソノ)状ヲ物ナシニシテ引破(ヒキヤブ)リ。結句(ケツク)其ノ使ヲ。チヤウチヤクシナンドスルヲ云フナリ。〔下20ウ八〜21オ二〕
違背(ゐはい)散状(さんじやう)に就(つゐ)て者(ハ)/就テ‖違背散-状者 是ハ訴人の相手上を恐れす不敵(ふてき)のふるまひをするをいえるなり。違背とハ上の命にそむき召に應せさるをいふ。散状とハ回状の奉書を紛失(ふんしつ)なとしたるをいふ。〔64オ一〜二〕
とあって、この標記語「違背」の語を収載し、語注記は「違背とは、上の命にそむき召に應せさるをいふ」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。▲違背爰(こゝ)にハ相手方(あい―かた)を召寄(めしよせ)らるゝ指紙(さしかミ)也。昔(むかし)ハすべて使者を遣(つかハ)すに皆(ミな)割符(わりふ)を持(もた)せたるもの也。爰ハ人を召(め)す使(つかひ)ゆゑ召符(めしふ)といふ。割符の事ハ四月乃返状に見ゆ。〔47ウ五〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。▲違背爰(こゝ)にハ相手方(あいてかた)を召寄(めしよせ)らるゝ指紙(さしがミ)也。昔(むかし)ハすべて使者(ししや)を遣(つかハ)すに皆(ミな)割符(わりふ)を持(もた)せたるもの也。爰(こゝ)ハ人を召(め)す使(つかひ)ゆゑ召符(めしふ)といふ割符(わりふ)の事ハ四月乃返状に見ゆ。〔85オ三〜五〕
IFai.イハイ(違背) Tagai somuqu.(違ひ背く)違反.例,Fattouo ifaisuru.(法度を違背する)法を犯す.〔邦訳331r〕
ゐ-はい〔名〕【違背】たがいそむくこと。もとること。違反すること。禮記正義序「其見二於世一者、唯皇熊二家而已、熊則違二背本經一」沙石集、五、上、第三條「治生産業實相に違背せず」〔2184-5〕
{執筆}書与問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符下就違背散状者直被下知于訴人〔至徳三年本〕
執筆書與問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符就違背散状者直被下知于訴人〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
執-筆書‖_与ル問-状ノ奉書ヲ於訴-人|之時及テ‖兩-度ニ|無-音タラハ仰テ‖使-節(シ―)ニ|被レ∨下‖召_符(フ)ヲ|就テハ‖違-背散-状ニ者直ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。〔山田俊雄藏本〕
執筆書‖与ヘル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時及‖兩度ニ|无音ナラハ者仰テ‖使節ニ|被∨下‖召シ符ヲ|就テ‖違背散状ニ者直ニ可∨被∨下‖-知于訴人|。〔経覺筆本〕
執-筆書(カキ)‖_与(アタユ)ル問(モン)-状ノ奉書ヲ|於テ∨訴-人(ソ―)ニ之時キニ及∨兩-度。有|無-音ニ者。仰テ‖使-節(シせツ)ニ|被レ∨下∨召{文ヲ}符ヲ|就キ∨‖違-背(イ―)ノ散-状(サン―)ニ|者。直(チキ)ニ被レ∨下知于‖訴-人ニ|。〔文明四年本〕
召符(メシフ) 文イ。〔態藝門359四〕
召捕(メシトル) ―仕(ツカフ)。―次(ツギ)。―符(フ)/―文(ブミ/ブ)。―籠(コムル)。―具(グ)。〔言辞門197二〕
このように、上記当代の古辞書では、『塵芥』と易林本『節用集』に、「召符」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
461闔閤重テ賦ル∨之ヲ執筆書‖_与ル問(トヒ)_状ノ奉書ヲ於訴人|之時及テ‖兩度ニ|无-音ナラハ者仰せテ‖使節ニ|被∨下‖召符ヲ| 召符ハ自‖執筆人|、問状ヲ給‖訴人|。急此問状ヲ論人ニ預、彼論人ヲ召シテ可∨參也。其時論人、若及‖兩度|無音ハ直ニ下‖召符ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右A〕
とあって、標記語「召符」の語を収載し、語注記は「召符は、執筆人より問状を訴人に給ふ。急ぎ此の問状を論人に預け、彼の論人を召して參るべきなり。其の時論人、若し、兩度に及んで無音は、直に召符を下すなり」と記載する。
問状ノ奉(ホウ)書ヲ於訴(ソ)人ニ|之時及テ‖兩度ニ|無-音(イン)ナラハ者。仰せテ‖使節(シせツ)ニ|被∨下‖召符(メシフ)ヲ|就テ‖問状ト云事ハ。罪科(サイクハ)ノ人ノ問(トヒ)状ナリ。〔下20ウ六〕
使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)被(さる)/仰テ‖使節ニ|被ル∨下‖召符ヲ| 使節ハ使者也。注前に見へたり。符ハわりふなり。軍勢の諸役又ハ使者を遣し人を召(めさ)るゝに皆わりふを用ゆ。召符とハ訴人の相手方を召るゝわり符を云。〔64オ一〜二〕
とあって、この標記語「召符」の語を収載し、語注記は「召符とは、訴人の相手方を召るゝわり符を云ふ」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。▲召符爰(こゝ)にハ相手方(あい―かた)を召寄(めしよせ)らるゝ指紙(さしかミ)也。昔(むかし)ハすべて使者を遣(つかハ)すに皆(ミな)割符(わりふ)を持(もた)せたるもの也。爰ハ人を召(め)す使(つかひ)ゆゑ召符(めしふ)といふ。割符の事ハ四月乃返状に見ゆ。〔47ウ五〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。▲召符爰(こゝ)にハ相手方(あいてかた)を召寄(めしよせ)らるゝ指紙(さしがミ)也。昔(むかし)ハすべて使者(ししや)を遣(つかハ)すに皆(ミな)割符(わりふ)を持(もた)せたるもの也。爰(こゝ)ハ人を召(め)す使(つかひ)ゆゑ召符(めしふ)といふ割符(わりふ)の事ハ四月乃返状に見ゆ。〔85オ三〜五〕
Mexibu.メシフ(召符) 人を召喚する旨を命ずる書状.§Mexibuuo nasaruru.(召符をなさるる)主君が誰かを召喚する書状,あるいは,令状を出される.→Tcuqe,uru(付・着け,くる).〔邦訳399r〕
めし-ふ〔名〕【召符】次條(めしぶみ【召文】)の語に同じ。庭訓徃來、八月「執筆被レ書三與問状奉書於二訴人一之時、及二兩度一無音、仰二使節一、被レ下二召符一」吾妻鏡、四十、建長二年二月五日「諸國守護地頭御家人等、背二六波羅召符一由事、有二其沙汰一、向後於二如レ此之輩一者、可レ被レ處二罪科一之由、被二仰出一云云」〔1988-5〕
※見出し語を「めしふ」と清音表記することから、『日葡辞書』のような「ローマ字表記」された資料をここでは取り込めていなかったことも知られよう。
使節(―せツ) 。〔元亀二年本306十〕
使節(シせツ) 。〔静嘉堂本357六〕
{執筆}書与問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符下就違背散状者直被下知于訴人〔至徳三年本〕
執筆書與問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符就違背散状者直被下知于訴人〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
執-筆書‖_与ル問-状ノ奉書ヲ於訴-人|之時及テ‖兩-度ニ|無-音タラハ仰テ‖使-節(シ―)ニ|被レ∨下‖召_符(フ)ヲ|就テハ‖違-背散-状ニ者直ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。〔山田俊雄藏本〕
執筆書‖与ヘル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時及‖兩度ニ|无音ナラハ者仰テ‖使節ニ|被∨下‖召シ符ヲ|就テ‖違背散状ニ者直ニ可∨被∨下‖-知于訴人|。〔経覺筆本〕
執-筆書(カキ)‖_与(アタユ)ル問(モン)-状ノ奉書ヲ|於テ∨訴-人(ソ―)ニ之時キニ及∨兩-度。有|無-音ニ者。仰テ‖使-節(シせツ)ニ|被レ∨下∨召{文ヲ}符ヲ|就キ∨‖違-背(イ―)ノ散-状(サン―)ニ|者。直(チキ)ニ被レ∨下知于‖訴-人ニ|。〔文明四年本〕
使節(シセツ) 相公使。〔弘・人倫門238三〕
使節(シセツ) 。〔永・人倫門198五〕
使節(シセツ) ―者。〔尭・人倫門188五〕
とあって、標記語「使節」の語を収載し、弘治二年本の語注記に「相公使」と記載する。また、易林本『節用集』には、
使節(シセツ) 。〔人倫門204三〕
このように、上記当代の古辞書では、『伊京集』『運歩色葉集』、印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』、易林本『節用集』に、「使節」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
461闔閤重テ賦ル∨之ヲ執筆書‖_与ル問(トヒ)_状ノ奉書ヲ於訴人|之時及テ‖兩度ニ|无-音ナラハ者仰せテ‖使節ニ|被∨下‖召符ヲ| 召符ハ自‖執筆人|、問状ヲ給‖訴人|。急此問状ヲ論人ニ預、彼論人ヲ召シテ可∨參也。其時論人、若及‖兩度|無音ハ直ニ下‖召符ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右A〕
とあって、標記語「使節」の語を収載し、語注記は未記載にする。
問状ノ奉(ホウ)書ヲ於訴(ソ)人ニ|之時及テ‖兩度ニ|無-音(イン)ナラハ者。仰せテ‖使節(シせツ)ニ|被∨下‖召符(メシフ)ヲ|就テ‖問状ト云事ハ。罪科(サイクハ)ノ人ノ問(トヒ)状ナリ。〔下20ウ六〕
使節(しせつ)に仰(おほ)せて召符(めしふ)を下(くだ)被(さる)/仰テ‖使節ニ|被ル∨下‖召符ヲ| 使節ハ使者也。注前に見へたり。符ハわりふなり。軍勢の諸役又ハ使者を遣し人を召(めさ)るゝに皆わりふを用ゆ。召符とハ訴人の相手方を召るゝわり符を云。〔64オ一〜二〕
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。▲使節ハ使番(つかひはん)を主(つかさと)る役人也。〔47ウ五〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。▲使節ハ使番(つかひばん)を主(つかさど)る役人也。〔85オ三〕
Xixet.シセッ(使節) すなわち,Qibixij tcucai.(厳しい使)厳命をおびた使者,または,使節.〔邦訳785r〕
し-せつ〔名〕【使節】〔節は、國使の持する標識(しるし)〕國君、又は、政府の命を奉じて、他國に使する官人。周禮、掌節篇「凡、邦國之使節、山國用二虎節一、士國用二人節一、澤國用二龍節一」易林本節用集「使節、シセツ」〔0895-3〕
{執筆}書与問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符下就違背散状者直被下知于訴人〔至徳三年本〕
執筆書與問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符就違背散状者直被下知于訴人〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
執-筆書‖_与ル問-状ノ奉書ヲ於訴-人|之時及テ‖兩-度ニ|無-音タラハ仰テ‖使-節(シ―)ニ|被レ∨下‖召_符(フ)ヲ|就テハ‖違-背散-状ニ者直ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。〔山田俊雄藏本〕
執筆書‖与ヘル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時及‖兩度ニ|无音ナラハ者仰テ‖使節ニ|被∨下‖召シ符ヲ|就テ‖違背散状ニ者直ニ可∨被∨下‖-知于訴人|。〔経覺筆本〕
執-筆書(カキ)‖_与(アタユ)ル問(モン)-状ノ奉書ヲ|於テ∨訴-人(ソ―)ニ之時キニ及∨兩-度。有|無-音ニ者。仰テ‖使-節(シせツ)ニ|被レ∨下∨召{文ヲ}符ヲ|就キ∨‖違-背(イ―)ノ散-状(サン―)ニ|者。直(チキ)ニ被レ∨下知于‖訴-人ニ|。〔文明四年本〕
無音 フイン。〔黒川本・疉字門中107ウ二〕
無雙 〃頼。〃事。〃極。〃窮。〃頂。〃為。〃涯。〃邊。〃何。〃卿帝王。〃答。〃射九月。〃限。〃端。〃偏。〃愛。〃彊キヤウ。〃道。〃音。〔卷第七・疉字門84四〕
無音信(ブインシン/ナシ、コヱ・ヲト、マコト・ノブ)[○・平・去] 。〔態藝門635二〕
とあって、標記語「無音信」の語を収載し、訓みを「ブインシン」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
無音(ブイン) 。〔弘・言語進退門182五〕
無道(ムダウ) ―音(イン)。―為(イ)。―力(リヨク)。―災(サイ)。―骨(コツ)。―双(サウ)/―礼(レイ)。―亊(ジ)。―菜(サイ)。―難(ナン)。―興(キヤウ)。―頼(ライ)。〔永・言語門149七〕
無道(ブタウ) ―音。―為/―度。―流/―菜。―興。―沙汰。―四調。―骨。―双/―礼。―亊。―難。―頼。―所存。―心得。〔尭・言語門139五〕
とあって、弘治二年本は、標記語「無音」の語を収載し、他本は標記語「無道」の冠頭字「無」の熟語群として、「無音」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、
無禮(ブレイ) ―道(タウ)。―性(シヤウ)。―頼(ライ)。―功(コウ)。―コ(トク)。―興(ケウ)。―骨(コツ)。―為(ヰ)。―事(ジ)。―沙汰(サタ)。―器用(キヨウ)。―人数(ニンジユ)/―力(リヨク)。―勢(せイ)。―人(ニン)。―雙(サウ)。―音(イン)。―覺悟(カクゴ)。―故實(コシツ)。―所存(ソゾン)。―興隆(コウリウ)。―案内(アンナイ)。无單袴(ブタンゴ)。〔言辞門151七〜152一〕
このように、上記当代の古辞書に、「無音」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
461闔閤重テ賦ル∨之ヲ執筆書‖_与ル問(トヒ)_状ノ奉書ヲ於訴人|之時及テ‖兩度ニ|无-音ナラハ者仰せテ‖使節ニ|被∨下‖召符ヲ| 召符ハ自‖執筆人|、問状ヲ給‖訴人|。急此問状ヲ論人ニ預、彼論人ヲ召シテ可∨參也。其時論人、若及‖兩度|無音ハ直ニ下‖召符ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右A〕
とあって、標記語「无音」の語を収載し、語注記は未記載にする。
問状ノ奉(ホウ)書ヲ於訴(ソ)人ニ|之時及テ‖兩度ニ|無-音(イン)ナラハ者。仰せテ‖使節(シせツ)ニ|被∨下‖召符(メシフ)ヲ|就テ‖問状ト云事ハ。罪科(サイクハ)ノ人ノ問(トヒ)状ナリ。〔下20ウ六〕
兩度(りやうど)に及(およ)んて無音(ぶいん)せば/及テ‖兩度ニ|無-音せハ者 兩度ハ二度也。無音とハ訴人の相手方一向に回状の奉書に應(おう)せさるをいふなり。〔63ウ八〜64オ一〕
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。▲無音爰(こゝ)にハ訴人(そにん)の相手方(あいてがた)一向(いつかう)に問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)に應(おう)ぜざるをいふ。〔47ウ四〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。▲無音爰(こゝ)にハ訴人(そにん)の相手方(あいてかた)一向(いつかう)に問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)に應(おう)ぜざるをいふ。〔85オ二〜三〕
Buin.ブイン(無音) Votozzurenaxi.(音づれ無し) 礼儀を欠き,訪問しないこと.→BV(無).〔邦訳64r〕
ぶ-いん〔名〕【無音】(一)音信をせぬこと。たよりせざること。おとづれざること。無沙汰。契闊。易林本節用集(慶長)下、言辭門「無音、ブイン」(二)發言せざること。黙し居ること。無言。源平盛衰記、四十六、頼朝義經中違事「閉口是非の返事申す人なし、鎌倉殿相待ち給へども無音の間、腹立して、いやいや、此中には誰誰と云とも、梶原計ぞ侍らん」〔1718-3〕
{執筆}書与問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符下就違背散状者直被下知于訴人〔至徳三年本〕
執筆書與問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符就違背散状者直被下知于訴人〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
執-筆書‖_与ル問-状ノ奉書ヲ於訴-人|之時及テ‖兩-度ニ|無-音タラハ仰テ‖使-節(シ―)ニ|被レ∨下‖召_符(フ)ヲ|就テハ‖違-背散-状ニ者直ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。〔山田俊雄藏本〕
執筆書‖与ヘル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時及‖兩度ニ|无音ナラハ者仰テ‖使節ニ|被∨下‖召シ符ヲ|就テ‖違背散状ニ者直ニ可∨被∨下‖-知于訴人|。〔経覺筆本〕
執筆書‖_与ル問(トヒ)_状ノ奉書ヲ於訴人|之時及テ‖兩度ニ|无-音ナラハ者仰せテ‖使節ニ|被∨下‖召符ヲ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。〔文明四年本〕
兩度(リヤウド・―、ノリ/フタツ、ハカル)[上去・去入] 。〔態藝門198一〕
とあって、標記語「兩度」の語を収載し、訓みを「リヤウド」とし、その語注記は未記載にする。
このように、上記当代の古辞書においては、広本『節用集』だけがこの「兩度」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語となっている。
461闔閤重テ賦ル∨之ヲ執筆書‖_与ル問(トヒ)_状ノ奉書ヲ於訴人|之時及テ‖兩度ニ|无-音ナラハ者仰せテ‖使節ニ|被∨下‖召符ヲ| 召符ハ自‖執筆人|、問状ヲ給‖訴人|。急此問状ヲ論人ニ預、彼論人ヲ召シテ可∨參也。其時論人、若及‖兩度|無音ハ直ニ下‖召符ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右A〕
とあって、標記語「兩度」の語を収載し、語注記は未記載にする。
問状ノ奉(ホウ)書ヲ於訴(ソ)人ニ|之時及テ‖兩度ニ|無-音(イン)ナラハ者。仰せテ‖使節(シせツ)ニ|被∨下‖召符(メシフ)ヲ|就テ‖問状ト云事ハ。罪科(サイクハ)ノ人ノ問(トヒ)状ナリ。〔下20ウ六〕
兩度(りやうど)に及(およ)んて無音(ぶいん)せば/及テ‖兩度ニ|無-音せハ者 兩度ハ二度也。無音とハ訴人の相手方一向に回状の奉書に應(おう)せさるをいふなり。〔63ウ八〜64オ一〕
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。〔47ウ三〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。〔85オ一〕
Rio<do.リャウド(兩度) Futatabi.(再び) 二回.〔邦訳534r〕
りゃう-ど〔名〕【兩度】ふたたび。二度。長門本、平家物語、十五、室山合戰事「平家、室山水島兩度の軍に打勝て、云云」〔2130-3〕
訴人(ソニン) 。〔元亀二年本152四〕
訴人(――) 。〔静嘉堂本166五〕
{執筆}書与問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符下就違背散状者直被下知于訴人〔至徳三年本〕
執筆書與問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符就違背散状者直被下知于訴人〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
執-筆書‖_与ル問-状ノ奉書ヲ於訴-人|之時及テ‖兩-度ニ|無-音タラハ仰テ‖使-節(シ―)ニ|被レ∨下‖召_符(フ)ヲ|就テハ‖違-背散-状ニ者直ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。〔山田俊雄藏本〕
執筆書‖与ヘル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時及‖兩度ニ|无音ナラハ者仰テ‖使節ニ|被∨下‖召シ符ヲ|就テ‖違背散状ニ者直ニ可∨被∨下‖-知于訴人|。〔経覺筆本〕
執-筆書(カキ)‖_与(アタユ)ル問(モン)-状ノ奉書ヲ|於テ∨訴-人(ソ―)ニ之時キニ及∨兩-度。有|無-音ニ者。仰テ‖使-節(シせツ)ニ|被レ∨下∨召{文ヲ}符ヲ|就キ∨‖違-背(イ―)ノ散-状(サン―)ニ|者。直(チキ)ニ被レ∨下知于‖訴-人ニ|。〔文明四年本〕
訴人(ソニン/ウタヱ、ジン・ヒト)[去・平] 。〔態藝門404六〕
とあって、標記語「訴人」の語を収載し、訓みを「ソニン」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
訴人(ソニン) 。〔弘・人倫門118七〕〔永・人倫門100六〕〔尭・人倫門91一〕〔両・人倫門110七〕
とあって、「訴人」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、
訴陳(ソチン) ―訟(せウ)。―人(ニン)。―状(ジヤウ)。〔言辞門101四〕
このように、上記当代の古辞書に、「訴人」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
461闔閤重テ賦ル∨之ヲ執筆書‖_与ル問(トヒ)_状ノ奉書ヲ於訴人|之時及テ‖兩度ニ|无-音ナラハ者仰せテ‖使節ニ|被∨下‖召符ヲ| 召符ハ自‖執筆人|、問状ヲ給‖訴人|。急此問状ヲ論人ニ預、彼論人ヲ召シテ可∨參也。其時論人、若及‖兩度|無音ハ直ニ下‖召符ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右A〕
とあって、標記語「訴人」の語を収載し、語注記は未記載にする。
問状ノ奉(ホウ)書ヲ於訴(ソ)人ニ|之時及テ‖兩度ニ|無-音(イン)ナラハ者。仰せテ‖使節(シせツ)ニ|被∨下‖召符(メシフ)ヲ|就テ‖問状ト云事ハ。罪科(サイクハ)ノ人ノ問(トヒ)状ナリ。〔下20ウ六〕
執筆(しゆひつ)問状(とひじやう)の奉書(ほうしよ)を訴人(そにん)於(に)書与(かきあたゆ)るの時(とき)/執筆書‖_与ル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時 執筆ハ書役也。回状の奉書とハ訴人の相手方へ事の様子を問尋ねらるゝ奉書なり。訴人とハ事をうつたへ出たる者なり。〔63ウ六〜八〕
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。〔47ウ三〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。〔85オ一〕
Sonin.ソニン(訴人) Vttayuru fito.(訴ゆる人) 告訴人,すなわち,訴訟における原告.〔邦訳573r〕
そ-にん〔名〕【訴人】(一)うったへ出づる人。訴訟する人。原告。(論人に對す)首告人。太平廣記、張質「案牘分明、訴人不レ遠」(二)めあかし(目證)の異名。甲陽軍艦、八、品第十七「訴人岩間大藏左衞門とて、御分國中、萬事の儀を申上る侍一人あり」武家名目抄、六十、職名「甲州にて訴人と云ひし所職は、今云ふ、目明(めあかし)の類なるよし、見聞雜録に見えたるが、如何にも其云へる所の如く、常ならぬ事に、眼をつけて、窺ひ知れるままを密告すべき職(つかさ)なり」〔1158-2〕
問状(―ジヤウ) 。〔元亀二年本348七〕
門状(―ヂヤウ) 。〔静嘉堂本419三〕
{執筆}書与問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符下就違背散状者直被下知于訴人〔至徳三年本〕
執筆書與問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符就違背散状者直被下知于訴人〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
執-筆書‖_与ル問-状ノ奉書ヲ於訴-人|之時及テ‖兩-度ニ|無-音タラハ仰テ‖使-節(シ―)ニ|被レ∨下‖召_符(フ)ヲ|就テハ‖違-背散-状ニ者直ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。〔山田俊雄藏本〕
執筆書‖与ヘル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時及‖兩度ニ|无音ナラハ者仰テ‖使節ニ|被∨下‖召シ符ヲ|就テ‖違背散状ニ者直ニ可∨被∨下‖-知于訴人|。〔経覺筆本〕
執-筆書(カキ)‖_与(アタユ)ル問(モン)-状ノ奉書ヲ|於テ∨訴-人(ソ―)ニ之時キニ及∨兩-度。有|無-音ニ者。仰テ‖使-節(シせツ)ニ|被レ∨下∨召{文ヲ}符ヲ|就キ∨‖違-背(イ―)ノ散-状(サン―)ニ|者。直(チキ)ニ被レ∨下知于‖訴-人ニ|。〔文明四年本〕
問答(モンダフ) ―註(ヂフ)。〔言辞門230七〕
このように、上記当代の古辞書においては、唯一『運歩色葉集』に「問状」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
461闔閤重テ賦ル∨之ヲ執筆書‖_与ル問(トヒ)_状ノ奉書ヲ於訴人|之時及テ‖兩度ニ|无-音ナラハ者仰せテ‖使節ニ|被∨下‖召符ヲ| 召符ハ自‖執筆人|、問状ヲ給‖訴人|。急此問状ヲ論人ニ預、彼論人ヲ召シテ可∨參也。其時論人、若及‖兩度|無音ハ直ニ下‖召符ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右A〕
とあって、標記語「問状」の語を収載し、語注記は未記載にする。
問状ノ奉(ホウ)書ヲ於訴(ソ)人ニ|之時及テ‖兩度ニ|無-音(イン)ナラハ者。仰せテ‖使節(シせツ)ニ|被∨下‖召符(メシフ)ヲ|就テ‖問状ト云事ハ。罪科(サイクハ)ノ人ノ問(トヒ)状ナリ。〔下20ウ六〕
執筆(しゆひつ)問状(とひじやう)の奉書(ほうしよ)を訴人(そにん)於(に)書与(かきあたゆ)るの時(とき)/執筆書‖_与ル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時 執筆ハ書役也。回状の奉書とハ訴人の相手方へ事の様子を問尋ねらるゝ奉書なり。訴人とハ事をうつたへ出たる者なり。〔63ウ六〜八〕
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。▲執筆ハ書役(かきやく)也。〔47ウ三〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。▲執筆ハ書役(かきやく)也。〔85オ一〕
†Monjo<.モンジヤウ(問状) To> fumi.(問ふ文) すなわち,toibumi.(問文) ある訴訟などに関して質問をする書状,書付.§また,裁判官が訴訟当事者に対して,その正当性を自ら弁明することを命ずる書状.〔邦訳420l〕
もん-じゃう〔名〕【問状】問注所、又は、引附方より被告に下して答辯を出さしむる令状。其執權の名を以するを問状御教書と云ひ、頭人、又は、奉行の名を以てするを問状奉書と云ふ。御成敗式目、帶二問状御教書一致二狼藉一事「右就二訴状一被レ下二問状一者定例也、而以問状致二狼藉一事、云云」〔2017-3〕
執筆(―ヒツ) 。〔元亀二年本307九〕〔静嘉堂本359一〕
{執筆}書与問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符下就違背散状者直被下知于訴人〔至徳三年本〕
執筆書與問状奉書於訴人之時及兩度無音仰使節被下召符就違背散状者直被下知于訴人〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
執-筆書‖_与ル問-状ノ奉書ヲ於訴-人|之時及テ‖兩-度ニ|無-音タラハ仰テ‖使-節(シ―)ニ|被レ∨下‖召_符(フ)ヲ|就テハ‖違-背散-状ニ者直ニ被レ∨下‖-知セラ于訴人ニ|。〔山田俊雄藏本〕
執筆書‖与ヘル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時及‖兩度ニ|无音ナラハ者仰テ‖使節ニ|被∨下‖召シ符ヲ|就テ‖違背散状ニ者直ニ可∨被∨下‖-知于訴人|。〔経覺筆本〕
執-筆書(カキ)‖_与(アタユ)ル問(モン)-状ノ奉書ヲ|於テ∨訴-人(ソ―)ニ之時キニ及∨兩-度。有|無-音ニ者。仰テ‖使-節(シせツ)ニ|被レ∨下∨召{文ヲ}符ヲ|就キ∨‖違-背(イ―)ノ散-状(サン―)ニ|者。直(チキ)ニ被レ∨下知于‖訴-人ニ|。〔文明四年本〕
執筆(シユヒツ) ―衆。―人。〔弘・人倫門238八〕
執行(シユキヤウ) ―筆(ヒツ)。―事(シツジ)。〔永・人倫門198四〕
執行(シユキヤウ) ―事代。―事。―筆。〔尭・人倫門188四〕
とあって、弘治二年本は、標記語「執筆」の語を収載し、他二本は標記語「執行」の冠頭字「執」の熟語群として収載する。また、易林本『節用集』には、
執着(シフヂヤク) ―情(ジヤウ)。―寧(ネイ)。―心(シム)。―筆(シユヒツ)。〔言辞門215一〕
このように、上記当代の古辞書に、「執筆」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
461闔閤重テ賦ル∨之ヲ執筆書‖_与ル問(トヒ)_状ノ奉書ヲ於訴人|之時及テ‖兩度ニ|无-音ナラハ者仰せテ‖使節ニ|被∨下‖召符ヲ| 召符ハ自‖執筆人|、問状ヲ給‖訴人|。急此問状ヲ論人ニ預、彼論人ヲ召シテ可∨參也。其時論人、若及‖兩度|無音ハ直ニ下‖召符ヲ|也。〔謙堂文庫蔵四五右A〕
とあって、標記語「執筆」の語を収載し、語注記は未記載にする。
執筆(シユヒツ)書‖_與ル問注所トハ。罪科(サイクハ)人ヲ糾明(キウメイ)スル処ロナリ。〔下20ウ六〕
執筆(しゆひつ)問状(とひじやう)の奉書(ほうしよ)を訴人(そにん)於(に)書与(かきあたゆ)るの時(とき)/執筆書‖_与ル問状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時 執筆ハ書役也。回状の奉書とハ訴人の相手方へ事の様子を問尋ねらるゝ奉書なり。訴人とハ事をうつたへ出たる者なり。〔63ウ六〜八〕
執筆(しゆひつ)問状(もんじやう)の訴人(そにん)於(に)書與(かきあた)ふる之(の)時(とき)兩度(りやうど)に及(およん)て無音(ぶいん)せバ使節(しせつ)に仰(おふ)せて召符(めしふ)を下(くだ)さ被(れ)違背(いはい)散状(さんじやう)に就(つい)て者(ハ)直(ぢき)に訴人(そにん)于(に)下知(げぢ)せら被(れ)召(めし)進(しん)せ令(し)むる之(の)時(とき)者(ハ)訴状(そじやう)を封(ふう)じ下(くだ)さ被(れ)三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を番(つが)ひ御前(こぜん)に於(おいて)對決(たいけつ)を遂(と)げ雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に任(まか)せ奉行人(ぶぎやうにん)事書(ことかき)を取捨(しゆしや)せ令(し)め引付(ひきつけ)に於(おいて)御評定(ごひやうじやう)乃異見(いけん)を窺(うかゞ)ひ成敗(せいばい)せ令(し)むる所(ところ)也(なり)/執筆書キ‖_與フル問_状ノ奉書ヲ於訴人ニ|之時。及テ‖兩度ニ|無-音セハ者。仰セテ‖使節ニ|被∨下サ‖召符ヲハ|就テ‖違背散-状者。直ニ被∨下‖-知セラ于訴人|。令ムル‖召シ-進セ之時者。被∨封シ‖-下サ訴状ヲ|番ヒ‖三問三答ノ訴陳ヲ|。於‖御前ニ|遂ケ‖對决ヲ|任セ‖雌雄是非ニ|。奉行人令∨取‖-捨セ亊書ヲ|於‖引付ニ|窺ヒ‖御評定ノ異見ヲ|。所∨令ムル‖成敗セ|也。▲執筆ハ書役(かきやく)也。〔47ウ三〕
執筆(しゆひつ)書(かき)‖_與(あた)ふる問状(もんじやう)の奉書(ほうしよ)を於訴人(そにん)|之(の)時(とき)及(およん)で‖兩度(りやうど)に|無音(ぶいん)せバ仰(おほ)せて‖使節(しせつ)に|被(れ)∨下(くだ)さ‖召符(めしふ)を|就(つい)て‖違背(ゐはい)散状(さんじやう)に者(ハ)直(ぢき)に被(れ)∨下‖-知(げぢ)せら于訴人(そにん)に|令(しむ)る∨召(めし)‖-進(しん)ぜ之(の)|時(とき)者(ハ)被(れ)∨封(ふう)じ‖-下(くだ)さ訴状(そじやう)を|番(つが)ひ‖三問三答(さんもんさんたふ)の訴陳(そちん)を|於(おい)て‖御前(ごぜん)に|遂(とけ)‖對决(たいけつ)を|任(まか)せ‖雌雄(しゆう)是非(ぜひ)に|奉行人(ぶきやうにん)令(し)め∨取‖-捨(しゆしや)せ亊書(ことかき)を|於(おい)て‖引付(ひきつけ)に|窺(うかゞ)ひ‖御評定(ごひやうじやう)の異見(いけん)を|所(ところ)∨令(しむ)る‖成敗(せいばい)せ|也(なり)。▲執筆ハ書役(かきやく)也。〔85オ一〕
Xuxxi.シユヒツ(執筆) Fude tori.(筆執り) 書記.〔邦訳800l〕
しゅ-ひつ〔名〕【執筆】かきやく。記録方。書記。右筆(いうひつ)。執筆(しゆひつ)。太平記、七、千劔破城軍事「長崎四郎左衞門尉、軍奉行にてありければ、手負、死人の實檢をしけるに、執筆十二人、夜晝、三日が間、筆をも置かず、記せり」〔0998-5〕
賦(クハル) 。配(同) 。〔元亀二年本198八〕〔天正十七年本中42オ五〕
賦(クバル) 。配(同) 。〔静嘉堂本225七〕
就問注所賦闔閤重賦之〔至徳三年本〕
就問注所賦闔閤重賦之〔宝徳三年本〕
就問注所賦闔閤重賦也〔建部傳内本〕
就テ‖問-注-所ノ之賦(クバ)リ闔-閤ノ重-賦ニ|〔山田俊雄藏本〕
就テ‖問注所ノ賦(クバ)リ|闔閤重テ賦∨之〔経覺筆本〕
就テ‖問-注-所(モンヂウ―)ノ賦(クハ)リ|闔-閤(カイカウ)重テ賦ル也〔文明四年本〕
賦 クハル/七宿反/徂公―杼。配 。須 已上同。〔黒川本・辞字門中77ウ八〕
賦 クルル/徂予杼是也。配 。頒 已上同。〔卷第六・辞字門434五〕
賦(クバル/フ)[去] 莊子祖公―∨杼。朝三暮四。〔態藝門551三〕
とあって、標記語「賦」の語を収載し、訓みを「クバル」とし、その語注記は「『莊子』祖公(篇)、賦∨杼。朝三暮四」と記載する。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
分(クバル) ―∨物。○。賦(クハル) 勢。〔弘・言語進退門160七〕
賦(クバル) 。〔両・言語門149一〕
とあって、標記語「賦」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、
配(クバル) 。〔言辞門135六〕
このように、上記当代の古辞書に、「賦」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
460右筆(ウヒツ)ノ奉行人等(ラ)爲メ‖終日ノ御評定|雖∨有ト|窮屈ニ更无‖御休息儀|被∨勘‖判之ヲ|就‖問注所ノ賦(クハリ) | 問住所ノ賦ハ如何樣ノ亊ト云。亊ヲ触申也。〔謙堂文庫蔵四四左H〕
とあって、標記語「賦」の語を収載し、語注記は未記載にする。
問注所(モンヂウ―)ノ賦(クバリ)ニ|闔閤ハ重テ賦レ之。〔下20ウ二〜三〕
問注所(もんぢうしよ)の賦(くば)りに就(つゐ)て闔閤(かい/\)重(かさね)て之(これ)を賦(くは)る/就テ‖問注所ノ賦リニ|闔閤重テ賦ル∨之ヲ 問注所ハ罪科(ざいくわ)を糾明(きうめい)する所なり。問注所よりくはりたる訴状(そじやう)の趣を闔閤より又公事からの諸役人へくはるをいふなり。〔63ウ五〜六〕
頭人(とうにん)上衆(じやうしゆ)闔閤(かいがふ)右筆(いうひつ)奉行人(ぶきやうにん)等(とう)終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の爲(ため)窮屈(きうくつ)有(あ)りと雖(いへども)更(さら)に御休息(ごきうそく)無(な)く之(これ)を勘判(かんばん)せら被(れ)問注所(もんちうしよ)の賦(くばり)に就(つい)て闔閤(かいかふ)重(かさ)ねて之(これ)を賦(くば)る/頭人。上衆。闔閤。右筆。奉行人等爲‖終日御評定ノ|。雖∨有リト|窮屈更無ク‖御休息|。被∨勘せラ‖判之ヲ|就テ‖問注所ノ賦リ|闔閤重ネテ賦ル∨之ヲ▲賦とハ問注所にて事を問究(とひきわ)めたる趣(おもむき)を認(したゝ)めし配賦(はいふ)也。〔47ウ二〕
頭人(とうにん)。上衆(じやうしゆ)。闔閤(かいがふ)。右筆(いうひつ)。奉行人(ぶきやうにん)等(とう)爲(ため)‖終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の|。雖(いへとも)∨有(あ)りと|窮屈(きうくち)更(さら)に無(な)く‖御休息(ごきうそく)|。被(れ)∨勘‖判(かんばん)せら之(これ)を|就(つい)て‖問注所(もんちゆうしよ)の賦(くばり)に|闔閤(かいがふ)重(かさね)と賦(くは)る∨之(これ)を▲賦とハ問注所にて事を問究(とひきハ)めたる趣(おもむき)を認(したゝ)めし配賦(はいふ)也。〔84ウ五〕
Cubari,u.クバリ,ル,ッタ(配り,る,つた) 分配する.§Meuo cubaru.(目を配る)あちこちいろんな方向へ目を向ける.→Bio<do>ni;Ma〜;So>(惣);Zanzato.〔邦訳159l〕
くば・る〔他動、四〕【配・賦】〔分(くま)ると通ず、隠(なば)る、なまる〕(一){分けて、與ふ。銘銘に、割りわたす。配分す。字鏡15「攴、以財施於僧尼也、久波留」宇津保物語、藏開、下21「心にしたがひて、人人にくばりたまふ事なむ侍りし」(二){遍く、行きわたらす。枕草子、十二、百五十五段「目を配りつつ讀みゐたるこそ、罪や得らんと覺ゆれ」「心をくばる」(三){縁づくる。かたづける。令嫁。源氏物語、四十九、東屋3「娘多かり、云云、初(前妻)の腹の二三人は、皆、さまざまにくばりて、おとなびさせたり」(四)それぞれ、適當なる處に置く。配置。「兵を配る」字を配る」〔0541-1〕
休息(キウソク) 。〔元亀二年本脱欠〕〔静嘉堂本326六〕
頭人上衆闔閤右筆奉行人等爲終日之御評定雖有窮崛更無御休息被勘判之〔至徳三年本〕
頭人上衆闔閤右筆奉行人等爲終日御評定雖有窮屈更無御休息被勘判之〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
頭-人上-衆闔-閤(カイガウ)右-筆奉-行-人等爲(シ)テ‖終-日之御評-定ト|雖∨有リト|窮-屈更ニ無ク‖休息ノ|被三勘二-判之ヲ一也〔山田俊雄藏本〕
頭人上衆闔閤(カイカウ)右筆奉行人等爲(シ)テ‖終日(ヒメモス)御評定ヲ|雖モ∨有リト|窮屈(キウクツ)更ニ无‖御休息|被レ勘二-判之ヲ一〔経覺筆本〕
頭-人上-衆闔-閤(カイガウ)右-筆奉-行-人等爲(シ)テ二終-日(ヒメモス)之御評-定ト一雖レ有リト一窮-屈(キウクツ)更ニ無ク二休-息ノ一被レ勘二-判之ヲ一〔文明四年本〕
休息 人事部/キウソク。〔黒川本本・疉字門下51オ二〕
休退(キウタイ) 〃息。〃目。〃徴チヨウ。〃命。〃假。〃幕。〃烈。〃コ。〃顯。〔卷第八・疉字門522六〕
休息(キウソク) 。〔態藝門87一〕
休息(キウソク/ヤスム・イコウ、ヤム・イキ)[平・入] 。〔態藝門831一〕
とあって、標記語「休息」の語を収載し、訓みを「キウソク」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
休息(キウソク) ヤスム義。〔弘・言語進退門221三〕
休息(キウソク) 。〔永・言語門185五〕
休息(キフソク) 。〔尭・言語門174七〕
とあって、標記語「休息」の語を収載し、訓みを「キウソク」「キフソク」とし、その語注記は弘治二年本だけに「やすむ義」と記載する。また、易林本『節用集』には、
休息(キフソク) 。〔言辞門190一〕
このように、上記当代の古辞書に、「休息」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
460右筆(ウヒツ)ノ奉行人等(ラ)爲メ‖終日ノ御評定|雖∨有ト|窮屈ニ更无‖御休息儀|被∨勘‖判之ヲ|就‖問注所ノ賦(クハリ) | 問住所ノ賦ハ如何樣ノ亊ト云。亊ヲ触申也。〔謙堂文庫蔵四四左H〕
とあって、標記語「休息」の語を収載し、語注記は未記載にする。
終日(シウ―)ノ御評定ト|雖(イフ)トモ∨有|窮屈(キウクツ)ニ更(サラ)ニ無‖御休息(キウソク)終日ト云ハ朝ヨリ夕(ユウヘ)マデノ事。〔下20ウ二〜三〕
更(さら)に御休息(こきうそく)無(な)く之(これ)を勘判(かんばん)せ被(らる)/更ニ無‖御休息|被ル∨勘‖判之ヲ| 休息ハやすみいこふと讀。勘判の注ハ前にあり。〔63ウ三〜四〕
頭人(とうにん)上衆(じやうしゆ)闔閤(かいがふ)右筆(いうひつ)奉行人(ぶきやうにん)等(とう)終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の爲(ため)窮屈(きうくつ)有(あ)りと雖(いへども)更(さら)に御休息(ごきうそく)無(な)く之(これ)を勘判(かんばん)せら被(れ)問注所(もんちいうしよ)の賦(くばり)に就(つい)て闔閤(かいかふ)重(かさ)ねて之(これ)を賦(くば)る/頭人。上衆。闔閤。右筆。奉行人等爲‖終日御評定ノ|。雖∨有リト|窮屈更無ク‖御休息|。被∨勘せラ‖判之ヲ|就テ‖問注所ノ賦リ|闔閤重ネテ賦ル∨之ヲ〔47ウ一〕
頭人(とうにん)。上衆(じやうしゆ)。闔閤(かいがふ)。右筆(いうひつ)。奉行人(ぶきやうにん)等(とう)爲(ため)‖終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の|。雖(いへとも)∨有(あ)りと|窮屈(きうくち)更(さら)に無(な)く‖御休息(ごきうそく)|。被(れ)∨勘‖判(かんばん)せら之(これ)を|就(つい)て‖問注所(もんちゆうしよ)の賦(くばり)に|闔閤(かいがふ)重(かさね)と賦(くは)る∨之(これ)を。〔84ウ三〜四〕
Qiu<socu.キウソク(休息) 休むこと.〔邦訳512l〕
きう-そく〔名〕【休息】休(やす)み、息(いこ)ふこと。いきつぎ。休憩。詩經、周南、漢廣篇「南有二喬木一、不レ可二休息一」庭訓徃來、八月「爲二終日御評定一、雖レ有二窮屈一、更無二御休息一」〔0453-1〕
窮屈(キウクツ) 。〔元亀二年本欠脱〕〔静嘉堂本326六〕
頭人上衆闔閤右筆奉行人等爲終日之御評定雖有窮崛更無御休息被勘判之〔至徳三年本〕
頭人上衆闔閤右筆奉行人等爲終日御評定雖有窮屈更無御休息被勘判之〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
頭-人上-衆闔-閤(カイガウ)右-筆奉-行-人等爲(シ)テ‖終-日之御評-定ト|雖∨有リト|窮-屈更ニ無ク‖休息ノ|被三勘二-判之ヲ一也〔山田俊雄藏本〕
頭人上衆闔閤(カイカウ)右筆奉行人等爲(シ)テ‖終日(ヒメモス)御評定ヲ|雖モ∨有リト|窮屈(キウクツ)更ニ无‖御休息|被レ勘二-判之ヲ一〔経覺筆本〕
頭-人上-衆闔-閤(カイガウ)右-筆奉-行-人等爲(シ)テ二終-日(ヒメモス)之御評-定ト一雖レ有リト一窮-屈(キウクツ)更ニ無ク二休-息ノ一被レ勘二-判之ヲ一〔文明四年本〕
窮屈 貧賤分/キウクツ/キウクヰツ。〔黒川本・疉字門下51オ四〕
窮屈(キウクヰツ) 〃老。〃國。〃者。〃塵。〃貧。〃民。〃通。〃溟メイ。〃賤。〃用。〃困コン。〔卷第八・疉字門522三〕
窮屈(キウクツ) 。〔態藝門160一〕
窮屈(キユウクツ/キワマル、クヾム)[平・入] 。〔態藝門826七〕
とあって、標記語「窮屈」の語を収載し、訓みを「キユウクツ」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
窮屈(キウクツ) 。〔弘・言語進退門221四〕
窮屈(キウクツ) ―困(コン)。〔永・言語門184八〕
窮屈(キウクツ) ―困。〔尭・言語門174三〕
とあって、標記語「窮屈」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、
窮屈(キウクツ) ―困(コン)。〔言辞門190二〕
このように、上記当代の古辞書に、「窮屈」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
460右筆(ウヒツ)ノ奉行人等(ラ)爲メ‖終日ノ御評定|雖∨有ト|窮屈ニ更无‖御休息儀|被∨勘‖判之ヲ|就‖問注所ノ賦(クハリ) | 問住所ノ賦ハ如何樣ノ亊ト云。亊ヲ触申也。〔謙堂文庫蔵四四左H〕
とあって、標記語「窮屈」の語を収載し、語注記は未記載にする。
終日(シウ―)ノ御評定ト|雖(イフ)トモ∨有|窮屈(キウクツ)ニ更(サラ)ニ無‖御休息(キウソク)終日ト云ハ朝ヨリ夕(ユウヘ)マデノ事。〔下20ウ二〜三〕
窮屈(きうくつ)有(あり)と雖(いへとも)/雖∨有ト‖窮屈| 窮屈ハ事に倦(うミ)厭たる事なり。〔63ウ二〜三〕
頭人(とうにん)上衆(じやうしゆ)闔閤(かいがふ)右筆(いうひつ)奉行人(ぶきやうにん)等(とう)終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の爲(ため)窮屈(きうくつ)有(あ)りと雖(いへども)更(さら)に御休息(ごきうそく)無(な)く之(これ)を勘判(かんばん)せら被(れ)問注所(もんちいうしよ)の賦(くばり)に就(つい)て闔閤(かいかふ)重(かさ)ねて之(これ)を賦(くば)る/頭人。上衆。闔閤。右筆。奉行人等爲‖終日御評定ノ|。雖∨有リト|窮屈更無ク‖御休息|。被∨勘せラ‖判之ヲ|就テ‖問注所ノ賦リ |闔閤重ネテ賦ル∨之ヲ▲窮屈ハ氣(き)つまりなる躰(てい)。〔47ウ一〕
頭人(とうにん)。上衆(じやうしゆ)。闔閤(かいがふ)。右筆(いうひつ)。奉行人(ぶきやうにん)等(とう)爲(ため)‖終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の|。雖(いへとも)∨有(あ)りと|窮屈(きうくち)更(さら)に無(な)く‖御休息(ごきうそく)|。被(れ)∨勘‖判(かんばん)せら之(これ)を|就(つい)て‖問注所(もんちゆうしよ)の賦(くばり)に|闔閤(かいがふ)重(かさね)と賦(くは)る∨之(これ)を▲窮屈ハ氣(き)つまりなる躰(てい)。〔84ウ四〜五〕
Qiu<cut.キュゥクッ(窮屈) すなわち,Qino tcumaru coto.l,taicut.(気の詰まること.または,退屈) 倦怠を覚えること,または,気がつまること.§Qiu<cutuo noburu.(窮屈を伸ぶる)心を晴らす,あるいは,気散じをする.〔邦訳511l〕
きゅう-くつ〔名〕【窮屈】身心の、思ひのままに動き得ぬこと。身の、安樂ならぬこと。字類抄「窮屈、キウクツ」太平記、五、大塔宮熊野落事「終夜の禮拝に、御窮屈ありければ、御肱を曲けて枕として、暫く御まどろみありける」〔0497-5〕
終日(ヒネモソ) 。〔元亀二年本341三〕 終日(せウヂツ/シウ―) 。〔元亀二年本311五〕
終日(ヒネモス) 。〔静嘉堂本408八〕 終日(シウジツ) 。〔静嘉堂本364四〕
頭人上衆闔閤右筆奉行人等爲終日之御評定雖有窮崛更無御休息被勘判之〔至徳三年本〕
頭人上衆闔閤右筆奉行人等爲終日御評定雖有窮屈更無御休息被勘判之〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
頭-人上-衆闔-閤(カイガウ)右-筆奉-行-人等爲(シ)テ‖終-日之御評-定ト|雖∨有リト|窮-屈更ニ無ク‖休息ノ|被三勘二-判之ヲ一也〔山田俊雄藏本〕
頭人上衆闔閤(カイカウ)右筆奉行人等爲(シ)テ‖終日(ヒメモス)御評定ヲ|雖モ∨有リト|窮屈(キウクツ)更ニ无‖御休息|被レ勘二-判之ヲ一〔経覺筆本〕
頭-人上-衆闔-閤(カイガウ)右-筆奉-行-人等爲(シ)テ二終-日(ヒメモス)之御評-定ト一雖レ有リト一窮-屈(キウクツ)更ニ無ク二休-息ノ一被レ勘二-判之ヲ一〔文明四年本〕
終日(ヒネモス) シウシツ。〔黒川本・疉字門下76ウ七〕
終始 〃頭。〃夜。〃日。〃曽。〃古。〔卷第九・疉字門195二〕
終日(ヒネモス/シウシツ・ヲワル、ヒ)[平・入] 又竟日。盡日。〔態藝門1048六〕
とあって、標記語「終日」の語を収載し、訓みを「ひねもす・シウシツ」とし、その語注記は「また、竟日・盡日」と記載する。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
終日(ヒネモス/シウジツ) 。盡日(同/ジン―)。〔弘・時節門251一〕
終日(ヒメモス) 。盡日(同)。〔永・時節門214七〕
終日(/ヒメモス) 。〔尭・天地門79三〕 終日(ヒメモス) 尽日(同)。〔尭・言語門200一〕
とあって、標記語「終日」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、
盡日(ヒネモス) 。終日(同/シウジツ) 。〔時候門221七〕
このように、上記当代の古辞書に、「終日」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。訓みは、「シュウジツ」「ひね{め}もす」といった音訓両用が考えられる。
460右筆(ウヒツ)ノ奉行人等(ラ)爲メ‖終日ノ御評定|雖∨有ト|窮屈ニ更无‖御休息儀|被∨勘‖判之ヲ|就‖問注所ノ賦(クハリ) | 問住所ノ賦ハ如何樣ノ亊ト云。亊ヲ触申也。〔謙堂文庫蔵四四左H〕
とあって、標記語「終日」の語を収載し、語注記は未記載にする。
終日(シウ―)ノ御評定ト|雖(イフ)トモ∨有|窮屈(キウクツ)ニ更(サラ)ニ無‖御休息(キウソク)終日ト云ハ朝ヨリ夕(ユウヘ)マデノ事。〔下20ウ二〜三〕
終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の爲(ため)/爲‖終日ノ御評定ト| 朝より暮迄を終日と云。評定とハ事のよしあしを論して定るを云。〔63ウ一〜二〕
頭人(とうにん)上衆(じやうしゆ)闔閤(かいがふ)右筆(いうひつ)奉行人(ぶきやうにん)等(とう)終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の爲(ため)窮屈(きうくつ)有(あ)りと雖(いへども)更(さら)に御休息(ごきうそく)無(な)く之(これ)を勘判(かんばん)せら被(れ)問注所(もんちいうしよ)の賦(くばり)に就(つい)て闔閤(かいかふ)重(かさ)ねて之(これ)を賦(くば)る/頭人。上衆。闔閤。右筆。奉行人等爲‖終日御評定ノ|。雖∨有リト|窮屈更無ク‖御休息|。被∨勘せラ‖判之ヲ|就テ‖問注所ノ賦リ |闔閤重ネテ賦ル∨之ヲ▲終日ハ朝(あさ)より晩(ばん)までといふこと。〔47ウ一〕
頭人(とうにん)。上衆(じやうしゆ)。闔閤(かいがふ)。右筆(いうひつ)。奉行人(ぶきやうにん)等(とう)爲(ため)‖終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の|。雖(いへとも)∨有(あ)りと|窮屈(きうくち)更(さら)に無(な)く‖御休息(ごきうそく)|。被(れ)∨勘‖判(かんばん)せら之(これ)を|就(つい)て‖問注所(もんちゆうしよ)の賦(くばり)に|闔閤(かいがふ)重(かさね)と賦(くは)る∨之(これ)を▲終日ハ朝(あさ)より晩(ばん)までといふこと。〔84ウ三〜四〕
Fimemosu.ヒメモス(終日) 終日.→次条;〔邦訳232r〕
Fimemusu.ヒメムス(終日) 終日.例,Sono tcuguino fi fimemusu yomosugara taiv furi,&c.(その次の日ひめむす夜もすがら大雨降り,云云)Tai.(太平記)卷二十八.一日中,そして一晩中ひどい大雨が降って,云々. ※卷二十七の誤りであろう.太平記,二十七,田樂事付長講見物事.なお,神田本・玄玖本・西源院本も卷二十七の中に見える.→前条;Xu<jit(終日).〔邦訳232r〕
Xu<jit.シュゥジッ(終日) Fimemosu.l,fimemusu.(ひめもす.または,ひめむす)すなわち,朝から晩まで一日中.〔邦訳801l〕
ひね-もす〔名〕【終日・盡日】〔晝(ひ)の經亦盡(へもすがら)にの約略と云ふ、ひめもすとも云ふ、夜もすがらに對す〕朝より夕まで。日一日(ひひとひ)。シュウジツ。又、ひめもす。名義抄「盡日、ヒネモス、ヒメモス、終日、ヒメモス」萬葉集、九22長歌「終日に、鳴けど聞きよし、幣(古義に、舊本弊に誤る)はせむ、とほくなゆきそ、吾宿の、花橘に、住みわたりなけ」同、十八7「をふのさき、こきたもとほり、比禰毛須に、見とも厭くべき、浦にあらなくに」伊勢物語、八十四段「斯る程に、雪こぼすが如く降りて、ひねもすにやまず」土左日記、二月四日「然れども、ひねもすに浪風たたず」大和物語、上「別るべき、こともあるものを、ひねもすに、待つとてさへも、歎きつるかな」續後記、十九、嘉祥二年三月、長歌「茜刺須、終日須加良爾、烏玉乃、狭夜通左右、時日經天」夫木抄、二、?「ひめもすに、己が鳴き織る、聲の文は、けに百色(尋イ)に、成りもしぬらむ」〔1686-4〕
しゅう-じつ〔名〕【終日】朝より夕まで。ひねもす。イチニチ。老子、廿三章「驟雨不レ終レ朝、雨不レ終レ日」論語、衞靈公篇「子曰、吾嘗、終日不レ食、終夜不レ寢、以思、無u、不レ如レ學也」書經、多方篇「大淫昏、不レ克三終日勸二于帝之迪一」〔0986-3〕
開闔(―カウ) 。〔元亀二年本94八〕〔静嘉堂本117六〕〔天正十七年本上58オ一〕〔西來寺本〕
頭人上衆闔閤右筆奉行人等爲終日之御評定雖有窮崛更無御休息被勘判之〔至徳三年本〕
頭人上衆闔閤右筆奉行人等爲終日御評定雖有窮屈更無御休息被勘判之〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
頭-人上-衆闔-閤(カイガウ)右-筆奉-行-人等爲(シ)テ‖終-日之御評-定ト|雖∨有リト|窮-屈更ニ無ク‖休息ノ|被三勘二-判之ヲ一也〔山田俊雄藏本〕
頭人上衆闔閤(カイカウ)右筆奉行人等爲(シ)テ‖終日(ヒメモス)御評定ヲ|雖モ∨有リト|窮屈(キウクツ)更ニ无‖御休息|被レ勘二-判之ヲ一〔経覺筆本〕
頭-人上-衆闔-閤(カイガウ)右-筆奉-行-人等爲(シ)テ二終-日(ヒメモス)之御評-定ト一雖レ有リト一窮-屈(キウクツ)更ニ無ク二休-息ノ一被レ勘二-判之ヲ一〔文明四年本〕
開闔 カイカフ/戸閇開也/闔字閇也。〔黒川本・疉字門上90オ二〕
開闔 〃墾メウ。〃檢。〃闢。〃閇。〃門。〃負。〃眼。〃敷。〃落。〃悟。〃化。〃發。〔卷第三・疉字門269二〕
闔閤(カイカフ/トビラ、ネヤ)[入・入] 奉行人職。〔人倫門260七〕
開闔(カイカフ/ヒラク、―)[平・入] 。〔官位門263四〕
開闔(カイカツ/ヒラク、トヂル)[平・入] 。〔態藝門272三〕
とあって、門をそれぞれ別にして標記語「闔閤」と「開闔」の両語を収載し、訓みも「カイカフ」と「カイカツ」とし、その語注記は、人倫門に「奉行人職」と記載する。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
闔閤(カイカウ) 奉行人職。〔弘・人倫門77四〕〔永・人倫門77一〕〔両・人倫門83二〕
闔閤(カイカフ) 奉行人職。〔尭・人倫門69七〕
とあって、標記語「闔閤」として収載し、語注記は広本『節用集』と同様に「奉行人職」と記載する。また、易林本『節用集』には、
闔閤(カイカフ) 奉行人職。〔人倫門71四〕
このように、上記当代の古辞書には、「闔閤」の語が人倫門に収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。ただし、この標記語は、下記に示す近現代の国語辞書においては、見出し語漢字表記として用いられていない。すべて、「開闔」の表記のみである。
459譜代相傳ノ重書等者ハ於‖引付ノ方ニ|可∨被∨逢(アハサ)‖御沙汰ニ|頭-人上-衆闔閤(カツ―/カイカウ) 闔ハ合也。尽也。闔閤ハ松田ノ丹後ノ守仕也。是ハ當代ハ細川殿ノ被官也。人ヲ搦捕諸沙汰人也。〔謙堂文庫蔵四四左F〕
※―獄屋奉行也。/―(闔)トハ沙汰ノ時ノ亊ヲ云イ始ル人也。獄屋奉行也。又沙汰処ニハ十三仏ヲ掛也。十三人ノ奉行ヲ表也。〔静嘉堂文庫蔵『庭訓徃來抄』古冩書込み〕△明行道ノ沙汰ノ時十三仏ヲ掛也。十三人ノ評定人也。是心也。將軍ハ即閻魔王也。問注――トハ如何様之御沙汰有ト云テ觸フルヲ又引付ヨリ重テ賦∨――。〔同頭注書込み〕
とあって、標記語「闔閤」の語を収載し、語注記は、「闔は、合なり。尽なり。闔閤は、松田の丹後の守仕るなり。是れは當代は、細川殿の被官なり。人を搦め捕る諸の沙汰人なり」と記載する。
闔閤(カイカフ)ハ。沙汰ヲスル処ナリ。諸評定人。カイカフノ宿処ヘ集(アツ)マリ給(タマヒ)テ。評定有ナリ。又奉書(ホウシヨ)御教書(ミゲウシヨ)ヲ賦(クハ)ルモ。カイカフノ処ヨリ配ルナリ。〔下20ウ二〜三〕
頭人(とうにん)上衆(じやうしゆ)闔閤(かい/\)右筆(ゆうひつ)奉行人(ぶぎやうにん)等(とう)/頭-人上-衆闔閤右筆奉行人等 皆役人也。〔63オ八〜ウ一〕
頭人(とうにん)上衆(じやうしゆ)闔閤(かいがふ)右筆(いうひつ)奉行人(ぶきやうにん)等(とう)終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の爲(ため)窮屈(きうくつ)有(あ)りと雖(いへども)更(さら)に御休息(ごきうそく)無(な)く之(これ)を勘判(かんばん)せら被(れ)問注所(もんちいうしよ)の賦(くばり)に就(つい)て闔閤(かいかふ)重(かさ)ねて之(これ)を賦(くば)る/頭人。上衆。闔閤。右筆。奉行人等爲‖終日御評定ノ|。雖∨有リト|窮屈更無ク‖御休息|。被∨勘せラ‖判之ヲ|就テ‖問注所ノ賦リ |闔閤重ネテ賦ル∨之ヲ▲闔閤ハ奉行(ぶぎやう)の下役(したやく)也。科人(とがにん)を搦捕(からめとり)などする者。〔47ウ一〕
頭人(とうにん)。上衆(じやうしゆ)。闔閤(かいがふ)。右筆(いうひつ)。奉行人(ぶきやうにん)等(とう)爲(ため)‖終日(ひねもす)御評定(ごひやうちやう)の|。雖(いへとも)∨有(あ)りと|窮屈(きうくち)更(さら)に無(な)く‖御休息(ごきうそく)|。被(れ)∨勘‖判(かんばん)せら之(これ)を|就(つい)て‖問注所(もんちゆうしよ)の賦(くばり)に|闔閤(かいがふ)重(かさね)と賦(くは)る∨之(これ)を▲闔閤ハ奉行(ぶぎやう)の下役(したやく)也。科人(とがにん)を搦捕(からめとり)などする者。〔84ウ三〜四〕
Caico<.カイカゥ(闔閤) Firaqi,u.(開き,く) 獄卒,または,刑を執行する人.※この訓注は穏当でない.“ヒラク,トヅ”とあるべきもの.〔邦訳80r〕
かい-かふ〔名〕【開闔】〔職原抄標註に、開闔は、善を開き、惡を闔(と)づる義にて、判斷の人なりと見ゆ〕記録所、和歌所、御書所等に置かれたる職名、次官(すけ)の如し。職原抄、下「記録所、上卿、辨、開闔、寄人」薩戒記、永享五年八月廿五日「和歌所開闔事、被レ仰二尭孝僧都一」中右記、寛治元年十二月廿六日甲辰「今日被始御書所、別當、云云、開闔孝言、衆三人」〔0333-1〕
重書(ヂウシヨ) 。〔元亀二年本65四〕
重書(チウシヨ) 。〔静嘉堂本76四〕〔天正十七年本上38ウ1〕
{譜代相傳之重書等者於引付方可被}逢御沙汰〔至徳三年本〕
譜代相傳之重書等者於引付方可被逢御沙汰〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
譜代-相-傳ノ之重-書等ハ者。於テ‖引_付_方ニ|。可キ∨被∨逢せ‖御沙-汰ニ|也〔山田俊雄藏本〕
譜-代相傳ノ之重書等者。於テ‖引付方ニ|。可∨被∨逢‖御沙汰ニ|〔経覺筆本〕
譜代相傳之重書等者。於テ∨引付方|。可∨被∨逢(アハ)せ‖御沙汰ニ|〔文明四年本〕逢(アワせ)。
重書(ヂウジヨ) ―代(ダイ)/箱(ハコ)。〔永・言語門52二〕
重書(ヂウシヨ) ―代/―箱。〔尭・言語門56三〕
重書(ヂウシヨ) ―代/―箱。〔両・言語門56三〕
とあって、標記語「重書」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、
重書(―シヨ) 。〔言辞門53一〕
このように、上記当代の古辞書に、「重書」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
459譜代相傳ノ重書等者ハ於‖引付ノ方ニ|可∨被∨逢(アハサ)‖御沙汰ニ|頭-人上-衆闔閤(カツ―/カイカウ) 闔ハ合也。尽也。闔閤ハ松田ノ丹後ノ守仕也。是ハ當代ハ細川殿ノ被官也。人ヲ搦捕諸沙汰人也。〔謙堂文庫蔵四四左F〕
とあって、標記語「重書」の語を収載し、語注記は未記載にする。
譜代(フダイ)相傳(ソウテン)ノ之重書(ヂウ―)等者於テ‖引付ノ方ニ|可シ∨被∨逢(アハせ)‖御沙汰ニ|譜代相傳ノ重書ハ家々ノ傳(ツタ)ハレル氏文ナリ。〔下20オ八〜ウ二〕
譜代(ふだい)相傳(そうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)/譜代相傳之重書等者 譜代ハ代々。相傳ハ傳来といへるかことし。〔63オ五〜六〕
活持(くハつち)之(の)計畧(けいりやく)を用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し。先(まづ)擧状(きよじやう)を代官(たいくハん)於(に)進(しん)ぜら被(れ)者(バ)公所(くしよ)の出仕(しゆつし)諸亭(しよてい)の經廻圖師(けいくわいづし)を申(まふ)す可(べ)き也。奉行人(ぶきやうにん)の賄賂(わいろ)衆中(しゆちう)の屬託(そくたく)上衆(しやうしゆ)乃秘計(ひけい)口入(くちいり)頭人(とうにん)内奏(ないそう)贔屓(ひいき)機嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申(まふ)す可(へ)し。讓状(ゆつりしやう)乃謀實(はうしつ)越境(ゑつきやう)の相論(さうろん)未(いまだ)甲乙(かふをつ)の次第(しだい)を分(わか)た未(さる)譜代(ふたい)相傳(さうでん)之(の)重書(ちうしよ)等(とう)者(ハ)引付方(ひきつけかた)に於(おいて)御沙汰(ごさた)に逢(あ)は被(る)可(べ)し/可シ∨被∨用‖意セラ活持之計略ヲ|。先被∨進セラ‖挙状代官ニ|者。公-所出-仕。諸亭之經廻。可キ∨申ス‖圖師(―)ヲ|也。奉行人ノ賄-賂。衆中ノ属託。上-衆ノ秘-計。口入頭人。内奏。屓贔。窺ヒ‖機嫌ヲ|可シ∨申ス∨之ヲ。讓状ノ謀實。越-境ノ相-論。未タ/ズ∨分タ‖甲乙ノ次第ヲ|。譜代相傳之重書等者。於‖引付方ニ|。可シ∨被∨逢ハ‖御沙汰ニ|。▲重書ハ重代(ちうたい)の書物(かきもの)なり。〔46ウ八〕
可(べし)∨被(る)∨用‖意(ようい)せら活持(くわつぢ)之(の)計略(けいりやく)を|。先(まづ)被(れ)∨進(しん)ぜられ‖擧状(きよじやう)於(を)代官(たいくわん)に|者(バ)。公-所(くしよ)の出-仕(しゆつし)。諸亭(しよてい)之(の)經廻(けいくわい)。可(べ)き∨申(まう)す‖図師(づし)を|也(なり)。奉行人(ぶぎやうにん)の賄-賂(わいろ)。衆中(しゆちゆう)の属託(ぞくたく)。上-衆(じやうしゆ)の秘-計(ひけい)。口入(くちいれ)頭人(とうにん)。内奏(ないさう)。屓贔(ひいき)。窺(うかが)ひ‖機嫌(きげん)を|可(べ)し∨申(まう)す∨之(これ)を。讓状(ゆづりじやう)謀實(ばうじつ)。越-境(ゑつきやう)の相-論(さうろん)。未(いまだ/ず)∨分(わか)た‖甲乙(かふをつ)の次第(したい)を|。譜代(ふだい)相傳(さうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)。於(おい)て‖引付方(ひきつけかた)に|。可(べ)し∨被(る)∨逢(あ)ハ‖御沙汰(ごさた)に|▲重書ハ重代(ちうたい)の書物(かきもの)なり。〔83ウ三〜四〕
Giu<xo.ヂウシヨ(重書) すなわち,Iyeni tcutauaru xo.(家に伝わる書)ある一族に代々伝わって来た,その家系やや領地などに関する書物.〔邦訳320r〕
次第(シダイ) 。〔元亀二年本307十〕
次第(シタイ) 。〔静嘉堂本359二〕
讓状謀実越境相論未分甲子〔至徳三年本〕
讓状謀實越境相論未分甲子次第〔宝徳三年本〕
讓状謀実越境相論未分甲子之次第〔建部傳内本〕
讓_状(ユツリ―)ノ謀実越ル∨境ヲ相-論未-分(ミ―)甲-乙ノ次-第〔山田俊雄藏本〕
讓状謀実越境相論未∨分‖甲乙之次第(―タイ)ヲ|〔経覺筆本〕
讓_状(ユツリ―)ノ謀-實(ホウシツ)越-境(ヲツキヤウ/コシ)相-論未-分(ミフン)甲-子(カツシ)ノ次-第〔文明四年本〕
次第 亦秩分/シタイ。〔黒川本・疉字門下78ウ四〕
次第 。〔卷第九・疉字門223六〕
次第(シダイ/ツギ、テイ)[去・去] 。〔態藝門494一〕
とあって、標記語「次第」の語を収載し、訓みを「シダイ」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
次第(シダイ)。〔弘・言語進退門249七〕
とあって、標記語「次第」の語を弘治二年本だけが収載する。また、易林本『節用集』には、
次第(シダイ) 〔言辞門217二〕
このように、上記当代の古辞書に、「次第」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
458屓贔窺‖機嫌ヲ|可∨申∨之状謀實越-境違-乱未-分甲子(カウシ)ノ次第 甲子ハ賣‖-買所帶等|之時、差‖年記|云也。私ニ曰、庶子惣領云也。〔謙堂文庫蔵四四左D〕
※贔屓(ヒイキ)窺(ウカヽイ)‖機嫌(―ケン)ヲ|可∨申∨之讓状(ユツリ―)謀實(ボウジツ)越境違乱(イ―)―相論イ未∨分タ‖甲子(カツ―)ノ次第ヲ|甲子トハ賣‖-買所帶等|之時ノ、差‖季記ヲ|云也。私_云、庶子惣領ヲ云也。〔天理図書館蔵『庭訓徃來註』〕
とあって、標記語「次第」の語を収載し、語注記は未記載にする。
甲乙(コウヲツ)ノ次第(シダイ)ヲ|トハ。嫡子(チヤクシ)ノ子(コ)ナリ。法意ノ如クナラバ。假令(ケリヤウ)布七十五端(タン)ヲ分ルニ嫡母(チヤクホ)ハ。二十端(タン)。継母(ケイ―)モ廿端。嫡子モ廿端。庶子(ソシ)ハ十端。女子ハ五端ナリ。是本女楚(ソ)ノ女房ノアツシ時親ノ分ブン加様ニ定メヲカルヽカ。嫡母ハ離別ノ後ハ。継母ナリ。又楚母ヲ楊(ヤウ)ト云事。玄宗皇帝ノ后(キサ)キ多ク御座(ゴザ)せ共一ノ后ヲバ虞氏(グシ)君ハ。第一ノ本(ホン)后ノ宮(ミヤ)ナリ。二ハソヘテナサルヽニヨリテ。楊ト云字ヲ置テ楊貴妃也。又楊ノ字ヲ事氏(ウジ)トモ聞ヘタリ。昔(ムカシ)ハ上高キ女ハ。名ノ上ニ氏(ウヂ)ヲ云イソユル事是和朝ニモ先蹤(せンジユ)ヲ多シ。楊貴妃ハ氏ノ説一定タランカ。但シ二ヲ楊ノ字付タル物ノ本モ可レ有レ之少智ニテハ慥(タシカ)ニ不被知事ナリ。内外典(ナイゲテン)トモニ事モ廣博(クワウバク)ノ義ナレバ一樣ニハ。難シレ定(サタメ)佛説サヘ三國共ニ摺(スリ)本ナントニモ。誤リ來ル事惟(コレ)多シト先コ先儒者(ジユシヤ)書ヲキ給ヒシ物ノ本アリ。〔下20オ三〜八〕
未(いま)だ甲乙(かうおつ)の次第(したい)を分(わか)た未(ず)/未タ/ス∨分‖甲乙ノ次第ヲ| 凡物の一を甲と云。次を乙と云、甲乙乃次第をわかたずとハ黒白(こくびやく)是非(ぜひ)乃わたりかねたるをいふなり。〔63オ四〜五〕
活持(くハつち)之(の)計畧(けいりやく)を用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し。先(まづ)擧状(きよじやう)を代官(たいくハん)於(に)進(しん)ぜら被(れ)者(バ)公所(くしよ)の出仕(しゆつし)諸亭(しよてい)の經廻圖師(けいくわいづし)を申(まふ)す可(べ)き也。奉行人(ぶきやうにん)の賄賂(わいろ)衆中(しゆちう)の屬託(そくたく)上衆(しやうしゆ)乃秘計(ひけい)口入(くちいり)頭人(とうにん)内奏(ないそう)贔屓(ひいき)機嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申(まふ)す可(へ)し。讓状(ゆつりしやう)乃謀實(はうしつ)越境(ゑつきやう)の相論(さうろん)未(いまだ)甲乙(かふをつ)の次第(しだい)を分(わか)た未(さる)譜代(ふたい)相傳(さうでん)之(の)重書(ちうしよ)等(とう)者(ハ)引付方(ひきつけかた)に於(おいて)御沙汰(ごさた)に逢(あ)は被(る)可(べ)し/可シ∨被∨用‖意セラ活持之計略ヲ|。先被∨進セラ‖挙状代官ニ|者。公-所出-仕。諸亭之經廻。可キ∨申ス‖圖師(―)ヲ|也。奉行人ノ賄-賂。衆中ノ属託。上-衆ノ秘-計。口入頭人。内奏。屓贔。窺ヒ‖機嫌ヲ|可シ∨申ス∨之ヲ。讓状ノ謀實。越-境ノ相-論。未タ/ズ∨分タ‖甲乙ノ次第ヲ|。譜代相傳之重書等者。於‖引付方ニ|。可シ∨被∨逢ハ‖御沙汰ニ|。甲乙ノ次第ハ理非(りひ)の有無(うむ)也。〔46ウ七〕
可(べし)∨被(る)∨用‖意(ようい)せら活持(くわつぢ)之(の)計略(けいりやく)を|。先(まづ)被(れ)∨進(しん)ぜられ‖擧状(きよじやう)於(を)代官(たいくわん)に|者(バ)。公-所(くしよ)の出-仕(しゆつし)。諸亭(しよてい)之(の)經廻(けいくわい)。可(べ)き∨申(まう)す‖図師(づし)を|也(なり)。奉行人(ぶぎやうにん)の賄-賂(わいろ)。衆中(しゆちゆう)の属託(ぞくたく)。上-衆(じやうしゆ)の秘-計(ひけい)。口入(くちいれ)頭人(とうにん)。内奏(ないさう)。屓贔(ひいき)。窺(うかが)ひ‖機嫌(きげん)を|可(べ)し∨申(まう)す∨之(これ)を。讓状(ゆづりじやう)謀實(ばうじつ)。越-境(ゑつきやう)の相-論(さうろん)。未(いまだ/ず)∨分(わか)た‖甲乙(かふをつ)の次第(したい)を|。譜代(ふだい)相傳(さうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)。於(おい)て‖引付方(ひきつけかた)に|。可(べ)し∨被(る)∨逢(あ)ハ‖御沙汰(ごさた)に|甲乙ノ次第ハ理非(りひ)の有無(うむ)也。〔83ウ三〕
Xidai.シダイ(次第) 順序,また,調和,あるいは,規律.§また,副詞.…のとおりに,…に従って,…によって.例,Sonata xidai.(そなた次第)あなたの望みどおりに.§Deqixidai.(出来次第)出来上り次第.§Nozomixidai.(望み次第)あなたの望みに従って.→Fitofo>dai;Guioi(御意).〔邦訳762r〕
し-だい〔名〕【次第】(一){ついで。前後のならび。順(ジユン)。後漢書、第五倫傳「以二次第一爲レ氏」枕草子、十、百三十三段、うれしきもの「出でさせ給ひし夜、車の次第もなく、まづまづと、乘り騒ぐが、憎ければ」「次第を正す」次第に從ふ」(二)てつづき。なりきたり。來由。保元物語、一、新院御謀叛事「過たぬ次第を、辨へ申せば「此の次第に因りて」如何なる次第にて」〔0897-1〕
甲乙(―ヲツ) 。〔元亀二年本95二〕
甲乙(カウヲツ) 。〔静嘉堂本118四〕〔天正十七年本上58オ六〕〔西來寺本〕
讓状謀実越境相論未分甲子〔至徳三年本〕
讓状謀實越境相論未分甲子次第〔宝徳三年本〕
讓状謀実越境相論未分甲子之次第〔建部傳内本〕
讓_状(ユツリ―)ノ謀実越ル∨境ヲ相-論未-分(ミ―)甲-乙ノ次-第〔山田俊雄藏本〕
讓状謀実越境相論未∨分‖甲乙之次第(―タイ)ヲ|〔経覺筆本〕
讓_状(ユツリ―)ノ謀-實(ホウシツ)越-境(ヲツキヤウ/コシ)相-論未-分(ミフン)甲-子(カツシ)ノ次-第〔文明四年本〕
甲乙 同/カウ{フ}ヲツ/又帳名。〔黒川本・疉字門上90オ二〕
甲乙 〃弟。〃子。〃兵。〃冑。〃科。〃帳。〃宅。甲斐無。〔黒川本・疉字門上90オ二〕
このように、上記当代の古辞書にあって「甲子」の語は、十巻本『伊呂波字類抄』に収載されているだけである。そして、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
458屓贔窺‖機嫌ヲ|可∨申∨之状謀實越-境違-乱未-分甲子(カウシ)ノ次第 甲子ハ賣‖-買所帶等|之時、差‖年記|云也。私ニ曰、庶子惣領云也。〔謙堂文庫蔵四四左D〕
※贔屓(ヒイキ)窺(ウカヽイ)‖機嫌(―ケン)ヲ|可∨申∨之讓状(ユツリ―)謀實(ボウジツ)越境違乱(イ―)―相論イ未∨分タ‖甲子(カツ―)ノ次第ヲ|甲子トハ賣‖-買所帶等|之時ノ、差‖季記ヲ|云也。私_云、庶子惣領ヲ云也。〔天理図書館蔵『庭訓徃來註』〕
※―地ヲ賣ニ廿年計ガ用廿年過レハ不用也。甲子惣領也。―二説ニ見也。證文アレトモ何―何時云フヲ不ル∨答也。〔静嘉堂文庫蔵『庭訓徃來抄』古冩書込み〕
とあって、標記語「甲子」の語を収載し、語注記は、「甲子は、所帶等の賣買の時、年記を差して云ふなり。私に曰く、庶子惣領云ふなり」と記載する。
甲乙(コウヲツ)ノ次第(シダイ)ヲ|トハ。嫡子(チヤクシ)ノ子(コ)ナリ。法意ノ如クナラバ。假令(ケリヤウ)布七十五端(タン)ヲ分ルニ嫡母(チヤクホ)ハ。二十端(タン)。継母(ケイ―)モ廿端。嫡子モ廿端。庶子(ソシ)ハ十端。女子ハ五端ナリ。是本女楚(ソ)ノ女房ノアツシ時親ノ分ブン加様ニ定メヲカルヽカ。嫡母ハ離別ノ後ハ。継母ナリ。又楚母ヲ楊(ヤウ)ト云事。玄宗皇帝ノ后(キサ)キ多ク御座(ゴザ)せ共一ノ后ヲバ虞氏(グシ)君ハ。第一ノ本(ホン)后ノ宮(ミヤ)ナリ。二ハソヘテナサルヽニヨリテ。楊ト云字ヲ置テ楊貴妃也。又楊ノ字ヲ事氏(ウジ)トモ聞ヘタリ。昔(ムカシ)ハ上高キ女ハ。名ノ上ニ氏(ウヂ)ヲ云イソユル事是和朝ニモ先蹤(せンジユ)ヲ多シ。楊貴妃ハ氏ノ説一定タランカ。但シ二ヲ楊ノ字付タル物ノ本モ可レ有レ之少智ニテハ慥(タシカ)ニ不被知事ナリ。内外典(ナイゲテン)トモニ事モ廣博(クワウバク)ノ義ナレバ一樣ニハ。難シレ定(サタメ)佛説サヘ三國共ニ摺(スリ)本ナントニモ。誤リ來ル事惟(コレ)多シト先コ先儒者(ジユシヤ)書ヲキ給ヒシ物ノ本アリ。〔下20オ三〜八〕
未(いま)だ甲乙(かうおつ)の次第(したい)を分(わか)た未(ず)/未タ/ス∨分‖甲乙ノ次第ヲ| 凡物の一を甲と云。次を乙と云、甲乙乃次第をわかたずとハ黒白(こくびやく)是非(ぜひ)乃わたりかねたるをいふなり。〔63オ四〜五〕
活持(くハつち)之(の)計畧(けいりやく)を用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し。先(まづ)擧状(きよじやう)を代官(たいくハん)於(に)進(しん)ぜら被(れ)者(バ)公所(くしよ)の出仕(しゆつし)諸亭(しよてい)の經廻圖師(けいくわいづし)を申(まふ)す可(べ)き也。奉行人(ぶきやうにん)の賄賂(わいろ)衆中(しゆちう)の屬託(そくたく)上衆(しやうしゆ)乃秘計(ひけい)口入(くちいり)頭人(とうにん)内奏(ないそう)贔屓(ひいき)機嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申(まふ)す可(へ)し。讓状(ゆつりしやう)乃謀實(はうしつ)越境(ゑつきやう)の相論(さうろん)未(いまだ)甲乙(かふをつ)の次第(しだい)を分(わか)た未(さる)譜代(ふたい)相傳(さうでん)之(の)重書(ちうしよ)等(とう)者(ハ)引付方(ひきつけかた)に於(おいて)御沙汰(ごさた)に逢(あ)は被(る)可(べ)し/可シ∨被∨用‖意セラ活持之計略ヲ|。先被∨進セラ‖挙状代官ニ|者。公-所出-仕。諸亭之經廻。可キ∨申ス‖圖師(―)ヲ|也。奉行人ノ賄-賂。衆中ノ属託。上-衆ノ秘-計。口入頭人。内奏。屓贔。窺ヒ‖機嫌ヲ|可シ∨申ス∨之ヲ。讓状ノ謀實。越-境ノ相-論。未タ/ズ∨分タ‖甲乙ノ次第ヲ|。譜代相傳之重書等者。於‖引付方ニ|。可シ∨被∨逢ハ‖御沙汰ニ|。▲甲乙ノ次第ハ理非(りひ)の有無(うむ)也。〔46ウ七〕
可(べし)∨被(る)∨用‖意(ようい)せら活持(くわつぢ)之(の)計略(けいりやく)を|。先(まづ)被(れ)∨進(しん)ぜられ‖擧状(きよじやう)於(を)代官(たいくわん)に|者(バ)。公-所(くしよ)の出-仕(しゆつし)。諸亭(しよてい)之(の)經廻(けいくわい)。可(べ)き∨申(まう)す‖図師(づし)を|也(なり)。奉行人(ぶぎやうにん)の賄-賂(わいろ)。衆中(しゆちゆう)の属託(ぞくたく)。上-衆(じやうしゆ)の秘-計(ひけい)。口入(くちいれ)頭人(とうにん)。内奏(ないさう)。屓贔(ひいき)。窺(うかが)ひ‖機嫌(きげん)を|可(べ)し∨申(まう)す∨之(これ)を。讓状(ゆづりじやう)謀實(ばうじつ)。越-境(ゑつきやう)の相-論(さうろん)。未(いまだ/ず)∨分(わか)た‖甲乙(かふをつ)の次第(したい)を|。譜代(ふだい)相傳(さうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)。於(おい)て‖引付方(ひきつけかた)に|。可(べ)し∨被(る)∨逢(あ)ハ‖御沙汰(ごさた)に|▲甲乙ノ次第ハ理非(りひ)の有無(うむ)也。〔83ウ三〕
Co<uot.カウヲツ(甲乙) 高下.§また,日本の時の数え方.計り方における或る時間の名前.→次条..〔邦訳155l〕
かふ-し〔名〕【甲子】きのえね。かっし(甲子)の條を見よ。〔0407-2〕
かッ-し〔名〕【甲子】〔かふしの音便〕支干の六甲の第一。きのえね。きのえね。太虜暦傳、三「十干、十二支を、轉輪相配して、甲子に始まり、癸亥に終れる樣、左に視せる如きを、今は六十花甲と稱すれど、古くは六甲と云へり、其は、甲子、甲戌、甲申、甲午、甲辰、甲寅、各各九干支を綜て、其首たればなり」〔0387-4〕
讓状謀実越境相論未分甲子〔至徳三年本〕
讓状謀實越境相論未分甲子次第〔宝徳三年本〕
讓状謀実越境相論未分甲子之次第〔建部傳内本〕
讓_状(ユツリ―)ノ謀実越ル∨境ヲ相-論未-分(ミ―)甲-乙ノ次-第〔山田俊雄藏本〕
讓状謀実越境相論未∨分‖甲乙之次第(―タイ)ヲ|〔経覺筆本〕
讓_状(ユツリ―)ノ謀-實(ホウシツ)越-境(ヲツキヤウ/コシ)相-論未-分(ミフン)甲-子(カツシ)ノ次-第〔文明四年本〕
未分(ミフン/イマダ、ワカツ)[去・平去] 。〔態藝門893四〕
とあって、標記語「未分」の語を収載し、訓みを「ミブン」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
未練(ミレン) ―熟(ジユク)。―進(シン)。―断(ダン)。―聞(モン)。―分(ブン)/―来(ライ)。〔弘・言語進退門233五〕
未練(ミレン) ―断(ダン)。―聞(モン)。―分(ブン)/―熟(ジユク)。―進(シン)。―来(ライ)。〔永・言語門194四〕
未練(ミレン) ―錬。―断。―聞。―分/―熟。―進。―来。―定。〔尭・言語門184一〕
とあって、標記語「未練」の冠頭字「未」の熟語群として「未分」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、
未練(ミレン) ―断(ダン)。―進(シン)。―分(ブン)/―定(ジヤウ)。―熟(ジユク)。―来(ライ)。―聞(モン)不見(フケン)/―落居(ラツキヨ)。〔言辞門200五〕
このように、上記当代の古辞書に、「未分」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
458屓贔窺‖機嫌ヲ|可∨申∨之状謀實越-境違-乱未-分甲子(カウシ)ノ次第 甲子ハ賣‖-買所帶等|之時、差‖年記|云也。私ニ曰、庶子惣領云也。〔謙堂文庫蔵四四左D〕
※贔屓(ヒイキ)窺(ウカヽイ)‖機嫌(―ケン)ヲ|可∨申∨之讓状(ユツリ―)謀實(ボウジツ)越境違乱(イ―)―相論イ未∨分タ‖甲子(カツ―)ノ次第ヲ|甲子トハ賣‖-買所帶等|之時ノ、差‖季記ヲ|云也。私_云、庶子惣領ヲ云也。〔天理図書館蔵『庭訓徃來註』〕
とあって、標記語「未分」の語を収載し、語注記は未記載にする。
未タ/ス∨分(ワカタ)‖トハ。イマダワケズト云フ義ナリ。〔下20オ三〕
未(いま)だ甲乙(かうおつ)の次第(したい)を分(わか)た未(ず)/未タ/ス∨分‖甲子ノ次第ヲ| 凡物の一を甲と云。次を乙と云、甲乙乃次第をわかたずとハ黒白(こくびやく)是非(ぜひ)乃わたりかねたるをいふなり。〔63オ四〜五〕
活持(くハつち)之(の)計畧(けいりやく)を用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し。先(まづ)擧状(きよじやう)を代官(たいくハん)於(に)進(しん)ぜら被(れ)者(バ)公所(くしよ)の出仕(しゆつし)諸亭(しよてい)の經廻圖師(けいくわいづし)を申(まふ)す可(べ)き也。奉行人(ぶきやうにん)の賄賂(わいろ)衆中(しゆちう)の屬託(そくたく)上衆(しやうしゆ)乃秘計(ひけい)口入(くちいり)頭人(とうにん)内奏(ないそう)贔屓(ひいき)機嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申(まふ)す可(へ)し。讓状(ゆつりしやう)乃謀實(はうしつ)越境(ゑつきやう)の相論(さうろん)未(いまだ)甲乙(かふをつ)の次第(しだい)を分(わか)た未(さる)譜代(ふたい)相傳(さうでん)之(の)重書(ちうしよ)等(とう)者(ハ)引付方(ひきつけかた)に於(おいて)御沙汰(ごさた)に逢(あ)は被(る)可(べ)し/可シ∨被∨用‖意セラ活持之計略ヲ|。先被∨進セラ‖挙状代官ニ|者。公-所出-仕。諸亭之經廻。可キ∨申ス‖圖師(―)ヲ|也。奉行人ノ賄-賂。衆中ノ属託。上-衆ノ秘-計。口入頭人。内奏。屓贔。窺ヒ‖機嫌ヲ|可シ∨申ス∨之ヲ。讓状ノ謀實。越-境ノ相-論。未タ/ズ∨分タ‖甲子ノ次第ヲ|。譜代相傳之重書等者。於‖引付方ニ|。可シ∨被∨逢ハ‖御沙汰ニ|。〔46ウ七〕
可(べし)∨被(る)∨用‖意(ようい)せら活持(くわつぢ)之(の)計略(けいりやく)を|。先(まづ)被(れ)∨進(しん)ぜられ‖擧状(きよじやう)於(を)代官(たいくわん)に|者(バ)。公-所(くしよ)の出-仕(しゆつし)。諸亭(しよてい)之(の)經廻(けいくわい)。可(べ)き∨申(まう)す‖図師(づし)を|也(なり)。奉行人(ぶぎやうにん)の賄-賂(わいろ)。衆中(しゆちゆう)の属託(ぞくたく)。上-衆(じやうしゆ)の秘-計(ひけい)。口入(くちいれ)頭人(とうにん)。内奏(ないさう)。屓贔(ひいき)。窺(うかが)ひ‖機嫌(きげん)を|可(べ)し∨申(まう)す∨之(これ)を。讓状(ゆづりじやう)謀實(ばうじつ)。越-境(ゑつきやう)の相-論(さうろん)。未(いまだ/ず)∨分(わか)た‖甲乙(かふをつ)の次第(したい)を|。譜代(ふだい)相傳(さうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)。於(おい)て‖引付方(ひきつけかた)に|。可(べ)し∨被(る)∨逢(あ)ハ‖御沙汰(ごさた)に|。〔83ウ三〕
Mibun.ミブン(未分) Imada vacarezu.(未だ分れず)まだ作られていないこと.または,
まだ現われていないこと.例,Tenchi mibunno ijen.(天地未分の以前)天と地とが出来上がる以前.〔邦訳401l〕
讓状謀実越境相論未分甲子〔至徳三年本〕
讓状謀實越境相論未分甲子次第〔宝徳三年本〕
讓状謀実越境相論未分甲子之次第〔建部傳内本〕
讓_状(ユツリ―)ノ謀実越ル∨境ヲ相-論未-分(ミ―)甲-乙ノ次-第〔山田俊雄藏本〕
讓状謀実越境相論未∨分‖甲乙之次第(―タイ)ヲ|〔経覺筆本〕
讓_状(ユツリ―)ノ謀-實(ホウシツ)越-境(ヲツキヤウ/コシ)相-論未-分(ミフン)甲-子(カツシ)ノ次-第〔文明四年本〕
このように、上記当代の古辞書には、「謀實」の語は未収載であり、そしてて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本には見えている語である。
458屓贔窺‖機嫌ヲ|可∨申∨之状謀實越-境違-乱未-分甲子(カウシ)ノ次第 甲子ハ賣‖-買所帶等|之時、差‖年記|云也。私ニ曰、庶子惣領云也。〔謙堂文庫蔵四四左D〕
※贔屓(ヒイキ)窺(ウカヽイ)‖機嫌(―ケン)ヲ|可∨申∨之讓状(ユツリ―)謀實(ボウジツ)越境違乱(イ―)―相論イ未∨分タ‖甲子(カツ―)ノ次第ヲ|甲子トハ賣‖-買所帶等|之時ノ、差‖季記ヲ|云也。私_云、庶子惣領ヲ云也。〔天理図書館蔵『庭訓徃來註』〕
※謀實(ボウシツ)―虚実也。〔静嘉堂文庫蔵『庭訓徃來抄』古冩書込み〕
とあって、標記語「謀實」の語を収載し、語注記は未記載にする。
謀實(ボウジツ)トハ。謀ハ。イツハリ。實(シツ)ハ誠也。〔下20オ二〕
讓状(ゆづりじやう)乃謀実(ばうじつ)/讓状ノ謀実 讓状ハ人に物を譲るに後々他より妨けする者あらん事を恐れ證拠(しやうこ)にけに證文(もん)なり。謀ハ偽(いつわり)をかまへ偽状(にせしやう)をこしらへたるを云。正明(しやうめい)にして偽りにあらさるをいふ。是ハ前状にいえる遺法争論の事也。遺跡をあらそふこと畢竟讓状の分明ならさるより事起りたる事ゆへこゝにハ詞をかえて讓状の謀実と書たるなり。此句より下ハ皆公事捌の事をいふ。〔62ウ八〜63オ三〕
活持(くハつち)之(の)計畧(けいりやく)を用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し。先(まづ)擧状(きよじやう)を代官(たいくハん)於(に)進(しん)ぜら被(れ)者(バ)公所(くしよ)の出仕(しゆつし)諸亭(しよてい)の經廻圖師(けいくわいづし)を申(まふ)す可(べ)き也。奉行人(ぶきやうにん)の賄賂(わいろ)衆中(しゆちう)の屬託(そくたく)上衆(しやうしゆ)乃秘計(ひけい)口入(くちいり)頭人(とうにん)内奏(ないそう)贔屓(ひいき)機嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申(まふ)す可(へ)し。讓状(ゆつりしやう)乃謀實(はうしつ)越境(ゑつきやう)の相論(さうろん)未(いまだ)甲乙(かふをつ)の次第(しだい)を分(わか)た未(さる)譜代(ふたい)相傳(さうでん)之(の)重書(ちうしよ)等(とう)者(ハ)引付方(ひきつけかた)に於(おいて)御沙汰(ごさた)に逢(あ)は被(る)可(べ)し/可シ∨被∨用‖意セラ活持之計略ヲ|。先被∨進セラ‖挙状代官ニ|者。公-所出-仕。諸亭之經廻。可キ∨申ス‖圖師(―)ヲ|也。奉行人ノ賄-賂。衆中ノ属託。上-衆ノ秘-計。口入頭人。内奏。屓贔。窺ヒ‖機嫌ヲ|可シ∨申ス∨之ヲ。讓状ノ謀實。越-境ノ相-論。未タ/ズ∨分タ‖甲子ノ次第ヲ|。譜代相傳之重書等者。於‖引付方ニ|。可シ∨被∨逢ハ‖御沙汰ニ|。▲讓状謀實ハ人の遺跡(ゆいせき)など譲(ゆつ)り与(あた)ゆるとき後日(こにち)他人(たにん)の乱妨(らんはう)なからしめんために書遺(かきつか)ハす。證文(しやうもん)也。悪人(あくにん)ハ是を謀(はかつ)て偽状(にせしやう)を作(つく)る謀判(はうはん)なとの類也。ケ樣(かよう)なる謀(たくらふ)もの歟(か)実(まこと)のもの歟をいふ。〔46ウ六〜七〕
可(べし)∨被(る)∨用‖意(ようい)せら活持(くわつぢ)之(の)計略(けいりやく)を|。先(まづ)被(れ)∨進(しん)ぜられ‖擧状(きよじやう)於(を)代官(たいくわん)に|者(バ)。公-所(くしよ)の出-仕(しゆつし)。諸亭(しよてい)之(の)經廻(けいくわい)。可(べ)き∨申(まう)す‖図師(づし)を|也(なり)。奉行人(ぶぎやうにん)の賄-賂(わいろ)。衆中(しゆちゆう)の属託(ぞくたく)。上-衆(じやうしゆ)の秘-計(ひけい)。口入(くちいれ)頭人(とうにん)。内奏(ないさう)。屓贔(ひいき)。窺(うかが)ひ‖機嫌(きげん)を|可(べ)し∨申(まう)す∨之(これ)を。讓状(ゆづりじやう)謀實(ばうじつ)。越-境(ゑつきやう)の相-論(さうろん)。未(いまだ/ず)∨分(わか)た‖甲乙(かふをつ)の次第(したい)を|。譜代(ふだい)相傳(さうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)。於(おい)て‖引付方(ひきつけかた)に|。可(べ)し∨被(る)∨逢(あ)ハ‖御沙汰(ごさた)に|▲讓状謀實ハ人の遺跡(ゆいせき)など譲(ゆづ)り与(あた)ふるとき後日(こにち)他人(たにん)の乱妨(らんはう)なからしめんために書遺(かきつか)ハす。證文(しようもん)也。悪人(あくにん)ハ是を謀(たはかつ)て偽状(にせしやう)を作(つく)る。謀判(ばうはん)などの類也。ケ樣(かやう)なる謀(たくミ)もの歟実(まこと)のもの歟をいふ。〔83オ六〜ウ一〕
讓状(ユヅリジヤウ) 。〔元亀二年本293三〕
讓状(ユヅリシヤウ) 。〔静嘉堂本340七〕
讓状謀実越境相論未分甲子〔至徳三年本〕
讓状謀實越境相論未分甲子次第〔宝徳三年本〕
讓状謀実越境相論未分甲子之次第〔建部傳内本〕
讓_状(ユツリ―)ノ謀実越ル∨境ヲ相-論未-分(ミ―)甲-乙ノ次-第〔山田俊雄藏本〕
讓状謀実越境相論未∨分‖甲乙之次第(―タイ)ヲ|〔経覺筆本〕
讓_状(ユツリ―)ノ謀-實(ホウシツ)越-境(ヲツキヤウ/コシ)相-論未-分(ミフン)甲-子(カツシ)ノ次-第〔文明四年本〕
讓状(ユヅリジヤウ/シヤウ、カタチ)[去・去] 。〔態藝門869一〕
とあって、標記語「讓状」の語を収載し、訓みを「ゆづりジヤウ」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、「讓状」の語を未収載にする。また、易林本『節用集』には、
讓状(ユヅリジヤウ) ―與(アタフ)。〔言辞門194六〕
このように、上記当代の古辞書に、「讓状」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
458屓贔窺‖機嫌ヲ|可∨申∨之状謀實越-境違-乱未-分甲子(カウシ)ノ次第 甲子ハ賣‖-買所帶等|之時、差‖年記|云也。私ニ曰、庶子惣領云也。〔謙堂文庫蔵四四左D〕
※贔屓(ヒイキ)窺(ウカヽイ)‖機嫌(―ケン)ヲ|可∨申∨之讓状(ユツリ―)謀實(ボウジツ)越境違乱(イ―)―相論イ未∨分タ‖甲子(カツ―)ノ次第ヲ|甲子トハ賣‖-買所帶等|之時ノ、差‖季記ヲ|云也。私_云、庶子惣領ヲ云也。〔天理図書館蔵『庭訓徃來註』〕
とあって、この真字注本全てが標記語を「状」とするのではなく、謙堂文庫本が脱落書写したものと言えよう。他写本は、すべて標記語「讓状」としている。そして、この語注記は未記載にする。
讓状(ユヅリジヤウ)親(シタシ)ミ近(チカツ)キニアテ行(ヲコナ)イシ文(フン)ナリ。〔下20オ二〕
讓状(ゆづりじやう)乃謀実(ばうじつ)/讓状ノ謀実 讓状ハ人に物を譲るに後々他より妨けする者あらん事を恐れ證拠(しやうこ)にけに證文(もん)なり。謀ハ偽(いつわり)をかまへ偽状(にせしやう)をこしらへたるを云。正明(しやうめい)にして偽りにあらさるをいふ。是ハ前状にいえる遺法争論の事也。遺跡をあらそふこと畢竟讓状の分明ならさるより事起りたる事ゆへこゝにハ詞をかえて讓状の謀実と書たるなり。此句より下ハ皆公事捌の事をいふ。〔62ウ八〜63オ三〕
活持(くハつち)之(の)計畧(けいりやく)を用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し。先(まづ)擧状(きよじやう)を代官(たいくハん)於(に)進(しん)ぜら被(れ)者(バ)公所(くしよ)の出仕(しゆつし)諸亭(しよてい)の經廻圖師(けいくわいづし)を申(まふ)す可(べ)き也。奉行人(ぶきやうにん)の賄賂(わいろ)衆中(しゆちう)の屬託(そくたく)上衆(しやうしゆ)乃秘計(ひけい)口入(くちいり)頭人(とうにん)内奏(ないそう)贔屓(ひいき)機嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申(まふ)す可(へ)し。讓状(ゆつりしやう)乃謀實(はうしつ)越境(ゑつきやう)の相論(さうろん)未(いまだ)甲乙(かふをつ)の次第(しだい)を分(わか)た未(さる)譜代(ふたい)相傳(さうでん)之(の)重書(ちうしよ)等(とう)者(ハ)引付方(ひきつけかた)に於(おいて)御沙汰(ごさた)に逢(あ)は被(る)可(べ)し/可シ∨被∨用‖意セラ活持之計略ヲ|。先被∨進セラ‖挙状代官ニ|者。公-所出-仕。諸亭之經廻。可キ∨申ス‖圖師(―)ヲ|也。奉行人ノ賄-賂。衆中ノ属託。上-衆ノ秘-計。口入頭人。内奏。屓贔。窺ヒ‖機嫌ヲ|可シ∨申ス∨之ヲ。讓状ノ謀實。越-境ノ相-論。未タ/ズ∨分タ‖甲子ノ次第ヲ|。譜代相傳之重書等者。於‖引付方ニ|。可シ∨被∨逢ハ‖御沙汰ニ|。▲讓状謀實ハ人の遺跡(ゆいせき)など譲(ゆつ)り与(あた)ゆるとき後日(こにち)他人(たにん)の乱妨(らんはう)なからしめんために書遺(かきつか)ハす。證文(しやうもん)也。悪人(あくにん)ハ是を謀(はかつ)て偽状(にせしやう)を作(つく)る謀判(はうはん)なとの類也。ケ樣(かよう)なる謀(たくらふ)もの歟(か)実(まこと)のもの歟をいふ。〔46ウ六〜七〕
可(べし)∨被(る)∨用‖意(ようい)せら活持(くわつぢ)之(の)計略(けいりやく)を|。先(まづ)被(れ)∨進(しん)ぜられ‖擧状(きよじやう)於(を)代官(たいくわん)に|者(バ)。公-所(くしよ)の出-仕(しゆつし)。諸亭(しよてい)之(の)經廻(けいくわい)。可(べ)き∨申(まう)す‖図師(づし)を|也(なり)。奉行人(ぶぎやうにん)の賄-賂(わいろ)。衆中(しゆちゆう)の属託(ぞくたく)。上-衆(じやうしゆ)の秘-計(ひけい)。口入(くちいれ)頭人(とうにん)。内奏(ないさう)。屓贔(ひいき)。窺(うかが)ひ‖機嫌(きげん)を|可(べ)し∨申(まう)す∨之(これ)を。讓状(ゆづりじやう)謀實(ばうじつ)。越-境(ゑつきやう)の相-論(さうろん)。未(いまだ/ず)∨分(わか)た‖甲乙(かふをつ)の次第(したい)を|。譜代(ふだい)相傳(さうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)。於(おい)て‖引付方(ひきつけかた)に|。可(べ)し∨被(る)∨逢(あ)ハ‖御沙汰(ごさた)に|▲讓状謀實ハ人の遺跡(ゆいせき)など譲(ゆづ)り与(あた)ふるとき後日(こにち)他人(たにん)の乱妨(らんはう)なからしめんために書遺(かきつか)ハす。證文(しようもん)也。悪人(あくにん)ハ是を謀(たはかつ)て偽状(にせしやう)を作(つく)る。謀判(ばうはん)などの類也。ケ樣(かやう)なる謀(たくミ)もの歟実(まこと)のもの歟をいふ。〔83オ六〜ウ一〕
Yuzzurijo<.ユヅリジョウ(讓状) 遺言状.〔邦訳839l〕
ゆずり-じょう〔名〕【讓状】(一)所領、財産などの讓渡の旨を記したる證文。又、己れが領地を、子弟、其他へ讓與したる旨を記したる證文。(年號を記す) ゆづりぶみ。運歩色葉集「讓状」太平記、三十五、青砥左衞門事「父義時朝臣の頓死して、讓状のなかりし時」〔2070-4〕
機嫌(―ゲン) 。〔元亀二年本281九〕
機嫌(キゲン) 。〔静嘉堂本322一〕
奉行人賄賂衆中属託上衆秘計口入頭人内奏屓贔窺譏嫌可申之〔至徳三年本〕
奉行人賄賂衆中屬託上衆秘計口入頭人内奏屓贔窺譏嫌可申之〔宝徳三年本〕
奉行人賄賂衆中属託上衆秘計口入頭人内奏屓贔伺機嫌可申之〔建部傳内本〕
奉-行-人ノ賄-賂(ワイロ)衆-中ノ属-託上-衆ノ秘-計口-入頭-人ノ内-奏ヲ屓-贔窺ヒ‖機-嫌ヲ|可∨申∨之ヲ〔山田俊雄藏本〕
奉行人ノ賄賂衆中ノ属託(ソクタク)上衆ノ秘計(ヒケイ)口入ノ頭人内奏(ナイソウ)屓贔(ヒイキ)窺ヒ‖機嫌(キケン)|可∨申∨之ヲ。〔経覺筆本〕
奉-行人ノ賄-賂(ワイロ)衆-中ノ属-託(ソクタク)上-衆ノ秘-計(ヒケイ)口-入頭-人(トウ―)内-奏(―ソウ)贔-屓(ヒ井キ)窺(ウカヽ)イ‖譏嫌(キケン)ヲ|可∨申∨之ヲ〔文明四年本〕※賄賂(ハイロ)。機嫌(キケン)。機(キ)。
氣驗 キケン。機嫌 同(キケン)/計形勢之儀也。〔黒川本・疉字門下52オ二〕
氣色 〃調。〃味。〃序。〃力。〃假。〃驗。機嫌(キゲン) 。〔卷第八・疉字門527二〕
機抒(キヨ) 〃急。〃縁。〃根。〃感。〔卷第八・疉字門529二〕
機嫌(キゲン/ハタモノ、キラウ)[平・平] 。〔態藝門818六〕
とあって、標記語「機嫌」の語を収載し、訓みを「キゲン」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
機嫌(キゲン) 。〔弘・言語進退門221四〕
機縁 ―轉(テン)。―嫌(ゲン)。〔永・言語門184九〕
機縁 ―轉。―嫌。〔尭・言語門174四〕
とあって、弘治二年本は、標記語「機嫌」の語を収載し、他二本については、標記語「機縁」の冠頭字「機」の熟語群として「機嫌」の語を収載する。また、易林本『節用集』も、
機縁(キエン) ―嫌(ゲン)。―根(コン)。―轉(テン)。―愛(アイ)。〔言辞門189五〕
このように、上記当代の古辞書に、「機嫌」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
458屓贔窺‖機嫌ヲ|可∨申∨之状謀實越-境違-乱未-分甲子(カウシ)ノ次第 甲子ハ賣‖-買所帶等|之時、差‖年記|云也。私ニ曰、庶子惣領云也。〔謙堂文庫蔵四四左D〕
とあって、標記語を「機嫌」とし、その語注記は未記載にする。
屓贔(ヒイキ)窺(ウカヾヒ)‖機嫌(キゲン)ヲ|可∨申∨之。贔屓(ヒイキ)ハ。力(チカラ)ヲソユル人ナリ。〔下20オ一・二〕
機嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申可。/窺ヒ‖機嫌ヲ|可∨申∨之ヲ 機嫌ハ様子といふかことし。仏教より出たり。言こゝろハ奉行人へ乃進物等ハ様子を見はからひ能時節にし申んとなり。〔62ウ七・八〕
活持(くハつち)之(の)計畧(けいりやく)を用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し。先(まづ)擧状(きよじやう)を代官(たいくハん)於(に)進(しん)ぜら被(れ)者(バ)公所(くしよ)の出仕(しゆつし)諸亭(しよてい)の經廻圖師(けいくわいづし)を申(まふ)す可(べ)き也。奉行人(ぶきやうにん)の賄賂(わいろ)衆中(しゆちう)の屬託(そくたく)上衆(しやうしゆ)乃秘計(ひけい)口入(くちいり)頭人(とうにん)内奏(ないそう)贔屓(ひいき)機嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申(まふ)す可(へ)し。讓状(ゆつりしやう)乃謀實(はうしつ)越境(ゑつきやう)の相論(さうろん)未(いまだ)甲乙(かふをつ)の次第(しだい)を分(わか)た未(さる)譜代(ふたい)相傳(さうでん)之(の)重書(ちうしよ)等(とう)者(ハ)引付方(ひきつけかた)に於(おいて)御沙汰(ごさた)に逢(あ)は被(る)可(べ)し/可シ∨被∨用‖意セラ活持之計略ヲ|。先被∨進セラ‖挙状代官ニ|者。公-所出-仕。諸亭之經廻。可キ∨申ス‖圖師(―)ヲ|也。奉行人ノ賄-賂。衆中ノ属託。上-衆ノ秘-計。口入頭人。内奏。屓贔。窺ヒ‖機嫌ヲ|可シ∨申ス∨之ヲ。状ノ謀實。越-境ノ相-論。未タ/ズ∨分タ‖甲子ノ次第ヲ|。譜代相傳之重書等者。於‖引付方ニ|。可シ∨被∨逢ハ‖御沙汰ニ|。▲機嫌ハ俗(ぞく)に様子(やうす)容躰(ようたい)といふ意の所に用ひ來れり。〔46ウ六〕
可(べし)∨被(る)∨用‖意(ようい)せら活持(くわつぢ)之(の)計略(けいりやく)を|。先(まづ)被(れ)∨進(しん)ぜられ‖擧状(きよじやう)於(を)代官(たいくわん)に|者(バ)。公-所(くしよ)の出-仕(しゆつし)。諸亭(しよてい)之(の)經廻(けいくわい)。可(べ)き∨申(まう)す‖図師(づし)を|也(なり)。奉行人(ぶぎやうにん)の賄-賂(わいろ)。衆中(しゆちゆう)の属託(ぞくたく)。上-衆(じやうしゆ)の秘-計(ひけい)。口入(くちいれ)頭人(とうにん)。内奏(ないさう)。屓贔(ひいき)。窺(うかが)ひ‖機嫌(きげん)を|可(べ)し∨申(まう)す∨之(これ)を。讓状(ゆづりじやう)謀實(ばうじつ)。越-境(ゑつきやう)の相-論(さうろん)。未(いまだ/ず)∨分(わか)た‖甲乙(かふをつ)の次第(したい)を|。譜代(ふだい)相傳(さうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)。於(おい)て‖引付方(ひきつけかた)に|。可(べ)し∨被(る)∨逢(あ)ハ‖御沙汰(ごさた)に|▲機嫌ハ俗(ぞく)に様子(やうす)容躰(ようたい)といふ意の所に用ひ來れり。〔83オ六〜ウ一〕
Qiguen.キゲン(機嫌) 顔つき.§Fitono qiguenuo toru.(人の機嫌を取る)人を満足させる,または,人を喜ばせるように努める.§Qiguenuo yo> suru.(機嫌を良うする)良い顔,明るい顔つきを見せる.§Qiguenuo socono<.(機嫌を損ふ)人を不快にする,または,不快な顔つきをさせる.→Tcucuroi,ro>〔邦訳495r〕
き-げん〔名〕【機嫌】〔普通に、機嫌と書けど、譏嫌なり、人の氣受の意に轉じてより、機を見る意に移して、音通の字を用ゐるなるべし〕(一)人人、譏(そし)り嫌(きら)ふこと。譏嫌。後漢書、馬巖傳「明コ皇后既立、嚴乃閉レ門自守、猶復慮レ致二譏嫌一、遂徒二北地一、斷二絶賓客一」佛教の戒律に、譏嫌戒と云ふあり、世の誹謗を受くるが如き事をせざらしむるなり。大乘起信論「當下護二譏嫌一不上レ令三衆生妄起二過罪一」楞嚴經「誹二謗比丘一、罵二詈徒衆一、計二露人事一、不レ避二譏嫌一」(二)人の譏嫌を窺ひ測る意に轉じて、人の、内心の思はく。人の、氣受け。意向。長門本平家物語、十四「今一度、君を見まゐらせむと存候て、きげんを顧み候はず、推參仕て候」十訓抄、中、第六、序「腹立ちたる時、強(こは)く制すれば、いよいよ怒る、云云、然れば、譏嫌を憚りて、やはらかに諫むべし」〔0461-2〕
奉行人賄賂衆中属託上衆秘計口入頭人内奏屓贔窺譏嫌可申之〔至徳三年本〕
奉行人賄賂衆中屬託上衆秘計口入頭人内奏屓贔窺譏嫌可申之〔宝徳三年本〕
奉行人賄賂衆中属託上衆秘計口入頭人内奏屓贔伺機嫌可申之〔建部傳内本〕
奉-行-人ノ賄-賂(ワイロ)衆-中ノ属-託上-衆ノ秘-計口-入頭-人ノ内-奏ヲ屓-贔窺ヒ‖機-嫌ヲ|可∨申∨之ヲ〔山田俊雄藏本〕
奉行人ノ賄賂衆中ノ属託(ソクタク)上衆ノ秘計(ヒケイ)口入ノ頭人内奏(ナイソウ)屓贔(ヒイキ)窺ヒ‖機嫌(キケン)|可∨申∨之ヲ。〔経覺筆本〕
奉-行人ノ賄-賂(ワイロ)衆-中ノ属-託(ソクタク)上-衆ノ秘-計(ヒケイ)口-入頭-人(トウ―)内-奏(―ソウ)贔-屓(ヒ井キ)窺(ウカヽ)イ‖譏嫌(キケン)ヲ|可∨申∨之ヲ〔文明四年本〕※賄賂(ハイロ)。機嫌(キケン)。機(キ)。
内奏 帝王部/ナイソウ/政理分。〔黒川本・疉字門中37オ八〕
内奏(ナイソウ/ダイ・ウチ、スゝム)[去・去] 。〔態藝門438六〕
とあって、標記語「内奏」の語を収載し、訓みを「ナイソウ」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
内奏(―ソウ)。〔弘・言語進退門141三〕
内通(ナイツウ) ―状(ジヤウ)。―儀(ギ)。―談(ダン)。―外(ケ)。―評(ヒヤウ)/―奏(ソウ)。―訴(ソ)。―戚(セキ)。〔永・言語門111七〕
内通(ナイツウ) ―状。―談。―外。―儀。/―評。―奏。―訴。―戚。〔尭・言語門102四〕
内通(ナイツウ) ―状。―儀。―談。―外。/―評。―奏。―訴。―戚。〔両・言語門125一〕
とあって、弘治二年本は、標記語「内奏」の語を収載し、他三本も標記語「内通」の冠頭字「内」の熟語群として「内奏」の語を収載する。また、易林本『節用集』には、
内外(ナイゲ) ―證(シヤウ)。―談(ダン)。―檢(ケン)。―通(ツウ)。―縁(エン)。―戚(シヤク)/―者(シヤ)。―心(シン)。―義(ギ)。―典(テン)。―訴(ソ)。〔言辞門111一〕
このように、上記当代(室町時代)の古辞書においては、広本『節用集』と印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』に「内奏」の語が収載されている。ここで、『運歩色葉集』が何故此語を未収載にしたのか問わねばなるまい。そして、継承原典である古写本『庭訓徃來』及び下記真字本には見えている語である。
457内奏 縁ヲ取奏∨亊也。〔謙堂文庫蔵四四左D〕
※内奏ハ隠密ニ縁ヲトリテ亊ヲ奏スル也。〔天理図書館藏『庭訓徃來註』頭注書込み〕
※―ハ隠密ニ神ヲ取ニセヌ。〔静嘉堂文庫蔵『庭訓徃來抄』古冩書込み〕
とあって、標記語を「内奏」とし、その語注記は、「縁を取り、亊を奏すなり」と記載する。
内奏(ナイソウ)ノハ。内ニテ事ヲ尽ス人ナリ。〔下20オ一〕
頭人(とうにん)内奏(ないそう)乃贔屓(ひゐき)/頭人内奏ノ屓贔 頭人ハ所役を宰(つかさとつ)て事を上下(かミしも)に返して物の支配(しはい)をする役人也。内奏ハうち/\にて事を申上る人也。贔屓ハ力をそへる事也。頭人内奏へ力を添(そへ)て玉ハれとたのむ事をいふなり。〔62ウ五〕
活持(くハつち)之(の)計畧(けいりやく)を用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し。先(まづ)擧状(きよじやう)を代官(たいくハん)於(に)進(しん)ぜら被(れ)者(バ)公所(くしよ)の出仕(しゆつし)諸亭(しよてい)の經廻圖師(けいくわいづし)を申(まふ)す可(べ)き也。奉行人(ぶきやうにん)の賄賂(わいろ)衆中(しゆちう)の屬託(そくたく)上衆(しやうしゆ)乃秘計(ひけい)口入(くちいり)頭人(とうにん)内奏(ないそう)贔屓(ひいき)譏嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申(まふ)す可(へ)し。讓状(ゆつりしやう)乃謀實(はうしつ)越境(ゑつきやう)の相論(さうろん)未(いまだ)甲乙(かふをつ)の次第(しだい)を分(わか)た未(さる)譜代(ふたい)相傳(さうでん)之(の)重書(ちうしよ)等(とう)者(ハ)引付方(ひきつけかた)に於(おいて)御沙汰(ごさた)に逢(あ)は被(る)可(べ)し/可シ∨被∨用‖意セラ活持之計略ヲ|。先被∨進セラ‖挙状代官ニ|者。公-所出-仕。諸亭之經廻。可キ∨申ス‖圖師(―)ヲ|也。奉行人ノ賄-賂。衆中ノ属託。上-衆ノ秘-計。口入頭人。内奏。屓贔。窺ヒ‖機嫌ヲ|可シ∨申ス∨之ヲ。状ノ謀實。越-境ノ相-論。未タ/ズ∨分タ‖甲子ノ次第ヲ|。譜代相傳之重書等者。於‖引付方ニ|。可シ∨被∨逢ハ‖御沙汰ニ|。▲内奏ハ内縁(ないえん)を取て事を奏(そう)する也。〔46ウ五・六〕
可(べし)∨被(る)∨用‖意(ようい)せら活持(くわつぢ)之(の)計略(けいりやく)を|。先(まづ)被(れ)∨進(しん)ぜられ‖擧状(きよじやう)於(を)代官(たいくわん)に|者(バ)。公-所(くしよ)の出-仕(しゆつし)。諸亭(しよてい)之(の)經廻(けいくわい)。可(べ)き∨申(まう)す‖図師(づし)を|也(なり)。奉行人(ぶぎやうにん)の賄-賂(わいろ)。衆中(しゆちゆう)の属託(ぞくたく)。上-衆(じやうしゆ)の秘-計(ひけい)。口入(くちいれ)頭人(とうにん)。内奏(ないさう)。屓贔(ひいき)。窺(うかが)ひ‖機嫌(きげん)を|可(べ)し∨申(まう)す∨之(これ)を。讓状(ゆづりじやう)謀實(ばうじつ)。越-境(ゑつきやう)の相-論(さうろん)。未(いまだ/ず)∨分(わか)た‖甲乙(かふをつ)の次第(したい)を|。譜代(ふだい)相傳(さうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)。於(おい)て‖引付方(ひきつけかた)に|。可(べ)し∨被(る)∨逢(あ)ハ‖御沙汰(ごさた)に|▲内奏ハ内縁(ないえん)を取て事を奏(そう)する也。〔83オ六〕
Naiso>.ナイソウ(内奏) 貴人に何事かを内密に知らせること,または,提案すること.〔邦訳444l〕
ない-そう〔名〕【内奏】(一)内内に奏聞すること。又、内密の奏請。源平盛衰記、四十一、頼盛關東下向事「大納言殿に可レ奉二成返一之由、被レ申二内奏一ける上、本の知行、庄園は一所も無二相違一、其外、所領八箇所の下文等、書副へて奉る」(二)後宮より主上に奏聞して、事を取計らふこと。又、奥向に取入りて、奏聞すること。〔1442-2〕
頭人(ツウニン) 。〔元亀二年本54二〕
頭人(トウニン) 。〔静嘉堂本60二〕〔天正十七年本上31オ三〕〔西來寺本〕
奉行人賄賂衆中属託上衆秘計口入頭人内奏屓贔窺譏嫌可申之〔至徳三年本〕
奉行人賄賂衆中屬託上衆秘計口入頭人内奏屓贔窺譏嫌可申之〔宝徳三年本〕
奉行人賄賂衆中属託上衆秘計口入頭人内奏屓贔伺機嫌可申之〔建部傳内本〕
奉-行-人ノ賄-賂(ワイロ)衆-中ノ属-託上-衆ノ秘-計口-入頭-人ノ内-奏ヲ屓-贔窺ヒ‖機-嫌ヲ|可∨申∨之ヲ〔山田俊雄藏本〕
奉行人ノ賄賂衆中ノ属託(ソクタク)上衆ノ秘計(ヒケイ)口入ノ頭人内奏(ナイソウ)屓贔(ヒイキ)窺ヒ‖機嫌(キケン)|可∨申∨之ヲ。〔経覺筆本〕
奉-行人ノ賄-賂(ワイロ)衆-中ノ属-託(ソクタク)上-衆ノ秘-計(ヒケイ)口-入頭-人(トウ―)内-奏(―ソウ)贔-屓(ヒ井キ)窺(ウカヽ)イ‖譏嫌(キケン)ヲ|可∨申∨之ヲ〔文明四年本〕※賄賂(ハイロ)。機嫌(キケン)。機(キ)。
頭人(トウニン/カシラ・カウヘ、ジン・ヒト)[平・平] 。〔人倫門128二〕
とあって、標記語「頭人」の語を収載し、訓みを「トウニン」とし、その語注記は未記載にする。印度本系統の弘治二年本・永祿二年本・尭空本・両足院本『節用集』には、
頭人(トウニン) 奉行――。〔弘・人倫門42三〕〔永・人倫門43二〕〔尭・人倫門39七〕
頭人(トウニン) 奉行。〔両・人倫門39七〕
頭人(トウニン) 。〔弘・言語進退門46五〕〔永・言語門45八〕
奉行(ブギヤウ) 頭人(トウニン)。〔永・人倫門147六〕
頭役(トウヤク) ―人。〔尭・言語門42四〕〔両・言語門50五〕
とあって、標記語「頭人」として収載し、語注記に「奉行頭人」と記載する。また、易林本『節用集』には、
頭人(タウニン) 奉行。〔人倫門41二〕
このように、上記当代の古辞書に、「頭人」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。
456口入ノ頭人(トウニン) 沙汰之頭ヲ取人也。〔謙堂文庫蔵四四左D〕
とあって、標記語を「頭人」とし、その語注記は、未記載にする。
衆中ノ属託(ゾクタク)上衆ノ秘計(ケイ)口_入頭人(トウニン)衆中ノ属託(ソクタク)雜賞(サツシヤウ)也。〔下19ウ八〕
頭人(とうにん)内奏(ないそう)乃贔屓(ひゐき)/頭人内奏ノ屓贔 頭人ハ所役を宰(つかさとつ)て事を上下(かミしも)に返して物の支配(しはい)をする役人也。内奏ハうち/\にて事を申上る人也。贔屓ハ力をそへる事也。頭人内奏へ力を添(そへ)て玉ハれとたのむ事をいふなり。〔62ウ五〕
活持(くハつち)之(の)計畧(けいりやく)を用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し。先(まづ)擧状(きよじやう)を代官(たいくハん)於(に)進(しん)ぜら被(れ)者(バ)公所(くしよ)の出仕(しゆつし)諸亭(しよてい)の經廻圖師(けいくわいづし)を申(まふ)す可(べ)き也。奉行人(ぶきやうにん)の賄賂(わいろ)衆中(しゆちう)の屬託(そくたく)上衆(しやうしゆ)乃秘計(ひけい)口入(くちいり)頭人(とうにん)内奏(ないそう)贔屓(ひいき)譏嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申(まふ)す可(へ)し。讓状(ゆつりしやう)乃謀實(はうしつ)越境(ゑつきやう)の相論(さうろん)未(いまだ)甲乙(かふをつ)の次第(しだい)を分(わか)た未(さる)譜代(ふたい)相傳(さうでん)之(の)重書(ちうしよ)等(とう)者(ハ)引付方(ひきつけかた)に於(おいて)御沙汰(ごさた)に逢(あ)は被(る)可(べ)し/可シ∨被∨用‖意セラ活持之計略ヲ|。先被∨進セラ‖挙状代官ニ|者。公-所出-仕。諸亭之經廻。可キ∨申ス‖圖師(―)ヲ|也。奉行人ノ賄-賂。衆中ノ属託。上-衆ノ秘-計。口入頭人。内奏。屓贔。窺ヒ‖機嫌ヲ|可シ∨申ス∨之ヲ。状ノ謀實。越-境ノ相-論。未タ/ズ∨分タ‖甲子ノ次第ヲ|。譜代相傳之重書等者。於‖引付方ニ|。可シ∨被∨逢ハ‖御沙汰ニ|。▲頭人ハ或(ある)説(せつ)に沙汰の頭(かしら)をとる人今の物頭(ものかしら)也といへり。〔46ウ五〕
可(べし)∨被(る)∨用‖意(ようい)せら活持(くわつぢ)之(の)計略(けいりやく)を|。先(まづ)被(れ)∨進(しん)ぜられ‖擧状(きよじやう)於(を)代官(たいくわん)に|者(バ)。公-所(くしよ)の出-仕(しゆつし)。諸亭(しよてい)之(の)經廻(けいくわい)。可(べ)き∨申(まう)す‖図師(づし)を|也(なり)。奉行人(ぶぎやうにん)の賄-賂(わいろ)。衆中(しゆちゆう)の属託(ぞくたく)。上-衆(じやうしゆ)の秘-計(ひけい)。口入(くちいれ)頭人(とうにん)。内奏(ないさう)。屓贔(ひいき)。窺(うかが)ひ‖機嫌(きげん)を|可(べ)し∨申(まう)す∨之(これ)を。讓状(ゆづりじやう)謀實(ばうじつ)。越-境(ゑつきやう)の相-論(さうろん)。未(いまだ/ず)∨分(わか)た‖甲乙(かふをつ)の次第(したい)を|。譜代(ふだい)相傳(さうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)。於(おい)て‖引付方(ひきつけかた)に|。可(べ)し∨被(る)∨逢(あ)ハ‖御沙汰(ごさた)に|▲頭人ハ或(ある)説(せつ)に沙汰の頭(かしら)をとる人今の物頭(ものかしら)也といへり。〔83オ五・六〕
To>nin.トゥニン(頭人) 良い集団であれ、悪い集団であれ,とにかくある集団の頭目で長たる人.〔邦訳661l〕
とう-にん〔名〕【頭人】(一)かしらだつ人。をさ。頭目。首班者。首領。(二)鎌倉時代、引付衆などの頭首。吾妻鏡、四十、建長二年四月二日「引付事、巳尅以前可二始行一レ之、云二頭人一云二奉行人一、莫レ及二遲參一」(三)室町時代、政所、評定所、侍所などの長官。相京職鈔、一「執事、一人、政所之長官也、故に頭人と稱す」康冨記、嘉吉二年八月廿八日「御評定始日、與二頭人波多野出雲守一、座席令二相論一也、爲二評定衆一上者、任二位階上首一、可レ着二頭人出頭上一之由、肥前申レ之」花營三代記、貞治七年四月十日「侍所沙汰始、頭人(今川中書)宿所」(四)轉じて、足利氏の一族にて、評定衆たるものの稱。〔1388-4〕
口入(―イレ) 。〔元亀二年本190五〕〔天正十七年本中36オ五〕
口入(―ニウ) 。〔静嘉堂本214六〕
奉行人賄賂衆中属託上衆秘計口入頭人内奏屓贔窺譏嫌可申之〔至徳三年本〕
奉行人賄賂衆中屬託上衆秘計口入頭人内奏屓贔窺譏嫌可申之〔宝徳三年本〕
奉行人賄賂衆中属託上衆秘計口入頭人内奏屓贔伺機嫌可申之〔建部傳内本〕
奉-行-人ノ賄-賂(ワイロ)衆-中ノ属-託上-衆ノ秘-計口-入頭-人ノ内-奏ヲ屓-贔窺ヒ‖機-嫌ヲ|可∨申∨之ヲ〔山田俊雄藏本〕
奉行人ノ賄賂衆中ノ属託(ソクタク)上衆ノ秘計(ヒケイ)口入ノ頭人内奏(ナイソウ)屓贔(ヒイキ)窺ヒ‖機嫌(キケン)|可∨申∨之ヲ。〔経覺筆本〕
奉-行人ノ賄-賂(ワイロ)衆-中ノ属-託(ソクタク)上-衆ノ秘-計(ヒケイ)口-入頭-人(トウ―)内-奏(―ソウ)贔-屓(ヒ井キ)窺(ウカヽ)イ‖譏嫌(キケン)ヲ|可∨申∨之ヲ〔文明四年本〕※賄賂(ハイロ)。機嫌(キケン)。機(キ)。
このように、上記当代の古辞書にあっては、唯一『運歩色葉集』に「口入」の語が収載されていて、古写本『庭訓徃來』及び下記真字本に見えている語である。そして訓みは、「くちいれ」と「くニウ」とが併用されていたのであるまいか。
456口入ノ頭人(トウニン) 沙汰之頭ヲ取人也。〔謙堂文庫蔵四四左D〕
とあって、標記語を「口入」とし、その語注記は、未記載にする。
衆中ノ属託(ゾクタク)上衆ノ秘計(ケイ)口_入頭人(トウニン)衆中ノ属託(ソクタク)雜賞(サツシヤウ)也。〔下19ウ八〕
上衆(じやうしゆ)秘計(ひけい)の口入(くちいれ)/上衆秘計ノ口入 秘計ハ内々にて事をはかる人なり。〔62ウ三〕
活持(くハつち)之(の)計畧(けいりやく)を用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し。先(まづ)擧状(きよじやう)を代官(たいくハん)於(に)進(しん)ぜら被(れ)者(バ)公所(くしよ)の出仕(しゆつし)諸亭(しよてい)の經廻圖師(けいくわいづし)を申(まふ)す可(べ)き也。奉行人(ぶきやうにん)の賄賂(わいろ)衆中(しゆちう)の屬託(そくたく)上衆(しやうしゆ)乃秘計(ひけい)口入(くちいり)頭人(とうにん)内奏(ないそう)贔屓(ひいき)譏嫌(きげん)を窺(うかゝ)ひ之(これ)を申(まふ)す可(へ)し。讓状(ゆつりしやう)乃謀實(はうしつ)越境(ゑつきやう)の相論(さうろん)未(いまだ)甲乙(かふをつ)の次第(しだい)を分(わか)た未(さる)譜代(ふたい)相傳(さうでん)之(の)重書(ちうしよ)等(とう)者(ハ)引付方(ひきつけかた)に於(おいて)御沙汰(ごさた)に逢(あ)は被(る)可(べ)し/可シ∨被∨用‖意セラ活持之計略ヲ|。先被∨進セラ‖挙状代官ニ|者。公-所出-仕。諸亭之經廻。可キ∨申ス‖圖師(―)ヲ|也。奉行人ノ賄-賂。衆中ノ属託。上-衆ノ秘-計。口入頭人。内奏。屓贔。窺ヒ‖機嫌ヲ|可シ∨申ス∨之ヲ。状ノ謀實。越-境ノ相-論。未タ/ズ∨分タ‖甲子ノ次第ヲ|。譜代相傳之重書等者。於‖引付方ニ|。可シ∨被∨逢ハ‖御沙汰ニ|。▲口入ハ物事いひ入れする人。取次(とりつき)の類也。〔46ウ五〕
可(べし)∨被(る)∨用‖意(ようい)せら活持(くわつぢ)之(の)計略(けいりやく)を|。先(まづ)被(れ)∨進(しん)ぜられ‖擧状(きよじやう)於(を)代官(たいくわん)に|者(バ)。公-所(くしよ)の出-仕(しゆつし)。諸亭(しよてい)之(の)經廻(けいくわい)。可(べ)き∨申(まう)す‖図師(づし)を|也(なり)。奉行人(ぶぎやうにん)の賄-賂(わいろ)。衆中(しゆちゆう)の属託(ぞくたく)。上-衆(じやうしゆ)の秘-計(ひけい)。口入(くちいれ)頭人(とうにん)。内奏(ないさう)。屓贔(ひいき)。窺(うかが)ひ‖機嫌(きげん)を|可(べ)し∨申(まう)す∨之(これ)を。讓状(ゆづりじやう)謀實(ばうじつ)。越-境(ゑつきやう)の相-論(さうろん)。未(いまだ/ず)∨分(わか)た‖甲乙(かふをつ)の次第(したい)を|。譜代(ふだい)相傳(さうでん)之(の)重書(ぢうしよ)等(とう)者(ハ)。於(おい)て‖引付方(ひきつけかた)に|。可(べ)し∨被(る)∨逢(あ)ハ‖御沙汰(ごさた)に|▲口入ハ物事いひ入れする人。取次(とりつき)の類(るゐ)也。〔83オ五〕
Co>ju.コウジュ(口入) Cuchi ire.(口入れ) 仲介すること,または,人のために口をきいてやること.〔邦訳144l〕
くち-いれ〔名〕【口入】(一)くちいるること。くちだし。(二)此方(こなた)の用事を、彼方(かな―)へ言ひ入るること。言傳(ことづて)の仲立すること。ひきあはせ。口入(くにふ)。紹介。(三)奉公人の奉公口を、世話すること。又、それを營業とする人。ケイアン。雇人口入宿。心中重井筒(寳永、近松作)上、「堀江の口入れ、治右衞門といふ者ぢゃ」〔0529-3〕
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