BACK(「ことばの溜め池」表紙へ)
MAIN MENU
ことばの溜め池
ふだん何氣なく思っている「ことば」を、池の中にポチャンと投げ込んでいきます。ふと立ち寄ってお氣づきのことがございましたらご連絡ください。
一向(カウ) 。〔元亀二年本18一〕〔天正十七年本上7ウB〕〔西來寺本〕
一向(カフ) 。〔静嘉堂本12四〕
一向仰御哀憐恐惶敬白〔至徳三年本〕
一向仰御哀憐恐惶敬白〔宝徳三年本〕〔建部傳内本〕
一向仰二御哀憐(レン)ヲ一恐惶敬白〔山田俊雄藏本〕
一向ニ仰(アヲク)二御哀憐(アイレン)ヲ一。恐惶謹言〔経覺筆本〕
一向仰(アフク)レ御哀憐(アイレン)ヲ一恐惶敬白〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本の古写本は、「一向」と記載する。
一向(イツカウ/ヒトツ、キヤウ・ムカウ)[入・去] 。〔態藝門36六〕
一向(カウ) 。〔弘・言語進退門8二〕〔永・言語門5六〕
一位 ―種。<畧>。―六。―向。―行。<畧>―笑。〔堯・言語門5六〕
一位 ―種(シユ)。<畧>。―六。―向(カウ)。―行(カウ)。<畧>。―落索(ラクサク)木黒畫在之。〔両・言語門6六〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「一向」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。
545可∨被∨鳴(ナラ)‖一-磬ヲ|候也。一向ニ仰‖御哀憐|恐々敬白〔謙堂文庫藏五一左F〕
とあって、標記語「一向」の語を収載し、この語についての語注記は、未記載にする。
啓(ケイ)白計ヲ一。可レ被ルレ鳴(ナラ)ラサ二一磬(ケイ)ヲ一也。一向ニ仰ク二御哀憐(アイレン)ヲ一一磬ヲ鳴ス事ハ。上天下界ヲ驚(ヲトロ)カス心ナリ。啓白ハ。始メ結(ケツ)願ハ終ナリ。〔下28ウ五〜七〕
一向(いつかう)御哀憐(ごあいれん)を仰(あを)く/一向ニ仰ク二御哀憐ヲ一 一向ハ一と動にと云事なり。哀憐ハ皆あわれむと讀。今度の法会合力あれハ執行(とりおこな)ハれ合力なけれハ執行ハれすして志至されハ憐て合力あれと也。〔77ウ三〜六〕
とあって、この標記語「一向」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
但(たゞし)し佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようゐ)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)御助成(ごじよせい)に擬(ぎ)して之(これ)を執行(しゆぎやう)せら被(る)可(べ)し。御讃嘆(ごさんたん)之(の)に儀(ぎ)に非(あら)ずと雖(いへども)啓白(けいびやく)許(ばかり)を以(もつて)一磬(いつけい)を鳴(な)らさ被(る)可(べ)く候(さふら)ふ也(なり)。一向(いつかふ)に御哀憐(ごあいれん)を仰(あふ)ぐ恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)/但シ佛布施。并ニ被物。録物等ニ用意軽賤也。只擬シテ二御助成ニ一。可シレ被レ執二行セラ之ヲ一。雖レ非ズト二御讃嘆之儀ニ一。以二啓白許ヲ一。可レ被レ鳴ラサ二一磬ヲ一候フ也。一向ニ仰グ二御哀憐ヲ一。恐惶敬白。〔56オ五〜八〕
但(たゞし)佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようい)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)擬(ぎして)二御助成(ごじよせい)に一可(べし)レ被(る)レ執(しゆ)二行(ぎやうせ)之(これを)一雖(いへども)レ非(あら)ずと御讃嘆(ごさんたん)之(の)儀(ぎに)以(もつて)二啓白(けいびやく)許(ばかりを)可(へく)レ被(る)レ鳴(ならさ)二一磬(いつけい)を一候(さふら)也(なり)一向(いつかうに)仰(あふく)二御哀憐(ごあいれんを)一恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)。〔100ウ六〜101オ五・六〕
Icc?.イッカウ(一向) Fitomuqi.(一向き)なんとしても.例,Icc?ni tanomi zonzuru.(一向に頼み存ずる)どうしてもあなたにお願いします,あるいは,是非ともあなたにお願いいたします.¶Icc? naranu.(一向ならぬ)どんな場合であっても,決してあり得ない.→Ixxin(一心);Namaxijini;Sacague.〔邦訳323r〕
いッ-かう〔副〕【一向】〔ひとむきにの意、剪燈新話、註「一向、猶二一偏一」語燈録「一向者、正一直向也」〕(一)ひたすら。一意に。程子遺書「至レ於二書札一、於二儒者一事、最近然、一向好レ著、亦自喪レ志」(支那、宋の碩儒、程頴、程頤)三代實録、十七、貞觀十二年二月「穀倉院地子交易物、云云、置二專當一還致二物煩一、望請、從二停止一、府司一向交易奉レ進、詔並從レ之」職源抄、上、太政官「官中事、一向、左大臣統二領之一」運歩色葉集(天文)「一向、イッカウ」(二)俗に、意を轉じて、さらさらに。一切(イツサイ)。「一向、存じませぬ」佛教の語。餘事を思はず、唯、一事にのみ心を向くるさま。六十華嚴、十四「一向ニ專求二無上菩提一」無量壽經、下「一向專念二無量壽佛一」法苑珠林「一向唯樂レ無レ苦」〔0180-5〕
いッ-かう〔副〕【一向】〔前條の語と同一義なれど、佛經語として、別に説く〕佛教の語。餘事を思はず、唯、一事にのみ心を向くるさま。六十華嚴、十四「一向ニ專求二無上菩提一」無量壽經、下「一向專念二無量壽佛一」法苑珠林「一向唯樂レ無レ苦」〔0180-5〕
磬(ケイ) 。〔元亀二年本220十〕
磬(ケイ) 鳴物。〔静嘉堂本251七〕
磬(ケイ) 鳴物也。〔天正十七年本中55ウE〕
只擬御助成可被執行之雖非御讃嘆之儀以啓白許可被鳴一磬候也〔至徳三年本〕〔宝徳三年本〕
只擬御助成可被執行之雖非御讃嘆之儀以啓白計可被一磬候也〔建部傳内本〕
只擬(ナソラヘ)テ二御助成ニ一可レ被三執二行之ヲ一雖レ非二御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以二啓白許リヲ一可レ被レ鳴(ナラサ)二一磬(ケイ)ヲ一候也〔山田俊雄藏本〕
且擬二御助成一。可レ被レ執二行之ヲ一。雖レ非二御讃嘆(サンタン)ノ之儀ニ一。以二啓白計(ハカリ)ヲ一。可レ被レ鳴(ナラ)二一磬一候也。〔経覺筆本〕
只(タヽ)擬(ナソラヘナソラエテ)二御助成ニ一可シレ被レ執(トリ)二行之ヲ一雖レ非トレ御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以テ二啓白(ケイハク)ヒヤクレ許(ハカリ)ヲ一可レ被レ鳴(ナラサレ)二一磬(ケイ)ヲ一候フ也〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本の古写本は、「一磬」と記載し、訓みは、文明四年本・山田俊雄藏本に「(イツ)ケイ」と記載する。
磬(ケイ) 。〔器財門112三〕
磬(ケイ/―)[去] 。〔器財門593三〕
磬(ケイ)キン。〔弘・財宝門174五〕
磬(キン)ケイ。〔永・財宝門143六〕
磬(ケイ) 。〔堯・財宝門133四〕
磬(ケイ) 。〔器財門145三〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「磬」の語を以て収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。ここで、『運歩色葉集』の静嘉堂本と天正十七年本の語注記「鳴物(也)」が真字註には見られないなっている。
545可∨被∨鳴(ナラ)‖一-磬ヲ|候也。一向ニ仰‖御哀憐|恐々敬白〔謙堂文庫藏五一左F〕
とあって、標記語「一磬」の語を収載し、この語についての語注記は未記載にする。
啓(ケイ)白計ヲ一。可レ被ルレ鳴(ナラ)ラサ二一磬(ケイ)ヲ一也。一向ニ仰ク二御哀憐(アイレン)ヲ一一磬ヲ鳴ス事ハ。上天下界ヲ驚(ヲトロ)カス心ナリ。啓白ハ。始メ結(ケツ)願ハ終ナリ。〔下28ウ五〜七〕
許(ゆる)さハ一磬(いつけい)を鳴(なら)ら被て候也/許サハ一可レ被レ鳴二一磬ヲ一候也 此許も承知する事なり。磬ハもと石にて作りしか今ハ銅にて作る。其形等ハ圖説にくわし。こゝに言こゝろハ今度思ひ立たる事御称美あるへき事にハあらねとも先申入るゝ也。もし承知し玉ハゝ磬を一声打鳴らし玉へとなり。惣じて僧読ハ鳴物を以て相圖(あいづ)とするゆへ磬の音を聞て承知ありし事を知らんか為かくいひし也。畢音は早下の詞なり。〔77ウ三〜六〕
とあって、この標記語「一磬」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
但(たゞし)し佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようゐ)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)御助成(ごじよせい)に擬(ぎ)して之(これ)を執行(しゆぎやう)せら被(る)可(べ)し。御讃嘆(ごさんたん)之(の)に儀(ぎ)に非(あら)ずと雖(いへども)啓白(けいびやく)許(ばかり)を以(もつて)一磬(いつけい)を鳴(な)らさ被(る)可(べ)く候(さふら)ふ也(なり)。一向(いつかふ)に御哀憐(ごあいれん)を仰(あふ)ぐ恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)/但シ佛布施。并ニ被物。録物等ニ用意軽賤也。只擬シテ二御助成ニ一。可シレ被レ執二行セラ之ヲ一。雖レ非ズト二御讃嘆之儀ニ一。以二啓白許ヲ一。可レ被レ鳴ラサ二一磬ヲ一候フ也。一向ニ仰グ二御哀憐ヲ一。恐惶敬白▲磬ハ讀經(どくきやう)の始(はじめ)と終(をハり)とに打(うち)ならす物也。〔56オ五〜ウ一〕
但(たゞし)佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようい)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)擬(ぎして)二御助成(ごじよせい)に一可(べし)レ被(る)レ執(しゆ)二行(ぎやうせ)之(これを)一雖(いへども)レ非(あら)ずと御讃嘆(ごさんたん)之(の)儀(ぎに)以(もつて)二啓白(けいびやく)許(ばかりを)可(へく)レ被(る)レ鳴(ならさ)二一磬(いつけい)を一候(さふら)也(なり)一向(いつかうに)仰(あふく)二御哀憐(ごあいれんを)一恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)▲磬ハ讀經(どくきやう)の始(はじめ)と終(をハり)とハ打(うち)ならす物也。〔100ウ六〜101ウ一〕
†Qei.ケイ(磬) 坊主(Bonzos)がきまった時刻に行なう勤めの際に打ち鳴らすもので,銅製の四角形のもの.¶Qeiuo narasu.(磬を鳴らす)この道具を打ち鳴らす.〔邦訳481r〕
けい〔名〕【磬】〔釋名「磬、?也、聲堅、磬磬然」〕樂器、一種の、甚だ堅き石を用ゐ、架に掛けて撃つ、清く高き響きをなす。今は多く、銅にて作る、銅磬と云ひ、略して、專ら、磬とも云ふ。キン。ウチイシ。白虎通「磬者、夷則氣象、萬物之成」宇津保物語、祭使17「男君たち、笛ども吹きあはせ、琵琶、御こと、磬うたせ、こかの聲にあはせて」〔0594-1〕
啓白(ケイヒヤク) 。〔元亀二年本215一〕〔天正十七年本中51ウ七〕
啓白(ヒヤク) 。〔静嘉堂本244七〕
只擬御助成可被執行之雖非御讃嘆之儀以啓白許可被鳴一磬候也〔至徳三年本〕〔宝徳三年本〕
只擬御助成可被執行之雖非御讃嘆之儀以啓白計可被一磬候也〔建部傳内本〕
只擬(ナソラヘ)テ二御助成ニ一可レ被三執二行之ヲ一雖レ非二御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以二啓白許リヲ一可レ被レ鳴(ナラサ)二一磬(ケイ)ヲ一候也〔山田俊雄藏本〕
且擬二御助成一。可レ被レ執二行之ヲ一。雖レ非二御讃嘆(サンタン)ノ之儀ニ一。以二啓白計(ハカリ)ヲ一。可レ被レ鳴(ナラ)二一磬一候也。〔経覺筆本〕
只(タヽ)擬(ナソラヘナソラエテ)二御助成ニ一可シレ被レ執(トリ)二行之ヲ一雖レ非トレ御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以テ二啓白(ケイハク)ヒヤクレ許(ハカリ)ヲ一可レ被レ鳴(ナラサレ)二一磬(ケイ)ヲ一候フ也〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本の古写本は、「啓白」と記載し、訓みは文明四年本に「ケイハク」、左訓に「(ケイ)ヒヤク」と記載する。
啓白 ケイヒヤク。〔黒川本・畳字門中100オ八〕
啓白 〃達タツ/ヒラキタツス。〔巻第七・畳字門25一〕
啓白(ケイハク/ヒラク、シロシ・マウス)[上・入] 教家(ケウケ)ニ所レ言。〔態藝門599八〕
啓白(ケイビヤク) ―箚(サツ)。〔永・言語門145七〕
啓白(ケイハク) ―箚。〔堯・言語進退門135三〕
啓達(ケイタツ) ―上(シヤウ)。―白(ビヤク)。〔言辞門147一〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「啓白」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。但し、広本『節用集』にのみ語注記が見えているのだが、下記真字本の語注記とは異なっている。そして、『庭訓往來註』がどちらの訓みを用いたのかだが国会図書館蔵左貫注に「啓白(ビヤク)」とあって、此所では「ケイビヤク」と訓ずるものと云うことになる。
544且擬(ナソラヘ/キシテ)御助成ニ|可∨被ル執‖-行ハ之ヲ|雖∨非ト‖御讃嘆(ヲサンタン)ノ之儀ニ|以‖啓-白-斗ヲ| 啓白ハ口斗始コト也。〔謙堂文庫藏五一左E〕
※――ハ口バカリ始メヨト云心也。――トハ禅家ノ禅家ノ啓建ト同意也。〔国会図書館蔵『左貫注庭訓』書込〕
※啓白トハ禅家ノ啓建ト同意也。又啓白ハ仏ニ白スト云心也。〔天理図書館蔵『庭訓往來註』書込〕
とあって、標記語「啓白」の語を収載し、この語についての語注記は、「啓白は口ばかり始ることなり」と記載する。
啓(ケイ)白計ヲ一。可レ被ルレ鳴(ナラ)ラサ二一磬(ケイ)ヲ一也。一向ニ仰ク二御哀憐(アイレン)ヲ一一磬ヲ鳴ス事ハ。上天下界ヲ驚(ヲトロ)カス心ナリ。啓白ハ。始メ結(ケツ)願ハ終ナリ。〔下28ウ五〜七〕
御讃嘆(ごさんたん)之(の)に儀(ぎ)に非(あら)すと雖(いへとも)啓白(けいはく)す/雖∨非スト‖御讃嘆之儀ニ|以テ‖啓-白ス 讃嘆ハ称美する事也。啓白ハ申入るゝといふ事也。〔77ウ一・二〕
とあって、この標記語「啓白」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
但(たゞし)し佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようゐ)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)御助成(ごじよせい)に擬(ぎ)して之(これ)を執行(しゆぎやう)せら被(る)可(べ)し。御讃嘆(ごさんたん)之(の)に儀(ぎ)に非(あら)ずと雖(いへども)啓白(けいびやく)許(ばかり)を以(もつて)一磬(いつけい)を鳴(な)らさ被(る)可(べ)く候(さふら)ふ也(なり)。一向(いつかふ)に御哀憐(ごあいれん)を仰(あふ)ぐ恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)/但シ佛布施。并ニ被物。録物等ニ用意軽賤也。只擬シテ二御助成ニ一。可シレ被レ執二行セラ之ヲ一。雖レ非ズト二御讃嘆之儀ニ一。以二啓白許ヲ一。可レ被レ鳴ラサ二一磬ヲ一候フ也。一向ニ仰グ二御哀憐ヲ一。恐惶敬白▲啓白ハ始(はしめ)也。經(きやう)の發端(ほつたん)をいふ。〔56オ一〕
但(たゞし)佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようい)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)擬(ぎして)二御助成(ごじよせい)に一可(べし)レ被(る)レ執(しゆ)二行(ぎやうせ)之(これを)一雖(いへども)レ非(あら)ずと御讃嘆(ごさんたん)之(の)儀(ぎに)以(もつて)二啓白(けいびやく)許(ばかりを)可(へく)レ被(る)レ鳴(ならさ)二一磬(いつけい)を一候(さふら)也(なり)一向(いつかうに)仰(あふく)二御哀憐(ごあいれんを)一恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)▲啓白ハ始(はじめ)也。經(きやう)の發端(ほつたん)をいふ。〔100ウ六〜101オ六〕
けい-はく〔名〕【啓白】けいびゃくの條を見よ。〔0600-2〕
けい-びゃく〔名〕【啓白】(一)物申すこと。申し上ぐること。(~佛に對してなどに云ふ)吾妻鑑、一、治承四年七月五日「供三香花於二佛前一、啓二白其旨趣一」源平盛衰記、三、澄憲祈レ雨事「啓白に言を盡し、龍~に理を責めて、雨を祈り乞ひたまひけり」(二)又、經文の小口のみを讀むを云ふと云ふ。庭訓往來、九月「雖雖レ非二御讃嘆之儀一。以二啓白許一。可レ被レ鳴二一磬一候也」和訓栞、けいびゃく「啓白と書けり、經文の小口ばかりを讀む義也と云へり」〔0600-3〕
讃嘆(サンタン) 。〔元亀二年本270八〕
讃嘆(サンダン) 。〔静嘉堂本308七〕
只擬御助成可被執行之雖非御讃嘆之儀以啓白許可被鳴一磬候也〔至徳三年本〕〔宝徳三年本〕
只擬御助成可被執行之雖非御讃嘆之儀以啓白計可被一磬候也〔建部傳内本〕
只擬(ナソラヘ)テ二御助成ニ一可レ被三執二行之ヲ一雖レ非二御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以二啓白許リヲ一可レ被レ鳴(ナラサ)二一磬(ケイ)ヲ一候也〔山田俊雄藏本〕
且擬二御助成一。可レ被レ執二行之ヲ一。雖レ非二御讃嘆(サンタン)ノ之儀ニ一。以二啓白計(ハカリ)ヲ一。可レ被レ鳴(ナラ)二一磬一候也。〔経覺筆本〕
只(タヽ)擬(ナソラヘナソラエテ)二御助成ニ一可シレ被レ執(トリ)二行之ヲ一雖レ非トレ御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以テ二啓白(ケイハク)ヒヤクレ許(ハカリ)ヲ一可レ被レ鳴(ナラサレ)二一磬(ケイ)ヲ一候フ也〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本の古写本は、「讃嘆」と記載し、訓みは、、山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本に「サンタン」と記載する。
讃嘆 サンタン。〔黒川本・畳字門下41ウ七〕
讃歎 〃頌。〃論。〃衆。〔巻第八・畳字門447二〕
讃歎(サンタン/ホムル、ナゲク)[去・平去] 。〔態藝門790八〕
讃歎(サンダン) 。〔弘・言語進退門214八〕
讃歎(サンダン) 嘆同。―佛乗(フツせウ)。〔言辞門180六〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「讃嘆」と「讃歎」の両語表記が見られ、前者の表記は、三卷本『色葉字類抄』『運歩色葉集』が収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。
544且擬(ナソラヘ/キシテ)御助成ニ|可∨被ル執‖-行ハ之ヲ|雖∨非ト‖御讃嘆(ヲサンタン)ノ之儀ニ|以‖啓-白-斗ヲ| 啓白ハ口斗始コト也。〔謙堂文庫藏五一左E〕
※説法ナトスル樣心也。〔国会図書館蔵『左貫注庭訓』書込〕
とあって、標記語「讃嘆」の語を収載し、この語についての語注記は未記載にする。
禄物等用意輕賎也只擬(キシ)二御助成ニ一可レ被ルレ執二行之ヲ一。雖冫レ非ト二御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以二禄(ロク)物ハ僧衆ノ引物ナリ。定ル禄ナリ。〔下28ウ四〜五〕
御讃嘆(ごさんたん)之(の)に儀(ぎ)に非(あら)すと雖(いへとも)啓白(けいはく)す/雖∨非スト‖御讃嘆之儀ニ|以テ‖啓-白ス 讃嘆ハ称美する事也。啓白ハ申入るゝといふ事也。〔77ウ一・二〕
とあって、この標記語「讃嘆」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
但(たゞし)し佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようゐ)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)御助成(ごじよせい)に擬(ぎ)して之(これ)を執行(しゆぎやう)せら被(る)可(べ)し。御讃嘆(ごさんたん)之(の)に儀(ぎ)に非(あら)ずと雖(いへども)啓白(けいびやく)許(ばかり)を以(もつて)一磬(いつけい)を鳴(な)らさ被(る)可(べ)く候(さふら)ふ也(なり)。一向(いつかふ)に御哀憐(ごあいれん)を仰(あふ)ぐ恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)/但シ佛布施。并ニ被物。録物等ニ用意軽賤也。只擬シテ二御助成ニ一。可シレ被レ執二行セラ之ヲ一。雖レ非ズト二御讃嘆之儀ニ一。以二啓白許ヲ一。可レ被レ鳴ラサ二一磬ヲ一候フ也。一向ニ仰グ二御哀憐ヲ一。恐惶敬白▲讃嘆ハ法義(ほふき)の惑(よろこび)をいふ。〔56ウ一〕
但(たゞし)佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようい)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)擬(ぎして)二御助成(ごじよせい)に一可(べし)レ被(る)レ執(しゆ)二行(ぎやうせ)之(これを)一雖(いへども)レ非(あら)ずと御讃嘆(ごさんたん)之(の)儀(ぎに)以(もつて)二啓白(けいびやく)許(ばかりを)可(へく)レ被(る)レ鳴(ならさ)二一磬(いつけい)を一候(さふら)也(なり)一向(いつかうに)仰(あふく)二御哀憐(ごあいれんを)一恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)▲讃嘆ハ法義(ほふぎ)の惑(よろこび)をいふ。〔100ウ六〜101オ六〕
Sandan.サンダン(讃談・讃歎) Fome cataru.(讃め談る)ある事を褒めて話すこと,あるいは,讃辞をもって論ずること.ただし,一般にはある事を話したり,論じたりする意に用いられる.〔邦訳554l〕
さん-たん〔名〕【讃嘆】感じ、ほむること。ほめ、そやすこと。〔0846-1〕
さん-だん〔名〕【讃歎・讃嘆】佛教に云ふ語。偈頌(ゲジユ)を以て、佛コを稱揚すること。大智度論、三十、讃歎「美二其功コ一爲レ讃、謂レ之不レ足、則又稱二揚之一、故曰レ歎」往生論註、下「讃、讃揚也、歎、歌歎也」古き和讃(ワサン)。魚山軣介(タイガイ)集、法華讃嘆「法花經を、我が得しことは、薪(たきゞ)伐(こ)り、菜摘み、水汲み、事へてぞ得し、事へてぞ得し」(法華經、提婆品に、採二薪及菓?一、隨レ時恭敬シテ與フトアリ、此讃嘆は、行基菩薩の作、魚山(ギヨサン)は、山城國、大原村の来迎院なり)源氏物語、三十九、御法5「薪伐(こ)るほど、さんだんの聲も、そこら群集(つど)ひたるひびき、おどろおどろしきを」(法華八講の五卷に日の、薪の行道(ギヤウダウ)に、行基の歌を聲明(シヤウミヤウ)にして、行道するを云へるなり)」源平盛衰記、三十二、福原管絃講事「安養世界の玉の橋には、如來讃嘆の曲を奏し、云云、苦空無我の音、妙にして、更に妙なれば」〔0846-2〕
准(ナゾラウ)定凖(同)擬(同) 。〔元亀二年本169三〕
准(ナゾラウ)定凖(同)擬(同)定 。〔静嘉堂本188八〕
准(ナソラウ)定凖(同)擬(同) 。〔天正十七年本中24オ六〕〔西來寺本〕
只擬御助成可被執行之雖非御讃嘆之儀以啓白許可被鳴一磬候也〔至徳三年本〕〔宝徳三年本〕
只擬御助成可被執行之雖非御讃嘆之儀以啓白計可被一磬候也〔建部傳内本〕
只擬(ナソラヘ)テ二御助成ニ一可レ被三執二行之ヲ一雖レ非二御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以二啓白許リヲ一可レ被レ鳴(ナラサ)二一磬(ケイ)ヲ一候也〔山田俊雄藏本〕
且擬二御助成一。可レ被レ執二行之ヲ一。雖レ非二御讃嘆(サンタン)ノ之儀ニ一。以二啓白計(ハカリ)ヲ一。可レ被レ鳴(ナラ)二一磬一候也。〔経覺筆本〕
只(タヽ)擬(ナソラヘナソラエテ)二御助成ニ一可シレ被レ執(トリ)二行之ヲ一雖レ非トレ御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以テ二啓白(ケイハク)ヒヤクレ許(ハカリ)ヲ一可レ被レ鳴(ナラサレ)二一磬(ケイ)ヲ一候フ也〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「擬」と記載する。
競馬(ケイバ) 五月五日ノ事擬(ナソラフ)二支那ノ競渡(ケイト)ニ一。〔神祇門38二〕
?擬(アテガウ・同/―、キ・ナゾラウ)[○・上] 。〔態藝門770二〕
准(ナゾラウ)定擬(同)同凖(同)同。〔弘・言語進退門140三〕
凖(ナゾラフ)擬(同) 。〔言辞門111八〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「擬」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。
544且擬(ナソラヘ/キシテ)御助成ニ|可∨被ル執‖-行ハ之ヲ|雖∨非ト‖御讃嘆(ヲサンタン)ノ之儀ニ|以‖啓-白-斗ヲ| 啓白ハ口斗始コト也。〔謙堂文庫藏五一左E〕
とあって、標記語「擬」の語を収載し、この語についての語注記は、未記載にする。
禄物等用意輕賎也只擬(キシ)二御助成ニ一可レ被ルレ執二行之ヲ一。雖冫レ非ト二御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以二禄(ロク)物ハ僧衆ノ引物ナリ。定ル禄ナリ。〔下28ウ四〜五〕
只(たゞ)御助成(ごじよせい)を擬(ぎ)して之(これ)を執行(しゆぎやう)せら被可/只擬兎二御助成一可ラレ被レ執二行之ヲ一 擬ハこひねかふ意なり。助成の注ハ前に見へたり。こゝにいふこゝろハ布施なとの手當も至て少きゆへ一己の力にてハ及ひかたし。合力(かうりよく)して玉ハらハ思ひ立たる法会も執り行ふ事なるへしと也。。〔77オ八〜77ウ一〕
とあって、この標記語「擬」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
但(たゞし)し佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようゐ)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)御助成(ごじよせい)に擬(ぎ)して之(これ)を執行(しゆぎやう)せら被(る)可(べ)し。御讃嘆(ごさんたん)之(の)に儀(ぎ)に非(あら)ずと雖(いへども)啓白(けいびやく)許(ばかり)を以(もつて)一磬(いつけい)を鳴(な)らさ被(る)可(べ)く候(さふら)ふ也(なり)。一向(いつかふ)に御哀憐(ごあいれん)を仰(あふ)ぐ恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)/但シ佛布施。并ニ被物。録物等ニ用意軽賤也。只擬シテ二御助成ニ一。可シレ被レ執二行セラ之ヲ一。雖レ非ズト二御讃嘆之儀ニ一。以二啓白許ヲ一。可レ被レ鳴ラサ二一磬ヲ一候フ也。一向ニ仰グ二御哀憐ヲ一。恐惶敬白。〔56オ五〜八〕
但(たゞし)佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようい)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)擬(ぎして)二御助成(ごじよせい)に一可(べし)レ被(る)レ執(しゆ)二行(ぎやうせ)之(これを)一雖(いへども)レ非(あら)ずと御讃嘆(ごさんたん)之(の)儀(ぎに)以(もつて)二啓白(けいびやく)許(ばかりを)可(へく)レ被(る)レ鳴(ならさ)二一磬(いつけい)を一候(さふら)也(なり)一向(いつかうに)仰(あふく)二御哀憐(ごあいれんを)一恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)。〔100ウ六〜101オ五・六〕
なぞら・ふ〔他動詞、下二〕【凖・准・擬】比ぶ。たぐふる。なずらふ。なぞふ。よそふ。易林本節用集(慶長)上、言辭門「凖、擬、ナゾラフ」源氏物語、廿五、螢「彼の監が憂かりしさまには、なぞらふべきけはひならねど」〔1457-4〕
禄物(ロクフツ) 。〔元亀二年本22六〕
禄物(ブツ) 。〔静嘉堂本19七〕
禄物(ロクモツ) 。〔天正十七年本上10ウE〕〔西來寺本〕
但仏布施并被物禄物等用意輕賤也〔至徳三年本〕〔建部傳内本〕
但佛布施并被物禄物等用意輕賤也〔宝徳三年本〕
但佛布施并被物禄物等用意輕賤也〔山田俊雄藏本〕
但シ仏布施并ニ被物録物等ノ用意軽賤(キヤウセン)也〔経覺筆本〕
但シ佛布施(フツフせ)。并被物(ヒフツ)。禄物等ニ用意(ヨウイ)軽賤(キヤウせン)也〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本の古写本は、「禄物」と記載し、経覺筆本だけが「録物」と記載する。
禄物 ロクモツ。〔黒川本・雜物門上14ウ四〕
禄物 。〔巻第一・雜物門125五〕
禄物(ロクモツ/タマモノ、―)[入・入] 。〔態藝門47四〕
禄物(ロクモツ) 猿楽取之。〔弘・財宝門15八〕
禄物(ロクモツ) 被物(ヒモツ)。―衫。〔衣食門11七〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「禄物」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。
543録-物-等ノ用意軽賤也 錢也。又棒録引出物等歟。〔謙堂文庫藏五一左D〕
※天理図書館蔵『庭訓往來註』は「禄物」、語注記「捧禄」と記載する。
※国会図書館蔵『左貫注庭訓』は、「録物」とし、書込に「禄」と表記あり。
※東大図書館蔵『庭訓往來古註』は、上記謙堂文庫に同じ表記。
とあって、標記語「録物」の語を収載し、この語についての語注記は、「錢なり。又捧禄引出物等か」と記載する。この標記語だが、諸本に上記の如き異同が見受けられる。
禄物等用意輕賎也只擬(キシ)二御助成ニ一可レ被ルレ執二行之ヲ一。雖冫レ非ト二御讃嘆(サンタン)之儀ニ一以二禄(ロク)物ハ僧衆ノ引物ナリ。定ル禄ナリ。〔下28ウ四〜五〕
并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようゐ)軽賤(けいせん)也(なり)/并ニ被物。録物等ニ用意軽賤也 被物禄物ハ何れも導師衆僧への引物なり。軽賤とハ手軽(てかる)にして少(すくなき)を云也。〔77オ六・七〕
とあって、この標記語「録物」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
但(たゞし)し佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようゐ)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)御助成(ごじよせい)に擬(ぎ)して之(これ)を執行(しゆぎやう)せら被(る)可(べ)し。御讃嘆(ごさんたん)之(の)に儀(ぎ)に非(あら)ずと雖(いへども)啓白(けいびやく)許(ばかり)を以(もつて)一磬(いつけい)を鳴(な)らさ被(る)可(べ)く候(さふら)ふ也(なり)。一向(いつかふ)に御哀憐(ごあいれん)を仰(あふ)ぐ恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)/但シ佛布施。并ニ被物。録物等ニ用意軽賤也。只擬シテ二御助成ニ一。可シレ被レ執二行セラ之ヲ一。雖レ非ズト二御讃嘆之儀ニ一。以二啓白許ヲ一。可レ被レ鳴ラサ二一磬ヲ一候フ也。一向ニ仰グ二御哀憐ヲ一。恐惶敬白▲被物ハ絹布(けんぷ)の類(るい)。録物ハ金銭の類。共に僧衆(そうしゆ)への引物(ひきもの)也。〔56オ五〜八〕
但(たゞし)佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようい)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)擬(ぎして)二御助成(ごじよせい)に一可(べし)レ被(る)レ執(しゆ)二行(ぎやうせ)之(これを)一雖(いへども)レ非(あら)ずと御讃嘆(ごさんたん)之(の)儀(ぎに)以(もつて)二啓白(けいびやく)許(ばかりを)可(へく)レ被(る)レ鳴(ならさ)二一磬(いつけい)を一候(さふら)也(なり)一向(いつかうに)仰(あふく)二御哀憐(ごあいれんを)一恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)▲被物ハ絹布(けんふ)の類(るゐ)。録物ハ金銭(きんせん)の類。共に僧衆(そうしゆ)へ引物(ひきもの)也。〔100ウ六〜101オ五・六〕
ろく-もつ〔名〕【禄物】禄として賜ふ物。又、當座の賜物。特に布施の錢。庭訓往來、九月「佛布施、并被物、禄物等用意、輕賤也」〔2153-3〕
被物(ブツ) 。〔元亀二年本342四〕
被物(ヒブツ) 。〔静嘉堂本410五〕
但仏布施并被物禄物等用意輕賤也〔至徳三年本〕〔建部傳内本〕
但佛布施并被物禄物等用意輕賤也〔宝徳三年本〕
但佛布施并被物禄物等用意輕賤也〔山田俊雄藏本〕
但シ仏布施并ニ被物録物等ノ用意軽賤(キヤウセン)也〔経覺筆本〕
但シ佛布施(フツフせ)。并被物(ヒフツ)。禄物等ニ用意(ヨウイ)軽賤(キヤウせン)也〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「被物」と記載し、訓みは、文明四年本に「ヒフツ」と記載する。
被物(ヒモツ)禄物(ロクモツ) 。〔言辞門227一〕
このように、上記当代の古辞書においては、『運歩色葉集』と易林本『節用集』に標記語「被物」の語を収載していて、各訓みが異なっている。これが古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。そして、この訓み方が注目されてくるのである。
542但佛布施并被物 潅頂之時、児之黄作ノ太刀ニ素絹ヲ添テ持出也。絹布之類トモ云也云々。〔謙堂文庫藏五一左C〕
※「被物―絹布ノ類也」左貫注庭訓(国会図書館蔵)書込。
とあって、標記語「被物」の語を収載し、訓は未記載にする。この語についての語注記は、「潅頂の時、児の黄作の太刀に素絹を添て持出すなり。絹布の類とも云ふなり云々」と記載する。
被(ヒ)物ト云ハ。カフムル物ト書リ。俗儀(ソクギ)ナラバカケ物ト云ヘシ。譬(タト)ヘハ。兒(チゴ)ナンドヲ出スニコシラヒ綾羅錦繍(レウラキンシウ)ノ類ヒ衣(イ)裳小袖ノ部類ヲ刷(カヒツクロフ)テ此兒ニ持せテヤル也。是ハ導師好士ノ引物ナリ。〔下28ウ二〜四〕
并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようゐ)軽賤(けいせん)也(なり)/并ニ被物。録物等ニ用意軽賤也 被物禄物ハ何れも導師衆僧への引物なり。軽賤とハ手軽(てかる)にして少(すくなき)を云也。〔77オ六・七〕
とあって、この標記語「被物」の語をもって収載し、訓みは「ヒモツ」で語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
但(たゞし)し佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようゐ)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)御助成(ごじよせい)に擬(ぎ)して之(これ)を執行(しゆぎやう)せら被(る)可(べ)し。御讃嘆(ごさんたん)之(の)に儀(ぎ)に非(あら)ずと雖(いへども)啓白(けいびやく)許(ばかり)を以(もつて)一磬(いつけい)を鳴(な)らさ被(る)可(べ)く候(さふら)ふ也(なり)。一向(いつかふ)に御哀憐(ごあいれん)を仰(あふ)ぐ恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)/但シ佛布施。并ニ被物。録物等ニ用意軽賤也。只擬シテ二御助成ニ一。可シレ被レ執二行セラ之ヲ一。雖レ非ズト二御讃嘆之儀ニ一。以二啓白許ヲ一。可レ被レ鳴ラサ二一磬ヲ一候フ也。一向ニ仰グ二御哀憐ヲ一。恐惶敬白▲被物ハ絹布(けんぷ)の類(るい)。禄物ハ金銭の類。共に僧衆(そうしゆ)への引物(ひきもの)也。〔56オ五〜八〕
但(たゞし)佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようい)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)擬(ぎして)二御助成(ごじよせい)に一可(べし)レ被(る)レ執(しゆ)二行(ぎやうせ)之(これを)一雖(いへども)レ非(あら)ずと御讃嘆(ごさんたん)之(の)儀(ぎに)以(もつて)二啓白(けいびやく)許(ばかりを)可(へく)レ被(る)レ鳴(ならさ)二一磬(いつけい)を一候(さふら)也(なり)一向(いつかうに)仰(あふく)二御哀憐(ごあいれんを)一恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)▲被物ハ絹布(けんふ)の類(るゐ)。禄物ハ金銭(きんせん)の類。共に僧衆(そうしゆ)へ引物(ひきもの)也。〔100ウ六〜101オ五・六〕
Caburimooo.カブリモノ(被物) 頭にかぶる物.〔邦訳71r〕
布施(せ) 。〔元亀二年本223五〕
布施(フせ) 。〔静嘉堂本255六〕〔天正十七年本中57オ二〕
但仏布施并被物禄物等用意輕賤也〔至徳三年本〕〔建部傳内本〕
但佛布施并被物禄物等用意輕賤也〔宝徳三年本〕
但佛布施并被物禄物等用意輕賤也〔山田俊雄藏本〕
但シ仏布施并ニ被物録物等ノ用意軽賤(キヤウセン)也〔経覺筆本〕
但シ佛布施(フツフせ)。并被物(ヒフツ)。禄物等ニ用意(ヨウイ)軽賤(キヤウせン)也〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「布施」と記載し、訓みは、文明四年本に「フセ」と記載する。
布施 フせ。〔黒川本・畳字門中107一〕
布施 〃薩。〃演。〔巻第七・畳字門86二〕
布施(フせ/ヌノ、シ・ホドコス)[去・平去] 又云二?金(シンキン)ト一范叔(ハンシユク)始レ之。金剛經註云。布施ハ是レ亊行ナリ。盖シ施ニ有二三種一。資生施。無畏施。法施也。資生施トハ者。施スニ以ス二財寳ヲ一。資二他ノ生ヲ一也。無畏者。持戒ヲ不レ悩二無寃ヲ一忍辱ハ不レ報二有寃一。法施者精進ヲ不レ倦二説法一。一説ニ布者普也。施者捨也。菩薩ノ所レ修六度梵行ハ以二布施一爲二初度ト一。又云。布者普也。施者散也。能ク普ク散二盡心中ノ妄念習氣ノ煩惱ヲ一。四相泯絶兎无レ所二蘊積スル一。是レ真ノ布施也(ナリ)。又説ニ。布施者由(ヨル)不ルニレ住二六塵ノ境界ニ一。又不兎レ住二有漏ノ分別ニ一。惟當下返二皈兎清浄ニ一。了中万法ノ空寂ナル添上。若シ不レハレ了二此意一。惟増二諸業ヲ一。故須下内ニ除テ二貪愛ヲ一。外ニ行中布施ヲ上内外相應スル獲ル添レ福ヲ無量ナリ。〔態藝門623二〕
布施(セ) 。〔弘・言語進退門183三〕
布施(フせ) 。〔永・言語門149九〕〔尭・人名門137七・言語門139八〕
布施(フセ) 。〔名字門150一〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「布施」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。とりわけ、広本『節用集』の注記内容は特異なほど詳細な記述となっていて、これは他の資料からの引用と見なければ成るまい。
542但佛布施并被物 潅頂之時、児之黄作ノ太刀ニ素絹ヲ添テ持出也。絹布之類トモ云也云々。〔謙堂文庫藏五一左C〕
とあって、標記語「布施」の語を収載し、この語についての語注記は、「潅頂の時、児の黄作の太刀に素絹を添て持出すなり。絹布の類とも云ふなり云々」と記載する。
非人施(セ)行等也但シ佛ノ布施并ニ非人ニ施行スト云ハ。毎日アラザル者ノ門乞(カトコイ)ヲソラサズ物ヲ引是也。布施ト書テ布ヲ施ストヨメリ。是ハ苑殊(ノンジユ)ト云者仕始タル事也。是ニ子細多シ。〔下28オ八〜ウ二〕
但(たゞし)し佛(ぶつ)布施(ふせ)/但シ佛布施 仏事の布施なり。布施ハしきほとこすと讀。物を人にほとこす事なり。〔77オ五・六〕
とあって、この標記語「布施」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
但(たゞし)し佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようゐ)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)御助成(ごじよせい)に擬(ぎ)して之(これ)を執行(しゆぎやう)せら被(る)可(べ)し。御讃嘆(ごさんたん)之(の)に儀(ぎ)に非(あら)ずと雖(いへども)啓白(けいびやく)許(ばかり)を以(もつて)一磬(いつけい)を鳴(な)らさ被(る)可(べ)く候(さふら)ふ也(なり)。一向(いつかふ)に御哀憐(ごあいれん)を仰(あふ)ぐ恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)/但シ佛布施。并ニ被物。録物等ニ用意軽賤也。只擬シテ二御助成ニ一。可シレ被レ執二行セラ之ヲ一。雖レ非ズト二御讃嘆之儀ニ一。以二啓白許ヲ一。可レ被レ鳴ラサ二一磬ヲ一候フ也。一向ニ仰グ二御哀憐ヲ一。恐惶敬白▲仏布施ハ仏事(ぶつじ)ニ布く施物(せもつ)也。〔56オ五〜八〕
但(たゞし)佛(ぶつ)布施(ふせ)并(ならび)に被物(ひもつ)録物等(ろくもつとう)用意(ようい)軽賤(けいせん)也(なり)只(たゞ)擬(ぎして)二御助成(ごじよせい)に一可(べし)レ被(る)レ執(しゆ)二行(ぎやうせ)之(これを)一雖(いへども)レ非(あら)ずと御讃嘆(ごさんたん)之(の)儀(ぎに)以(もつて)二啓白(けいびやく)許(ばかりを)可(へく)レ被(る)レ鳴(ならさ)二一磬(いつけい)を一候(さふら)也(なり)一向(いつかうに)仰(あふく)二御哀憐(ごあいれんを)一恐惶(きやうくはう)敬白(けいはく)▲仏布施ハ仏事(ぶつじ)ニ布く施物(せもつ)也。〔100ウ六〜101オ五〕
Fuxe.フセ(布施) 何かのお勤めや法事などに対して,坊主(Bõzos)に与える寄付.¶Fuxeuo suru.(布施をする)上のような寄付をする.→Fuxemot;Rocufaramit.〔邦訳287l〕
ふ-せ〔名〕【布施】〔梵語、D?na.(檀那)の譯語。又、布襯捨施の略と。襯、?、殴皆同じ。増一阿含經「??、梵語、此云二檀施一」〕佛、及、僧に施し與ふるもの。品物を以て施すことを財施と云ひ、教法を以て施すことを法施と云ふ。法界次第「檀那、秦言二布施一」大乘義章、十一「言二布施一者、以二己財事一、分布二與他一、名レ之爲レ布、名?レ己惠レ人、目レ之爲レ施」大智度論、三「以二財寳一布施、是名二下布施一、以レ身布施、是名二中布施一、種種施中心不レ著者、是名二上布施一」持統紀、八年五月、金光明經を讀めとありて「其布施(ヲクリモノハ)以二當國官物一充レ之」萬葉集、五40「布施置きて、吾は乞ひ?む、欺かず、ただに率(ゐ)行きて、天道(あまぢ)知らしめ」源氏物語、三十七、鈴蟲6「御誦經のふせなど、いと所せきまで、俄になんことひろごりける」源平盛衰記、三、院女院嚴嶋御幸事「以二此財施法施之功一、能仰二彼權化實化之納受一」〔1751-3〕
非人(ニン) 。〔元亀二年本341八〕〔静嘉堂本409六〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏。九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「非人」と記載し、訓みは、文明四年本に「ヒニン」と記載する。
非人(ヒニン/アラズ、シン・ヒト)[○・平] 乞食。〔態藝門1039四〕
非人(ヒニン) 。〔弘・人倫門252二〕〔永・人倫門215五〕〔尭・人倫門200九〕
非人(ヒニン) 。 〔人倫門222六〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「非人」の語を収載していて、このうち広本『節用集』だけに短い注記「乞食」が記載されている。そして古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語だが、この語注記は記載を見ないものとなっている。いわば、広本『節用集』特有の注記語句となっている。
541接待(セツタイ)千僧供養非-人施-行等也。優填王始也。日本ニハ嵯峨天王始。〔謙堂文庫藏五一左B〕
とあって、標記語「非人」の語を収載し、この語についての語注記は、未記載する。
非人施(セ)行等也但シ佛ノ布施并ニ非人ニ施行スト云ハ。毎日アラザル者ノ門乞(カトコイ)ヲソラサズ物ヲ引是也。布施ト書テ布ヲ施ストヨメリ。是ハ苑殊(ノンジユ)ト云者仕始タル事也。是ニ子細多シ。〔下28オ八〜ウ二〕
非人(ひにん)施行(せきやう)等(とう)也/非人施行等也 施行ハほとこしおこなふと讀。物をほとこし恵む事也。般若を轉讀しといふよりこゝ迄ハ非人乞食へ米銭の施行をし名僧?僧へ飲食の供養するをいふ。〔76ウ八〜77オ三〜五〕
とあって、この標記語「非人」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也▲非人施行ハ窮民(きうミん)乞児(こつじ)に米錢(べいせん)などを施(ほどこ)し行(や)るをいふ。〔55オ一〜56オ四・五〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)▲非人施行ハ窮民(きうミん)乞児(こつじ)に米錢(べいせん)などを施(ほどこ)し行(や)るをいふ。〔100オ四〜ウ一・二〕
Finin.ヒニン(貧人) Madoxi fito.(貧しい人)貧乏な人.※訓注によれば“貧人”である.原本での配列位置から見ても,また,別条にFinho(貧女)があるのを考え合わせてもFinnin誤植とは見られない.別条のFinnin(貧人)と並んでFinnin(貧人)の形も存した.別条のFinnin(貧人)の形も存した.ぎやどぺかどるの字集に,“貧人”に“ひにん”のよみがつけてある.→Finnin.Cocuhinin.〔邦訳234l〕
ひ-にん〔名〕【非人】〔元と貧人と書けり。非人とは、惡行ありて人閧ノあらぬ者の名なり。和訓栞に「梵書に、如人行惡、名曰二非人一」とあり〕(一)佛教の語。人に非ざるもの。即ち、天龍八部、夜叉、惡鬼などの稱。法華經、提婆品「天龍八部、人與二非人一」藥師經「無下有二非人一奪中其精氣上」(二)身體の不完全なるもの。かたは。左傳、昭公七年「孟、非人也」杜注、「足跛非二全人一」(三)罪人、又は、罪人の遺種の稱。今昔物語集、一「此獄門を蹈破りて、入り給ひて利房を取りて奪ひ給ひぬ、云云、多くの非人、斯の如き獄の破れぬる時に、皆心のままに方方に逃げ去りぬ」續日本後紀、十二、承和九年七月「罪人橘逸勢、除二本姓一、賜二非人姓一」(四)乞食の稱。十訓抄、下、第十、五十條「壬生忠岑は舎人なれども、古今の撰者につらなり、山田法師は非人にして、同じく集をけがす」(五)賤民の一種。罪人を送致し、刑屍を埋葬するなどの賤業に從事するもの。江戸時代、平民の零落して袖乞うなどするものは、非人の羣に入り、非人頭の支配を受くるものとす。若し縁者より引上げたる旨、非人頭へ言出で、それよりゑたの長吏に證文を出せば、平民に復することを得しとぞ。(江戸の非人頭は、松右衛門、善七と云ひき)心中天網島(享保、近松作)上「私一人を頼の母樣、南邊に賃仕事して裏屋住、死んだ跡では袖乞非人の飢死もなされうかと是のみ悲さ、私とても命は一つ」〔1686-2〕
千僧供養(クヤウ)ハ人数ヲ千人定テ攝スルナリ。其内羅漢(ラカン)ヲ一人供養せンガ爲ナリ。〔下28オ八〜ウ一〕
千僧供養(せんそうくやう)/千僧供養 千僧とハ僧千人也。〔77オ三〕
とあって、この標記語「千僧供養」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也▲千僧ハ千人の僧衆(そうしゆ)也。〔55オ一〜56オ四〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)▲千僧ハ千人の僧衆(そうしゆ)也。〔100オ四〜ウ六〕
接待(せツタイ) 。〔元亀二年本352六〕〔静嘉堂本424五〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏。九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「行人」と記載し、訓みは、文明四年本に「タラニ」と記載する。
接待(セツタイ) 。〔態藝門93五〕
接待(せツタイ/マジワルヽ、マツ)[入・上] 自二優填王一始ル。日本ハ自二嵯峨天皇一始ル也。施二茶ヲ於旅人ニ一之義也。〔態藝門1095五〕
接待(セツタイ) 施茶於旅人。〔弘・言語進退門266五〕
接待(セツタイ) 施二茶於旅人一。〔永・言語門227三〕
接待(セツタイ) 施二茶於旅人一也。〔尭・言語門213九〕
接待(セツタイ) 。〔言辞門237二〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「接待」の語を収載していて、特に広本『節用集』の語注記が下記真字本『庭訓徃來註』に共通する語となっていることを茲に指摘しておく。
541接待(セツタイ)千僧供養非-人施-行等也。優填王始也。日本ニハ嵯峨天王始。〔謙堂文庫藏五一左B〕
とあって、標記語「接待」の語を収載し、語注記は、「優填王始るなり。日本には、嵯峨天王始る」と記載する。
攝待(せツタイ)トハ宿ヲ定テ徃來ノ僧衆ヲ一宿ヅヽサスル也。攝待トハ待テスクフト書也。〔下28オ八〕
抖藪(とそう)の行人(きやうにん)等(とう)の接待(せつたい)/抖藪(トソウ)ノ行人等ノ接待 山に登り峯に入り樹下に宿し石上に坐して身をこらして行をする者を抖藪乃行人といふ。抖ハはらふと訓し藪ハ草木なとの生繁りたる所を云。草木の生ひ繁りて道なきをはらひのけて難所を渡るといふ義なるにや。接待ハあしらふ事也。禅律の僧行者の人/\へ飲食なと施す事を云なり。〔76ウ八〜77オ三〕
とあって、この標記語「接待」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也▲攝待ハ施物(せもつ)を攝(おさ)めて往来(ゆきゝ)の人を待請(まちうく)るの義なるべし。〔55オ一〜56オ四〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)▲攝待ハ施物(せもつ)を攝(をさ)めて往来(ゆきゝ)の人を待請(まちうく)るの義なるべし。〔100オ四〜ウ五・六〕
Xettai.セッタイ(接待) 巡礼や貧者などを招いて,茶(Cha)のもてなしをすること.§Xettaiuo tatçuru.(接待を立つる)それらの巡礼の茶(Cha)を飲む塲所,あるいは,家をしつらえる.〔邦訳756r〕
せっ-たい〔名〕【接待】〔施待(セタイ)の音便か急呼か〕(一)客を、あつかひ、待遇(もてな)すこと。あへしらひ。あしらひ。接伴。應接。晉書、胡奮傳「奮少好二武事一、宣帝之伐二遼東一也、以二白衣一侍二從左右一、甚見二接待一」(二)ふるまひ。ほどこし。施與。佛祖統記「鑿二義井於城南櫟社一、云云、以飲二行者一、云云、施二湯茗一、無レ問二道俗一、結二屋數楹一、創爲二接待一」太平記、廿、結城入道堕二地獄一事「留るべき宿を尋ぬる處に、山伏一人、出來て、いざさせ給へ、此邊に、接待所の候ぞ、其處へ連れ進らせんと云ひける閨v後撰夷曲集(寛文、生白堂行風)八、雜、上「攝待に、たてる煎じ茶、焙じても、ほうじ難きは、父母の恩」(報じに、焙じを言ひかく、攝は、接に通ず)謡曲、攝待「佐藤の館に於て、山伏攝待の事は、我等が望む所なれども、佐藤の館が憚りにて候ふ程に」〔1113-1〕
行人(ニン) 。〔元亀二年本284一〕〔静嘉堂本325四〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏。九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「行人」と記載し、訓みは、文明四年本に「タラニ」と記載する。
行人(ギヤウ・ヲコナウ、ニン/カウ・ユク・ツラナル、ジン・ヒト)[平・平] 。〔態藝門852五〕
行者(ギヤウジヤ) 。 ―人(ニン)。〔人名門186一〕
このように、上記当代の古辞書においては、広本『節用集』・『運歩色葉集』・易林本『節用集』に「行人」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。
540禪律斗藪(―ス)ノ行人等 頭陀之行人。不期明日也。〔謙堂文庫藏五一左B〕
とあって、標記語「行人」の語を収載し、語注記は、「一夏之間の亊なり」と記載する。
抖藪(トソウ)ノ行人等トハ難(ナン)行也。山ノ嶺(ミネ)ニ上リ獨住(ヒトリスミ)樹下(ゲ)石上ニテ身ヲ凝ス。是ヲ抖藪ト云也。又アラ行者トモ云ヘリ。〔下28オ七〜八〕
抖藪(とそう)の行人(きやうにん)等(とう)の接待(せつたい)/抖藪(トソウ)ノ行人等ノ接待 山に登り峯に入り樹下に宿し石上に坐して身をこらして行をする者を抖藪乃行人といふ。抖ハはらふと訓し藪ハ草木なとの生繁りたる所を云。草木の生ひ繁りて道なきをはらひのけて難所を渡るといふ義なるにや。接待ハあしらふ事也。禅律の僧行者の人/\へ飲食なと施す事を云なり。〔76ウ八〜77オ三〕
とあって、この標記語「行人」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也▲抖藪ハ世事(せじ)貯(たくハ)へなきの義。その行人とハ樹(しゆ)下石上(せきしやう)に身(ミ)をこらして難行苦行(なんぎやうくぎやう)を修(しゆ)する人をいふ。〔55オ一〜56オ三・四〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)▲抖藪ハ世事(せじ)貯(たくハ)へなきの義。その行人とハ樹下(じゆか)石上(せきじやう)に身(ミ)をこらして難行苦行(なんぎやうくぎやう)を修(しゆ)する人をいふ。〔100オ四〜ウ一・二〕
Gui?nin.ギャウニン(行人) Vocon? fito.(行ふ人).すなわち,Gui?taiuo suru fito.(行体をする人)苦行をする人,または,善コの行ないや修行をする人.〔邦訳301r〕
ぎゃう-にん〔名〕【行人】(一)僧の修行人。行者。古事談、六、亭宅諸道「晴明者乍レ俗、那智千日之行人也」(二)高野山の僧衆の稱。學侶の(三)の條を見よ。(三)乞食僧。寛文二年九月、町觸「出家、山伏、行人、願人、町屋に宿借り候はば、本寺より、弟子に無レ紛段、證文を取り、其上、請人を立て、裏店に差置可レ申候」(嬉遊笑覽、十一)「千日詣の行人」〔0494-5〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏。九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「斗藪」と記載し、訓みは、文明四年本に「タラニ」と記載する。
斗藪(ト ) 同(僧俗分)。トウソウ。 〔畳字門上49ウ五〕
斗藪(トソウ) ウチハラフ。〃?。〃拘星。〃升。〃酒。〃儲馬。 〔巻二・畳字門428一〕
抖?(トソウ) 頭陀也。 〔態藝門77四〕
抖?(トスウ/○、アグル)[去・上] 。頭陀新譯(ヤク)ニハ杜多(ヅタ)。此――。大般若経音訓(ヲンギ)ニ云二修治(シユヂ)ト一。〔態藝門138二〕
斗藪 。〔永・言語門45三〕 抖?(トスウ) 頭陀也。新譯ニハ杜多。此ニハ――。大般若経音義云。修治。〔永・言語門47六〕
斗藪(トサウ) ―桶。―概。〔尭・言語門41八〕 抖?(トスウ) 頭陀也。新譯ニ杜多。此ニハ――。大般若経音義云。〔尭・言語門43一〕
抖?(トスウ) 頭陀也。新譯杜多。此ニハ――。〔両・言語門51二〕
斗藪(トソウ) 。 抖?(トソウ) 。〔言辞門46二〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「斗藪」「抖?」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。
540禪律斗藪(―ス)ノ行人等 頭陀之行人。不期明日也。〔謙堂文庫藏五一左B〕
とあって、標記語「斗藪」の語を収載し、語注記は、未記載にする。
抖藪(トソウ)ノ行人等トハ難(ナン)行也。山ノ嶺(ミネ)ニ上リ獨住(ヒトリスミ)樹下(ゲ)石上ニテ身ヲ凝ス。是ヲ抖藪ト云也。又アラ行者トモ云ヘリ。〔下28オ七〜八〕
抖藪(とそう)の行人(きやうにん)等(とう)の接待(せつたい)/抖藪(トソウ)ノ行人等ノ接待 山に登り峯に入り樹下に宿し石上に坐して身をこらして行をする者を抖藪乃行人といふ。抖ハはらふと訓し藪ハ草木なとの生繁りたる所を云。草木の生ひ繁りて道なきをはらひのけて難所を渡るといふ義なるにや。接待ハあしらふ事也。禅律の僧行者の人/\へ飲食なと施す事を云なり。〔76ウ八〜77オ三〕
とあって、この標記語「抖藪」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也▲抖藪ハ世事(せじ)貯(たくハ)へなきの義。その行人とハ樹(しゆ)下石上(せきしやう)に身(ミ)をこらして難行苦行(なんぎやうくぎやう)を修(しゆ)する人をいふ。〔55オ一〜56オ三・四〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)▲抖藪ハ世事(せじ)貯(たくハ)へなきの義。その行人とハ樹下(じゆか)石上(せきじやう)に身(ミ)をこらして難行苦行(なんぎやうくぎやう)を修(しゆ)する人をいふ。〔100オ四〜ウ一・二〕
Tosô.トソウ(抖?) Tosu.(抖?)と言う方がまさる.すなわち,Anguiano b?zu.(行脚の坊主)遍歴する坊主(Bonzo).〔邦訳670l〕
と-そう〔名〕【抖?】〔梵語、Dh?ta.(頭陀、又は、杜多)の譯語。法苑珠林(唐、釋道世)一百「西云二頭陀一、此云二抖?一、能行二此法一、即能抖二?煩惱一、去二離貪著一、如三抖?能去二塵垢一是故從レ臂爲レ名」即ち、諸の煩惱を拂ひ捨つる意〕(一)佛教の語。頭陀(ヅダ)の條を見よ。衣食住をも心に懸けず、拂ひ捨つること。又、貪、嗔、癡の三慾を拂ひ去ること。字類抄「斗藪、トソウ、ウチハラフ」謡曲、安達原「夫て捨身抖?の行體は、山伏修行の便りなり」同、朝長「出家の身をも許さねば、抖?行脚に身をやつし、忍びて下向仕り候」(二)轉じて、僧侶、又は、行脚。源平盛衰記、十八、文覺勸二頼朝謀反一事「座禪縄床の室の内には、本尊持經の外は物なし、角て抖?修行の後、再び高雄の邊に居住して」〔1407-1〕
× 。〔元亀二年本〕
禅律(リツ) 。〔静嘉堂本426六〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏。九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「禪律」と記載し、訓みは、文明四年本に「せンリツ」と記載する。
喝食(カツジキ)行堂(アンダウ)行者(アンジヤ)聽叫(チンケウ) 以上ノ四種ハ禪律(センリツ)ノ之使令(シレイ)ナリ也。〔人倫門40六〕
禪師(ぜンジ) ―衲(ナフ)。―僧(ソウ)。―律(リツ)。―客(カク)。―宗(シウ)。―門(モン)。〔人倫門233七〕
このように、上記当代の古辞書においては、『運歩色葉集』や易林本『節用集』に「禪律」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。
540禪律斗藪(―ス)ノ行人等 頭陀之行人。不期明日也。〔謙堂文庫藏五一左B〕
とあって、標記語「禪律」の語を収載し、語注記は、「一夏之間の亊なり」と記載する。
九旬(シユン)ノ供花(クケ)一夏(ケ)ノ持齊(チサイ)禪律(せンリツ)九旬ノ供花ト云事ハ一夏(ゲ)ノ中身ヲイマシムル時也。四月十五日ヨリ七月十五日マデ道ニ入リ勤行ヲ定ルナリ。是ハ九十日十日ヲ一旬(シユン)ト云ナリ。爰ヲ以テ九旬ト云也。抑(ソモ/\)釈尊霊鷲山(リヤウシユセン)ニ御座(ヲワ)せシ時御(ヲホン)母摩耶夫人(マヤフニン)ノ御爲(タメ)ニ?利(タウリ)天ニ兎摩耶(マヤ)經ヲ説(トキ)給フ也。是ヲ安居ノ御法(ミノリ)ト申也。四月十四日ニ諸(モロ/\)大ラカンヲ引具兎?利(タ リ)天ニ上ラせ給フ也。七月十六日ノ朝(アシタ)下界ヘクダリ給フ也。サテコソ十六日六トテ開夏( イゲ)僧ハ立去リ此夏中ヲ持齋ト云フナリ。〔下28オ三〜七〕
禪律(ぜんりつ)/禅律 禅宗律宗の僧なり。上の盤水を轉讀し經王を讀誦しと云より下の三十三字を此二字にかけて見るべし。言こゝろハ読経を誦し勤行をしとけたる禅律両宗の僧といふ事なり。〔76ウ四〜六〕
とあって、この標記語「禪律」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也▲禪律ハ四月の進状に見ゆ。〔55オ一〜56オ三〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)▲禪律ハ四月の進状にミゆ。〔100オ四〜ウ一・二〕
ぜん-りつ〔名〕【禪律】(一)佛教の語、禪宗にての戒律。(出典を見よ)出家大綱「護二齋戒一法、有二二門一、一者衣食、二者行儀、初、衣食者、衣謂レ覆レ身、食謂レ資レ身、次行儀者、行謂二戒行一、儀調二律儀一、衣有レ二、俗衣、法衣、食有レ二、請食、乞食、戒有レ二、比丘戒、菩薩戒、律有レ二、俗律、道律」元亨釋書、七、淨禪「釋辨圓、云云、大相國(道家)於二光明峯別墅一、云云、受二禪門大戒律兼秘密灌頂一、正嘉元年寛元上皇(後嵯峨)於二龜山宮一、受二禪門菩薩戒一」(二)禪宗と、律宗と。太平記、一、後醍醐天皇御治世事「凡、諸道の廢れたるを興し、一事の善をも賞せられしかば、寺社、禪律の繁昌、爰に時を得、顯密、儒道の碩才も、皆望を達せり」〔1134-1〕
持斉(サイ) 。〔元亀二年本63九〕
持齋(サイ) 。〔静嘉堂本74二〕
持(チ)斉 。〔天正十七年本上37オ八〕〔西來寺本〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏。九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「持齋」と記載し、訓みは、文明四年本に「タラニ」と記載する。
致(イタス)齋(モノイミヲ) 神社部/チサイ/イミサスヲ云也。〔黒川本・畳字門上55オ五〕
持戒 〃佛。〃經。〃節。〃齊。〃病。〃律。〃疑。〔巻二・畳字門474二〕
持齋(チサイ/モツ、モノイミ)[平・平] 。〔態藝門174四〕
持齋(ヂサイ) 。〔弘・言語進退門52六〕
持齋(ヂ サイ) ―律(チリツ)。―病(ヒヤウ)。―物(モツ)。―疑(ギ)。―参(サン)。〔永・言語門53三〕
持齋 ―律。―病。―物。―疑。―参。〔尭・言語門48四〕
持齋(ヂ サイ) ―律。―病。―物。〔両・言語門57三〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「持齋」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。
539一夏ノ之持齋 徃来ノ者ニ施‖-行食|、又齊形ヲ護持スルヲ云也云々。〔謙堂文庫藏五一左A〕
とあって、標記語「持齋」の語を収載し、語注記は、「徃来の者に食を施行し、又齊形を護持するを云ふなり云々」と記載する。
九旬(シユン)ノ供花(クケ)一夏(ケ)ノ持齊(チサイ)禪律(せンリツ)九旬ノ供花ト云事ハ一夏(ゲ)ノ中身ヲイマシムル時也。四月十五日ヨリ七月十五日マデ道ニ入リ勤行ヲ定ルナリ。是ハ九十日十日ヲ一旬(シユン)ト云ナリ。爰ヲ以テ九旬ト云也。抑(ソモ/\)釈尊霊鷲山(リヤウシユセン)ニ御座(ヲワ)せシ時御(ヲホン)母摩耶夫人(マヤフニン)ノ御爲(タメ)ニ?利(タウリ)天ニ兎摩耶(マヤ)經ヲ説(トキ)給フ也。是ヲ安居ノ御法(ミノリ)ト申也。四月十四日ニ諸(モロ/\)大ラカンヲ引具兎?利(タ リ)天ニ上ラせ給フ也。七月十六日ノ朝(アシタ)下界ヘクダリ給フ也。サテコソ十六日六トテ開夏( イゲ)僧ハ立去リ此夏中ヲ持齋ト云フナリ。〔下28オ三〜七〕
一夏(いちけ)の持齋(じさい)/一夏ノ持齋 一夏といえるも上の句に九旬といえると同し。四月十五日より七月十五日迄の間秋の日十五日あれとも夏の日数多くしてしかも一季三月の日数なれは一夏とハいふなり。持齋とハ身をいましめつゝしみ心を清浄(しやう/\)にして勤行するをいふ也。〔76ウ四〜六〕
とあって、この標記語「持齋」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也▲一夏持齋ハ一夏九十日の間齋(ものいミ)を持(たも)ちて不浄(ふじやう)にふれざるをいふ。俗(そく)に夏断(げたち)といふも即(すなハち)是也。夏を修すること日本にてハ人皇卅四代推古天皇十四年初て四月八日より七月十五日まで寺ことに斎を設く。是其始也。〔55オ一〜56オ二・三〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)▲一夏持齋ハ一夏九十日の間齋(ものいミ)を持(たも)ちて不浄(ふじやう)にふれざるをいふ。俗(ぞく)に夏断(げだち)といふも即(すなハち)是(これ)也。夏を修(しゆ)すること日本にてハ人皇卅四代推古天皇(すいこてんわう)十四年初て四月八日より七月十五日まで寺ことに斎を設(まう)く。是其始也。〔100オ四〜ウ一・二〕
一夏(ゲ) 。〔元亀二年本19一〕〔静嘉堂本14五〕
一夏(ケ) 。〔天正十七年本上8ウ二〕〔西來寺本〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏。九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「一夏」と記載し、訓みは、文明四年本に「(イ)チケ」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、『運歩色葉集』に標記語「一夏」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。
539一夏ノ之持齋 徃来ノ者ニ施‖-行食|、又齊形ヲ護持スルヲ云也云々。〔謙堂文庫藏五一左A〕
とあって、標記語「一夏」の語を収載し、語注記は、未記載にする。
九旬(シユン)ノ供花(クケ)一夏(ケ)ノ持齊(チサイ)禪律(せンリツ)九旬ノ供花ト云事ハ一夏(ゲ)ノ中身ヲイマシムル時也。四月十五日ヨリ七月十五日マデ道ニ入リ勤行ヲ定ルナリ。是ハ九十日十日ヲ一旬(シユン)ト云ナリ。爰ヲ以テ九旬ト云也。抑(ソモ/\)釈尊霊鷲山(リヤウシユセン)ニ御座(ヲワ)せシ時御(ヲホン)母摩耶夫人(マヤフニン)ノ御爲(タメ)ニ?利(タウリ)天ニ兎摩耶(マヤ)經ヲ説(トキ)給フ也。是ヲ安居ノ御法(ミノリ)ト申也。四月十四日ニ諸(モロ/\)大ラカンヲ引具兎?利(タ リ)天ニ上ラせ給フ也。七月十六日ノ朝(アシタ)下界ヘクダリ給フ也。サテコソ十六日六トテ開夏( イゲ)僧ハ立去リ此夏中ヲ持齋ト云フナリ。〔下28オ三〜七〕
一夏(いちけ)の持齋(じさい)/一夏ノ持齋 一夏といえるも上の句に九旬といえると同し。四月十五日より七月十五日迄の間秋の日十五日あれとも夏の日数多くしてしかも一季三月の日数なれは一夏とハいふなり。持齋とハ身をいましめつゝしみ心を清浄(しやう/\)にして勤行するをいふ也。〔76ウ四〜六〕
とあって、この標記語「一夏」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也▲一夏持齋ハ一夏九十日の間齋(ものいミ)を持(たも)ちて不浄(ふじやう)にふれざるをいふ。俗(そく)に夏断(げたち)といふも即(すなハち)是也。夏を修すること日本にてハ人皇卅四代推古天皇十四年初て四月八日より七月十五日まで寺ことに斎を設く。是其始也。〔55オ一〜56オ二・三〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)▲一夏持齋ハ一夏九十日の間齋(ものいミ)を持(たも)ちて不浄(ふじやう)にふれざるをいふ。俗(ぞく)に夏断(げだち)といふも即(すなハち)是(これ)也。夏を修(しゆ)すること日本にてハ人皇卅四代推古天皇(すいこてんわう)十四年初て四月八日より七月十五日まで寺ことに斎を設(まう)く。是其始也。〔100オ四〜ウ一・二〕
Ichigue.イチゲ(一夏) Fito natçu.(一夏) 一夏.*原文はverão,ou estio.〔Natçuの注〕〔邦訳325l〕
†Ichigue.イチゲ(一夏) あるゼンチョ(gentios異教徒)が,救霊を得るためにいろいろな善コの行をする,〔陰暦〕四月八日から七月八日に至る期間.例,Ichigueuovocuru. (一夏を送る)上述のような行をしながら,この期間を過ごす.〔邦訳325l〕
いちげ-あんご〔名〕【一夏安居】〔出典の盛衰記に、一夏安居とあり、是れ成語にて、他の異稱は、皆略語ならむ、けは、夏(カ)の呉音、(上下(シヤウカ)、ジヤウゲ)一夏とは、夏中(なつヂユウ)の意(一年中)こは、居(キヨ)の呉音、(去年(キヨネン)、過去(クワコ)、御寢(ギヨシン)、御覽(ゴラン))天竺にて、夏期は、霖雨多く、旅行に適せざるのみならず、地に無數の蟲類あり、蹈み傷(いたむ)ることあれば、釋迦、其徒弟をして蟄居、修道せしめたるなりと云ふ、飜譯(ほんやく)名義集、四、安居の條に「無事游行、妨修出業、損傷物命、違慈寔深」とあり、安居とは、安隱、靜居の意、一處に定住して、道心を修養するなり、隱坐道(ヲンザダウ)などとも云ふ〕佛道に云ふ語。又、夏安居(ゲアンゴ)、夏籠(ゲごもり)、夏行(ゲギヤウ)などとも云ひ、下略して、一夏、又、夏とのみも云ふ。僧の、四月十六日(陰暦の)より七月十五日まで、外出せず、講經、修道して居ることにて、即ち、太陰暦の全夏期なり。四月に始むるを、結夏(ケチゲ)と云ひ、七月に解散するを、解夏(ゲゲ)、又、夏明(ゲあけ)と云ひ、七月十六日、自由となるを、自恣(ジシ)と云ふ。(行事抄、上、尚、自恣の條を見よ)安居に參ずる者を、夏衆(ゲシユウ)と云ひ、參會の囘數の多きを、長老とし、夏臈(ゲラフ)と云ひ、此閨A經文を讀誦するを、夏經(ゲギヤウ)と云ひ、供養のために、經文を寫すを、夏書(ゲがき)と云ふ。精進の意、通常には、佛像に向ひて、定時に回向する誦經、禮拝、燒香、等の儀式を云ふ。天武紀、下、十二年七月「是夏、始請僧尼、安居于宮中」此後、奈良朝、平安朝に亘りて、十五大寺、其他に於て、安居の事ありしこと、玄蕃寮式等に、?見ゆ。源平盛衰記、十八、文覺清水?天~金事「如何に殿原、自今以後は、知るべし、一夏、精進の在俗よりは、無智無行の比丘は勝りたり」禪宗にては、安居を、江湖會(ゴウコヱ)と云ひ、又、別に、十月十六日より、一月十六日まで安居するを、雪安居(ゆきアンゴ)と云ふ。源平盛衰記、九、山門堂塔事「堂衆と申すは、云云、座主覺尋僧正、御治山の時より、三塔に結審して、夏衆と號して、佛に花奉りし輩也」同、十六、三井寺燒失事「佛閣、一宇も殘らず燒けにけり、云云、一夏安居の佛前も無ければ、供花の薫も絶えにけり」義經記、三、書冩山炎上事「このげと申すは、諸國の修行者、充滿して、餘念もなく勤めける」謡曲、通小町「是れは、八瀬の山里に、一夏(イ ゲ)を送る僧にて候」心中天網島(享保、近松作)下、名殘の橋づくし「一夏三部、夏書(げがき)せし、大悲大悲の普門品」〔0168-2〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏。九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、山田俊雄藏本の古写本は、「供花」と記載し、経覺筆本・文明四年本は「供華」とし、そのうち、文明四年本は小表記にて「花」の文字を添えている。訓みは、文明四年本に「クウケ」と記載する。
供御(クコ) ―米(マイ)。―具(グ)。―華(ゲ)。〔衣服門131二〕
供養(クヤウ) ―物(モツ)。―給(キフ)。―奉(ブ)。〔言辞門132六〕
このように、上記当代の古辞書においては、易林本の「供華」のみであり、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。
538九旬ノ供花 一夏之間ノ亊也。〔謙堂文庫藏五一左A〕
とあって、標記語「供花」の語を収載し、語注記は、「一夏之間の亊なり」と記載する。
九旬(シユン)ノ供花(クケ)一夏(ケ)ノ持齊(チサイ)禪律(せンリツ)九旬ノ供花ト云事ハ一夏(ゲ)ノ中身ヲイマシムル時也。四月十五日ヨリ七月十五日マデ道ニ入リ勤行ヲ定ルナリ。是ハ九十日十日ヲ一旬(シユン)ト云ナリ。爰ヲ以テ九旬ト云也。抑(ソモ/\)釈尊霊鷲山(リヤウシユセン)ニ御座(ヲワ)せシ時御(ヲホン)母摩耶夫人(マヤフニン)ノ御爲(タメ)ニ?利(タウリ)天ニ兎摩耶(マヤ)經ヲ説(トキ)給フ也。是ヲ安居ノ御法(ミノリ)ト申也。四月十四日ニ諸(モロ/\)大ラカンヲ引具兎?利(タ リ)天ニ上ラせ給フ也。七月十六日ノ朝(アシタ)下界ヘクダリ給フ也。サテコソ十六日六トテ開夏( イゲ)僧ハ立去リ此夏中ヲ持齋ト云フナリ。〔下28オ三〜七〕
九旬(くしゆん)の供花(くけ)/九旬ノ供花。十日を一旬といへハ九旬は九十日也。四月十五日より七月十五日迄をいふ。むかし釈迦(しやか)如来?鷲山(れうしゆせん)におハせし時四月十五日に?利天(とうりてん)に登り七月十六日の朝帰り玉ふ。此九十日の間ハ釈尊の御留守なりしゆへ羅漢達(らかんたち)別(わけ)て懈怠なく勤行ありしといえり。是によりて今の世に至るまて此勤行をなすなり。九旬の供花とハ此日限の内前日仏に能つかへ香花をそなへる事をいふなり。〔76ウ一〜四〕
とあって、この標記語「供花」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲九旬供花旬ハ十日也。爰(こゝ)に四月十五日より七月十六日まで九十日を指(さ)す。又一夏と名く。其間(そのあいた)花を仏に供ふる也。是を夏花(げばな)を摘(つ)むといふ。〔55オ一〜56オ一・二〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲九旬供花旬ハ十日也。爰(こゝ)に四月十五日より七月十六日まて九十日を指(さ)す。又一夏(いちげ)と名(なづ)く。其間(そのあいた)花(はな)を仏(ほとけ)に供(そな)ふる也。是(これ)を夏花(げばな)を摘(つ)むといふ。〔100オ四〜ウ一・二〕
くう-げ〔名〕【供花】佛前に、花を供(そな)ふる儀。五月、九月の、兩度に行はれしと云ふ。増鏡、第十二、老波「九月の供花(クウゲ)には、新院さへわたりものしたまへば」〔0513-2〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「九旬」と記載し、訓みは、文明四年本に「(ク)シユン」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「九旬」の語を未収載にあって、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。
538九旬ノ供花 一夏之間ノ亊也。〔謙堂文庫藏五一左A〕
とあって、標記語「九旬」の語を収載し、語注記は、「一夏之間の亊なり」と記載する。
九旬(シユン)ノ供花(クケ)一夏(ケ)ノ持齊(チサイ)禪律(せンリツ)九旬ノ供花ト云事ハ一夏(ゲ)ノ中身ヲイマシムル時也。四月十五日ヨリ七月十五日マデ道ニ入リ勤行ヲ定ルナリ。是ハ九十日十日ヲ一旬(シユン)ト云ナリ。爰ヲ以テ九旬ト云也。抑(ソモ/\)釈尊霊鷲山(リヤウシユセン)ニ御座(ヲワ)せシ時御(ヲホン)母摩耶夫人(マヤフニン)ノ御爲(タメ)ニ?利(タウリ)天ニ兎摩耶(マヤ)經ヲ説(トキ)給フ也。是ヲ安居ノ御法(ミノリ)ト申也。四月十四日ニ諸(モロ/\)大ラカンヲ引具兎?利(タ リ)天ニ上ラせ給フ也。七月十六日ノ朝(アシタ)下界ヘクダリ給フ也。サテコソ十六日六トテ開夏( イゲ)僧ハ立去リ此夏中ヲ持齋ト云フナリ。〔下28オ三〜七〕
九旬(くしゆん)の供花(くけ)/九旬ノ供花。十日を一旬といへハ九旬は九十日也。四月十五日より七月十五日迄をいふ。むかし釈迦(しやか)如来?鷲山(れうしゆせん)におハせし時四月十五日に?利天(とうりてん)に登り七月十六日の朝帰り玉ふ。此九十日の間ハ釈尊の御留守なりしゆへ羅漢達(らかんたち)別(わけ)て懈怠なく勤行ありしといえり。是によりて今の世に至るまて此勤行をなすなり。九旬の供花とハ此日限の内前日仏に能つかへ香花をそなへる事をいふなり。〔76ウ一〜四〕
とあって、この標記語「九旬」の語をもって収載し、語注記も上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲九旬供花旬ハ十日也。爰(こゝ)に四月十五日より七月十六日まで九十日を指(さ)す。又一夏と名く。其間(そのあいた)花を仏に供ふる也。是を夏花(げばな)を摘(つ)むといふ。〔55オ一〜56オ一・二〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲九旬供花旬ハ十日也。爰(こゝ)に四月十五日より七月十六日まて九十日を指(さ)す。又一夏(いちげ)と名(なづ)く。其間(そのあいた)花(はな)を仏(ほとけ)に供(そな)ふる也。是(これ)を夏花(げばな)を摘(つ)むといふ。〔100オ四〜ウ一・二〕
念佛(ネンブツ) 。〔元亀二年本163二〕〔静嘉堂本180二〕
念佛(フツ) 。〔天正十七年本中21オ二〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本・山田俊雄藏本・経覺筆本は、「念仏」とし、宝徳三年本・建部傳内本・文明四年本の古写本は、「念佛」と記載する。
念佛(―ブツ/ヲモフ・ホトケ)[去・入] 。〔態藝門428一〕
念佛(ネンフツ) 。〔弘・言語進退門135一〕
念誦(ネンジユ) ―願。―仏/―力。〔尭・言語門98七〕
念誦(ネンジユ) ―願。―佛/―力。〔両・言語門120七〕
このように、上記当代の古辞書においては、広本『節用集』・『運歩色葉集』・弘治二年本『節用集』に標記語「念佛」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。但し、語注記はいずれも未記載にする。
537稱名ノ念佛 説多。南无阿弥陀佛觀無量壽經ニ云曰、惣シテ念佛ニ付テ、至城信深信回向發願信ト、三種ノ信ヲ立ル∨説、宝積經ニ曰、高声念佛スルハ魔軍退散也。般若經ニ曰、乱心ナレトモ念-佛スレハ乃至畢∨苦。其us∨尽也。宝王論ニ曰、浴‖大海ヲ|者ハ已ニ用‖百川ヲ|有。浴トハ一枚ヲ身ニ浴(アフル)ナラハ百川ヲ浴也云々。〔謙堂文庫藏五一右H〕
とあって、標記語「念佛」の語を収載し、此の語の語注記は、未記載にする。
稱名(せウミヤウ)念佛ハ阿弥陀ノ御名ヲトナフ故ニ稱名ト云也。名ニカナフトヨムナリ。〔下28オ三〕
稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)/稱名念佛。皆佛名をとなへ參する事なり。〔75ウ八〜76オ一〕
とあって、この標記語「念佛」の語をもって収載し、語注記は、「皆佛名をとなへ參する事なり」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也▲稱名念仏ハ弥陀(ミた)の名号(ミやうがう)を念(ねん)し稱(とな)ふる也。〔55オ一〜56オ一〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)▲稱名念仏ハ弥陀(ミだ)の名号(ミやうがう)を念(ねん)じ稱(とな)ふる也。〔100オ四〜ウ一〕
当代の『日葡辞書』(1603-04年成立)に、
Nenbut.ネンブツ(念佛) Fotoqeuo nenzuru.(仏を念ずる) 仏(Fotoque)の名を唱えること,すなわち,称名念仏すること.〔邦訳458l〕
ねん-ぶつ〔名〕【念佛】〔念は口に唱ふる意〕佛教の語。佛名を唱ふること。南無阿彌陀佛の六字の名號を唱へて祈ること。ねぶつ。寳積經「高聲念佛、魔軍退散」起心論「以二專心念佛因縁一、隨レ願得レ生二他方淨土一」李商隱雜纂、朱本體「不二早晩禮拝念佛一」選擇本願念佛集(法然上人)二「稱名念佛、是彼佛本願行也、故修レ之者、乗二彼佛願一、必得二往生一也」玉葉(藤原兼實)建久元年七月廿三日「先講二法然房源空上人一受レ戒、次始二恒例念佛一」榮花物語、十二、玉村菊「念佛、懺法など聞かまほしうせさせ給へば、さるべき僧どもして、聲絶えず行はせ給ふ」源平盛衰記、十、赤山大明神事「赤山大明神と申すは、慈覺大師渡唐時、清涼山の引聲の念佛を傳へ給しに、此念佛を爲二守護一とて、大師に成二芳契一給ひ、忽異朝の雲を出でて、正に叡山の月に住給ふ」〔1529-2〕
稱名念仏九旬供花一夏持斉禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔至徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齋禪律斗藪行人等接待千僧供養非人施行等也〔宝徳三年本〕
稱名念佛九旬供花一夏持齊禪律斗藪之行人等接待千僧供養非人施行等也〔建部傳内本〕
稱名念仏。九旬供花一夏ノ持齋(サイ)禪律抖藪(トソウ)ノ行人等接待(セツタイ)千僧供養非人施行等也〔山田俊雄藏本〕
稱名ノ念仏九旬ノ供華一夏之持齋(チサイ)禪律斗藪(トソウ)ノ行人等接待(せツタイ)千僧ノ供養非人ノ施行等也〔経覺筆本〕
称(セウ)名ノ念佛。九旬(シユン)ノ供華(クウケ)花(ケ)。一夏( チケ)ノ持齋(チサイ)。禪律(せンリツ)斗藪(トソウ)ノ行人等。接待(せツタイ)千僧(ソウ)供養(クヤウ)。非人(ヒニン)施(せ)行等也〔文明四年本〕 ※斗藪(トソウ)ヤフ 。稱名(せウミヤウ)。
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「稱名」と記載し、訓みは、文明四年本に「タラニ」と記載する。
唱名(シヤウミヤウ/トナヱ、メイ・アキラカナリ)[去・平] 。或唱ヲ作レ聲非二音(ヲン)曲一也。〔態藝門690一〕
唱名(シヤウメヤウ) 音曲唱ヲ作色非也。〔弘・言語進退門248七〕
唱名(シヤウミヤウ) 唱作レ声非也。〔永・言語門211八〕
唱名(シヤウミヤウ) 唱作声非也。〔尭・言語門195八〕
稱念(シヨウネン) ―嘆(タン)。―揚(ヤウ)。―美(ビ)。―讃(サン)。―名(ミヤウ)。―号(ガウ)。〔言辞門215三〕
このように、上記当代の古辞書においては、易林本『節用集』が標記語「稱名」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。
537稱名ノ念佛 説多。南无阿弥陀佛觀無量壽經ニ云曰、惣シテ念佛ニ付テ、至城信深信回向發願信ト、三種ノ信ヲ立ル∨説、宝積經ニ曰、高声念佛スルハ魔軍退散也。般若經ニ曰、乱心ナレトモ念-佛スレハ乃至畢∨苦。其us∨尽也。宝王論ニ曰、浴‖大海ヲ|者ハ已ニ用‖百川ヲ|有。浴トハ一枚ヲ身ニ浴(アフル)ナラハ百川ヲ浴也云々。〔謙堂文庫藏五一右H〕
とあって、標記語「稱名」の語を収載し、語注記は、「説多し。南无阿弥陀佛觀無量壽經に云に曰く、惣じて念佛に付て、至城信深信回向發願信と、三種の信を説を立る、宝積經に曰く、高声念佛するは、魔軍退散なり。般若經に曰く、乱心なれども念-佛すれば乃至苦しく畢んぬ。其のpsきざるなり。宝王論に曰く、大海を浴す者は、已に百川を用ゆこと有り。浴とは、一枚を身に浴(アフル)ならば百川を浴するなり云々」と記載する。
稱名(せウミヤウ)念佛ハ阿弥陀ノ御名ヲトナフ故ニ稱名ト云也。名ニカナフトヨムナリ。〔下28オ三〕
稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)/稱名念佛。皆佛名をとなへ参する事なり。〔75ウ八〜76オ八・ウ一〕
とあって、この標記語「稱名」の語をもって収載し、語注記は、「皆佛名をとなへ参する事なり」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲稱名念仏ハ弥陀(ミた)の名号(ミやうがう)を念(ねん)し稱(とな)ふる也。〔55オ一〜56オ一〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲稱名念仏ハ弥陀(ミだ)の名号(ミやうがう)を念(ねん)じ稱(とな)ふる也。〔100オ四〜ウ一〕
Xo>mio<.シャウミャウ(稱名) デウス(Deos神)やサントス(Sanctos聖人たち)の頌歌などを,調子を合わせて歌いながら,ほめたたえること.〔邦訳793r〕
しゃう-みゃう〔名〕【唱名】佛の名號を、となふること。南無阿弥陀佛と云ふが如し。念佛。承久記「一人、御供にさぶらひけるが、小賢しく、しゃうみゃうを勸め奉る」〔0972-4〕
真言 。〔元亀二年本305八〕
真言( ゴン) 。〔静嘉堂本356一〕
細金彩色絵像各一輻薄濃墨畫一對摺写摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔至徳三年本〕
細金彩色繪像各一鋪([輻])薄濃墨繪(畫)一對書寫摺寫御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦眞言〔宝徳三年本〕
細金彩色畫像各一輻薄濃墨畫一對書冩摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念殊真言〔建部傳内本〕
細金彩色ノ繪像各一鋪(フク)薄濃(ダミ)ノ墨畫一對書冩摺写ノ妙典。轉讀ノ般若讀誦ノ經王(ワウ)。勤行ノ秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔山田俊雄藏本〕
細(ホソ)金彩(サイ)色ノ絵像各一輻薄濃(ダミ)ノ墨畫(スミヱ)一對書寫ノ御經轉讀ノ般若讀誦ノ經王勤行ノ秘法唱滿ノ陀羅尼念誦ノ真言〔経覺筆本〕
細金(ホソカネ)。彩色(サイシキ)ノ繪像(エサウ)。各。一鋪(フク)。薄濃(ウスタミ)ノ。墨畫(スミエ)。一對(ツイ)。書寫(シヨシヤ)。摺写(シツシヤ)ノ御經。轉讀(テントク)ノ。般若(ハンニヤ)一。讀誦(ドクシユ)ノ經王一。勤(コン)行ノ秘(ヒ)法。唱滿(シヤウマン)ノ陀羅尼(タラニ)。念誦(シユ)ノ真(シン)言。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「真言」と記載し、訓みは、文明四年本に「タラニ」と記載する。
眞言 シンコン。〔三巻本(黒川本)・畳字門下77ウ二〕
真偽 〃實。〃如。〃諦。〃金。〃説。〃珠。〃珠。〃圖。〃言。〔十巻本・言語門155八〕
眞實(シンジツ) ―信(ジン)。―俗(ソク)。―讀(ドク)/―如(ニヨ)。―言(ゴン)。―草行(サウギヤウ)。〔言辞門159四〕
このように、上記当代の古辞書においては、『運歩色葉集』易林本『節用集』に、標記語「真言」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。
536念誦ノ真言 自‖方等部|出也。東寺真言初祖ハ大日如来也。天武天王ノ時智鳳渡∨之也。天台・法花經ヨリ出也。天台ハ章安妙楽傳教ト傳也。真言ハ自‖中天竺|傳法スト也云々。〔謙堂文庫藏五一右F〕
とあって、標記語「真言」の語を収載し、語注記は、「真言は、中天竺より傳法すとなり云々」と記載する。
真言(シンゴン)等ハ觀念ヲ以テ本トスルガ故ニ念誦ト云フ。〔下28オ二〕
眞言(しんごん)を念誦(ねんじゆ)し/念二誦シ真言ヲ一念誦とハ念じて唱る事也。真言ハ眞言宗の呪なり。不動乃真言大日の真言なとゝて色々在。〔75ウ八〜76オ七・八〕
とあって、この標記語「真言」の語をもって収載し、語注記は、「陀羅尼といふも經の名なり」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲念誦ハ心に祈念(きねん)してよむをいふ。真言ハ呪文(じゆもん)也。梵語(ぼんご)のまゝにて唱(とな)ふ。〔55オ一〜55ウ八・56オ一〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲念誦ハ心に祈念(きねん)してよむをいふ。真言ハ呪文(じゆもん)也。梵語(ぼんご)のまゝにて唱(とな)ふ。〔100オ四〜六、ウ一〕
Xingon.シンゴン(真言) Faxx?no vchino x?.(八宗の中の宗)大日(Dainichi)を信仰する真言宗徒(Xingonxus)の宗派.→Faxxù〔邦訳770l〕
しん-ごん〔名〕【真言】〔眞實言説の義〕大日如來の三密中の、語密に屬す、即ち、大日如來、自らの眷屬のために、如義眞實の語を以て説きたまふ所の、唯佛與佛の法門を云ふ。(佛教辭林)源氏物語、十九、薄雲22「更に、佛の諫め守り給ふ、しんごむの深き道をだに、隱しとどむる事なく、弘め仕うまつり侍り」〔0940-4〕
念誦(ジユ) 。〔元亀二年本163二〕〔静嘉堂本180二〕
念誦(シユ) 。〔天正十七年本中21オ二〕
細金彩色絵像各一輻薄濃墨畫一對摺写摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔至徳三年本〕
細金彩色繪像各一鋪([輻])薄濃墨繪(畫)一對書寫摺寫御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦眞言〔宝徳三年本〕
細金彩色畫像各一輻薄濃墨畫一對書冩摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念殊真言〔建部傳内本〕
細金彩色ノ繪像各一鋪(フク)薄濃(ダミ)ノ墨畫一對書冩摺写ノ妙典。轉讀ノ般若讀誦ノ經王(ワウ)。勤行ノ秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔山田俊雄藏本〕
細(ホソ)金彩(サイ)色ノ絵像各一輻薄濃(ダミ)ノ墨畫(スミヱ)一對書寫ノ御經轉讀ノ般若讀誦ノ經王勤行ノ秘法唱滿ノ陀羅尼念誦ノ真言〔経覺筆本〕
細金(ホソカネ)。彩色(サイシキ)ノ繪像(エサウ)。各。一鋪(フク)。薄濃(ウスタミ)ノ。墨畫(スミエ)。一對(ツイ)。書寫(シヨシヤ)。摺写(シツシヤ)ノ御經。轉讀(テントク)ノ。般若(ハンニヤ)一。讀誦(ドクシユ)ノ經王一。勤(コン)行ノ秘(ヒ)法。唱滿(シヤウマン)ノ陀羅尼(タラニ)。念誦(シユ)ノ真(シン)言。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「念誦」と記載し、建部傳内本だけが「念珠」と記載する。訓みは、文明四年本に「(ネン)シユ」と記載する。
念誦 佛法部/ネンシユ/僧侶分。〔三巻本・畳字門中31ウ二〕
念佛 〃誦。〃念。〃人。〃珠。〔尭・言語門145八〕
念誦(―ジユ/ヲモフ、シヨウ・ヨム)[去・去] 佛亊。〔態藝門428一〕
念誦(ネンジユ) 。〔弘・言語進退門135一〕
念誦(ネンジユ) ―願(グハン)。―力(リキ)。〔永・言語門107九〕
念誦(ネンジユ) ―願。―仏/―力。〔尭・言語門98七〕
念誦(ネンジユ) ―願。―佛/―力。〔両・言語門120七〕
念誦(ネンジユ) ―願(グワン)。―珠(ジユ)。―想(サウ)/―力(リキ)。―者(ジヤ)。―比(ゴロ)。〔言辞門108三〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「念誦」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。そして、語注記については、共通性を見ない語でとなっている。
536念誦ノ真言 自‖方等部|出也。東寺真言初祖ハ大日如来也。天武天王ノ時智鳳渡∨之也。天台・法花經ヨリ出也。天台ハ章安妙楽傳教ト傳也。真言ハ自‖中天竺|傳法スト也云々。〔謙堂文庫藏五一右F〕
とあって、標記語「念誦」の語を収載し、語注記は、「方等部より出るなり。東寺真言初祖は、大日如来なり。天武天王の時智鳳之渡るなり。天台・法花經より出るなり。天台は、章安妙楽傳教と傳ふるなり。真言は、中天竺より傳法すとなり云々」と記載する。
勤行(ゴンギヤウ)秘法(ヒボウ)唱滿(シヤウマン)陀羅尼(タラニ)念誦(ネンジユ)如シレ常ノ。〔下28オ二〕
眞言(しんごん)を念誦(ねんじゆ)し/念二誦シ真言ヲ一念誦とハ念じて唱る事也。真言ハ眞言宗の呪なり。不動乃真言大日の真言なとゝて色々在。〔75ウ八〜76オ七・八〕
とあって、この標記語「念誦」の語をもって収載し、語注記は、「念誦とは、念じて唱る事なり」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲念誦ハ心に祈念(きねん)してよむをいふ。真言ハ呪文(じゆもん)也。梵語(ぼんご)のまゝにて唱(とな)ふ。〔55オ一〜55ウ八・56オ一〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲念誦ハ心に祈念(きねん)してよむをいふ。真言ハ呪文(じゆもん)也。梵語(ぼんご)のまゝにて唱(とな)ふ。〔100オ四〜六、ウ一〕
Nenju.ネンジュ(念誦) 信仰の心をもって或る経を読むこと.すなわち,読誦すること.例,Nenju suru.(念誦する)同上.〔邦訳458r〕
ねん-じゅ〔名〕【念誦】〔念佛誦經の略。普賢觀行經記「在レ心曰レ念、發レ言曰レ誦、言由二於心一、故曰二念誦一」〕佛教の語。心に佛を念じ、口に經を讀むこと。又、禪林にては、十佛名を念誦することを云ふ。ネンズ。盂蘭盆經疏記、上「念誦、即通二佛名經呪一」大日經演密鈔「梵語、羅醯、此云二念誦一」」易林本節用集(慶長)上、言辭門「念誦、ネンジユ」續日本紀、廿一、天平寳字二年八月「宣下告二天下諸國一云云、念中誦摩訶般若波羅密上」榮花物語、十八、玉臺「御念佛の志、絶えさせ給ふ可きにもあらず、御念誦の時に控へさせ給ひて」義經記、五、靜吉野山に被捨事「藏王權現、云云、勤も果てしかば、靜も起き居て、念誦してぞ居たりける」〔1528-3〕
護摩(ゴマ) 天竺曰レ焼ト。〔元亀二年本233四〕
護摩(ゴマ) 天竺曰焼。〔静嘉堂本268四〕
護摩(コマ) 天竺曰レ焼。〔天正十七年本中63オ三〕
護摩 コマ。〔畳字門下8ウ七〕
護持 〃身。〃法。〃命。〃摩。〃惜。〔巻七・畳字門168二〕
護摩(ゴマ) 梵ニハ護摩此(コヽ)ニハ云フ二焚(ハン)ト言(イフコヽロ)ハ燒滅(メツ)スル一切ノ悪事ノ之根本ヲ一也。〔態藝門84三〕
護摩(ゴマ/マボル、ナヅル)[去・平] ――ハ梵語也。此ニ翻レ燒ト言ハ焼二滅スル一切ノ魔悪ノ亊ヲ一故也。〔態藝門690一〕
護摩(ゴマ) 護摩梵語也。此ニハ翻スレ燒ト言ハ焼二滅一切ノ悪魔ノ之根本ヲ一。〔弘・言語進退門190四〕
護摩(ゴマ) ――梵語也。此ニハ翻(ホン)レ燒ト言ハ焼二滅ス也一切ノ魔悪ノ之根本ヲ一。〔永・言語門155九〕
護摩堂(ゴマタウ) 。〔乾坤門153六〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「護摩」の語を収載していて、下記真字本には見えている語となっている。だが、語注記は大いに異なりを見せていることが判明する。この語については、古辞書と没交渉と云うことになる。
535護摩ノ檀 真言護摩ハ宮人湯立大亊佛ノ従子(イトコ)阿若?陳如名ハ大器ト云。是人ハ先世ニ外道婆羅門火祠ノ法ヲ作ノ類俗也。今ノ真言ノ護摩ハ准∨之。此火天ニ使ルノ亊亦宮人火ノ亊ヲ自在ニスル也。仍亊∨火謂也。護摩壇ハ四樣也。息災増益敬愛調伏也。異本ニ護摩壇之三字無∨之也。能々見合可∨用∨之也。〔謙堂文庫藏五一右C〕
とあって、標記語「護摩」の語を収載し、その語注記には「真言護摩は、宮人湯立大亊佛の従子(イトコ)阿若?陳如名は大器と云ふ。是の人は先世に外道婆羅門火祠の法を作の類俗なり。今の真言の護摩は、之れに准らふ。此の火天に使ふるの亊、亦宮人火の亊を自在にするなり。仍って火の亊を謂ふなり。護摩壇は、四樣なり。息災、増益、敬愛、調伏なり。異本に護摩壇の三字之れ無きなり。能々見合せ之れを用ゆべきなり」と記載し、「護摩壇」の三字は、異本に無いとしている点が真字本の典拠となる『庭訓往來』の古本を考えていく上で注目されよう。
勤行(ゴンギヤウ)秘法(ヒボウ)唱滿(シヤウマン)陀羅尼(タラニ)念誦(ネンジユ)如シレ常ノ。〔下28オ二〕
Goma.ゴマ(護摩) 眞言宗僧(Xingonjùs)が悪魔に対して祈祷しながら行なうある種の儀式.例,Gomauo taqu.(護摩を焚く).胡麻(Coma)の油と樒(しきみ)の皮などを火にくべながら、この儀式を行なう. ※原文はloureiro.〔Xiqimi(樒)の注〕→Gomagui.〔邦訳306r〕
ご-ま〔名〕【護摩】〔梵語、護摩(ホオマ)(Homa.)焚燒、又、火祭と譯す、希麟音義「護摩二字、或云呼麼、梵語也、唐云二火祭一」一切煩惱の根本を燒滅する意)〕けしやき。けしたき。眞言宗にて修する行法。護摩の法に、息災、増益、降伏、鉤召、敬愛、の五種あり、各、其目的に因りて行ふ、多くは、不動尊を本尊として、安置し、其前に、護摩壇と云を設け、中央に、火爐あり、護摩木(ごまぎ)とて、檀木、乳木(ニユウボク)(ぬるでの木)と云ふ、長、短、二種の薪木を焚き、香、五穀、芥子、蘇油、等の供養物を捧げて、修法す。護摩を修するに設けたる建物を、護摩堂と云ふ。大日經疏、十五「護摩、是、燒義也、由二護摩一、能燒二除諸業一」〔0723-4〕
ゴマ-だん〔名〕【護摩壇】護摩の條を見よ。〔0725-1〕
陀羅尼(ダラニ) 。〔元亀二年本143四〕〔静嘉堂本153七〕
× 。〔天正十七年本中63オ二〕
細金彩色絵像各一輻薄濃墨畫一對摺写摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔至徳三年本〕
細金彩色繪像各一鋪([輻])薄濃墨繪(畫)一對書寫摺寫御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦眞言〔宝徳三年本〕
細金彩色畫像各一輻薄濃墨畫一對書冩摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念殊真言〔建部傳内本〕
細金彩色ノ繪像各一鋪(フク)薄濃(ダミ)ノ墨畫一對書冩摺写ノ妙典。轉讀ノ般若讀誦ノ經王(ワウ)。勤行ノ秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔山田俊雄藏本〕
細(ホソ)金彩(サイ)色ノ絵像各一輻薄濃(ダミ)ノ墨畫(スミヱ)一對書寫ノ御經轉讀ノ般若讀誦ノ經王勤行ノ秘法唱滿ノ陀羅尼念誦ノ真言〔経覺筆本〕
細金(ホソカネ)。彩色(サイシキ)ノ繪像(エサウ)。各。一鋪(フク)。薄濃(ウスタミ)ノ。墨畫(スミエ)。一對(ツイ)。書寫(シヨシヤ)。摺写(シツシヤ)ノ御經。轉讀(テントク)ノ。般若(ハンニヤ)一。讀誦(ドクシユ)ノ經王一。勤(コン)行ノ秘(ヒ)法。唱滿(シヤウマン)ノ陀羅尼(タラニ)。念誦(シユ)ノ真(シン)言。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「陀羅尼」と記載し、訓みは、文明四年本に「タラニ」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、唯一『運歩色葉集』に標記語「陀羅尼」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。
534勤行ノ秘密法唱滿陀羅尼 々々々ハ梵語也。即総持之義也。〔謙堂文庫藏五一右B〕
とあって、標記語「陀羅尼」の語を収載し、語注記は、「陀羅尼は、梵語なり。即ち、総持の義なり」と記載する。
勤行(ゴンギヤウ)秘法(ヒボウ)唱滿(シヤウマン)陀羅尼(タラニ)念誦(ネンジユ)如シレ常ノ。〔下28オ二〕
陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し/唱二滿シ陀羅尼ヲ一唱滿とハ一部の經をこと/\く讀終る事をいふにや疑し。陀羅尼といふも經乃名なり。〔75ウ八〜76オ六・七〕
とあって、この標記語「陀羅尼」の語をもって収載し、語注記は、「陀羅尼といふも經の名なり」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲唱滿( ― )爰(こゝ)にハ陀(た)羅尼經全部(せんふ)を讀果(よミはつ)るをいふとぞ。〔55オ一〜55ウ八〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲唱滿( ― )爰(こゝ)にハ陀羅尼(だらに)經全部(せんふ)を讀果(よミはつ)るをいふとぞ。〔100オ四〜五〕
だら-に〔名〕【陀羅尼】〔梵語、Dh?ra?i.能持、又、總持多含、等の義。善法を持して散ぜざらしめず、惡法を持して起こらざらしめざる力用を云ふ。智度論、五「陀羅尼者、秦曰二能持一、云云、能持トハ集二種種善法一、能持令二不レ散不一レ失」) 諷詠すべき經文の名。其用、聲音にあり。これ佛、菩薩の説ける呪語にして、萬コを包藏す。呪は、如來眞實の語なれば眞言と言ひ、呪語なれば、誦すべく解すべからず、故に翻譯せず。初に那謨(ナモ)、或は?(オン)の如き、敬禮を表する語を置き諸佛の名號を列ね、二三の秘密語を繰返し、末に娑縛訶(ソハカ)の語を以て結ぶを常とす。又、阿鑁覽?欠(アバラガンケン)の五字は、大日如來の眞言にて、五字陀羅尼とも云ひ、この五字は阿鼻羅吽(アビラウンケン)の如く、池、水、火、風、空の五大にして、大日如來の自證となす。秘藏記「諸經中説二陀羅尼一、或陀羅尼、或明、或呪、或密語、或眞言、如レ是五義、其義如何、陀羅尼者、佛放レ光、光之中所レ説也、云云、今持二此陀羅尼一人、能發二~通一除二災患一、與二呪禁法一相似、是故曰レ呪、云云」源氏物語、五、若紫十九「功(ぐう)づきてだらによみたり」〔1253-3〕
細金彩色絵像各一輻薄濃墨畫一對摺写摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔至徳三年本〕
細金彩色繪像各一鋪([輻])薄濃墨繪(畫)一對書寫摺寫御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦眞言〔宝徳三年本〕
細金彩色畫像各一輻薄濃墨畫一對書冩摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念殊真言〔建部傳内本〕
細金彩色ノ繪像各一鋪(フク)薄濃(ダミ)ノ墨畫一對書冩摺写ノ妙典。轉讀ノ般若讀誦ノ經王(ワウ)。勤行ノ秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔山田俊雄藏本〕
細(ホソ)金彩(サイ)色ノ絵像各一輻薄濃(ダミ)ノ墨畫(スミヱ)一對書寫ノ御經轉讀ノ般若讀誦ノ經王勤行ノ秘法唱滿ノ陀羅尼念誦ノ真言〔経覺筆本〕
細金(ホソカネ)。彩色(サイシキ)ノ繪像(エサウ)。各。一鋪(フク)。薄濃(ウスタミ)ノ。墨畫(スミエ)。一對(ツイ)。書寫(シヨシヤ)。摺写(シツシヤ)ノ御經。轉讀(テントク)ノ。般若(ハンニヤ)一。讀誦(ドクシユ)ノ經王一。勤(コン)行ノ秘(ヒ)法。唱滿(シヤウマン)ノ陀羅尼(タラニ)。念誦(シユ)ノ真(シン)言。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「唱滿」と記載し、訓みは、文明四年本に「シヤウマン」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「唱滿」の語は未収載にして、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。
534勤行ノ秘密法唱滿陀羅尼 々々々ハ梵語也。即総持之義也。〔謙堂文庫藏五一右B〕
とあって、標記語「唱滿」の語を収載し、語注記は未記載にする。
勤行(ゴンギヤウ)秘法(ヒボウ)唱滿(シヤウマン)陀羅尼(タラニ)念誦(ネンジユ)如シレ常ノ。〔下28オ二〕
陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し/唱二滿シ陀羅尼ヲ一唱滿とハ一部の經をこと/\く讀終る事をいふにや疑し。陀羅尼といふも經乃名なり。〔75ウ八〜76オ六・七〕
とあって、この標記語「唱滿」の語をもって収載し、語注記は、「唱滿とハ一部の經をこと/\く讀終る事をいふにや疑し」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲唱滿( ― )爰(こゝ)にハ陀(た)羅尼經全部(せんふ)を讀果(よミはつ)るをいふとぞ。〔55オ一〜55ウ八〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲唱滿( ― )爰(こゝ)にハ陀羅尼(だらに)經全部(せんふ)を讀果(よミはつ)るをいふとぞ。〔100オ四〜五〕
細金彩色絵像各一輻薄濃墨畫一對摺写摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔至徳三年本〕
細金彩色繪像各一鋪([輻])薄濃墨繪(畫)一對書寫摺寫御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦眞言〔宝徳三年本〕
細金彩色畫像各一輻薄濃墨畫一對書冩摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念殊真言〔建部傳内本〕
細金彩色ノ繪像各一鋪(フク)薄濃(ダミ)ノ墨畫一對書冩摺写ノ妙典。轉讀ノ般若讀誦ノ經王(ワウ)。勤行ノ秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔山田俊雄藏本〕
細(ホソ)金彩(サイ)色ノ絵像各一輻薄濃(ダミ)ノ墨畫(スミヱ)一對書寫ノ御經轉讀ノ般若讀誦ノ經王勤行ノ秘法唱滿ノ陀羅尼念誦ノ真言〔経覺筆本〕
細金(ホソカネ)。彩色(サイシキ)ノ繪像(エサウ)。各。一鋪(フク)。薄濃(ウスタミ)ノ。墨畫(スミエ)。一對(ツイ)。書寫(シヨシヤ)。摺写(シツシヤ)ノ御經。轉讀(テントク)ノ。般若(ハンニヤ)一。讀誦(ドクシユ)ノ經王一。勤(コン)行ノ秘(ヒ)法。唱滿(シヤウマン)ノ陀羅尼(タラニ)。念誦(シユ)ノ真(シン)言。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「秘法」と記載し、訓みは、文明四年本に「コン(ギヤウ)」と記載する。
秘法(ヒホフ/ヒソカ・カクス・ノリ)[平・去] 。〔態藝門1039一〕
秘法(ヒハウ) 。〔弘・言語進退門256四〕
秘蔵(ヒサウ) ―計(ケイ)。―術(ジユツ)。―事(ジ)。―藥(ヤク)/―密(ミツ)。―法。―曲(キヨク)。〔永・言語門218五〕
秘蔵 ―計。―術。―事。―曲/―藥。―蜜。―法。〔尭・言語門203七〕
秘密(ヒミツ) ―計(ケイ)。―要(ヨウ)。―傳(デン)。―術(ジユツ)/―曲(キヨク)。―書(シヨ)。―事(ジ)。―藏(サウ)。〔言辞門226三〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「秘法」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本に見えている語となっている。
534勤行ノ秘密法唱滿陀羅尼 々々々ハ梵語也。即総持之義也。〔謙堂文庫藏五一右B〕
※国会図書館蔵『左貫注庭訓往来』・天理図書館蔵『庭訓往來註』は、古写本と同じく「秘法」と記載する。
とあって、標記語「秘密法」の語を収載し、語注記は未記載にする。
勤行(ゴンギヤウ)秘法(ヒボウ)唱滿(シヤウマン)陀羅尼(タラニ)念誦(ネンジユ)如シレ常ノ。〔下28オ二〕
秘法(ひほう)を勤行(こんぎやう)し[「勤」の訓書込に「キン」]/勤二行シ秘法ヲ一勤行とハ精力を盡して執行する也。秘法とハ秘密の法也。〔75ウ八〜76オ五・六〕
とあって、この標記語「秘法」の語をもって収載し、語注記は、「秘法とは、秘密の法なり」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲勤行ハ精力(せいりき)を励(はけ)まして執行(しゆきやう)するをいふ。秘法ハ秘密(ひみつ)の法(ほふ)也。〔55オ一〜55ウ八〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲勤行ハ精力(せいりき)を励(はげ)まして執行(しゆぎやう)するをいふ。秘法ハ秘密(ひミつ)の法(ほふ)也。〔100オ四〜五〕
Fifo>.ヒホウ(秘法) 人間の力では及ばないような奇蹟的なわざ.〔邦訳230r〕
ひ-ほう〔名〕【秘法】(一)秘密の方法。用明天皇職人鑑(寳永、近松作)一「これ究竟の時節たり、我我が秘法を以て毒氣を吹きこみ」(二)密教にて行ふ秘密の祈?。源平盛衰記、廿五、西京座主祈?事「やや暫くありて、御返事申されけるは、何れの大法、秘法と申し候とも、是れに過ぎたる御祈?侍るまじ」古今著聞集、二、釋教「三部の大法會、諸尊別行護摩秘法を受け、秘密灌頂を傳へ給へり」太平記、一、中宮御産御祈之事「事を中宮の御産に寄せて、かやうに秘法を修せられけると也」〔1693-2〕
勤行(コンギヤウ) 。〔元亀二年本233三〕
勤行(ゴンギヤウ) 。〔静嘉堂本268三〕
勤行(コンキヤウ) 。〔天正十七年本中63オ二〕
細金彩色絵像各一輻薄濃墨畫一對摺写摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔至徳三年本〕
細金彩色繪像各一鋪([輻])薄濃墨繪(畫)一對書寫摺寫御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦眞言〔宝徳三年本〕
細金彩色畫像各一輻薄濃墨畫一對書冩摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念殊真言〔建部傳内本〕
細金彩色ノ繪像各一鋪(フク)薄濃(ダミ)ノ墨畫一對書冩摺写ノ妙典。轉讀ノ般若讀誦ノ經王(ワウ)。勤行ノ秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔山田俊雄藏本〕
細(ホソ)金彩(サイ)色ノ絵像各一輻薄濃(ダミ)ノ墨畫(スミヱ)一對書寫ノ御經轉讀ノ般若讀誦ノ經王勤行ノ秘法唱滿ノ陀羅尼念誦ノ真言〔経覺筆本〕
細金(ホソカネ)。彩色(サイシキ)ノ繪像(エサウ)。各。一鋪(フク)。薄濃(ウスタミ)ノ。墨畫(スミエ)。一對(ツイ)。書寫(シヨシヤ)。摺写(シツシヤ)ノ御經。轉讀(テントク)ノ。般若(ハンニヤ)一。讀誦(ドクシユ)ノ經王一。勤(コン)行ノ秘(ヒ)法。唱滿(シヤウマン)ノ陀羅尼(タラニ)。念誦(シユ)ノ真(シン)言。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「勤行」と記載し、訓みは、文明四年本に「コン(ギヤウ)」と記載する。
勤行(ゴンギヤウ、ヲコナウ/キンカウ・ツトム、ユク・ツラナル)[平・去] 。〔態藝門690一〕
勤行(ゴンギヤウ) 。〔弘・言語進退門190二〕〔尭・言語門145八〕
勤行(ゴンキヤウ) 。〔永・言語門155八〕
勤行(ゴンキヤウ) ―修(シユ)。―苦(ク)。〔言辞門159四〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「勤行」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。
533讀誦勤行 看文曰讀也。不忘曰誦也。〔謙堂文庫藏五一右A〕
とあって、標記語「勤行」の語を収載し、語注記は未記載にする。
勤行(ゴンギヤウ)秘法(ヒボウ)唱滿(シヤウマン)陀羅尼(タラニ)念誦(ネンジユ)如シレ常ノ。〔下28オ二〕
秘法(ひほう)を勤行(こんぎやう)し[「勤」の訓書込に「キン」]/勤二行シ秘法ヲ一勤行とハ精力を盡して執行する也。秘法とハ秘密の法也。〔75ウ八〜76オ五・六〕
とあって、この標記語「勤行」の語をもって収載し、語注記は、「勤行とは、精力を盡して執行するなり」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲勤行ハ精力(せいりき)を励(はけ)まして執行(しゆきやう)するをいふ。秘法ハ秘密(ひみつ)の法(ほふ)也。〔55オ一〜55ウ八〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲勤行ハ精力(せいりき)を励(はげ)まして執行(しゆぎやう)するをいふ。秘法ハ秘密(ひミつ)の法(ほふ)也。〔100オ四〜五〕
Gonguio<.ゴンギャウ(勤行) Tçutome vocon?.(勤め行ふ) 善い勤め・修行.〔邦訳307r〕
ごん-ぎゃう〔名〕【勤行】〔勤の呉音、ごん(金(キン)、こん)勤とは、勇悍に勤むる義、精進の意、懈怠の反なり〕佛教の語。精進の意、通常には、佛像に向ひて、定時に回向する誦經、禮拝、燒香、等の儀式を云ふ。無量義經「盍下棄二世事一勤行、求中道コ上」源平盛衰記、十八、文覺清水?天~金事「如何に殿原、自今以後は、知るべし、勤行、精進の在俗よりは、無智無行の比丘は勝りたり」〔0730-3〕
細金彩色絵像各一輻薄濃墨畫一對摺写摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔至徳三年本〕
細金彩色繪像各一鋪([輻])薄濃墨繪(畫)一對書寫摺寫御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦眞言〔宝徳三年本〕
細金彩色畫像各一輻薄濃墨畫一對書冩摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念殊真言〔建部傳内本〕
細金彩色ノ繪像各一鋪(フク)薄濃(ダミ)ノ墨畫一對書冩摺写ノ妙典。轉讀ノ般若讀誦ノ經王(ワウ)。勤行ノ秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔山田俊雄藏本〕
細(ホソ)金彩(サイ)色ノ絵像各一輻薄濃(ダミ)ノ墨畫(スミヱ)一對書寫ノ御經轉讀ノ般若讀誦ノ經王勤行ノ秘法唱滿ノ陀羅尼念誦ノ真言〔経覺筆本〕
細金(ホソカネ)。彩色(サイシキ)ノ繪像(エサウ)。各。一鋪(フク)。薄濃(ウスタミ)ノ。墨畫(スミエ)。一對(ツイ)。書寫(シヨシヤ)。摺写(シツシヤ)ノ御經。轉讀(テントク)ノ。般若(ハンニヤ)一。讀誦(ドクシユ)ノ經王一。勤(コン)行ノ秘(ヒ)法。唱滿(シヤウマン)ノ陀羅尼(タラニ)。念誦(シユ)ノ真(シン)言。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「經王」と記載し、訓みは、山田俊雄藏本に「(キヤウ)ワウ」と記載する。
經王 ヒヤクタン俗/栴檀白者/――。〔黒川本・植物門下87ウ五〕
經王 ヒヤクタン。〔巻第十・植物門322四〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「經王」の語は、未収載にして、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。
533讀誦經王 看文曰讀也。不忘曰誦也。〔謙堂文庫藏五一右A〕
とあって、標記語「經王」の語を収載し、語注記は、「文を看て讀むを曰ふなり、忘れずして誦へて曰ふなり」と記載する。
經王ハ法華經也。〔下28オ一・二〕
經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し/讀二誦シ經王ヲ一文字を見てよむを讀と云。そらよみするを誦と云。されともこゝハかゝハるへからす。經王ハ法華經(ほけきやう)の事なり。〔75ウ八〜76オ一〕
とあって、この標記語「經王」の語をもって収載し、語注記は、「經王は、法華經(ほけきやう)の事なり」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲讀誦文字(もし)を見つゝよむを讀といひそらよみするを誦といふ。經王ハ法華經(ほけきやう)也。〔55オ一〜55ウ七・八〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲讀誦文字(もじ)を見つゝよむを讀(どく)といひそらよみするを誦(じゆ)といふ。經王ハ法華經(ほけきやう)也。〔100オ四〜五〕
Qio<uo<.キャウワウ(經王) すなわち,Foqeqio<.(法華経) 釈迦(Xaca)の著わした教法の主要な経典.〔邦訳503r〕
讀誦(ドクジユ) 。〔元亀二年本56七〕
讀誦(ドクシユ) 。〔静嘉堂本63七〕
讀誦(トクシユ) 。〔天正十七年本上32ウ六〕
細金彩色絵像各一輻薄濃墨畫一對摺写摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔至徳三年本〕
細金彩色繪像各一鋪([輻])薄濃墨繪(畫)一對書寫摺寫御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦眞言〔宝徳三年本〕
細金彩色畫像各一輻薄濃墨畫一對書冩摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念殊真言〔建部傳内本〕
細金彩色ノ繪像各一鋪(フク)薄濃(ダミ)ノ墨畫一對書冩摺写ノ妙典。轉讀ノ般若讀誦ノ經王(ワウ)。勤行ノ秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔山田俊雄藏本〕
細(ホソ)金彩(サイ)色ノ絵像各一輻薄濃(ダミ)ノ墨畫(スミヱ)一對書寫ノ御經轉讀ノ般若讀誦ノ經王勤行ノ秘法唱滿ノ陀羅尼念誦ノ真言〔経覺筆本〕
細金(ホソカネ)。彩色(サイシキ)ノ繪像(エサウ)。各。一鋪(フク)。薄濃(ウスタミ)ノ。墨畫(スミエ)。一對(ツイ)。書寫(シヨシヤ)。摺写(シツシヤ)ノ御經。轉讀(テントク)ノ。般若(ハンニヤ)一。讀誦(ドクシユ)ノ經王一。勤(コン)行ノ秘(ヒ)法。唱滿(シヤウマン)ノ陀羅尼(タラニ)。念誦(シユ)ノ真(シン)言。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「読誦」と記載し、訓みは、文明四年本に「トクシユ」と記載する。
讀誦(ドクジユ/ヨミ、ヨム)[入・○] 對レ文曰レ讀。背レ文曰レ誦。〔態藝門139七〕
讀誦(ドクジユ) 。〔弘・言語進退門47二〕
讀誦(ドクジユ) ―經(トツキヤウ)。―合(トツカウ)。〔永・言語門45二〕
讀誦(ドクジユ) ―經。―合。〔尭・言語門41八〕
讀誦(ドクシユ) 。〔両・言語門50一〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「讀誦」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。なかでも広本『節用集』に語注記が記載されていて、この注記内容が非常に真字本の語注記に近似た内容であることに気づくのである。
533讀誦經王 看文曰讀也。不忘曰誦也。〔謙堂文庫藏五一右A〕
とあって、標記語「讀誦」の語を収載し、語注記は「文を看て讀むを曰ふなり、忘れずして誦へて曰ふなり」と記載する。
讀誦(ドクジユ)ハ讀トハ向(ムカウ)レ文(モンニ)テヨム。誦トハ諳(ソラ)ニヨム事ナリ。〔下28オ一〕
經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し/讀二誦シ經王ヲ一文字を見てよむを讀と云。そらよみするを誦と云。されともこゝハかゝハるへからす。經王ハ法華經(ほけきやう)の事なり。〔75ウ八〜76オ一〕
とあって、この標記語「讀誦」の語をもって収載し、語注記は、「文字を見てよむを「讀」と云ふ。そらよみするを「誦」と云ふ。されども、こゝはかゝはるべからず」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲讀誦文字(もし)を見つゝよむを讀といひそらよみするを誦といふ。經王ハ法華經(ほけきやう)也。〔55オ一〜55ウ七・八〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲讀誦文字(もじ)を見つゝよむを讀(どく)といひそらよみするを誦(じゆ)といふ。經王ハ法華經(ほけきやう)也。〔100オ四〜五〕
Docuju.ドクジュ(読誦) Yomi yomu.(読み誦む)読むこと.例,Qio<uo docuju suru.(経を読誦する)ある経を読む. →Iuxi,suru;Sango>.〔邦訳186l〕
どく-じゅ〔名〕【讀誦】〔文字に就きてよむを、讀と云ひ、文字を離れてよむを、誦と云ふ〕經文を讀(よ)み誦(とな)ふること。法華經、法師品「受二持讀三誦解四説書五冩法華經乃至一偈一」庭訓往來、九月「轉二讀般若一、読二誦經王一」「御經讀誦」〔1397-4〕
般若(ハンニヤ) 佛此年説之。〔元亀二年本30一〕
般若(ハンニヤ) 佛此季説也。〔静嘉堂本30一〕
般若(ハンニヤ) 佛卅季説之。〔天正十七年本上18オ六〕〔西來寺本〕
細金彩色絵像各一輻薄濃墨畫一對摺写摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔至徳三年本〕
細金彩色繪像各一鋪([輻])薄濃墨繪(畫)一對書寫摺寫御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦眞言〔宝徳三年本〕
細金彩色畫像各一輻薄濃墨畫一對書冩摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念殊真言〔建部傳内本〕
細金彩色ノ繪像各一鋪(フク)薄濃(ダミ)ノ墨畫一對書冩摺写ノ妙典。轉讀ノ般若讀誦ノ經王(ワウ)。勤行ノ秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔山田俊雄藏本〕
細(ホソ)金彩(サイ)色ノ絵像各一輻薄濃(ダミ)ノ墨畫(スミヱ)一對書寫ノ御經轉讀ノ般若讀誦ノ經王勤行ノ秘法唱滿ノ陀羅尼念誦ノ真言〔経覺筆本〕
細金(ホソカネ)。彩色(サイシキ)ノ繪像(エサウ)。各。一鋪(フク)。薄濃(ウスタミ)ノ。墨畫(スミエ)。一對(ツイ)。書寫(シヨシヤ)。摺写(シツシヤ)ノ御經。轉讀(テントク)ノ。般若(ハンニヤ)一。讀誦(ドクシユ)ノ經王一。勤(コン)行ノ秘(ヒ)法。唱滿(シヤウマン)ノ陀羅尼(タラニ)。念誦(シユ)ノ真(シン)言。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、山田俊雄藏本、経覺筆本の古写本は、「般若」と記載し、訓みは、文明四年本に「ハンニヤ」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、『運歩色葉集』のみに標記語「般若」の語を収載していて、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。但し、注記内容は一致しない。
532書写摺写御經転讀般若 慈覚大師清和天王御宇祈祷之時始也。〔謙堂文庫藏五一右A〕
とあって、標記語「般若」の語を収載し、語注記は、「慈覚大師、清和天王の御宇、祈祷の時始むるなり」と記載する。
転讀之般若常の事也。〔下27ウ七〜八〕
般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し/轉二讀シ般若ヲ一轉讀ハくり返し/\して讀む事也。般若ハ經の名也。〔75ウ八〜76オ一〕
とあって、この標記語「般若」の語をもって収載し、語注記は、「般若ハ經の名なり」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲轉讀ハくりかへして讀(よ)むをいふ。般若ハ經(きやう)の名(な)也。〔55オ一〜55ウ七〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲轉讀ハくりかへして讀(よ)むをいふ。般若ハ經(きやう)の名(な)也。〔100オ三〕
はん-にゃ〔名〕【般若】(一)梵語、鉢羅若那(Prajñ?.)の略。(般は音、鉢の音便)智慧の義。心經、註「般若者、梵語、此曰智慧、逐諸境界、心背レ眞、故不知无我、我即愚痴全體也、離愚痴謂智、有其方便謂慧、智者慧之體、慧者智之用也、衆生本來具足矣」大智度論、四十三「般若者、秦言二智慧一、一切諸智慧中、最爲二第一一」南蠻傳「單單在二攝州東南多羅磨之西一、亦有二州縣一、木多二般若一」(二)俗に、恐るべき相をなせる鬼女の稱。謡曲「葵の上」に、婦人の怨靈、人を惱ますを、僧、祈りて、經文(般若經)を唱ふ、祈りこめられ、怨靈「あら恐しの般若聲や」と云ひて消ゆ。般若經に、菩薩の魔怨を摧伏することありと云ふ。般若聲は經文の聲なるを誤りて、怨靈の聲としたるか(般若聲云云の説は、山本北山の説なりと、善庵随筆に云へり)と云ふ。或は云ふ、十六善~は般若經の守護~なれば云ふと云へど、男女の違ひあり。或は云ふ、昔、或女房の、妬心深きを濟度せむとて、般若坊と云ふ僧の打ちし面ありしに起る、其面、現に今春(こんぱる)の家にありと。外面如菩薩、内心如夜叉の意を表せるかと云ふ。(海録、十八)或は云ふ、梵語、般荼(ハンツア)の轉、怪物の義なりと。女夜叉。嬉遊笑覽、六、下「今春の家に、傳來の鬼女の古面、南都の般若坊の作と云ふ」柳樽「大はんにゃ、時時でかい、聲を出し」大行事筆記「都般若寺の上人、はじめて般若の面を造る、女の心、嫉妬深くして、恐しとの意を形に寓したるなり」〔1626-5〕
転讀之般若常の事也。〔下27ウ七〜八〕
般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し/轉二讀シ般若ヲ一轉讀ハくり返し/\して讀む事也。般若ハ經の名也。〔75ウ八〜76オ一〕
とあって、この標記語「轉讀」の語をもって収載し、語注記は、「轉讀は、くり返し/\して讀む事なり」と記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。▲轉讀ハくりかへして讀(よ)むをいふ。般若ハ經(きやう)の名(な)也。〔55オ一〜55ウ七〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。▲轉讀ハくりかへして讀(よ)むをいふ。般若ハ經(きやう)の名(な)也。〔100オ三〕
てん-どく〔名〕【轉讀】〔圓光大師行?翼賛十三「轉讀とは、云云、轉は轉法輪の轉に同じくて、只よむを轉ずと云ふなり、略讀を云ふにあらずと」見えたり〕大部の經文の初、中、終の數行を讀みて、經本を轉向すること。之れに對して、全部を漏さず讀むを、眞讀(シンドク)と云ふ。地藏本願經、下「或轉二讀尊經一」高僧傳(梁、慧皎)經師傳「詠經則稱爲二轉讀一、歌讃則爲二梵音一」主税寮式「凡諸國春秋二仲月、各一七日、於二金光明寺一、請二部内衆僧一、轉二讀金剛般若經一」續紀、廿八、~護景雲元年十月「御二大極殿一屈二僧六百一、轉二讀大般若經一」平家物語、一、鹿谷事「眞讀の大般若を七日讀ませられける」甲斐國志、八十七、佛寺、身延山久遠寺「年中行事の次第、二月彼岸會、十月十二日、一部眞讀法華經」〔1374-1〕
細金彩色絵像各一輻薄濃墨畫一對摺写摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔至徳三年本〕
細金彩色繪像各一鋪([輻])薄濃墨繪(畫)一對書寫摺寫御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念誦眞言〔宝徳三年本〕
細金彩色畫像各一輻薄濃墨畫一對書冩摺冩御經轉讀般若讀誦經王勤行秘法唱滿陀羅尼念殊真言〔建部傳内本〕
細金彩色ノ繪像各一鋪(フク)薄濃(ダミ)ノ墨畫一對書冩摺写ノ妙典。轉讀ノ般若讀誦ノ經王(ワウ)。勤行ノ秘法唱滿陀羅尼念誦真言〔山田俊雄藏本〕
細(ホソ)金彩(サイ)色ノ絵像各一輻薄濃(ダミ)ノ墨畫(スミヱ)一對書寫ノ御經轉讀ノ般若讀誦ノ經王勤行ノ秘法唱滿ノ陀羅尼念誦ノ真言〔経覺筆本〕
細金(ホソカネ)。彩色(サイシキ)ノ繪像(エサウ)。各。一鋪(フク)。薄濃(ウスタミ)ノ。墨畫(スミエ)。一對(ツイ)。書寫(シヨシヤ)。摺写(シツシヤ)ノ御經。轉讀(テントク)ノ。般若(ハンニヤ)一。讀誦(ドクシユ)ノ經王一。勤(コン)行ノ秘(ヒ)法。唱滿(シヤウマン)ノ陀羅尼(タラニ)。念誦(シユ)ノ真(シン)言。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本、宝徳三年本、建部傳内本、文明四年本、経覺筆本の古写本は、「御經」と記載し、ただ、山田俊雄藏本だけが「妙典」と置換がなされている。訓みは、いずれも未記載とする。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「御經」の語はいずれも未収載して、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には見えている語となっている。
532書写摺写御經転讀般若 慈覚大師清和天王御宇祈祷之時始也。〔謙堂文庫藏五一右A〕
とあって、標記語「御經」の語を収載し、語注記は未記載にする。
摺写(シユシヤ)ノ御經ハスリホンナリ。〔下27ウ八〕
書写(しよしや)摺寫(しうしや)の御經(おんきやう)/書写摺写ノ御經書写の経ハかき本也。摺写の経ハすり本也。金色等身の如来といふよりこゝ迄ハ開眼供養也。〔75ウ八〜76オ一〕
とあって、この標記語「御經」の語をもって収載し、語注記は未記載にする。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御供養(こくやう)有(あ)る可(べ)き條條(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんちう)乃塔婆(たふは)金堂(こんたう)寳塔(ほうたふ)經藏(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミところ)總門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんしき)等身(とうしん)の如來(によらい)白檀(ひやくたん)坐像(ざぞう)の菩薩(ぼさつ)脇士(わきし)乃二天(にてん)之(これ)を尅彫(こくてう)す細金(さいきん)彩色(さいしき)の繪像(ゑそう)一幅(いつふく)薄濃(うすたミ)の墨画(すミゑ)一對(いつつい)書寫(しよしや)摺寫(しふしや)の御經(おんきやう)般若(はんにや)を轉讀(てんどく)し經王(きやうわう)を讀誦(どくしゆ)し秘鎌(ひほふ)を勤行(こんぎやう)し陀羅尼(だらに)を唱滿(しやうまん)し眞言(しんごん)を念誦(ねんしゆ)す稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ちさい)禪律(せんりつ)抖藪(とさう)乃行人(きやうにん)等(とう)攝待(せつたい)千僧供養(せんぞうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)/可キレ有二御供養一條々者精舎一宇三重ノ塔婆金堂。宝塔。経蔵。鐘樓。食堂。休所。惣門。二階。湯屋僧坊。金色等身ノ如来。白檀座像ノ菩薩。脇士ノ二天。刻二彫ス之ヲ一。細金。彩色ノ絵像。各一輻。薄濃ノ墨畫一對。書寫摺写ノ御經。轉二讀般若ヲ一。讀二誦シ經王ヲ一。勤二行シ秘法ヲ一。唱二滿陀羅尼ヲ一。念二誦ス真言ヲ一。稱名念佛。九旬供花。一夏持齋。禪律。斗藪行人等。接待千僧供養。非人施行等也。〔55オ一〜55ウ五〕
可(べき)レ有(ある)二御供養(ごくやう)一條々(でう/\)者(ハ)精舎(しやうしや)一宇(いちう)三重(さんぢう)の塔婆(たふば)金堂(こんたう)宝塔(はうたふ)経蔵(きやうざう)鐘樓(しゆろう)食堂(じきだう)休所(やすミどころ)惣門(そうもん)二階(にかい)湯屋(ゆや)僧坊(そうばう)金色(こんじき)等身(とうしん)の如来(によらい)白檀(びやくだん)坐像(ざざう)菩薩(ぼさつ)脇士(たうし)の二天(にてん)尅(こく)二彫(てう)す之(これ)を一細金(さいきん)彩色(さいしき)の絵像(ゑざう)各(おの/\)一輻(いつふく)薄濃(うすだミ)の墨畫(すミゑ)一對(いつつゐ)書寫(しよしや)摺写(しふしや)の御經(おんきやう)轉(てん)二讀(どく)し般若(はんにや)を一讀(どく)二誦(じゆ)し經王(きやうわう)を一勤(ごん)二行(ぎやう)し秘法(ひほふ)を一唱(しやう)二滿(まん)し陀羅尼(だらに)を一念(ねん)二誦(じゆ)す真言(しんごん)を一稱名(しやうミやう)念佛(ねんぶつ)九旬(くしゆん)供花(くげ)一夏(いちけ)持齋(ぢさい)禪律(ぜんりつ)抖藪(とさう)の行人(ぎやうにん)等(とう)接待(せつたい)千僧供養(せんそうくやう)非人(ひにん)施行(せぎやう)等(とう)也(なり)。〔100オ三〕
BACK(「言葉の泉」へ)
MAIN MENU(情報言語学研究室へ)
上記、記載内容についての問い合わせのメールは、
《(学校)hagi@komazawa-u.ac.jp. (自宅)hagi@kk.iij4u.or.jp.》で、お願いします。