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ことばの溜め池
ふだん何氣なく思っている「ことば」を、池の中にポチャンと投げ込んでいきます。ふと立ち寄ってお氣づきのことがございましたらご連絡ください。
湯盞(サン) 。〔元亀二年本135四〕〔静嘉堂本142五五〕〔天正十七年本中3オ八〕
被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔至徳三年本〕
御時以前可被調置茶具建盞天目胡盞没州〔宝徳三年本〕
御齋以前可可([マヽ])被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔建部傳内本〕
御時以前ニ可∨被‖調ヘ置ル|茶ノ具茶粥ノ具ハ建盞(ケンサン)天目胡(ウ)盞繞州粥(ネウシユワン)。〔山田俊雄藏本〕
御時以前ニ可シ∨被‖調(トヽノヘ)ヘ置|茶具者(ハ)建盞(ケンサン)天目胡盞(ウサン)繞州(ニヨウシウ)瀏。〔経覺筆本〕
御齋以前ニ可∨被(ル)‖調ヘ置(オカ)|之茶(チヤ)ノ具ニハ建盞(ケンサン)天目。没州(ネウシユウ)〔文明四年本〕※建盞(ケンサン)。※没(ネウ)州。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本何れも「湯盞」の語を未収載にする。
湯盞(タウサン) 。〔器財門105三〕
湯盞(タウサン/ユ、サカヅキ)[平去・上] 。〔器財門341六〕
湯盞(タウサン) 酒器。〔弘・財宝門104二〕
湯盞(タウサン) 。〔両・財寳門103一〕
湯盞(タウサン) 。〔器財門91七〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「湯盞」の語を以て収載し、これを下記真字本が収載しているのである。語注記は、弘治二年本『節用集』だけに見えている。
682胡盞(ウサン)湯盞(タウ―) 胡盞義也。〔謙堂文庫蔵五八左@〕
とあって、標記語「湯盞」の語を収載し、語注記は「胡(国)の盞の義なり」と記載する。
客料(カクレウ)ノ|可(ヘシ)∨被三用‖意せ之ヲ|御時粥(カユ)已前ニ可∨被‖調置(トヽノヘヲカル)|茶ノ具ハ建盞(ケンザン)天目胡盞(コサン)没州(ニヨウジウ)ノ茶碗(チヤワン)并ニ木椀(モクワン)茶器(キ)八ツ入ノ盆(ボン)ヲ一對(ツイ)茶瓢(ヘウ)茶盞(せン)茶桶(ヲケ)茶巾(キン)茶杓(シヤク)兎足(トソク)湯n(タウビン)罐子(クハンス)捌茶(ルイサ)茶臼(チヤウス)并ニ椀折敷(ワンヲシキ)豆子(ヅス)楪子(チヤツ)追膳(ヲイせン)折敷(ヲシキ)同ク可∨被‖副整(ソヘトヽノヘ)|也。御齋(トキ)ノ之 客料トハ其人々ノ召(メシ)ツレ來ル者冫也。座敷(ザシキ)ヘハ不∨出内々ニ居ルナリ。〔下35オ六〜35ウ三〕
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)に調へ置か被(る)可(べ)き茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)没州(にやうしう)の茶碗(ちやわん)并(ならび)に木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれ)乃盆(ぼん)一對(いつつい)茶瓢(ちやびやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(とうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならび)に椀折敷(わんおしき)豆子(つす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三(さん)の膳(ぜん)折敷(をしき)同(おなじ)く副(そ)へ整(とゝの)へら被(る)可(べ)き也(なり)/御齋粥以前ニ可キ∨被‖調ヘ置カ|茶ノ具者。建盞。天目。胡盞。繞州ノ茶碗。并ニ木椀。茶器。八入ノ盆一對。茶瓢。茶箋。茶桶。茶巾。茶杓。兎足。湯n。鑵子。擂茶。茶磨等。并ニ椀折敷。豆子。畛子。追膳。三ノ膳ノ折敷。同ク可キ∨被‖副ヘ整ヘテ|也。〔65ウ五〕
御齋粥(おんときかゆ)以前(いぜんに)可(べき)調(とゝのへ)置(おか)茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)繞州(ねうしうの)茶碗(ちやわん)并(ならびに)木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれの)盆(ぼん)一對(いつつゐ)茶瓢(ちやひやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(たうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならびに)椀折敷(わんをしき)豆子(づす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三膳(さんのぜん)折敷(をしき)同(おなじく)可(べき)被(る)副(そへ)整(とゝのへら)也(なり)。〔118オ三〕
To<san.タウサン(湯盞) 盃(Sacazzuqui)の一種で,それ専用の赤く漆塗りした(vruxada)の木の盆にのせたもの. ※Nuri,uの注参照.〔邦訳670l〕
烏盞(サン) 。胡盞(同) 。〔元亀二年本179九〕
烏盞(ウサン) 。胡盞(同) 。〔静嘉堂本201二〕
烏盞(サン) 。胡盞( サン) 。〔天正十七年本中30オ一〕
被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔至徳三年本〕
御時以前可被調置茶具建盞天目胡盞没州〔宝徳三年本〕
御齋以前可可([マヽ])被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔建部傳内本〕
御時以前ニ可∨被‖調ヘ置ル|茶ノ具茶粥ノ具ハ建盞(ケンサン)天目胡(ウ)盞繞州粥(ネウシユワン)。〔山田俊雄藏本〕
御時以前ニ可シ∨被‖調(トヽノヘ)ヘ置|茶具者(ハ)建盞(ケンサン)天目胡盞(ウサン)繞州(ニヨウシウ)瀏。〔経覺筆本〕
御齋以前ニ可∨被(ル)‖調ヘ置(オカ)|之茶(チヤ)ノ具ニハ建盞(ケンサン)天目。没州(ネウシユウ)〔文明四年本〕※建盞(ケンサン)。※没(ネウ)州。
と見え、文明四年本は此の語を未収載にする。至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本は、「胡盞」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に「ウ(サン)」、経覺筆本に「ウサン」と記載する。
烏盞(ウサン) 。〔器財門105一〕
胡盞(ウザン/コ・ナンソ・ヱビス、サカヅキ)[○・上] 或胡作レ烏。〔器財門476二〕
胡盞(ウサン) 。〔弘・財宝門150一〕〔尭・財宝門111五〕〔両・財宝門135七〕
胡盞(ウサン) ―烏イ。〔永・財宝門121七〕
胡盞(ウサン) 。〔器財門118六〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「胡盞」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、古辞書における広本『節用集』の訓みと語注記は特出している。
682胡盞(ウサン)湯盞(タウ―) 胡盞義也。〔謙堂文庫蔵五八左@〕
とあって、標記語「胡盞」の語を収載し、語注記は「胡(国)の盞の義なり」と記載する。
客料(カクレウ)ノ|可(ヘシ)∨被三用‖意せ之ヲ|御時粥(カユ)已前ニ可∨被‖調置(トヽノヘヲカル)|茶ノ具ハ建盞(ケンザン)天目胡盞(コサン)没州(ニヨウジウ)ノ茶碗(チヤワン)并ニ木椀(モクワン)茶器(キ)八ツ入ノ盆(ボン)ヲ一對(ツイ)茶瓢(ヘウ)茶盞(せン)茶桶(ヲケ)茶巾(キン)茶杓(シヤク)兎足(トソク)湯n(タウビン)罐子(クハンス)捌茶(ルイサ)茶臼(チヤウス)并ニ椀折敷(ワンヲシキ)豆子(ヅス)楪子(チヤツ)追膳(ヲイせン)折敷(ヲシキ)同ク可∨被‖副整(ソヘトヽノヘ)|也。御齋(トキ)ノ之 客料トハ其人々ノ召(メシ)ツレ來ル者冫也。座敷(ザシキ)ヘハ不∨出内々ニ居ルナリ。〔下35オ六〜35ウ三〕
胡盞(こさん)/胡盞 染付(そめつけ)のけちやわん也。又高麗(かうらい)ちやわんといふともいえり。〔89オ七〕
とあって、この標記語「胡盞」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)に調へ置か被(る)可(べ)き茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)没州(にやうしう)の茶碗(ちやわん)并(ならび)に木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれ)乃盆(ぼん)一對(いつつい)茶瓢(ちやびやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(とうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならび)に椀折敷(わんおしき)豆子(つす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三(さん)の膳(ぜん)折敷(をしき)同(おなじ)く副(そ)へ整(とゝの)へら被(る)可(べ)き也(なり)/御齋粥以前ニ可キ∨被‖調ヘ置カ|茶ノ具者。建盞。天目。胡盞。繞州ノ茶碗。并ニ木椀。茶器。八入ノ盆一對。茶瓢。茶箋。茶桶。茶巾。茶杓。兎足。湯n。鑵子。擂茶。茶磨等。并ニ椀折敷。豆子。畛子。追膳。三ノ膳ノ折敷。同ク可キ∨被‖副ヘ整ヘテ|也。▲胡盞ハ高麗(かうらい)茶碗也と〔65ウ五、66オ一〕
御齋粥(おんときかゆ)以前(いぜんに)可(べき)調(とゝのへ)置(おか)茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)繞州(ねうしうの)茶碗(ちやわん)并(ならびに)木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれの)盆(ぼん)一對(いつつゐ)茶瓢(ちやひやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(たうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならびに)椀折敷(わんをしき)豆子(づす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三膳(さんのぜん)折敷(をしき)同(おなじく)可(べき)被(る)副(そへ)整(とゝのへら)也(なり)。▲胡盞ハ高麗(かうらい)茶碗也と。〔118オ三、118ウ三〕
Vsan.ウサン(胡盞) Sacazzuqi(盃)に同じ.コップ,または,盃.文章語.〔邦訳733r〕
ウ-サン〔名〕【烏盞・胡盞】〔胡亂(ウロン)の條の語原を見よ〕けんざん(建盞)の條を見よ。〔0229-2〕
天目(モク) 。〔元亀二年本243四〕〔静嘉堂本280五〕
被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔至徳三年本〕
御時以前可被調置茶具建盞天目胡盞没州〔宝徳三年本〕
御齋以前可可([マヽ])被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔建部傳内本〕
御時以前ニ可∨被‖調ヘ置ル|茶ノ具茶粥ノ具ハ建盞(ケンサン)天目胡(ウ)盞繞州粥(ネウシユワン)。〔山田俊雄藏本〕
御時以前ニ可シ∨被‖調(トヽノヘ)ヘ置|茶具者(ハ)建盞(ケンサン)天目胡盞(ウサン)繞州(ニヨウシウ)瀏。〔経覺筆本〕
御齋以前ニ可∨被(ル)‖調ヘ置(オカ)|之茶(チヤ)ノ具ニハ建盞(ケンサン)天目。没州(ネウシユウ)〔文明四年本〕※建盞(ケンサン)。※没(ネウ)州。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「天目」と記載する。
天目(テンモク/ソラ、ボク・メ)[平・入] 自二天目山一出レ之。故ニ名也。〔器財門717一〕
天目 天目山ヨリ出之故云。〔弘・財宝門197七〕
天目(テンモク) 自天目山始出之。〔永・財宝門163八〕
天目(モク) 自―――始出之。〔尭・財宝門152九〕
天蓋(テンガイ) ―冠(グワン)。―目(モク)。〔器財門165二〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「天目」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、広本『節用集』類の語注記内容とは異なっている。
681以前可∨被‖調置|茶具者建盞(ケンサン)天目 何処ノ名也。〔謙堂文庫蔵五八右H〕
とあって、標記語「天目」の語を収載し、語注記は「何れも処の名なり」と記載する。
客料(カクレウ)ノ|可(ヘシ)∨被三用‖意せ之ヲ|御時粥(カユ)已前ニ可∨被‖調置(トヽノヘヲカル)|茶ノ具ハ建盞(ケンザン)天目胡盞(コサン)没州(ニヨウジウ)ノ茶碗(チヤワン)并ニ木椀(モクワン)茶器(キ)八ツ入ノ盆(ボン)ヲ一對(ツイ)茶瓢(ヘウ)茶盞(せン)茶桶(ヲケ)茶巾(キン)茶杓(シヤク)兎足(トソク)湯n(タウビン)罐子(クハンス)捌茶(ルイサ)茶臼(チヤウス)并ニ椀折敷(ワンヲシキ)豆子(ヅス)楪子(チヤツ)追膳(ヲイせン)折敷(ヲシキ)同ク可∨被‖副整(ソヘトヽノヘ)|也。御齋(トキ)ノ之 客料トハ其人々ノ召(メシ)ツレ來ル者冫也。座敷(ザシキ)ヘハ不∨出内々ニ居ルナリ。〔下35オ六〜35ウ三〕
天目(てんもく)/天目 ちやわんの事也。〔89オ六・七〕
とあって、この標記語「天目」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)に調へ置か被(る)可(べ)き茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)没州(にやうしう)の茶碗(ちやわん)并(ならび)に木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれ)乃盆(ぼん)一對(いつつい)茶瓢(ちやびやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(とうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならび)に椀折敷(わんおしき)豆子(つす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三(さん)の膳(ぜん)折敷(をしき)同(おなじ)く副(そ)へ整(とゝの)へら被(る)可(べ)き也(なり)/御齋粥以前ニ可キ∨被‖調ヘ置カ|茶ノ具者。建盞。天目。胡盞。繞州ノ茶碗。并ニ木椀。茶器。八入ノ盆一對。茶瓢。茶箋。茶桶。茶巾。茶杓。兎足。湯n。鑵子。擂茶。茶磨等。并ニ椀折敷。豆子。畛子。追膳。三ノ膳ノ折敷。同ク可キ∨被‖副ヘ整ヘテ|也。▲天目ハ茶碗の類。〔65ウ五、66オ一〕
御齋粥(おんときかゆ)以前(いぜんに)可(べき)調(とゝのへ)置(おか)茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)繞州(ねうしうの)茶碗(ちやわん)并(ならびに)木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれの)盆(ぼん)一對(いつつゐ)茶瓢(ちやひやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(たうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならびに)椀折敷(わんをしき)豆子(づす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三膳(さんのぜん)折敷(をしき)同(おなじく)可(べき)被(る)副(そへ)整(とゝのへら)也(なり)。▲天目ハ茶碗の類。〔118オ三、117ウ五〕
Tenmocu.テンモク(天目) 茶(Cha)や薬などを飲むのに使う,日本の茶碗.〔邦訳646l〕
てん-もく〔名〕【天目】〔支那、浙江省、臨安縣の天目山は名茶を産ず。昔、五山の僧など、天目の茶を賞したれば、其名の器物に移りしものかと云ふ〕(一)天目茶碗の略。茶家に、茶碗の一種。すりばちなりにして淺く、上の開きたるものの稱。尻すぼまりたれば、K漆の茶臺に載するを常とす。緑は銀の覆輪(ふくりん)を置く。和訓栞、前編「てんもく、甑を云ふ、建安の天目山の名によれり、磁碗の深きを云へり」和漢三才圖會、三十一、庖厨具「茶職、云云、京師K谷、清水、御室之茶職天目最多、皆可レ吃二薄茶煎茶一」(二)泛(ひろ)く、茶碗の稱。(四國、九州、中國、北國)〔1376-5〕
建盞(ケンザン) 。〔元亀二年本216九〕〔静嘉堂本247一〕
建盞(ケンサン) 。〔天正十七年本中52ウ七〕
被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔至徳三年本〕
御時以前可被調置茶具建盞天目胡盞没州〔宝徳三年本〕
御齋以前可可([マヽ])被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔建部傳内本〕
御時以前ニ可∨被‖調ヘ置ル|茶ノ具茶粥ノ具ハ建盞(ケンサン)天目胡(ウ)盞繞州粥(ネウシユワン)。〔山田俊雄藏本〕
御時以前ニ可シ∨被‖調(トヽノヘ)ヘ置|茶具者(ハ)建盞(ケンサン)天目胡盞(ウサン)繞州(ニヨウシウ)瀏。〔経覺筆本〕
御齋以前ニ可∨被(ル)‖調ヘ置(オカ)|之茶(チヤ)ノ具ニハ建盞(ケンサン)天目。没州(ネウシユウ)〔文明四年本〕※建盞(ケンサン)。※没(ネウ)州。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「建盞」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に・経覺筆本・文明四年本に「ケンサン」と記載する。
建盞(ケンザン) 。〔器財門105一〕
建盞(ケンザン/タツ、サカヅキ)[去・上] ――天目。〔器財門593三〕
建盞(ケンゲン) 。〔弘・財宝門174三〕
建盞(ケンザン) 。〔永・財宝門143三〕〔尭・財宝門133一〕
建盞(ケンザン) 。〔器財門145五〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「建盞」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。茲で、広本『節用集』の語注記は、この『庭訓徃來』の語順に一致し、これよりの引用とも考えられよう。
681以前可∨被‖調置|茶具者建盞(ケンサン)天目 何処ノ名也。〔謙堂文庫蔵五八右H〕
とあって、標記語「建盞」の語を収載し、語注記は「何れも処の名なり」と記載する。
客料(カクレウ)ノ|可(ヘシ)∨被三用‖意せ之ヲ|御時粥(カユ)已前ニ可∨被‖調置(トヽノヘヲカル)|茶ノ具ハ建盞(ケンザン)天目胡盞(コサン)没州(ニヨウジウ)ノ茶碗(チヤワン)并ニ木椀(モクワン)茶器(キ)八ツ入ノ盆(ボン)ヲ一對(ツイ)茶瓢(ヘウ)茶盞(せン)茶桶(ヲケ)茶巾(キン)茶杓(シヤク)兎足(トソク)湯n(タウビン)罐子(クハンス)捌茶(ルイサ)茶臼(チヤウス)并ニ椀折敷(ワンヲシキ)豆子(ヅス)楪子(チヤツ)追膳(ヲイせン)折敷(ヲシキ)同ク可∨被‖副整(ソヘトヽノヘ)|也。御齋(トキ)ノ之 客料トハ其人々ノ召(メシ)ツレ來ル者冫也。座敷(ザシキ)ヘハ不∨出内々ニ居ルナリ。〔下35オ六〜35ウ三〕
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)調置(とゝのへおか)被(る)可(へき)茶具(ちやぐ)ハ建盞(けんさん)/御齋粥以前可∨被‖調置|茶具者建盞 唐の建州といふ所より焼出すちやわんなり。〔89オ五・六〕
とあって、この標記語「建盞」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)に調へ置か被(る)可(べ)き茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)没州(にやうしう)の茶碗(ちやわん)并(ならび)に木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれ)乃盆(ぼん)一對(いつつい)茶瓢(ちやびやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(とうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならび)に椀折敷(わんおしき)豆子(つす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三(さん)の膳(ぜん)折敷(をしき)同(おなじ)く副(そ)へ整(とゝの)へら被(る)可(べ)き也(なり)/御齋粥以前ニ可キ∨被‖調ヘ置カ|茶ノ具者。建盞。天目。胡盞。繞州ノ茶碗。并ニ木椀。茶器。八入ノ盆一對。茶瓢。茶箋。茶桶。茶巾。茶杓。兎足。湯n。鑵子。擂茶。茶磨等。并ニ椀折敷。豆子。畛子。追膳。三ノ膳ノ折敷。同ク可キ∨被‖副ヘ整ヘテ|也。▲建盞ハ舊抄(きうせう)に唐土(もろこし)建州(けんしう)より出る茶碗(ちやわん)也と。〔65ウ四、66オ一〕
御齋粥(おんときかゆ)以前(いぜんに)可(べき)調(とゝのへ)置(おか)茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)繞州(ねうしうの)茶碗(ちやわん)并(ならびに)木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれの)盆(ぼん)一對(いつつゐ)茶瓢(ちやひやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(たうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならびに)椀折敷(わんをしき)豆子(づす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三膳(さんのぜん)折敷(をしき)同(おなじく)可(べき)被(る)副(そへ)整(とゝのへら)也(なり)。▲建盞ハ舊抄(きうせう)に唐土(もろこし)建(けんしう)より出る茶碗(ちやわん)也と。〔118オ三、118ウ二〕
Qenzan.ケンザン(建盞) すなわち,Temmocuno taguy.(天目の類)茶(Cha)を飲むのに使う茶碗の一種.〔邦訳487r〕
けん-ざん〔名〕【建盞】〔支那、福建省、泉州府、コ化縣、建安の地の産なるを元とすれば、名ありと云ふ、阿膠(アケウ)、金漆(コンシツ)の例なり〕茶器に、天目の一種、上品なるものの稱、土燒(つちやき)、K釉(くろぐすり)なり。星のあらはれたるを、星(ほし)建盞と云ふ。又、土、釉(くすり)、同じ物にて、形の稍異なるを、胡盞(ウサン)、又、烏盞(ウサン)と云ふは、高麗茶碗なりと云ふ。庭訓往來、十月「茶具者、建盞、天目、胡盞」〔0628-4〕
被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔至徳三年本〕
御時以前可被調置茶具建盞天目胡盞没州〔宝徳三年本〕
御齋以前可可([マヽ])被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔建部傳内本〕
御時以前ニ可∨被‖調ヘ置ル|茶ノ具茶粥ノ具ハ建盞(ケンサン)天目胡(ウ)盞繞州粥(ネウシユワン)。〔山田俊雄藏本〕
御時以前ニ可シ∨被‖調(トヽノヘ)ヘ置|茶具者(ハ)建盞(ケンサン)天目胡盞(ウサン)繞州(ニヨウシウ)瀏。〔経覺筆本〕
御齋以前ニ可∨被(ル)‖調ヘ置(オカ)|之茶(チヤ)ノ具ニハ建盞(ケンサン)天目。没州(ネウシユウ)〔文明四年本〕※建盞(ケンサン)。※没(ネウ)州。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「茶具」と表記し、訓みは、文明四年本に「チヤの(グ)」と記載する。
茶具(チヤグ/―、ツブサ・ソナヱ)[平・去] 。〔器財門162四〕
このように、上記当代の古辞書においては、広本『節用集』に標記語「茶具」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。
681以前可∨被‖調置|茶具者建盞(ケンサン)天目 何処ノ名也。〔謙堂文庫蔵五八右H〕
とあって、標記語「茶具」の語を収載し、語注記は未記載にする。
客料(カクレウ)ノ|可(ヘシ)∨被三用‖意せ之ヲ|御時粥(カユ)已前ニ可∨被‖調置(トヽノヘヲカル)|茶ノ具ハ建盞(ケンザン)天目胡盞(コサン)没州(ニヨウジウ)ノ茶碗(チヤワン)并ニ木椀(モクワン)茶器(キ)八ツ入ノ盆(ボン)ヲ一對(ツイ)茶瓢(ヘウ)茶盞(せン)茶桶(ヲケ)茶巾(キン)茶杓(シヤク)兎足(トソク)湯n(タウビン)罐子(クハンス)捌茶(ルイサ)茶臼(チヤウス)并ニ椀折敷(ワンヲシキ)豆子(ヅス)楪子(チヤツ)追膳(ヲイせン)折敷(ヲシキ)同ク可∨被‖副整(ソヘトヽノヘ)|也。御齋(トキ)ノ之 客料トハ其人々ノ召(メシ)ツレ來ル者冫也。座敷(ザシキ)ヘハ不∨出内々ニ居ルナリ。〔下35オ六〜35ウ三〕
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)調置(とゝのへおか)被(る)可(へき)茶具(ちやぐ)ハ建盞(けんさん)/御齋粥以前可∨被‖調置|茶具者建盞 唐の建州といふ所より焼出すちやわんなり。〔89オ五・六〕
とあって、この標記語「茶具」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)に調へ置か被(る)可(べ)き茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)没州(にやうしう)の茶碗(ちやわん)并(ならび)に木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれ)乃盆(ぼん)一對(いつつい)茶瓢(ちやびやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(とうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならび)に椀折敷(わんおしき)豆子(つす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三(さん)の膳(ぜん)折敷(をしき)同(おなじ)く副(そ)へ整(とゝの)へら被(る)可(べ)き也(なり)/御齋粥以前ニ可キ∨被‖調ヘ置カ|茶ノ具者。建盞。天目。胡盞。繞州ノ茶碗。并ニ木椀。茶器。八入ノ盆一對。茶瓢。茶箋。茶桶。茶巾。茶杓。兎足。湯n。鑵子。擂茶。茶磨等。并ニ椀折敷。豆子。畛子。追膳。三ノ膳ノ折敷。同ク可キ∨被‖副ヘ整ヘテ|也。〔65ウ四〕
御齋粥(おんときかゆ)以前(いぜんに)可(べき)調(とゝのへ)置(おか)茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)繞州(ねうしうの)茶碗(ちやわん)并(ならびに)木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれの)盆(ぼん)一對(いつつゐ)茶瓢(ちやひやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(たうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならびに)椀折敷(わんをしき)豆子(づす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三膳(さんのぜん)折敷(をしき)同(おなじく)可(べき)被(る)副(そへ)整(とゝのへら)也(なり)。〔118オ二〕
被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔至徳三年本〕
御時以前可被調置茶具建盞天目胡盞没州〔宝徳三年本〕
御齋以前可可([マヽ])被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔建部傳内本〕
御時以前ニ可∨被‖調ヘ置ル|茶ノ具茶粥ノ具ハ建盞(ケンサン)天目胡(ウ)盞繞州粥(ネウシユワン)。〔山田俊雄藏本〕
御時以前ニ可シ∨被‖調(トヽノヘ)ヘ置|茶具者(ハ)建盞(ケンサン)天目胡盞(ウサン)繞州(ニヨウシウ)瀏。〔経覺筆本〕
御齋以前ニ可∨被(ル)‖調ヘ置(オカ)|之茶(チヤ)ノ具ニハ建盞(ケンサン)天目。没州(ネウシユウ)〔文明四年本〕※建盞(ケンサン)。※没(ネウ)州。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「調置」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に「(ととの)へ(おか)る」、経覺筆本に「とゝのへ(おかる)」、文明四年本に「(ととの)へおかる」と記載する。
調置(トヽエヲク/テウチ)[去・去] 又整(トヽノエ)同。〔態藝門144一〕
このように、上記当代の古辞書においては、広本『節用集』に標記語「調置」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、語注記内容は、異なっている。
681以前可∨被‖調置|茶具者建盞(ケンサン)天目 何処ノ名也。〔謙堂文庫蔵五八右H〕
とあって、標記語「調置」の語を収載し、語注記は未記載にする。
客料(カクレウ)ノ|可(ヘシ)∨被三用‖意せ之ヲ|御時粥(カユ)已前ニ可∨被‖調置(トヽノヘヲカル)|茶ノ具ハ建盞(ケンザン)天目胡盞(コサン)没州(ニヨウジウ)ノ茶碗(チヤワン)并ニ木椀(モクワン)茶器(キ)八ツ入ノ盆(ボン)ヲ一對(ツイ)茶瓢(ヘウ)茶盞(せン)茶桶(ヲケ)茶巾(キン)茶杓(シヤク)兎足(トソク)湯n(タウビン)罐子(クハンス)捌茶(ルイサ)茶臼(チヤウス)并ニ椀折敷(ワンヲシキ)豆子(ヅス)楪子(チヤツ)追膳(ヲイせン)折敷(ヲシキ)同ク可∨被‖副整(ソヘトヽノヘ)|也。御齋(トキ)ノ之 客料トハ其人々ノ召(メシ)ツレ來ル者冫也。座敷(ザシキ)ヘハ不∨出内々ニ居ルナリ。〔下35オ六〜35ウ三〕
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)調置(とゝのへおか)被(る)可(へき)茶具(ちやぐ)ハ建盞(けんさん)/御齋粥以前可∨被‖調置|茶具者建盞 唐の建州といふ所より焼出すちやわんなり。〔89オ五・六〕
とあって、この標記語「調置」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)に調へ置か被(る)可(べ)き茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)没州(にやうしう)の茶碗(ちやわん)并(ならび)に木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれ)乃盆(ぼん)一對(いつつい)茶瓢(ちやびやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(とうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならび)に椀折敷(わんおしき)豆子(つす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三(さん)の膳(ぜん)折敷(をしき)同(おなじ)く副(そ)へ整(とゝの)へら被(る)可(べ)き也(なり)/御齋粥以前ニ可キ∨被‖調ヘ置カ|茶ノ具者。建盞。天目。胡盞。繞州ノ茶碗。并ニ木椀。茶器。八入ノ盆一對。茶瓢。茶箋。茶桶。茶巾。茶杓。兎足。湯n。鑵子。擂茶。茶磨等。并ニ椀折敷。豆子。畛子。追膳。三ノ膳ノ折敷。同ク可キ∨被‖副ヘ整ヘテ|也。〔65ウ四〕
御齋粥(おんときかゆ)以前(いぜんに)可(べき)調(とゝのへ)置(おか)茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)繞州(ねうしうの)茶碗(ちやわん)并(ならびに)木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれの)盆(ぼん)一對(いつつゐ)茶瓢(ちやひやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(たうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならびに)椀折敷(わんをしき)豆子(づす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三膳(さんのぜん)折敷(をしき)同(おなじく)可(べき)被(る)副(そへ)整(とゝのへら)也(なり)。〔118オ二〕
680粥(―) 四分律ニ曰、明相出始得食粥餘皆非時也云々。〔謙堂文庫蔵五八右H〕
とあって、標記語「粥」の語を収載し、語注記は「『四分律』に曰く、明相出始得食粥餘、皆非時なり云々」と記載する。
かゆ-〔名〕【粥】〔食湯(けゆ)の轉か、(食(け)の條を見よ)濃湯(こゆ)の轉か(根莖(かぶら)、腓(こむら)。韭(かみら)、小韭(こみら))〕かい。米を、水にて煮たるもの。古へ、堅粥(かたかゆ)と云ひしは、米を炊(かし)ぎたるもの、即ち、姫飯(ひめいひ)にて、今の尋常の飯(めし)なり。(蒸したる、強飯(こはいひ)に對す) 閉。汁粥(しるかゆ)と云ひしは、水を多くして煮て、糜(とろ)けしめたるもの、今、常にかゆとのみ云ふは、是れなり。粥。字鏡30「閉、厚粥也、加由」天治字鏡、十二30「粥、糜、加由」倭名抄、十六14「粥、薄糜也、之留加由、閉、厚粥也、加太賀由」同、高山寺本、筑前、鞍手郡「粥田、加以多」江家次第、七、解齋「藏人供二御粥一、云云、立二御箸一於二粥上一入御」原註「堅粥也、高盛レ之」宇津保物語、藏開、上44「このかゆ啜(すす)りてむとて、副へたる坏(つき)どもによそひて、皆參る」(啜るとある、汁粥(しるかゆ)なり)〔0436-2〕
齋(トキ) 僧食。〔元亀二年本61七〕〔静嘉堂本70七〕〔西來寺本〕
齋(トキ) 僧。〔天正十七年本上36オ一〕
被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔至徳三年本〕
御時以前可被調置茶具建盞天目胡盞没州〔宝徳三年本〕
御齋以前可可([マヽ])被調置茶具者建盞天目胡盞没州〔建部傳内本〕
御時以前ニ可∨被‖調ヘ置ル|茶ノ具茶粥ノ具ハ建盞(ケンサン)天目胡(ウ)盞繞州粥(ネウシユワン)。〔山田俊雄藏本〕
御時以前ニ可シ∨被‖調(トヽノヘ)ヘ置|茶具者(ハ)建盞(ケンサン)天目胡盞(ウサン)繞州(ニヨウシウ)瀏。〔経覺筆本〕
御齋以前ニ可∨被(ル)‖調ヘ置(オカ)|之茶(チヤ)ノ具ニハ建盞(ケンサン)天目。没州(ネウシユウ)〔文明四年本〕※建盞(ケンサン)。※没(ネウ)州。
と見え、至徳三年本は此の語を未収載にする。宝徳三年本・山田俊雄藏本・経覺筆本は「御時」とし、建部傳内本・文明四年本は、「御齋」と記載する。
齋(トキ/サイ)[平] 一日一度午刻食也。〔飲食門130二〕
齋粥(トキカユ/サイシユク)[平・入] 齋(トキ)ノ正時。佛制二日午ヲ一為法食ニ一也。午時日影過二一髪一瞬ヲモ一。即是非レ時。粥(カユ)ノ時明相出始食餌。餘非レ時。須舒レ手見二掌丈一分明一食上レ粥。在リ二于釋氏要覽一又處々經云佛言中後不レ食有二五福一也。一少婬。二少睡。三得一心ヲ一。四無二下風一。五身得二安樂一。亦不レ作レ病云々。〔飲食門130二〜四〕
齋(トキ) 斉日一日一度午刻之食。〔弘・言語進退門44八〕
齋(トキ) 一日一度午ノ箕ノ食也。〔永・言語門47一〕
齋(トキ) 一日ニ一度午時ノ食也。〔尭・言語門43九〕〔両・言語門51八〕
齋(トキ) 。〔時候門40四〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「齋」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本には「時」の語で収載しているのである。そしてまた、広本『節用集』以下印度本系統の語注記とは、内容を異にしている。
679煎餅(ヤキモチ/イリノセンヘイ)焼餅(ヤキー)粢(シトキ)用米興米(ヲコシコメ)索豬(サクヘイ)糒(ホシイ)粽(チマキ)等爲‖客料ノ|可∨被‖用意候御時 食項付曰、人ノ食時ハ辰巳午。畜生ハ未申酉。鬼ハ戌亥子。天人ハ丑寅卯ノ時也。三昧經ニ曰、佛爲‖法慧菩薩|説‖四食時|一丑時為‖天食|二午時為‖法食時|。佛断六趣因令同三世佛故ニ制‖日午|。為‖法食正時|也。〔謙堂文庫蔵五八右F〕
とあって、標記語「御時」の語を収載し、語注記は「『食項付』曰く、人の食べる時は辰・巳・午。畜生は未・申・酉。鬼は戌・亥・子。天人は丑・寅・卯の時なり。『三昧經』に曰く、佛、法慧菩薩の爲に四食の時を説く。一に丑の時天の食と為。二に午の時法の食時と為。佛、六趣の因を断じ、三世の佛に同じくせしむ。故に日午を制して法食正の時と為るなり」と記載する。この注記内容は後の注釈書には成されていないことからも、室町時代の資料を裏付けていく上で重要な手がかりとなるところである。→「食時」(1999.09.27)を参照。
客料(カクレウ)ノ|可(ヘシ)∨被三用‖意せ之ヲ|御時粥(カユ)已前ニ可∨被‖調置(トヽノヘヲカル)|茶ノ具ハ建盞(ケンザン)天目胡盞(コサン)没州(ニヨウジウ)ノ茶碗(チヤワン)并ニ木椀(モクワン)茶器(キ)八ツ入ノ盆(ボン)ヲ一對(ツイ)茶瓢(ヘウ)茶盞(せン)茶桶(ヲケ)茶巾(キン)茶杓(シヤク)兎足(トソク)湯n(タウビン)罐子(クハンス)捌茶(ルイサ)茶臼(チヤウス)并ニ椀折敷(ワンヲシキ)豆子(ヅス)楪子(チヤツ)追膳(ヲイせン)折敷(ヲシキ)同ク可∨被‖副整(ソヘトヽノヘ)|也。御齋(トキ)ノ之 客料トハ其人々ノ召(メシ)ツレ來ル者冫也。座敷(ザシキ)ヘハ不∨出内々ニ居ルナリ。〔下35オ六〜35ウ三〕
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)調置(とゝのへおか)被(る)可(へき)茶具(ちやぐ)ハ建盞(けんさん)/御齋粥以前可∨被‖調置|茶具者建盞 唐の建州といふ所より焼出すちやわんなり。〔89オ五・六〕
とあって、この標記語「御齋」の語を収載し、語注記は未記載にする。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御齋粥(おんときがゆ)以前(いぜん)に調へ置か被(る)可(べ)き茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)没州(にやうしう)の茶碗(ちやわん)并(ならび)に木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれ)乃盆(ぼん)一對(いつつい)茶瓢(ちやびやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(とうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならび)に椀折敷(わんおしき)豆子(つす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三(さん)の膳(ぜん)折敷(をしき)同(おなじ)く副(そ)へ整(とゝの)へら被(る)可(べ)き也(なり)/御齋粥以前ニ可キ∨被‖調ヘ置カ|茶ノ具者。建盞。天目。胡盞。繞州ノ茶碗。并ニ木椀。茶器。八入ノ盆一對。茶瓢。茶箋。茶桶。茶巾。茶杓。兎足。湯n。鑵子。擂茶。茶磨等。并ニ椀折敷。豆子。畛子。追膳。三ノ膳ノ折敷。同ク可キ∨被‖副ヘ整ヘテ|也。〔65ウ四〕
御齋粥(おんときかゆ)以前(いぜんに)可(べき)調(とゝのへ)置(おか)茶具(ちやぐ)者(ハ)建盞(けんさん)天目(てんもく)胡盞(こさん)繞州(ねうしうの)茶碗(ちやわん)并(ならびに)木椀(もくわん)茶器(ちやき)八入(やついれの)盆(ぼん)一對(いつつゐ)茶瓢(ちやひやう)茶箋(ちやせん)茶桶(ちやおけ)茶巾(ちやきん)茶杓(ちやしやく)兎足(とそく)湯n(たうびん)鑵子(くわんす)擂茶(らいさ)茶磨(ちやうす)等(とう)并(ならびに)椀折敷(わんをしき)豆子(づす)畛子(ちやす)追膳(おひぜん)三膳(さんのぜん)折敷(をしき)同(おなじく)可(べき)被(る)副(そへ)整(とゝのへら)也(なり)。〔118オ二〕
Toqi.トキ(齋) 坊主(Bonzos)の正式の食事〔朝飯〕.¶Toqi,Fiji.(齋,非時)坊主(Bonzos)の朝飯と夕飯と.※原文はIantar.〔Asagareiの注〕→Saiji.〔邦訳662r〕
とき〔名〕【齋】〔食すべき時の義。齋は梵語、泝波婆娑(Upavasa)の譯語にて、齋戒の齋、即ち食事を愼む意。比丘は戒律上、非時(ヒジ)に食ふべからず、時(とき)(午前中)に食ふを定法とす。故に、齋を時にかよはし、轉じて、僧食を一般に齋(とき)と云へり〕(一)かたぞなへ。さい。僧の食事。即ち午前の食にして、僧は、元來、一日一食(イチジキ)の制なり。午後の食事は、時ならずの意にて、非時(ヒジ)と云ふ。即ち、俗人、一日二食(にじき)の朝飯、夕飯に當る。(二食(にじき)及、さい(齋)の條をも見よ)宇治拾遺物語、四、第十五條「永超僧都は、魚なき限りは、時、非時もすべて食はざる人なり」徒然草、六十段「眞乘院の盛親僧都、云云、齋、非時も人に等しく定めて食はず、我食ひたき時、夜中にも曉にも食ひて」雜談集(嘉元、無住)三「?眞和尚、日本へ渡りたまひたりし昔は、寺寺只一食にて、朝食一度しけり、次第に器量弱くして、非時と名づけて、日中に食し、後には山(比叡山)も、奈良(東大寺)も三度食す、云云、未申の時ばかりに非時して、法師ばら坂東へ下りぬれば、夕方、寄合て事(こと)と名づけて、我我世事(セイジ)して食すと云へり」(二)泛く、僧の食事。一時に數處の檀家の家の饗にあづかるを、貧僧のかさね齋など云ふ。古事談、三、僧行、無動寺仙命上人「一日に一度、時をのみ指入れければ、食して、不斷、念佛をのみしたまへり」〔1392-5〕
伏兎曲煎餅○粢○〔至徳三年本〕
伏兎曲前餅燒餅粢興米索豬糒{粽}等爲客料可被用意〔宝徳三年本〕
伏兎曲煎餅燒餅粢興米索豬糒等爲客料可被用意〔建部傳内本〕
伏-兎(フト)鈎(マガリ)煎-餅(ベイ)焼_餅(モチ井)粢(シトギ)興(ヲコシ)_米索(サク)-豬糒(ホシイ)○{粽}等爲ニ‖客-料ノ|可∨被‖用-意せ|〔山田俊雄藏本〕
伏兎(ブト)惇(マカリ)煎餅(センヘイ)粢(シトキ)興(ヲコシ)米索餅(サクベイ)等爲ニ‖客料ノ|可∨被‖用意|〔経覺筆本〕
伏兎(ブト)曲(マカリ)。煎餅(せンヘイ)。焼餅(ヤキモチ井)。粢(シトキ)。興米(ヲコシコメ)。索豬(サクヘイ)。糒(ホシ井)等爲(タメ)ニ‖客料(キヤクレウ)ノ|可‖∨被(せラル)∨用意|候。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本は此の語を未収載にする。宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「客料」と表記し、訓みは、文明四年本に「キヤクレウ」と記載する。
679煎餅(ヤキモチ/イリノセンヘイ)焼餅(ヤキー)粢(シトキ)用米興米(ヲコシコメ)索豬(サクヘイ)糒(ホシイ)粽(チマキ)等爲‖客料ノ|可∨被‖用意候御時 食項付曰、人ノ食時ハ辰巳午。畜生ハ未申酉。鬼ハ戌亥子。天人ハ丑寅卯ノ時也。三昧經ニ曰、佛爲‖佛慧菩薩|説‖四食時|一丑時為‖天食|二午時為‖法食時|。佛断六趣因令同三世佛故ニ制‖日午|。為‖法食正時|也。〔謙堂文庫蔵五八右F〕
とあって、標記語「客料」の語を収載し、語注記は未記載にする。
客料(カクレウ)ノ|可(ヘシ)∨被三用‖意せ之ヲ|御時粥(カユ)已前ニ可∨被‖調置(トヽノヘヲカル)|茶ノ具ハ建盞(ケンザン)天目胡盞(コサン)没州(ニヨウジウ)ノ茶碗(チヤワン)并ニ木椀(モクワン)茶器(キ)八ツ入ノ盆(ボン)ヲ一對(ツイ)茶瓢(ヘウ)茶盞(せン)茶桶(ヲケ)茶巾(キン)茶杓(シヤク)兎足(トソク)湯n(タウビン)罐子(クハンス)捌茶(ルイサ)茶臼(チヤウス)并ニ椀折敷(ワンヲシキ)豆子(ヅス)楪子(チヤツ)追膳(ヲイせン)折敷(ヲシキ)同ク可∨被‖副整(ソヘトヽノヘ)|也。御齋(トキ)ノ之 客料トハ其人々ノ召(メシ)ツレ來ル者冫也。座敷(ザシキ)ヘハ不∨出内々ニ居ルナリ。〔下35オ六〜35ウ三〕
煎餅(せんべい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくへい)糒(ほしゐ)粽(ちまき)等客料(きやくりやう)の爲(ため)用意(ようい)せ被(らる)可(べし)/煎餅燒餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意| 當日來りし客人へ出ん爲伏兎より粽迄の品々を用意して置れよと也。〔89オ三〜五〕
とあって、この標記語「客料」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|。〔65オ八〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|。〔116ウ六〕
粽(チマキ) 。〔元亀二年本70七〕〔静嘉堂本84三〕〔天正十七年本上41ウ五〕
伏兎曲煎餅○粢○〔至徳三年本〕
伏兎曲前餅燒餅粢興米索豬糒{粽}等爲客料可被用意〔宝徳三年本〕
伏兎曲煎餅燒餅粢興米索豬糒等爲客料可被用意〔建部傳内本〕
伏-兎(フト)鈎(マガリ)煎-餅(ベイ)焼_餅(モチ井)粢(シトギ)興(ヲコシ)_米索(サク)-豬糒(ホシイ)○{粽}等爲ニ‖客-料ノ|可∨被‖用-意せ|〔山田俊雄藏本〕
伏兎(ブト)惇(マカリ)煎餅(センヘイ)粢(シトキ)興(ヲコシ)米索餅(サクベイ)等爲ニ‖客料ノ|可∨被‖用意|〔経覺筆本〕
伏兎(ブト)曲(マカリ)。煎餅(せンヘイ)。焼餅(ヤキモチ井)。粢(シトキ)。興米(ヲコシコメ)。索豬(サクヘイ)。糒(ホシ井)等爲(タメ)ニ‖客料(キヤクレウ)ノ|可‖∨被(せラル)∨用意|候。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・建部傳内本・経覺筆本・文明四年本は、此の語未収載にし、宝徳三年本・山田俊雄藏本「粽」に補入記載する。
艨(ソウ)チマキ/俗作粽。角黍同 。芻尾同 。〔黒川本・飲食門上54オ一〕
艨(ソウ)チマキ/俗乍粽。角黍。芻尾。蒭已上同 。〔卷第二・飲食門460六〜461一〕
粽(チマキ) 又云フ二角黍ト一。〔飲食門100三〕
粽(チマキ/ソウ)[去] ―與レ艨同。又云二角黍一或云二龍骨一。〔飲食門161八〕
粽(チマキ) 五月五日食。〔弘・食物門50二〕
粽(チマキ) 五月五日食。又作角黍。〔永・食物門52五〕
粽(チマキ) 五月五日食。又作角黍一。〔尭・食物門47七〕
粽 五月五日食。又作二角黍一。〔両・食物門56七〕
粽(チマキ) 艨同。〔食服門50五〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「粽」の語を収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、広本『節用集』の語注記は、別表記の語を載せ詳細である。
679煎餅(ヤキモチ/イリノセンヘイ)焼餅(ヤキー)粢(シトキ)用米興米(ヲコシコメ)索豬(サクヘイ)糒(ホシイ)粽(チマキ)等爲‖客料ノ|可∨被‖用意候御時 食項付曰、人ノ食時ハ辰巳午。畜生ハ未申酉。鬼ハ戌亥子。天人ハ丑寅卯ノ時也。三昧經ニ曰、佛爲‖佛慧菩薩|説‖四食時|一丑時為‖天食|二午時為‖法食時|。佛断六趣因令同三世佛故ニ制‖日午|。為‖法食正時|也。〔謙堂文庫蔵五八右F〕
とあって、標記語「粽」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
煎餅(せんべい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくへい)糒(ほしゐ)粽(ちまき)等客料(きやくりやう)の爲(ため)用意(ようい)せ被(らる)可(べし)/煎餅燒餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意| 當日來りし客人へ出ん爲伏兎より粽迄の品々を用意して置れよと也。〔89オ三〜五〕
とあって、この標記語「粽」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|。〔65オ八〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|。〔116ウ六〕
Chimaqi.チマキ(粽) 竹の葉その他草の葉などに包んだ,ある種の飯.→Ameqimaqi;Sasagimaqi.〔邦訳121r〕
ち-まき〔名〕【粽艨・角黍】〔茅卷の義、古へは、茅(ち)の葉にて包む、後には菰(まこも)の葉なり〕糯米(もちごめ)を水に浸したるもの、又は、粳粉(こめのこな)をこねて、芋子の如くしたるものを、菰、又は、笹の葉に三角形に卷き、煮て熟せしめたるもの。端午の時食とす。五色の絲にて卷くを、飾りちまきと云ふ。倭名抄、十六15飯餅類「艨、知末岐」字鏡30「艨、幇、粽、知万支」拾遺集、十八、雜、賀「五月五日ちひさきかざりちまきを山菅の籠に入れて「心ざし、深き汀に、刈る菰は、千年のさつき、いつか忘れん」伊勢物語、五十二段「かざりちまきをおこせたりけるかへりごとに」知顯抄「かざりちまきと云ふは、菖蒲の根をきざみて、しゃうぶの葉の若きを割りて、其中に入れて結ひ、本に色色なる糸にてまきて、時の花の、うつくしきなでしこ、あづさ井、しもつけ、あふひ、しゃうびの花をもちて飾りたるを云ふ」續齋諧記(梁、呉均)「屈原以二五月五日一投二汨羅一、云云、世人五月五日作二艨并五色絲及練葉一、皆汨羅之遺風」〔1273-4〕
伏兎曲煎餅○粢○〔至徳三年本〕
伏兎曲前餅燒餅粢興米索豬糒{粽}等爲客料可被用意〔宝徳三年本〕
伏兎曲煎餅燒餅粢興米索豬糒等爲客料可被用意〔建部傳内本〕
伏-兎(フト)鈎(マガリ)煎-餅(ベイ)焼_餅(モチ井)粢(シトギ)興(ヲコシ)_米索(サク)-豬糒(ホシイ)○{粽}等爲ニ‖客-料ノ|可∨被‖用-意せ|〔山田俊雄藏本〕
伏兎(ブト)惇(マカリ)煎餅(センヘイ)粢(シトキ)興(ヲコシ)米索餅(サクベイ)等爲ニ‖客料ノ|可∨被‖用意|〔経覺筆本〕
伏兎(ブト)曲(マカリ)。煎餅(せンヘイ)。焼餅(ヤキモチ井)。粢(シトキ)。興米(ヲコシコメ)。索豬(サクヘイ)。糒(ホシ井)等爲(タメ)ニ‖客料(キヤクレウ)ノ|可‖∨被(せラル)∨用意|候。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・経覺筆本は、此の語を未収載にする。宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・文明四年本は、「糒」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に「ホシイ」とし、文明四年本に「ホシ井」と記載する。
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲糒ハ俗にいふ抒飯(ひきいゝ)也。〔65オ八、65ウ三〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲糒ハ俗にいふ抒飯(ひきいひ)也。〔116ウ六、118オ一〕
伏兎曲煎餅○粢○〔至徳三年本〕
伏兎曲前餅燒餅粢興米索豬糒{粽}等爲客料可被用意〔宝徳三年本〕
伏兎曲煎餅燒餅粢興米索豬糒等爲客料可被用意〔建部傳内本〕
伏-兎(フト)鈎(マガリ)煎-餅(ベイ)焼_餅(モチ井)粢(シトギ)興(ヲコシ)_米索(サク)-豬糒(ホシイ)○{粽}等爲ニ‖客-料ノ|可∨被‖用-意せ|〔山田俊雄藏本〕
伏兎(ブト)惇(マカリ)煎餅(センヘイ)粢(シトキ)興(ヲコシ)米索餅(サクベイ)等爲ニ‖客料ノ|可∨被‖用意|〔経覺筆本〕
伏兎(ブト)曲(マカリ)。煎餅(せンヘイ)。焼餅(ヤキモチ井)。粢(シトキ)。興米(ヲコシコメ)。索豬(サクヘイ)。糒(ホシ井)等爲(タメ)ニ‖客料(キヤクレウ)ノ|可‖∨被(せラル)∨用意|候。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本は未収載にし、経覺筆本は「索餅」とし、宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・文明四年本は、「索豬」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に「サク(ヘイ)」、経覺筆本に「サクベイ」、文明四年本に「サクヘイ」と記載する。
酢餅(サクヘイ/―、モチ)[去・平] 或作レ索小粉名見二左傳一。〔飲食門779二〕
索麪(サウメン) ―餅(サクヘイ)。〔食服門178三〕
このように、上記当代の古辞書においては、広本『節用集』に標記語「酢餅」の語を以て語注記に「索餅」表記の語を暗示していて、これを古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。更に易林本『節用集』には、熟語群であはるが「索餅」を収載している。
679煎餅(ヤキモチ/イリノセンヘイ)焼餅(ヤキー)粢(シトキ)用米興米(ヲコシコメ)索豬(サクヘイ)糒(ホシイ)粽(チマキ)等爲‖客料ノ|可∨被‖用意候御時 食項付曰、人ノ食時ハ辰巳午。畜生ハ未申酉。鬼ハ戌亥子。天人ハ丑寅卯ノ時也。三昧經ニ曰、佛爲‖佛慧菩薩|説‖四食時|一丑時為‖天食|二午時為‖法食時|。佛断六趣因令同三世佛故ニ制‖日午|。為‖法食正時|也。〔謙堂文庫蔵五八右F〕
とあって、標記語「索豬」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
煎餅(せんべい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくへい)糒(ほしゐ)粽(ちまき)等客料(きやくりやう)の爲(ため)用意(ようい)せ被(らる)可(べし)/煎餅燒餅粢興米索餅糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意| 當日來りし客人へ出ん爲伏兎より粽迄の品々を用意して置れよと也。〔89オ三〜五〕
とあって、この標記語「索餅」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索餅糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲索餅ハ俗にいふ索麪(さふめん)の事也。〔65オ八、65ウ三〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲索餅ハ俗にいふ索麪(さうめん)の事也。〔116ウ六、118オ一〕
さく-べい〔名〕【索豬】むぎなはを見よ。〔0789-2〕
むぎ-なは〔名〕【索豬】〔麥繩の義〕又、さくべい。麥粉(むぎこ)と米の粉とを煉りて、繩の如くにねぢたるもの。長さ二三寸。昔、陰暦、七月七日に、内膳司より禁中に奉る。一年の瘧を除くとす。索麪(サウメン)もこれに起る。たつか。箋注倭名抄、四46飯餅類「索餅、无岐奈波」天治字鏡、十二31「索餅、牟義繩」同、四16「〓、牟支奈波」〔1960-2〕
羹續(ヲコシゴメ) 。興米(同) 。〔元亀二年本78四〕
羹續(ヲコシコメ) 。興米(同) 。〔静嘉堂本95八・96一〕〔天正十七年本上47ウ五〕
伏兎曲煎餅○粢○〔至徳三年本〕
伏兎曲前餅燒餅粢興米索豬糒{粽}等爲客料可被用意〔宝徳三年本〕
伏兎曲煎餅燒餅粢興米索豬糒等爲客料可被用意〔建部傳内本〕
伏-兎(フト)鈎(マガリ)煎-餅(ベイ)焼_餅(モチ井)粢(シトギ)興(ヲコシ)_米索(サク)-豬糒(ホシイ)○{粽}等爲ニ‖客-料ノ|可∨被‖用-意せ|〔山田俊雄藏本〕
伏兎(ブト)惇(マカリ)煎餅(センヘイ)粢(シトキ)興(ヲコシ)米索餅(サクベイ)等爲ニ‖客料ノ|可∨被‖用意|〔経覺筆本〕
伏兎(ブト)曲(マカリ)。煎餅(せンヘイ)。焼餅(ヤキモチ井)。粢(シトキ)。興米(ヲコシコメ)。索豬(サクヘイ)。糒(ホシ井)等爲(タメ)ニ‖客料(キヤクレウ)ノ|可‖∨被(せラル)∨用意|候。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本は此の語を未収載にする。宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「興米」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本・経覺筆本に「をこし(こめ)」、文明四年本に「をこしこめ」と記載する。
羹續(キヨチヨ)オコシコメ。靱胱同。興米同/俗用之。〔黒川本・飲食門中66オ五〕
羹續オコシコメ/以蜜和米煎作也。興米俗用之。靱胱已上同。〔卷第六・飲食門314三・四〕
興米(ヲコシゴメ/キヨウヘイ)[平・上] 。〔態藝門213八〕
興米(ヲコシコメ)食物。〔弘・食物門64六〕
興米(ヲコシコメ)。〔永・食物門65七〕〔両・財寳門70四〕
羹續(オコシゴメ) 。興米(同) 。〔食服門125七〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「興米」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本も収載しているのである。
679煎餅(ヤキモチ/イリノセンヘイ)焼餅(ヤキー)粢(シトキ)用米興米(ヲコシコメ)索豬(サクヘイ)糒(ホシイ)粽(チマキ)等爲‖客料ノ|可∨被‖用意候御時 食項付曰、人ノ食時ハ辰巳午。畜生ハ未申酉。鬼ハ戌亥子。天人ハ丑寅卯ノ時也。三昧經ニ曰、佛爲‖佛慧菩薩|説‖四食時|一丑時為‖天食|二午時為‖法食時|。佛断六趣因令同三世佛故ニ制‖日午|。為‖法食正時|也。〔謙堂文庫蔵五八右F〕
とあって、標記語「興米」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
煎餅(せんべい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくへい)糒(ほしゐ)粽(ちまき)等客料(きやくりやう)の爲(ため)用意(ようい)せ被(らる)可(べし)/煎餅燒餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意| 當日來りし客人へ出ん爲伏兎より粽迄の品々を用意して置れよと也。〔89オ三〜五〕
とあって、この標記語「興米」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲沢茄子ハ未レ考。〔65オ八、65ウ二〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲沢茄子ハ未レ考。〔116ウ六、117ウ五〕
Vocoxigome.ヲコシコメ(興米) 米をPinhoadaのようにしたもの.※松の実と蜂蜜とで作った菓子.〔邦訳700l〕
おこし-ごめ〔名〕【興米】〔おこしは、炒りて脹しおこらしむる意にもあるか〕米を蜜に和して煎りたるもの。倭名抄、十六16麭蘖類「文選注云、羹續、以レ蜜和レ米煮作也、於古之古女」古今著聞集、十八、飲食「法性寺殿、元三(ぐわんざん)に皇嘉門院へまゐらせ給ひたりけるに、御くだりものをまゐらせたりけるに、おこしこめを取らせたまひて、まゐるよしして、御口のほどにあてて、握りくだかせたまひければ、御袍の上に、はらはらと散りかかりける、云云」(今の乾菓子の、おこしなるべし)庭訓往來、十月「菓子者、云云、煎餅、燒餅、粢、興米」〔0291-1〕
粢シトキ。〔元亀二年本333五〕
粢(シトキ) 。〔静嘉堂本397六〕
伏兎曲煎餅○粢○〔至徳三年本〕
伏兎曲前餅燒餅粢興米索豬糒{粽}等爲客料可被用意〔宝徳三年本〕
伏兎曲煎餅燒餅粢興米索豬糒等爲客料可被用意〔建部傳内本〕
伏-兎(フト)鈎(マガリ)煎-餅(ベイ)焼_餅(モチ井)粢(シトギ)興(ヲコシ)_米索(サク)-豬糒(ホシイ)○{粽}等爲ニ‖客-料ノ|可∨被‖用-意せ|〔山田俊雄藏本〕
伏兎(ブト)惇(マカリ)煎餅(センヘイ)粢(シトキ)興(ヲコシ)米索餅(サクベイ)等爲ニ‖客料ノ|可∨被‖用意|〔経覺筆本〕
伏兎(ブト)曲(マカリ)。煎餅(せンヘイ)。焼餅(ヤキモチ井)。粢(シトキ)。興米(ヲコシコメ)。索豬(サクヘイ)。糒(ホシ井)等爲(タメ)ニ‖客料(キヤクレウ)ノ|可‖∨被(せラル)∨用意|候。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「粢」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に「シトギ」、経覺筆本・文明四年本に「シトキ」と記載する。
波シトキ。叛同。粢餅(シヘイ) 祭餅也。〔黒川本・飲食門下72オ六〕
波シトキ。叛。粢餅。粢 已上同/―餅祭餅也。〔巻第九・飲食門151一・二〕
粢(シトギ) 。〔飲食門100三〕
粢(シトギ/シ)[平] 祭(マツリ)飯。〔飲食門923八〕
粢(シトギ) 。〔弘・食物門243五〕〔永・食物門209一〕〔尭・食物門193三〕
粢(シトキ) 。〔食服門208三〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「粢」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、広本『節用集』の語注記は、「祭(まつり)飯」と『色葉字類抄』を継承する注記語となっている。
679煎餅(ヤキモチ/イリノセンヘイ)焼餅(ヤキー)粢(シトキ)用米興米(ヲコシコメ)索豬(サクヘイ)糒(ホシイ)粽(チマキ)等爲‖客料ノ|可∨被‖用意候御時 食項付曰、人ノ食時ハ辰巳午。畜生ハ未申酉。鬼ハ戌亥子。天人ハ丑寅卯ノ時也。三昧經ニ曰、佛爲‖佛慧菩薩|説‖四食時|一丑時為‖天食|二午時為‖法食時|。佛断六趣因令同三世佛故ニ制‖日午|。為‖法食正時|也。〔謙堂文庫蔵五八右F〕
とあって、標記語「粢」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
煎餅(せんべい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくへい)糒(ほしゐ)粽(ちまき)等客料(きやくりやう)の爲(ため)用意(ようい)せ被(らる)可(べし)/煎餅燒餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意| 當日來りし客人へ出ん爲伏兎より粽迄の品々を用意して置れよと也。〔89オ三〜五〕
とあって、この標記語「粢」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲沢茄子ハ未レ考。〔65オ八、65ウ二〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲沢茄子ハ未レ考。〔116ウ六、117ウ五〕
Xitogui.シトギ(粢) 生米を碾いたので作る粥.〔邦訳783l〕※「粥」でなく、「餅」ではないか?
し-とぎ〔名〕【粢】〔白淅(しろとぎ)の略かと云ふ〕米粉にて作れる餅の名、~前に供ふ、形、鷄卵の長きが如し。倭名抄、十三4祭祀具「粢餅、之度岐」字鏡30「艢、祭~米 志止支」〔0910-3〕
伏兎曲煎餅○粢○〔至徳三年本〕
伏兎曲前餅燒餅粢興米索豬糒{粽}等爲客料可被用意〔宝徳三年本〕
伏兎曲煎餅燒餅粢興米索豬糒等爲客料可被用意〔建部傳内本〕
伏-兎(フト)鈎(マガリ)煎-餅(ベイ)焼_餅(モチ井)粢(シトギ)興(ヲコシ)_米索(サク)-豬糒(ホシイ)○{粽}等爲ニ‖客-料ノ|可∨被‖用-意せ|〔山田俊雄藏本〕
伏兎(ブト)惇(マカリ)煎餅(センヘイ)粢(シトキ)興(ヲコシ)米索餅(サクベイ)等爲ニ‖客料ノ|可∨被‖用意|〔経覺筆本〕
伏兎(ブト)曲(マカリ)。煎餅(せンヘイ)。焼餅(ヤキモチ井)。粢(シトキ)。興米(ヲコシコメ)。索豬(サクヘイ)。糒(ホシ井)等爲(タメ)ニ‖客料(キヤクレウ)ノ|可‖∨被(せラル)∨用意|候。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・・経覺筆本は此の語を未収載とし、宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・文明四年本に「焼餅」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に「(やき)もちゐ」、文明四年本に「やきもちゐ」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「焼餅」の語は未収載にあって、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。
679煎餅(ヤキモチ/イリノセンヘイ)焼餅(ヤキー)粢(シトキ)用米興米(ヲコシコメ)索豬(サクヘイ)糒(ホシイ)粽(チマキ)等爲‖客料ノ|可∨被‖用意候御時 食項付曰、人ノ食時ハ辰巳午。畜生ハ未申酉。鬼ハ戌亥子。天人ハ丑寅卯ノ時也。三昧經ニ曰、佛爲‖佛慧菩薩|説‖四食時|一丑時為‖天食|二午時為‖法食時|。佛断六趣因令同三世佛故ニ制‖日午|。為‖法食正時|也。〔謙堂文庫蔵五八右F〕
とあって、標記語「焼餅」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
煎餅(せんべい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくへい)糒(ほしゐ)粽(ちまき)等客料(きやくりやう)の爲(ため)用意(ようい)せ被(らる)可(べし)/煎餅燒餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意| 當日來りし客人へ出ん爲伏兎より粽迄の品々を用意して置れよと也。〔89オ三〜五〕
とあって、この標記語「焼餅」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲沢茄子ハ未レ考。〔65オ八、65ウ二〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲沢茄子ハ未レ考。〔116ウ六、117ウ五〕
Yaqimochi.ヤキモチ(焼餅) あぶった,米の餅.※原文はBollinhos.Bolloに指小辞のついた形.〔Mo-chi(餅)の注〕〔邦訳810r〕
やき-もち〔名〕【燒餅】(一)炙りたる餅。(二)‡俗に、悋氣。(東京)嫉妬。やきて(燒手)、及、やく(燒、第二語)の條を見よ。燒くと云ふより餅と云ひし語。假名世説「自慢も味噌といひ、りん氣も燒餅と下卑て云云」續膝栗毛(文化、一九)三編、上「惡い男だ、燒餅喧嘩をさせようと思ってか、云云」〔2029-5〕
× (欠脱)。〔元亀二年本〕
仙袂(ベイ) 餅。煎餅(せンヘイ) 。〔静嘉堂本426八〕
伏兎曲煎餅○粢○〔至徳三年本〕
伏兎曲前餅燒餅粢興米索豬糒{粽}等爲客料可被用意〔宝徳三年本〕
伏兎曲煎餅燒餅粢興米索豬糒等爲客料可被用意〔建部傳内本〕
伏-兎(フト)鈎(マガリ)煎-餅(ベイ)焼_餅(モチ井)粢(シトギ)興(ヲコシ)_米索(サク)-豬糒(ホシイ)○{粽}等爲ニ‖客-料ノ|可∨被‖用-意せ|〔山田俊雄藏本〕
伏兎(ブト)惇(マカリ)煎餅(センヘイ)粢(シトキ)興(ヲコシ)米索餅(サクベイ)等爲ニ‖客料ノ|可∨被‖用意|〔経覺筆本〕
伏兎(ブト)曲(マカリ)。煎餅(せンヘイ)。焼餅(ヤキモチ井)。粢(シトキ)。興米(ヲコシコメ)。索豬(サクヘイ)。糒(ホシ井)等爲(タメ)ニ‖客料(キヤクレウ)ノ|可‖∨被(せラル)∨用意|候。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「煎餅」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に「(セン)ヘイ」、経覺筆本・文明四年本に「センヘイ」と記載する。
煎餅 せンヘイ。 墓餅同/上云錢。 〔黒川本・飲食門下103オ三〕
煎餅 せンヘイ/以油熬小麦/膃之名。墓餅 上云錢。〔卷第十・飲食門441六〕
仙袂(せンヘイ/ヒジリ、タモト)[平・去] 或作二煎餅一。〔飲食門1085二〕
耄餅(せンベイ) 。〔弘・食物門265一〕
煎餅(せンベイ) ―藥(ヤク)。〔食腹門235一〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「煎餅」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、広本『節用集』の語注記は、大いに異なっている。
679煎餅(ヤキモチ/イリノセンヘイ)焼餅(ヤキー)粢(シトキ)用米興米(ヲコシコメ)索豬(サクヘイ)糒(ホシイ)粽(チマキ)等爲‖客料ノ|可∨被‖用意候御時 食項付曰、人ノ食時ハ辰巳午。畜生ハ未申酉。鬼ハ戌亥子。天人ハ丑寅卯ノ時也。三昧經ニ曰、佛爲‖佛慧菩薩|説‖四食時|一丑時為‖天食|二午時為‖法食時|。佛断六趣因令同三世佛故ニ制‖日午|。為‖法食正時|也。〔謙堂文庫蔵五八右F〕
とあって、標記語「煎餅」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
煎餅(せんべい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくへい)糒(ほしゐ)粽(ちまき)等客料(きやくりやう)の爲(ため)用意(ようい)せ被(らる)可(べし)/煎餅燒餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意| 當日來りし客人へ出ん爲伏兎より粽迄の品々を用意して置れよと也。〔89オ三〜五〕
とあって、この標記語「煎餅」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|。〔65オ八〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|。〔116ウ六〕
Xenbei.センベイ(煎餅) 米を材料にして作った一種のパンケーキで,聖体パンに似たもの.※原文はcoscoroesで,日仏辞書にgaufres(ゴーフル)とある.原文はobreas.〔Barimecaxi,suの注〕.〔邦訳750l〕
せん-べい〔名〕【煎餅】(一){麪粉を、油にて熬りたるもの。倭名抄、十六15飯餅類「煎餅、此濶]如レ字、以レ油熬二小麥跣一之名也」唐六典「朝會、云云、供二其膳食一」注「正月七日、三月三日、加二煎餅一」荊楚歳時記「人日食二煎餅于庭一、俗云二誘天一」(二)乾菓子の名。方圓の鐵板二枚に柄ある、鋏の如きものに、餅の小片を挾み燒けば、鐵板のため、片、大きに成りたるもの。又、麪粉に、白砂糖を水にて捏(こ)ね、少しづつ挾みて、燒き成すを、砂糖煎餅と云ふ。又、鹽煎餅も、あり。其條を見よ。狂詩選「砂糖上品味最輕、進物年中客自榮、縱有結構于菓子、如此煎餅少二江城一」〔1132-2〕
曲 。〔元亀二年本224一〕〔天正十七年本中57ウ一〕
曲 。〔静嘉堂本256五〕
伏兎曲煎餅○粢○〔至徳三年本〕
伏兎曲前餅燒餅粢興米索豬糒{粽}等爲客料可被用意〔宝徳三年本〕
伏兎曲煎餅燒餅粢興米索豬糒等爲客料可被用意〔建部傳内本〕
伏-兎(フト)鈎(マガリ)煎-餅(ベイ)焼_餅(モチ井)粢(シトギ)興(ヲコシ)_米索(サク)-豬糒(ホシイ)○{粽}等爲ニ‖客-料ノ|可∨被‖用-意せ|〔山田俊雄藏本〕
伏兎(ブト)惇(マカリ)煎餅(センヘイ)粢(シトキ)興(ヲコシ)米索餅(サクベイ)等爲ニ‖客料ノ|可∨被‖用意|〔経覺筆本〕
伏兎(ブト)曲(マカリ)。煎餅(せンヘイ)。焼餅(ヤキモチ井)。粢(シトキ)。興米(ヲコシコメ)。索豬(サクヘイ)。糒(ホシ井)等爲(タメ)ニ‖客料(キヤクレウ)ノ|可‖∨被(せラル)∨用意|候。〔文明四年本〕
と見え、山田俊雄藏本は「鈎」、経覺筆本は「惇」、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・文明四年本は、「曲」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本ともに「まがり」と記載する。
蓿(クハン)餅 マカリ/形如藤葛。惇 同/俗用之。〔黒川本・飲食門中91ウ七〕
蓿餅 マカリ/文選云膏蓿羹秘/形如藤葛。惇 同/俗用之。〔卷第六・飲食門572四〕
曲勾(マガリ) 。〔食服門140三〕
このように、上記当代の古辞書においては、三卷本『色葉字類抄』(1177-81年)と十巻本『伊呂波字類抄』に「蓿餅」「惇」、そして易林本『節用集』に標記語「曲勾」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が「曲」の語を以て収載しているのである。
678曲(マカリ) 油物。〔謙堂文庫蔵五八右D〕
とあって、標記語「曲」の語を収載し、語注記は「油物」と記載する。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
曲(まがり)/曲 ふしのミといふ菓子なり。〔89オ二〜三〕
とあって、この標記語「曲」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲曲ハ本字蓿餅(くわんべい)と書り。形(かたち)藤葛(ふぢかづら)のごとしと云々。〔65オ八、65ウ二・三〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲曲ハ本字蓿餅(くわんべい)と書り。形(かたち)藤葛(ふぢかづら)のごとしと云々。〔117ウ二、117ウ六〕
†Magari.マガリ(曲) 曲がり,または,遠回り.例,Michi no magari.(道の曲がり)道路の曲がる所.〔邦訳379r〕
まがり〔名〕【蓿餅】まがり-もちひ(蓿餅)の略。其條を見よ。〔1870-3〕
まがり-もちひ〔名〕【蓿餅・環餅】略して、まがり。米、麥粉を飴などに和して固め、藤葛の纏へる如く、捩ぢ曲げて、油にて揚げたるものと云ふ。字鏡29、「餌、萬我利餅」大嘗祭式「勾餅(まがりもちひの)筥五合」主税寮式、上、諸寺料物「凡出雲國ノ四天王寺春秋ノ修法、云云、(餅惇(マカリ)料各稲三把、煎(いる)レ鈎料油一合八勺)」字鏡10「鐶、飴餉也、萬加利」倭名抄、十六15飯餅類「蓿餅、形如二藤葛一者也、萬加利」天治字鏡、十一39「蹤、萬加利」土左日記、二月十六日「山崎の店なる小櫃の繪も、まがりの寳螺の形もかはらざりけり」〔1870-5〕
伏兎(フト) 菓子。〔元亀二年本224十〕
伏兎(ブト) 以レ米為之。〔c257七〕
伏兎(ト) 以米為之。〔天正十七年本中57ウ一〕
伏兎曲煎餅○粢○〔至徳三年本〕
伏兎曲前餅燒餅粢興米索豬糒{粽}等爲客料可被用意〔宝徳三年本〕
伏兎曲煎餅燒餅粢興米索豬糒等爲客料可被用意〔建部傳内本〕
伏-兎(フト)鈎(マガリ)煎-餅(ベイ)焼_餅(モチ井)粢(シトギ)興(ヲコシ)_米索(サク)-豬糒(ホシイ)○{粽}等爲ニ‖客-料ノ|可∨被‖用-意せ|〔山田俊雄藏本〕
伏兎(ブト)惇(マカリ)煎餅(センヘイ)粢(シトキ)興(ヲコシ)米索餅(サクベイ)等爲ニ‖客料ノ|可∨被‖用意|〔経覺筆本〕
伏兎(ブト)曲(マカリ)。煎餅(せンヘイ)。焼餅(ヤキモチ井)。粢(シトキ)。興米(ヲコシコメ)。索豬(サクヘイ)。糒(ホシ井)等爲(タメ)ニ‖客料(キヤクレウ)ノ|可‖∨被(せラル)∨用意|候。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「伏兎」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に「フト」、経覺筆本・文明四年本に「ブト」と記載する。
判楢(ホウトウ)部止言 龍舌同 嵜寰同 伏兎同/俗用之 。〔黒川本・飲食門中103オ八〕
判楢フト/亦乍嵜寰油煮餅也。嵜寰。龍舌。伏兎已上同/俗用之。〔卷第七・飲食門中56三〕
判楢(ブト)。嵜寰(同)。伏兎(同)油物。〔弘・財宝門180五・六〕
伏兎(ブト) 。〔食服門149七〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「伏兎」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、『下學集』と広本『節用集』は、未収載としている。
677澤茄子(ミツナスヒ)等可∨随‖時ノ景物ニ|也伏兎(ブト) 用∨米。〔謙堂文庫蔵五八右D〕
とあって、標記語「伏兎」の語を収載し、語注記は「米を用ゆ」と記載する。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
伏兎(ふと)/伏兎 あふらあけの餅なり。〔89オ二〕
とあって、この標記語「伏兎」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲伏兎ハ正字判楢(ふと)と書。油煮(あぶらあげ)の餅(もち)也。〔65オ八、65ウ二〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲伏兎ハ正字判楢(ふと)と書。油煮(あぶらあげ)の餅(もち)也。〔116ウ六、117ウ六〕
Buto.ブト(伏兎) 米で作った一種の小餅.※原本ではButteqiとButto>との間に配列されているので,もとButtoと書かれていたのを,後に不適当としてButoに改めたのであろう.もとのButtoの形も“ブト” を子音二重字の表記で表わしたもの.補説参照.原文はbolinhos.bolosに指小辞のついた形.〔Mochi(餅)の注〕〔邦訳68l〕
ふ-と〔名〕【判楢】〔又、伏兎〕餅を油にて煎たるもの。倭名抄、十六15飯餅類「判楢、部斗、俗云伏兎、油煎餅名也」字鏡廿九「餾、夫止」庭訓往來、十月「伏兎、曲リ、煎餅」〔0456-5〕
景物(ケイブツ) 。〔元亀二年本215八〕
景物(ブツ) 。〔静嘉堂本245五〕
景物(ケイフツ) 。〔天正十七年本中52オ二〕
澤茄子等可随時之景物也〔至徳三年本〕
澤茄子等可隨時之景物也〔宝徳三年本〕
澤茄等可随時景物〔建部傳内本〕
澤茄子(ミヅナスビ)等可∨随‖時ノ之景物ニ|也〔山田俊雄藏本〕
澤茄子(ミツナスヒ)等可キ∨随‖時之景物(ケイ―)ニ|也〔経覺筆本〕
澤茄子(ミツナスヒ)等。可∨随‖∨時之景物(ケイ―)ニ|也。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「景物」と表記し、訓みは、経覺筆本・文明四年本に「ケイ(ブツ)」と記載する。
景物(ケイブツ/カゲ、モノ)[上・入] 云二時節ノ珎物ヲ一也。〔飲食門592六〕
景物(ケイブツ) 時之珎物。〔弘・食物門174六〕
景物(ケイブツ) 密之珎物。〔永・財宝門143五〕
景物(ケイフツ) 時節珎物。〔尭・財宝門133三〕
景物(ケイブツ) ―氣(キ)。〔言辞門147一〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「景物」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、広本『節用集』の語注記は、大いに異なっている。
677澤茄子(ミツナスヒ)等可∨随‖時ノ景物ニ|也伏兎(ブト) 用∨米。〔謙堂文庫蔵五八右D〕
とあって、標記語「景物」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したか)ふ可也/可∨随‖時ノ景物ニ|也 餅菓子水菓子ともに時によりて賞翫すると然らさるとあり。まして水菓子ハある時となき節あれは其時/\にあたりて用ゆへきものを用ひよとなり。〔88ウ八〜89オ二〕
とあって、この標記語「景物」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|。〔65オ八〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|。〔116ウ六〕
Qeibut.ケイブツ(景物) 一年の中のあるきまった時期にある果物や食物.たとえば,九月の梨や葡萄など.¶Toqino qeibutuo soroyete motenasu.(時の景物を揃へてもてなす)一年中のあらゆる季節の果物や食物を集めて歓待し接待する.※原文はSetebro.太陽暦の九月を示す.陰暦の場合はNona lua(第九番目の月)のように記すのが例である.2)この説明は穏当でない.その時節にある果物のすべてを集めて…とあるべきところ.誤解に因るか.→Toqino〜.〔邦訳481r〕
けい-ぶつ〔名〕【景物】(一)春夏秋冬、其時時の景色となるもの、花鳥風月の類。杜審言詩「三春景物滋」白氏長慶集「江樓晩眺二景物鮮奇一」(二)時節相應の、珍しき食物、酒肴など。明衡徃來、上、末、八月「所レ募者勸盃役也、旨酒一樽、景物少少相具、可下令二推參一侍上」庭訓往來、十月「菓子者、柚、柑、云云、可レ隨二時景物一也」尺素徃來「是皆一時一會之景物、當日當座之賞翫也」〔0600-4〕
澤茄子等可随時之景物也〔至徳三年本〕
澤茄子等可隨時之景物也〔宝徳三年本〕
澤茄等可随時景物〔建部傳内本〕
澤茄子(ミヅナスビ)等可∨随‖時ノ之景物ニ|也〔山田俊雄藏本〕
澤茄子(ミツナスヒ)等可キ∨随‖時之景物(ケイ―)ニ|也〔経覺筆本〕
澤茄子(ミツナスヒ)等。可∨随‖∨時之景物(ケイ―)ニ|也。〔文明四年本〕
と見え、建部傳内本が「澤茄」とし、至徳三年本・宝徳三年本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「澤茄子」と表記する。訓みは、山田俊雄藏本に・経覺筆本・文明四年本に「ミヅナスビ」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「澤茄子」の語は未収載にあって、これを古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。
677澤茄子(ミツナスヒ)等可∨随‖時ノ景物ニ|也伏兎(ブト) 用∨米。〔謙堂文庫蔵五八右D〕
とあって、標記語「澤茄子」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
柚柑(ゆこう)柑子(/\じ)橘(たちハな)熟瓜(じゆくくわ)澤茄子(ミづなすび)等/柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等 以上皆水菓子也。〔88ウ五〜六〕
とあって、この標記語「澤茄子」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲沢茄子ハ未レ考。〔65オ八、65ウ二〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲沢茄子ハ未レ考。〔116ウ六、117ウ五〕
菓子者柚柑々子橘熟瓜〔至徳三年本〕
菓子者柚柑々子橘熟送〔宝徳三年本〕
菓子者柚柑々子橘熟瓜〔建部傳内本〕
菓子ハ者柚柑(カウ)々子橘熟瓜(ウリ)〔山田俊雄藏本〕
菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)々子(カウシ)橘(タチハナ)熟瓜(シユクウリ)〔経覺筆本〕
菓子(クワシ)者。柚柑(ユカウ)。々子(カンシ)。橘(タチハナ)。熟(シユク)瓜。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「熟瓜」と表記し、訓みは、経覺筆本に「シユクウリ」、山田俊雄藏本に「(シユク)ウリ」、文明四年本に「シユク(ウリ)」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「熟瓜」の語は未収載にあって、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。
676蒸餅(ムシ−)菓子者柚柑々子橘熟瓜(シユクウリ/―クワ)唐ニ秦ノ東陵侯種‖瓜ヲ長安城ノ東門|。有‖五色|甚美也。是ヲ云‖青門瓜東門ノ瓜ト|而異名也。日本ニハ慈覚大師如法經被∨行‖三七日|即不∨食也。結願ノ日天童来リ持∨菓進‖慈覚ニ|。大師不∨食∨之。童重而曰是ハ号シテ∨瓜非‖食ノ中ニ|。只可‖食給|。恠ミ食∨之。即吐∨之也。江州南都甘露ノ庄ニ生ス。自∨天降物也。故至今ニ不‖食中|也。〔謙堂文庫蔵五八右A〕
とあって、標記語「熟瓜」の語を収載し、語注記は「煮てこれを用ゆなり」と記載する。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
柚柑(ゆこう)柑子(/\じ)橘(たちハな)熟瓜(じゆくくわ)澤茄子(ミづなすび)等/柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等 以上皆水菓子也。〔88ウ五〜六〕
とあって、この標記語「熟瓜」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲熟瓜ハ甜瓜(まくハ)也。〔65オ八、65ウ二〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲熟瓜ハ甜瓜(まくわ)也。〔116ウ六、117ウ五〕
橘(タチバナ) 。〔元亀二年本376三〕
橘(タチハナ) 。〔静嘉堂本457二〕
菓子者柚柑々子橘熟瓜〔至徳三年本〕
菓子者柚柑々子橘熟送〔宝徳三年本〕
菓子者柚柑々子橘熟瓜〔建部傳内本〕
菓子ハ者柚柑(カウ)々子橘熟瓜(ウリ)〔山田俊雄藏本〕
菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)々子(カウシ)橘(タチハナ)熟瓜(シユクウリ)〔経覺筆本〕
菓子(クワシ)者。柚柑(ユカウ)。々子(カンシ)。橘(タチハナ)。熟(シユク)瓜。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「橘」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に・経覺筆本・文明四年本に「フトン」と記載する。
橘(ク井ツ) タチハナ/湘水熟金。金衣 同。〔黒川本・植物門中2オ二〕
橘 タチハナ/橘柚イ本。盧橘事参河入道渡唐以後付歸朝客令示送云々。盧橘此五所稱既枇杷云々。非花橘之由相示云々。金衣 同。〔卷第四・植物門386一・二〕
橘(タチハナ) 。〔草木門132三〕
橘(タチバナ/キチ)[平] 在二江南ニ一橘在二江北ニ一枳一。弘安國曰。小曰レ橘。大曰レ柚異物志曰。橘白花赤實皮馨香ニシテ有レ味春秋ノ運ニ斗樞。駸樞ノ星散シテ爲レ橘ト。異名岩橡李太曲名/之有詩。木奴對。金衣。金鈴。金包苞歟。金丸。金實毛詩橘。霜飽。普黄。三寸黄。韋郎果又花。柑橙對。黄苞綾霜。千頭羅浮種君家社實――統。果花。見霜。雲衣。雲苞。雲丸。温成。洞庭君子。玉饗(イ)。皇后。欠霜。〔草木門332七〜333一〕
橘(タチハナ) 在江南―在江北枳。〔弘・草木門98四〕
橘(タチハナ) 。〔永・草木門91三〕〔尭・艸木門83二〕〔両・草木門100一〕
橘(タチバナ) 。〔草木門90五〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「橘」の語を収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、広本『節用集』の語注記は、別格にして委しい。
676蒸餅(ムシ−)菓子者柚柑々子橘熟瓜(シユクウリ/―クワ)唐ニ秦ノ東陵侯種‖瓜ヲ長安城ノ東門|。有‖五色|甚美也。是ヲ云‖青門瓜東門ノ瓜ト|而異名也。日本ニハ慈覚大師如法經被∨行‖三七日|即不∨食也。結願ノ日天童来リ持∨菓進‖慈覚ニ|。大師不∨食∨之。童重而曰是ハ号シテ∨瓜非‖食ノ中ニ|。只可‖食給|。恠ミ食∨之。即吐∨之也。江州南都甘露ノ庄ニ生ス。自∨天降物也。故至今ニ不‖食中|也。〔謙堂文庫蔵五八右A〕
とあって、標記語「橘」の語を収載し、語注記は「煮てこれを用ゆなり」と記載する。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
柚柑(ゆこう)柑子(/\じ)橘(たちハな)熟瓜(じゆくくわ)澤茄子(ミづなすび)等/柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等 以上皆水菓子也。〔88ウ五〜六〕
とあって、この標記語「橘」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲橘ハ種類(しゆるい)多(おほ)くして蜜柑(ミかん)是が長(ちやう)たり。〔65オ八、65ウ二〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲橘ハ種(しゆ)類多(おほ)くして蜜柑(ミかん)是が長(ちやう)たり。〔116ウ六、117ウ五〕
Tachibana.タチバナ(橘) 小さくて酸っぱい,ある種の蜜柑.〔邦訳597r〕
たち-ばな〔名〕【橘】〔外國より求め來し田道(たぢま)守(まもり)と云ふ人名に因りて、田道(たぢま)花(ばな)の約轉かと云ふ〕(一){ときじくのかぐのこのみ。今の通名、柑子(カウジ)。又、柑子(カウジ)蜜柑(ミカン)。樹の名。暖地の産にて、高さ丈許、枝に刺多く、葉は、冬にも凋まず、兩頭尖り、緑にして光る。長さ二寸許、夏の初、五辨の小白花を開く、甚だ馨し。實圓く、〓(なかご)は數箇の瓣(ふくろ)に分る。皮薄く、皴細かく、光りて瓣の形、襞(ひだ)となりて外より見るべきこと、柑類と相反す。にはこぐさ。(漢字の橘(キツ)は、古へに、たちばなと云ひ、今は、みかん類の總名とす。惑ひ易し)倭名抄、十七5菓類「橘、太知波奈」古事記、中(應~)72長歌「香(かぐ)はしき、波那多知婆那波」萬葉集、六32「橘花(たちばな)は、實さへ花さへ、其葉さへ、枝に霜降れど、彌常葉の樹」垂仁紀、九十年二月「天皇命二田道闔一、遣二常世國一、令レ求非時(ときじくの)香菓(かぐのこのみ)、今調橘是也」(田道濶ヤの義なりと云ふ、はを清みて云ふは、婆と濁音重なるに因ると云ふ。~代紀、上14に日向小戸橘之檍原(あはぎはる)とあれど、地名なれば論ぜず)(二)今俗閧ノ、通じてたちばなと云ふは、前項の一種、小さきものにて、庭際に植ゑ、春盤(ホウライ)に用ゐる。(好事(カウジ)の音に據る)形、きんかんより稍、大きくして、皮の皴粗くして、みかんの如し。一名、はなたちばな。猴橘。(三)又、中古、なつみかんの一名。盧橘。(四)今、又、からたちばなの略稱。百兩金。(五)襲(かさね)の色目の名。表は朽葉(くちば)にて、裏の青なるもの。一説に、表は白にて、裏の青なるもの。(六)紋所の名。井伊氏の定紋。〔1220-2〕
柑子(ガウシ) 聖武天皇神亀二乙丑自唐渡(ワタル)。至天文十七戌申八百卅四年也。〔元亀二年本374八〕
柑子(カウシ) 聖武天皇神亀二乙丑自唐渡。至天文十七戌申八百卅四季也。〔静嘉堂本455三〕
菓子者柚柑々子橘熟瓜〔至徳三年本〕
菓子者柚柑々子橘熟送〔宝徳三年本〕
菓子者柚柑々子橘熟瓜〔建部傳内本〕
菓子ハ者柚柑(カウ)々子橘熟瓜(ウリ)〔山田俊雄藏本〕
菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)々子(カウシ)橘(タチハナ)熟瓜(シユクウリ)〔経覺筆本〕
菓子(クワシ)者。柚柑(ユカウ)。々子(カンシ)。橘(タチハナ)。熟(シユク)瓜。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「柑子」と表記し、訓みは、経覺筆本に「カウシ」、文明四年本に「カンシ」と記載する。
柑子(カンシ) 。〔草木門132二〕
柑子(カウシ/カン、コ)[平・上] 人王四十五代聖武御宇神亀二年自レ唐渡レ之。〔草木門258五〕
柑子(カウジ) 聖武神亀二乙丑自唐渡之。至弘治二丙辰八百四十二年。〔弘・草木門76一〕
柑子(カウジ)カン 。〔永・草木門75六〕
柑子(カウジ) 。〔尭・草木門68五〕
柑子(カウシ) 。〔両・草木門81六〕
乳柑子(カウジ) 。〔草木門72六〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「柑子」の語を収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、広本『節用集』の語注記とは異なっている。
676蒸餅(ムシ−)菓子者柚柑々子橘熟瓜(シユクウリ/―クワ)唐ニ秦ノ東陵侯種‖瓜ヲ長安城ノ東門|。有‖五色|甚美也。是ヲ云‖青門瓜東門ノ瓜ト|而異名也。日本ニハ慈覚大師如法經被∨行‖三七日|即不∨食也。結願ノ日天童来リ持∨菓進‖慈覚ニ|。大師不∨食∨之。童重而曰是ハ号シテ∨瓜非‖食ノ中ニ|。只可‖食給|。恠ミ食∨之。即吐∨之也。江州南都甘露ノ庄ニ生ス。自∨天降物也。故至今ニ不‖食中|也。〔謙堂文庫蔵五八右A〕
とあって、標記語「柑子」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
柚柑(ゆこう)柑子(/\じ)橘(たちハな)熟瓜(じゆくくわ)澤茄子(ミづなすび)等/柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等 以上皆水菓子也。〔88ウ五〜六〕
とあって、この標記語「柑子」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲柑子ハ柑類(かんるい)の惣名(そうめう)なり。〔65オ八、65ウ二〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲柑子ハ柑類(かんるゐ)の惣名(そうミやう)なり。〔116ウ六、117ウ四〕
†Canji.カンジ(柑子) 蜜柑.〔邦訳90l〕
かう-じ〔名〕【柑子】〔字の音、かむじ、の音便〕(一)古くは、蜜柑(ミカン)。(其の條を見よ)(二)今は、かうじみかん。(たちばなの條を見よ)〔0343-2〕
若旧(ユカウ) 。〔元亀二年本224一〕〔静嘉堂本455六〕
菓子者柚柑々子橘熟瓜〔至徳三年本〕
菓子者柚柑々子橘熟送〔宝徳三年本〕
菓子者柚柑々子橘熟瓜〔建部傳内本〕
菓子ハ者柚柑(カウ)々子橘熟瓜(ウリ)〔山田俊雄藏本〕
菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)々子(カウシ)橘(タチハナ)熟瓜(シユクウリ)〔経覺筆本〕
菓子(クワシ)者。柚柑(ユカウ)。々子(カンシ)。橘(タチハナ)。熟(シユク)瓜。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「柚柑」と表記し、訓みは、山田俊雄藏本に「(ユ)カウ」、経覺筆本・文明四年本に「ユカウ」と記載する。
若旧(ヘイカ) ユカウ。〔黒川本・植物門下54オ三〕
若旧 ユカウ。柚柑 同。〔卷第九・殖物門004四〕
橙(ユカウ/タウ)[平] 柚属。〔草木門858八〕
橙(ユカウ) 。若旧(同) 。〔弘・草木門225一〕
橙(ユカウ) 。若旧(ユカウ) 。〔永・草木門187五〕
橙(ユカフ)若旧 。〔尭・草木門177一〕
柚柑(ユカウ) 。橙(同) 。〔草木門193五〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「柚柑」「橙」「若旧」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が「柚柑」の語で収載しているのである。但し、広本『節用集』の語注記は、異なっている。
676蒸餅(ムシ−)菓子者柚柑々子橘熟瓜(シユクウリ/―クワ)唐ニ秦ノ東陵侯種‖瓜ヲ長安城ノ東門|。有‖五色|甚美也。是ヲ云‖青門瓜東門ノ瓜ト|而異名也。日本ニハ慈覚大師如法經被∨行‖三七日|即不∨食也。結願ノ日天童来リ持∨菓進‖慈覚ニ|。大師不∨食∨之。童重而曰是ハ号シテ∨瓜非‖食ノ中ニ|。只可‖食給|。恠ミ食∨之。即吐∨之也。江州南都甘露ノ庄ニ生ス。自∨天降物也。故至今ニ不‖食中|也。〔謙堂文庫蔵五八右A〕
とあって、標記語「柚柑」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
柚柑(ゆこう)柑子(/\じ)橘(たちハな)熟瓜(じゆくくわ)澤茄子(ミづなすび)等/柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等 以上皆水菓子也。〔88ウ五〜六〕
とあって、この標記語「柚柑」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲柚柑ハ本名疣旧(はいか)俗(ぞく)にサンスといふ。樹(き)葉(は)花(はな)実(ミ)共に柚(ゆう)に似(に)て大く香(か)ハ乳柑(くねんぽ)のごとく味(あぢ)ハ橙(だい/\)のごとし。〔65オ八、65ウ二〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲柚柑ハ本名疣旧(はいか)俗(ぞく)にサンスといふ。樹(き)葉(は)花(はな)実(ミ)共に柚(ゆう)に似(に)て大く香(か)ハ乳柑(くねんぼ)のごとく味(あぢ)ハ橙(だい/\)のごとし。〔116ウ六、117ウ四・五〕
ゆ-かう〔名〕【柚柑】〔字の音、ゆかんの音便〕芸香(ヘンルウガ)科の常緑樹。葉、花、實、柚(ゆ)に異ならず、但し、實、甚だ大きく、香ありて、柑に似たり。和名抄、十七5菓類「柚柑」易林節用集(慶長)下、草木門「柚柑、ユカウ、橙、同」〔2063-1〕
菓子者柚柑々子橘熟瓜〔至徳三年本〕
菓子者柚柑々子橘熟送〔宝徳三年本〕
菓子者柚柑々子橘熟瓜〔建部傳内本〕
菓子ハ者柚柑(カウ)々子橘熟瓜(ウリ)〔山田俊雄藏本〕
菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)々子(カウシ)橘(タチハナ)熟瓜(シユクウリ)〔経覺筆本〕
菓子(クワシ)者。柚柑(ユカウ)。々子(カンシ)。橘(タチハナ)。熟(シユク)瓜。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本は、「菓子」と表記し、訓みは、経覺筆本・文明四年本に「クワシ」と記載する。
菓子盆(クワシボン) 。〔器財門106五〕
菓子(クワシ/コノミ、コ)[上・上] 。〔飲食門503七〕
菓子(クワシ) 。〔弘・食物門160三〕
菓子(クワシ) 。〔衣服門131二〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「菓子」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。
676蒸餅(ムシ−)菓子者柚柑々子橘熟瓜(シユクウリ/―クワ)唐ニ秦ノ東陵侯種‖瓜ヲ長安城ノ東門|。有‖五色|甚美也。是ヲ云‖青門瓜東門ノ瓜ト|而異名也。日本ニハ慈覚大師如法經被∨行‖三七日|即不∨食也。結願ノ日天童来リ持∨菓進‖慈覚ニ|。大師不∨食∨之。童重而曰是ハ号シテ∨瓜非‖食ノ中ニ|。只可‖食給|。恠ミ食∨之。即吐∨之也。江州南都甘露ノ庄ニ生ス。自∨天降物也。故至今ニ不‖食中|也。〔謙堂文庫蔵五八右A〕
とあって、標記語「菓子」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
菓子(クワシ)者(ハ)/菓子者 菓子とハなりくだ物の事也。今餅の類をも菓子と云ハあやまり也。〔88ウ七〕
とあって、この標記語「菓子」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
菓子(くハし)者(ハ)柚柑(ゆかう)柑子(かうじ)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくハ)澤茄子(さハなすび)等(とう)時(とき)の景物(けいぶつ)に随(したがふ)可(べ)き也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)燒餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とう)も客料(かくれう)乃爲(ため)用意(ようゐ)せら被(る)可(べ)し/菓子者柚柑柑子橘熟瓜澤茄子等可∨随‖時ノ景物ニ|伏兎曲煎餅焼餅粢興米索豬糒粽等爲‖客料|可∨被‖用意|▲菓子ハ本字(ほんじ)果子(くわし)也。木(き)の実(ミ)也。〔65オ八、65ウ一〕
菓子(くわし)者柚柑(ゆかう)柑子(かうし)橘(たちばな)熟瓜(じゆくくわ)沢茄子(さハなす)等(とう)可(べき)∨随(したかふ)‖時(ときの)景物(けいぶつに)|也(なり)伏兎(ふと)曲煎餅(まがりせんへい)焼餅(やきもち)粢(しとぎ)興米(おこしこめ)索餅(さくべい)糒(ほしいひ)粽(ちまき)等(とうも)爲(ため)‖客料(かくれうの)|可(べし)∨被(る)‖用意(よういせら)|▲菓子ハ本字(ほんじ)果子(くわし)也。木(き)の実(ミ)也。〔116ウ六、117ウ四〕
Quaxi.クヮシ(菓子) 果実.特に食後の果物を言う.〔邦訳521l〕
くヮ-し〔名〕【菓子】食事の外に、茶請(チヤうけ)に食ふものの總名。元は、くだものなり。今、専ら、米粉、小麥粉、餅、砂糖、飴、などにて、種種に製したるものを云ふ。餅と、餡と、などなるを、餅菓子と云ふ。餅と、砂糖と、などなるを、乾(ひ)菓子と云ふ。茵。而して、くだものなるをば、水菓子と云ひて、別つ。類聚雜要抄、一「菓子八種、餅、伏兎、惇、大柑子、小柑子、橘、栗、串柿」江家次第、廿、任太政大臣事「居二菓子一」(枝柿、甘栗、朶(えだ)梨、椎、桃)」〔0576-3〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「蒸餅」の語は未収載にあって、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。
676蒸餅(ムシ−)菓子者柚柑々子橘熟瓜(シユクウリ/―クワ)唐ニ秦ノ東陵侯種‖瓜ヲ長安城ノ東門|。有‖五色|甚美也。是ヲ云‖青門瓜東門ノ瓜ト|而異名也。日本ニハ慈覚大師如法經被∨行‖三七日|即不∨食也。結願ノ日天童来リ持∨菓進‖慈覚ニ|。大師不∨食∨之。童重而曰是ハ号シテ∨瓜非‖食ノ中ニ|。只可‖食給|。恠ミ食∨之。即吐∨之也。江州南都甘露ノ庄ニ生ス。自∨天降物也。故至今ニ不‖食中|也。〔謙堂文庫蔵五八右A〕
とあって、標記語「蒸餅」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
じょう-べい〔名〕【蒸餅】ぱん(跣包)に同じ。書言故事「晉何曾蒸餅、上不レ拆二十字一、則不レ食」(烝は、蒸に通ず)」〔1010-1〕
温餅(アタヽケ) 。〔元亀二年本259五〕〔静嘉堂本293六〕
點心者水繊紅糟々鶏鼈羮羊羹猪羹驢腸羹笋羊羹砂糖羹饂飩饅頭素麺碁子麺巻餅温餅〔至徳三年本〕
點心等([者])水繊紅([温])糟々鶏鼈羮羊羹武([饂])飩饅頭索麺碁子麺巻餅温餅〔宝徳三年本〕
點心者水繊温糟々鶏鼈羮羊羹猪羹驢腸羹笋羊羹砂糖饅頭素麺碁子麺巻餅温餅 武飩〔建部傳内本〕
點(テン)心ハ者水繊(せン)紅糟(ウンサウ)糟鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊(ヤウ)羹猪(チヨ)羹笋(シユン)羊羹驢腸(ロチヤウ)羹砂糖(サタウ)羊羹武飩(ウトン)饅頭(マンヂウ)索麺(サウメン)碁子(キシ)麺水團(ドン)巻餅(ケンビン)温(ウン)アタヽカナリ餅〔山田俊雄藏本〕
点心者(ハ)水繊(せン)温糟(ウンサウ)糟鶏(ソウケイ)鼈羮(ベツカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヨウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)饂飩(ウドン)饅頭(マンチウ)索麺(サウメン)碁子麺(キシ)巻餅(ケンヒン)温(ウン)餅〔経覺筆本〕
點心者水蟾(せン)温糟(ウンサウ)糟鶏(サウケイ)鼈羮(ヘツカン)羊羹(ヤウカン)猪(チヨ)羹驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊(シユンヤウ)羹砂糖(サタウ)羊羹武飩(ウトン)饅頭(マンチウ)索麺(サウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温(アタヽカナ)餅ウンせン〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本が「温餅」とし、訓みは、山田俊雄藏本に「ウン(ヒン)/アタヽカナリ」、経覺筆本に「ウン(ヒン)」、文明四年本に「アタヽカナ(モチ)/ウンせン」と記載する。
温餅 アタヽケ。〔黒川本・飲食門下26オ@〕〔卷八・飲食門門304C〕
温餅(アタヽケ/ウンへい/アタヽカ、モチ)[平・上] 。〔飲食門748六〕
温餅(アタヽケ) 。〔弘・食物門204六〕〔永・財宝門170二〕〔尭・食物門159六〕
温餅(ウンビヤウ) ―物( モツ)。〔食服門118二〕
温餅(アタヽケ) 。〔食服門170六〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「温餅」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、広本『節用集』の語注記は、大いに異なっている。
675温餅(アタヽケモチ/アタヽケ) 煮用∨之也。〔謙堂文庫蔵五八右@〕
とあって、標記語「温餅」の語を収載し、語注記は「煮てこれを用ゆなり」と記載する。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
點心(てんしん)者(ハ)水繊(すいせん)温糟(うんそう)糟鶏(そうけい)鼈羮(べつかん)羊羹(ようかん)猪羹(ちよかん)驢腸羹(ろちやうかん)笋羊羹(しゆんやうかん)砂糖羊羹(さたうやうかん)饂飩(うんどん)饅頭(まんぢう)素麺(そうめん)碁子麺(きしめん)巻餅(けんびん)温餅(うんべい)/點心者水繊温糟糟鶏鼈羮羊羹猪羹驢腸羹笋羊羹砂糖羊羹饂飩饅頭素麺碁子麺巻餅温餅○爰(こゝ)にいへる品(しな)ハすべて今の水菓子(ミづぐハし)蒸(むし)菓子の類なるべし。盖(けだし)。製方(せいはう)詳(つまび)ならずよし名(な)を同(おなし)うするものも古今形製異なることあらん。素麪ハ索麪に作るべし。〔65オ一、65オ四・五〕
點心(てんしん)者(ハ)水繊(すゐせん)温糟(うんそう)糟鶏(そうけい)鼈羮(べつかん)羊羹(やうかん)猪羹(ちよかん)驢腸羹(ろちやうかん)笋羊羹(しゆんやうかん)砂糖羊羹(さとうやうかん)饂飩(うんどん)饅頭(まんぢう)素麺(そうめん)碁子麺(きしめん)巻餅(けんびん)温餅(うんべい)○爰(こゝ)にいへる品ハすべて今の水菓子(ミつくわし)蒸(むし)菓子(くわし)の類なるべし。盖(けだし)。製方(せいはう)詳(つまびらか)ならずまゝ名(な)を同うするものも古今形製異なることあらん。素麪ハ索麪(そうめん)に作るべし。〔116ウ六、117オ四・五〕
Atataqe.アタタケ(温餅) いくぶん楕円形をした大きな餅で,供物用のパンに似ているもの.※原文はboros.〔Mochi(餅)〕の注.原文はfogacas.〔邦訳36l〕
巻餅(ケンビン) 。〔元亀二年本217一〕〔静嘉堂本247三〕
巻餅(ケンヒン) 。〔天正十七年本中52ウ八〕
點心者水繊紅糟々鶏鼈羮羊羹猪羹驢腸羹笋羊羹砂糖羹饂飩饅頭素麺碁子麺巻餅温餅〔至徳三年本〕
點心等([者])水繊紅([温])糟々鶏鼈羮羊羹武([饂])飩饅頭索麺碁子麺巻餅温餅〔宝徳三年本〕
點心者水繊温糟々鶏鼈羮羊羹猪羹驢腸羹笋羊羹砂糖饅頭素麺碁子麺巻餅温餅 武飩〔建部傳内本〕
點(テン)心ハ者水繊(せン)紅糟(ウンサウ)糟鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊(ヤウ)羹猪(チヨ)羹笋(シユン)羊羹驢腸(ロチヤウ)羹砂糖(サタウ)羊羹武飩(ウトン)饅頭(マンヂウ)索麺(サウメン)碁子(キシ)麺水團(ドン)巻餅(ケンビン)温(ウン)アタヽカナリ餅〔山田俊雄藏本〕
点心者(ハ)水繊(せン)温糟(ウンサウ)糟鶏(ソウケイ)鼈羮(ベツカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヨウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)饂飩(ウドン)饅頭(マンチウ)索麺(サウメン)碁子麺(キシ)巻餅(ケンヒン)温(ウン)餅〔経覺筆本〕
點心者水蟾(せン)温糟(ウンサウ)糟鶏(サウケイ)鼈羮(ヘツカン)羊羹(ヤウカン)猪(チヨ)羹驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊(シユンヤウ)羹砂糖(サタウ)羊羹武飩(ウトン)饅頭(マンチウ)索麺(サウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温(アタヽカナ)餅ウンせン〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本が「巻餅」とし、訓みは、山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本に「ケンビン」と記載する。
巻餅(マクビン/ケンヘイ・モチ)[平去・平] 。〔飲食門592五〕
巻餅(ケンビン) ―氈(せン)。〔食服門145二〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「巻餅」の語を以て収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、広本『節用集』の訓みは異なっている。
674索麺(サウメン)棊子麺(キシメン)巻餅(ケンヒン) 用油也。〔謙堂文庫蔵五八右@〕
とあって、標記語「巻餅」の語を収載し、語注記は「油を用いるなり」と記載する。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
巻餅(けんひん)/巻餅 まきせんへいの事也。繊より以下ハ皆もちくわし・ひくわし・めん類也。〔88ウ六〜七〕
とあって、この標記語「巻餅」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
點心(てんしん)者(ハ)水繊(すいせん)温糟(うんそう)糟鶏(そうけい)鼈羮(べつかん)羊羹(ようかん)猪羹(ちよかん)驢腸羹(ろちやうかん)笋羊羹(しゆんやうかん)砂糖羊羹(さたうやうかん)饂飩(うんどん)饅頭(まんぢう)素麺(そうめん)碁子麺(きしめん)巻餅(けんびん)温餅(うんべい)/點心者水繊温糟糟鶏鼈羮羊羹猪羹驢腸羹笋羊羹砂糖羊羹饂飩饅頭素麺碁子麺巻餅温餅○爰(こゝ)にいへる品(しな)ハすべて今の水菓子(ミづぐハし)蒸(むし)菓子の類なるべし。盖(けだし)。製方(せいはう)詳(つまび)ならずよし名(な)を同(おなし)うするものも古今形製異なることあらん。素麪ハ索麪に作るべし。〔65オ一、65オ四・五〕
點心(てんしん)者(ハ)水繊(すゐせん)温糟(うんそう)糟鶏(そうけい)鼈羮(べつかん)羊羹(やうかん)猪羹(ちよかん)驢腸羹(ろちやうかん)笋羊羹(しゆんやうかん)砂糖羊羹(さとうやうかん)饂飩(うんどん)饅頭(まんぢう)素麺(そうめん)碁子麺(きしめん)巻餅(けんびん)温餅(うんべい)○爰(こゝ)にいへる品ハすべて今の水菓子(ミつくわし)蒸(むし)菓子(くわし)の類なるべし。盖(けだし)。製方(せいはう)詳(つまびらか)ならずまゝ名(な)を同うするものも古今形製異なることあらん。素麪ハ索麪(そうめん)に作るべし。〔116ウ六、117オ四・五〕
Qenbin.ケンビン(巻餅) 小麦粉で作ったボーロ菓子,あるいは,練り粉菓子の一種で,曲がり重なるようにあぶってあり,厚い聖体パンに似ているもの.※原文は,Bols,filhos,obreas.〔邦訳484r〕
ケン-ピン〔名〕【巻餅】〔巻餅(ケンベイ)の宋音、禪寺の語〕餅菓子の名、麪粉と白砂糖を、水にてこね、胡桃と、炒りたるK胡麻を加へて、延べ、平銅鍋に、胡桃の油を塗りたるに入れ、銅蓋をして、表裏より燒き、面に醤油を塗り、片端より固く卷きて、小口切にして成る。(菓子大全)略して、けんび。又、けんびやき。きぬたまき。庭訓往來、十月「巻餅」尺素往來「乳餅(ジユウビン)、巻餅(ケンビン)、水晶包子、砂糖饅頭」運歩色葉集「巻餅(ケンビン)」〔0636-5〕
碁子麺(キシメン) 。〔元亀二年本285八〕〔静嘉堂本330七〕
點心者水繊紅糟々鶏鼈羮羊羹猪羹驢腸羹笋羊羹砂糖羹饂飩饅頭素麺碁子麺巻餅温餅〔至徳三年本〕
點心等([者])水繊紅([温])糟々鶏鼈羮羊羹武([饂])飩饅頭索麺碁子麺巻餅温餅〔宝徳三年本〕
點心者水繊温糟々鶏鼈羮羊羹猪羹驢腸羹笋羊羹砂糖饅頭素麺碁子麺巻餅温餅 武飩〔建部傳内本〕
點(テン)心ハ者水繊(せン)紅糟(ウンサウ)糟鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊(ヤウ)羹猪(チヨ)羹笋(シユン)羊羹驢腸(ロチヤウ)羹砂糖(サタウ)羊羹武飩(ウトン)饅頭(マンヂウ)索麺(サウメン)碁子(キシ)麺水團(ドン)巻餅(ケンビン)温(ウン)アタヽカナリ餅〔山田俊雄藏本〕
点心者(ハ)水繊(せン)温糟(ウンサウ)糟鶏(ソウケイ)鼈羮(ベツカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヨウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)饂飩(ウドン)饅頭(マンチウ)索麺(サウメン)碁子麺(キシ )巻餅(ケンヒン)温(ウン)餅〔経覺筆本〕
點心者水蟾(せン)温糟(ウンサウ)糟鶏(サウケイ)鼈羮(ヘツカン)羊羹(ヤウカン)猪(チヨ)羹驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊(シユンヤウ)羹砂糖(サタウ)羊羹武飩(ウトン)饅頭(マンチウ)索麺(サウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温(アタヽカナ)餅ウンせン〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本が「碁子麺」とし、訓みは、山田俊雄藏本に・経覺筆本に「キシ(メン)」、文明四年本に「キシメン」と記載する。
碁子(キシ)跣(メン) 。〔飲食門100三〕
碁子跣(キシメン/ゴ、コ、ムギ)[平・上・去] 汁(シル)之(ノ)名也。〔飲食門816二〕
碁子麺(キシメン) 。〔弘・(食物)門220四〕
棊子麪(キシメン) 。〔食服門187六〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「碁子跣」「棊子麪」の語を収載し、これを、古写本『庭訓徃來』及び、下記真字本が収載しているのである。但し、広本『節用集』の語注記は、真字本には無く異なっている。
674索麺(サウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンヒン) 用油也。〔謙堂文庫蔵五八右@〕
とあって、標記語「碁子麺」の語を収載し、語注記は未記載にする。
水煎(スイせン)温糟(ウンサウ)曹鶏(ケイ)鼈羮(ベツカン)羊羹(ヤウカン)猪羹(チヨカン)驢腸羹(ロチヤウカン)笋羊羹(シユンヤウカン)砂糖(サタウ)羊羹(ヤウカン)饂飩(ウンドン)饅頭(マンヂウ)索麺(ソウメン)碁子麺(キシメン)巻餅(ケンビン)温餅(アタヽケ)蒸餅菓子(クワシ)者(ハ)柚柑(ユカウ)柑子(カウジ)橘(タチバナ)熟送(ジユククワ)澤茄子(サワナスビ)等可(ヘキ)∨随( フ)‖時ノ景物(ケイブツ)ニ|伏兎(フト)曲煎餅(マガリせンベイ)焼餅(ヤキモチ)粢(シトギ)興米(ヲコシゴメ)索豬(サクベイ)糒(ホシヒ)粽(チマキ)等爲ニ‖ 至ルマデ點心也。常ノ如シ。菓子ナンドモ同前ナリ。〔下35オ一〜六〕
素麺(そうめん)碁子麺(きしめん)/素麺碁子麺 是ハ皆形によりて名付し也。索ハなわ也。〔88ウ五〜六〕
とあって、この標記語「碁子麺」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
點心(てんしん)者(ハ)水繊(すいせん)温糟(うんそう)糟鶏(そうけい)鼈羮(べつかん)羊羹(ようかん)猪羹(ちよかん)驢腸羹(ろちやうかん)笋羊羹(しゆんやうかん)砂糖羊羹(さたうやうかん)饂飩(うんどん)饅頭(まんぢう)素麺(そうめん)碁子麺(きしめん)巻餅(けんびん)温餅(うんべい)/點心者水繊温糟糟鶏鼈羮羊羹猪羹驢腸羹笋羊羹砂糖羊羹饂飩饅頭素麺碁子麺巻餅温餅○爰(こゝ)にいへる品(しな)ハすべて今の水菓子(ミづぐハし)蒸(むし)菓子の類なるべし。盖(けだし)。製方(せいはう)詳(つまび)ならずよし名(な)を同(おなし)うするものも古今形製異なることあらん。素麪ハ索麪に作るべし。〔65オ一、65オ四・五〕
點心(てんしん)者(ハ)水繊(すゐせん)温糟(うんそう)糟鶏(そうけい)鼈羮(べつかん)羊羹(やうかん)猪羹(ちよかん)驢腸羹(ろちやうかん)笋羊羹(しゆんやうかん)砂糖羊羹(さとうやうかん)饂飩(うんどん)饅頭(まんぢう)素麺(そうめん)碁子麺(きしめん)巻餅(けんびん)温餅(うんべい)○爰(こゝ)にいへる品ハすべて今の水菓子(ミつくわし)蒸(むし)菓子(くわし)の類なるべし。盖(けだし)。製方(せいはう)詳(つまびらか)ならずまゝ名(な)を同うするものも古今形製異なることあらん。素麪ハ索麪(そうめん)に作るべし。〔116ウ六、117オ四・五〕
Qiximen.キシメン(棊子跣) 小麦粉で作った食物の一種.〔邦訳513l〕
きし-めん〔名〕【棊子跣】點心の菓子の名。小麥粉を、水にて固くねりて、板の上にて薄く伸(の)したるを、細そき竹筒の切口にて押して切れば、棊石の如く切るるを、煮て、黄粉(きなこ)を衣にかけたるもの。(松屋筆記、六十四、廿六條)庭訓往來、十月「棊子跣」尺素往來「點心者、先點二集香湯一、云云、碁子跣」〔0465-1〕
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