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ことばの溜め池
ふだん何氣なく思っている「ことば」を、池の中にポチャンと投げ込んでいきます。ふと立ち寄ってお氣づきのことがございましたらご連絡ください。
御任國之後烏菟押移遙不遂面拝之間頗如忘徃日之昵近〔至徳三年本〕
御任國之後烏兎押移遙不遂面拝候間頗如忘往日之昵近〔宝徳三年本〕
御任國之後烏菟押移遙不遂面拝之間頗如忘徃日之昵近〔建部傳内本〕
御任國ノ之後烏兎(ウド)押移(ヲシウツテ)遙ニ不ルレ遂二面拝ヲ一候間頗ル如シレ忘ルヽカ二往日ノ之昵(ジツ)近ヲ一〔山田俊雄藏本〕
御任(ニン)國之後烏兎(ウト)推移(オシウツヽテ)遙ニ不∨遂ゲ‖面拝ヲ|之條頗(スコフル)如レ忘ルガ二往日ノ昵近(ヂツキン)ヲ一〔経覺筆本〕
御任(ニン)国ノ之後。烏兎(ウト)。押移(ヲシウツテ)遙(ハルカ)ニ不ル∨遂ケ‖面拝ヲ|間頗(スコフ)ル如シレ忘(ワスルヽカ)ワスレタルカ二往日之(ノ)昵近(チツキン)ヲ一。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・文明四年本に「押移」、経覺筆本に「推移」と表記し、訓みは経覺筆本に「ヲシウツツテ」、山田俊雄藏本・文明四年本に「ヲシウツテ」と記載する。
推移(ヲシウツル/スイイ)[○・平] 。〔態藝門220六〕
このように、上記当代の古辞書においては、広本『節用集』にだけ、標記語「推移」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
729御任国之後烏兎推移不∨遂‖面拝|候間 烏ハ日也。兎ハ月也。尭ノ時卞ノ日並出命シテ∨廻ヲ使ルニ∨射∨之。即射落ニ九ノ烏也。又昔シ釈迦菩薩ノ行ノ砌、鳥類草木ニ至マテ仰心アリ。中ニモ猿ハ奉ル‖菓子ヲ|。狐ハ献‖川魚ヲ|。兎ハ无調法ニシテ不∨能ハ∨献ルコト‖一物ヲ|。其時集‖草木ヲ|焼∨身ヲ欲∨成‖佛ノ食ニ|。帝尺ハ感シテ∨之ヲ、天ニ上テ被∨載∨月出也。故ニ云∨尓也云々。〔謙堂文庫蔵六二左A〕
とあって、標記語「推移」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
烏兎(ウト)押移(ヲシウツリテ)遙(ハルカニ)不ル∨遂(トゲ)‖面(メン)拝ヲ|之間(アヒタ)頗(スコブル)如シレ忘(ワスル)ヽカ二徃日(ワウジツ)之(ノ)昵近(チツキン)ヲ|隨(シタカツ)而(テ)御(ゴ)上洛(シヤウラク)之處(トコロ)不ルノレ預(アツカラ)二音(イン)信ニ一条(テウ)烏兎押移ルト云事深キ心得有宜ク外典ニ見ヘタリ。月ノ内ニ三眼(ゲン)六足ノ兎(ウサキ)有。日ノ内ニ三足ノ烏有。是ヲ烏兎(ウト)推移(ヲシウツ)ルト云也。月日ノ立ヲ加様ニ云也。押移ト云事月宮殿ニハ十五人ノ童子アリ。一日ヨリ十五日マデ白裝束ニテ月宮殿ニ入リ給フ也。押ト云事。大事也。彼(カノ)童子達ノ宮殿ヲ照(テラ)ス也。十六日ヨリ。黒(クロキ)裝束(シヤウゾク)ニテ入テ遊戯(ユゲ)スルナリ。〔下39オ二〜六〕
烏兎(うと)押移(おしうつ)り/烏兎押移。月日のたつを云也。外典(けてん)に日輪(にちりん)の内に三足(さんぞく)乃烏(からす)あり。月輪(くわちりん)の内に六足の兎(うさき)ありといえるによりて日月の事を烏兎といふなり。 〔97オ七・八〕
とあって、この標記語「押移」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御(ご)任國(にんこく)之(の)後(のち)。烏兎(うと)押移(おしうつ)り遙(はるか)に面拝(めんはい)を遂(と)げ不(ざ)る之(の)(あいだ)頗(すこぶる)往日(わうじつ)之(の)眤近(ぢつきん)を忘(わす)るるが如(ごと)し。随(したがつ)而(て)御(ご)上洛(じやうらく)之(の)處(ところ)音信(いんしん)に預(あづか)ら不(ず)候(さふら)ふ條(てう)密契(ミつけい)其(その)甲斐(かひ)無(な)く隔心(ぎやくしん)の至(いた)り憚(はゞかり)存(ぞん)ずと雖(ゐへども)試(こゝろミ)に推望(すいばう)に及(およ)ぶ。御(ご)氣色(けしき)如何(いかん)/御任國之後。烏兎押シ移リ遙ニ不ルレ遂ン二面拝ヲ一候間。頗如シレ忘ルヽガ二往日之眤近ヲ一随而御上洛之處不レ預ラ二音信ニ一候フ條。密契無ク二其甲斐一。隔心之至リ雖二憚リ存ズト一。試ミニ及ブ二推望ニ一御氣色如何シ。〔71オ六〕
御(ご)任國(にんこく)之(の)後(のち)。烏兎(うと)押移(おしうつり)遙(はるか)に不(ざる)レ遂(とげ)二面拝(めんはい)を一之(の)間(あひだ)頗(すこぶる)如(ごとし)レ忘(わする)るゝが二往日(わうじつ)之(の)眤近(ぢつきん)を一随(したがつ)而(て)御(ご)上洛(じやうらく)之(の)處(ところ)不(ず)レ預(あつから)二音信(いんしん)に一候(さふらふ)條(でう)密契(ミつけい)無(なく)二其(その)甲斐(かひ)一隔心(ぎやくしん)之(の)至(いたり)雖(いへども)二憚(はゞかり)存(そんず)と一試(こゝろミ)に及(をよぶ)二推望(すゐばう)に一御(ご)氣色(けしき)如何(いかん)。〔129ウ三〕
‡Voxivtcuri,u.ヲシウツリ,ル(推し移り,る)→Vto.〔本邦727r〕
おし-うつ・るル・レ・ラ・リ・レ〔自動、四〕【推移】移りかはる。過ぎ行く。(世事に、年月に)榮花物語、四、見果てぬ夢「淺ましう、よこがましかりつる御有樣の、おしうつりたりし程を」〔293-1〕
Vto.ウト(烏兎) すなわち,Fi,tcuqi.(日,月)日と月の意であるが,それだけ単独には用いられない.例,Vto voxivtcuri mo<xi soro.(烏兎推し移り申候)Fisaxu< fedatatta(久しう隔たった)などというのに同じ.長らくあなたの便りを聞いていません.または,お互いに長い間往き来しておりません.〔本邦736r〕
御任國之後烏菟押移遙不遂面拝之間頗如忘徃日之昵近〔至徳三年本〕
御任國之後烏兎押移遙不遂面拝候間頗如忘往日之昵近〔宝徳三年本〕
御任國之後烏菟押移遙不遂面拝之間頗如忘徃日之昵近〔建部傳内本〕
御任國ノ之後烏兎(ウド)押移(ヲシウツテ)遙ニ不ルレ遂二面拝ヲ一候間頗ル如シレ忘ルヽカ二往日ノ之昵(ジツ)近ヲ一〔山田俊雄藏本〕
御任(ニン)國之後烏兎(ウト)推移(オシウツヽテ)遙ニ不∨遂ゲ‖面拝ヲ|之條頗(スコフル)如レ忘ルガ二往日ノ昵近(ヂツキン)ヲ一〔経覺筆本〕
御任(ニン)国ノ之後。烏兎(ウト)。押移(ヲシウツテ)遙(ハルカ)ニ不ル∨遂ケ‖面拝ヲ|間頗(スコフ)ル如シレ忘(ワスルヽカ)ワスレタルカ二往日之(ノ)昵近(チツキン)ヲ一。〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「任国」と表記し、訓みは山田俊雄藏本・経覺筆本に「ニン(コク)」と記載する。
任国(ニンコク・マカス/ジン・タヘタリ、クニ)[去・入] 。〔態藝門91四〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「任国」の語は未収載にあって、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
729御任国之後烏兎推移不∨遂‖面拝|候間 烏ハ日也。兎ハ月也。尭ノ時卞ノ日並出命シテ∨廻ヲ使ルニ∨射∨之。即射落ニ九ノ烏也。又昔シ釈迦菩薩ノ行ノ砌、鳥類草木ニ至マテ仰心アリ。中ニモ猿ハ奉ル‖菓子ヲ|。狐ハ献‖川魚ヲ|。兎ハ无調法ニシテ不∨能ハ∨献ルコト‖一物ヲ|。其時集‖草木ヲ|焼∨身ヲ欲∨成‖佛ノ食ニ|。帝尺ハ感シテ∨之ヲ、天ニ上テ被∨載∨月出也。故ニ云∨尓也云々。〔謙堂文庫蔵六二左A〕
とあって、標記語「任国」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
御(ゴ)任國(ニンゴク)之後(ノチ)トハ。国ヲ進退(シンタイ)スル事ナリ。〔下39オ二〕
御(ご)任国(にんこく)之(の)後(のち)ハ/御任國之後ハ。任国とハ国主の職に任せられたるなり。住国(ぢうこく)之後とある本ハあやまりなり。 〔97オ六〕
とあって、この標記語「任国」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
御(ご)任國(にんこく)之(の)後(のち)。烏兎(うと)押移(おしうつ)り遙(はるか)に面拝(めんはい)を遂(と)げ不(ざ)る之(の)(あいだ)頗(すこぶる)往日(わうじつ)之(の)眤近(ぢつきん)を忘(わす)るるが如(ごと)し。随(したがつ)而(て)御(ご)上洛(じやうらく)之(の)處(ところ)音信(いんしん)に預(あづか)ら不(ず)候(さふら)ふ條(てう)密契(ミつけい)其(その)甲斐(かひ)無(な)く隔心(ぎやくしん)の至(いた)り憚(はゞかり)存(ぞん)ずと雖(ゐへども)試(こゝろミ)に推望(すいばう)に及(およ)ぶ。御(ご)氣色(けしき)如何(いかん)/御任國之後。烏兎押シ移リ遙ニ不ルレ遂ン二面拝ヲ一候間。頗如シレ忘ルヽガ二往日之眤近ヲ一随而御上洛之處不レ預ラ二音信ニ一候フ條。密契無ク二其甲斐一。隔心之至リ雖二憚リ存ズト一。試ミニ及ブ二推望ニ一御氣色如何シ。▲任國とハ国(くに)の守(かミ)に任(にん)ぜられ其國(そのくに)に下(くだ)りて国政(こくせい)を聴(き)くをいふ。〔71オ六・71ウ二〕
御(ご)任國(にんこく)之(の)後(のち)。烏兎(うと)押移(おしうつり)遙(はるか)に不(ざる)レ遂(とげ)二面拝(めんはい)を一之(の)間(あひだ)頗(すこぶる)如(ごとし)レ忘(わする)るゝが二往日(わうじつ)之(の)眤近(ぢつきん)を一随(したがつ)而(て)御(ご)上洛(じやうらく)之(の)處(ところ)不(ず)レ預(あつから)二音信(いんしん)に一候(さふらふ)條(でう)密契(ミつけい)無(なく)二其(その)甲斐(かひ)一隔心(ぎやくしん)之(の)至(いたり)雖(いへども)二憚(はゞかり)存(そんず)と一試(こゝろミ)に及(をよぶ)二推望(すゐばう)に一御(ご)氣色(けしき)如何(いかん)。▲任國とハ国(くに)の守(かミ)に任(にん)ぜられ其國(そのくに)に下(くだ)りて国政(こくせい)を聴(き)くをいふ。〔129ウ三・130オ二〕
にん-こく〔名〕【任国】國司の任。又、國司ノ任ぜられたる國。受領(ジユリヤウ)。源平盛衰記、廿七、資永中風死去事「軍兵を催すといへども、資永任國の越後は、木曾押領の閨A不レ及二國務一」〔1504-3〕
主税頭(チカラノカミ) 。〔元亀二年本69六〕〔静嘉堂本82六〕〔天正十七年本上41オ七〕
進上 宮内殿御返事〔至徳三年本〕
進上 宮内殿御返事〔宝徳三年本〕
進上 宮内少輔殿〔建部傳内本〕
進上 宮内少輔殿〔山田俊雄藏本〕
進上 宮内殿御返事〔経覺筆本〕
進上 宮内殿御返事〔文明四年本〕
と見え、建部傳内本・山田俊雄藏本は、「宮内少輔殿」とし、至徳三年本・宝徳三年本・経覺筆本・文明四年本は、「宮内殿御返事」と記載する。古写本には、「主税」の語は見えていない。
主税頭(チカラノカミ) 倉部(サウホウ)郎中也。〔官位門43五〕
主税寮(チカラノレウ/シユせイ)[○・去・上] 唐名倉部又兌田頭助允属同二主計ニ一。〔官位門161三〕
主税頭(チカラノカミ) 倉部郎中。〔弘・人倫門49四〕〔永・官名門51三〕〔堯・官名門46七〕〔両・官名門55二〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「主税頭{寮}」の語を収載し、これを下記真字本は、「主税介」として収載する。
728謹上主税介殿〔謙堂文庫蔵六二左@〕※天理図書館藏『庭訓往來註』は、「謹上宮内―主税介殿イ少輔殿」とし、冠頭注記に「宮―――相當従五位下、唐名工部員外郎」と記載する。
とあって、標記語「主税」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
進上 宮内少輔(ホ)殿。〔下39オ一〕
進上 宮内(くない)少輔(せうゆふ)殿(との)御返事(おんへんじ)/進上 宮内少輔(ホ)殿御返事。 〔96オ五〕
とあって、この標記語「主税」の語は未収載にし、「宮内」の語を以て記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
進上(しんじやう) 主税(ちから)の助(すけ)殿(どの)/進上。主税ノ助。殿。〔72オ五〕
進上(しんじやう) 主税(ちからの)助(すけ)殿(どの)。〔129ウ二〕
礒部某〔至徳三年本〕
礒部〔宝徳三年本〕
礒部某〔建部傳内本〕
礒部(イソベ)某〔山田俊雄藏本〕
礒部(イソベ)某〔経覺筆本〕
礒部某〔文明四年本〕
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「礒部」と表記し、訓みは山田俊雄藏本・経覺筆本に「イソベ」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「礒部」の語は未収載にあって、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
727主計頭礒部 彼氏ハ於‖内裡ニ|奏‖-者スル薬師ヲ|也。〔謙堂文庫蔵六二右H〕
※天理図書館藏『庭訓往來註』は、「礒部(イソベ)―主計頭イ某 彼氏ハ於‖内裡|奏‖-者薬師|也」と記載。
とあって、標記語「礒部」の語を収載し、この語における語注記は「彼の氏は、内裡に於ける薬師の奏者するなり」と記載する。
礒部(イソベ)某(ソレガシ)。〔下38ウ八〕
礒部(いそべ)某(それかし)/礒部某。 〔97オ四〕
とあって、この標記語「礒部」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
十一月(しふいちぐハつ)の日(ひ)。主計(かずへ)乃頭(かミ)/十一月ノ日 主計ノ頭。〔71オ四〕
十一月(しふいちぐハつ)の日(ひ)。主計(かずへ)の頭(かミ)。〔129ウ一〕
禁忌(バウ) 。〔元亀二年本282十〕※「忘」の字体と「忌」の字体相似による訓み違え。
禁忌(キ) 。〔静嘉堂本323七〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作身苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲身閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛身長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎身傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「禁忌」と表記し、訓みは山田俊雄藏本・文明四年本に「キン(キ)」と記載する。
禁忌 雜部/キンキ。〔黒川本・畳字門下51ウ八〕
禁制 〃色シキ。〃断。〃遏。〃裏。〃?井/内裏也。〃苑ヱン/帝也。〃忌。〃正。〃固。〔卷第八・畳字門520一〕
禁忌(キンキ/イマシメ、イム)[平去・去] 。〔態藝門827八〕
禁忌(キンキ) 。〔弘・言語進退門222八〕
禁忌(キンギ) ―獄(ゴク)。―戒(カイ)。―足(ソク)/―断(ダン)。―制(ぜイ)。〔永・言語門185二〕
禁忌(キンキ) ―獄。―戒。―足/―断。―制。〔堯・言語門174五〕
禁制(キンぜイ) ―断(ダン)。―物(モツ)。―札(サツ)。―獄(ゴク)。―戒(カイ)/―忌(キ)。―足(ソク)。―好物(カウモツ)。―止(ジ)。〔言辞門189三・天理図書館蔵下27ウ三〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「禁忌」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
725塩噌飲水浅味ノ熱湯寒氣ノ薄衣炎天ノ重服皆以禁忌之亊候有テ‖御意得|可∨被‖養性|也。恐々謹言〔謙堂文庫蔵六二右F〕
とあって、標記語「禁忌」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)寒氣(カンキ)ノ薄衣(ハクヱ)炎天(ヱンテン)ノ重服(ヂウブク)皆(ミナ)以テ禁忌(キンキ)ノ事ニ候有テ二御意得(エ)一可キレ被(ラル)二養性(ヤウジヤウ)一也淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)ハ。漂(シホ)モナク淡(アワシ)キ物ヲ食(クウ)テ熱(アツ)キ湯ヲ飲ム事是毒(トク)ナリ。残(ノコ)リハ。大乎(カイ)文章ノ字面ニテ聞(キコ)ユルナリ。〔下38ウ五〜七〕
皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候ふ也/皆以禁忌之亊候也禁も忌も皆いむと訓す。房内の過度といふより炎天の重服といふを十八ケ条の事皆身心をつからかし血氣(けつき)をやふる不養生(ふやうしやう)の事ゆへ第一乃禁物なり。 〔96ウ八〜97オ一〕
とあって、この標記語「禁忌」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也。〔71ウ二〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)。〔128オ六〕
Qinqi.キンキ(禁忌) 禁じられている物,または,ある人が自分の胃や健康に害があるために避けている物.〔邦訳499r〕
きん-き〔名〕【禁忌】忌みて、禁むること。醫家に、病人の食物などに云ふ。禁物。漢書、藝文志、「牽二于禁忌一泥二于小衝一」(月日、方位などに)源平盛衰記、三、諒闇事「天子の、親に別れ奉ぬれば、四海の内、一天下、皆禁忌なれば、諒闇と云也」〔483-3〕
重服(ブク) 。〔元亀二年本65六〕
重(チウ)服 。〔静嘉堂本76六〕
重服(チウフク) 。〔天正十七年本上38ウ二〕〔西來寺本〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作身苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲身閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛身長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎身傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「重服」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「デウ(フク)」、文明四年本に「チウフク」と記載する。
重服 チウフク。〔黒川本・畳字門中上56ウ四〕
重寳 〃職。〃物。〃書。〃屋。〃弟。〃涯。〃城。〃宵。〃譯。〃溟。〃冷ニケム。〃山。〃疊。〃林子。〃罪。〃門。〃軒。〃事。〃陽。〃雲。〃霧。〃蓆。〃江。〃坏。〃色。〃舌病也。〃幄。〃夏。〃途。〃道。〃路。〃叙。〃輪。〃服。〔卷第二・言語進退門469五〕
重服(チヨウフク・ヲモシ/カサナル、キル)[平去・入] 。〔態藝門172四〕
重服(ヂウブク) 。〔言語門52七・天理図書館蔵上26ウ七〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「重服」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
725塩噌飲水浅味ノ熱湯寒氣ノ薄衣炎天ノ重服皆以禁忌之亊候有テ‖御意得|可∨被‖養性|也。恐々謹言〔謙堂文庫蔵六二右F〕
とあって、標記語「重服」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)寒氣(カンキ)ノ薄衣(ハクヱ)炎天(ヱンテン)ノ重服(ヂウブク)皆(ミナ)以テ禁忌(キンキ)ノ事ニ候有テ二御意得(エ)一可キレ被(ラル)二養性(ヤウジヤウ)一也淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)ハ。漂(シホ)モナク淡(アワシ)キ物ヲ食(クウ)テ熱(アツ)キ湯ヲ飲ム事是毒(トク)ナリ。残(ノコ)リハ。大乎(カイ)文章ノ字面ニテ聞(キコ)ユルナリ。〔下38ウ五〜七〕
炎天(ゑんてん)の重服(ぢうふく)/炎天ノ重服夏の暑さを忍ひて厚着(あつぎ)するをいふなり。 〔96ウ七〕
とあって、この標記語「重服」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲炎天ノ重服ハ暑気(あつさ)を忍(しの)びて重着(かさねぎ)するなり。〔71ウ一、71ウ八〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲炎天ノ重服ハ暑気(あつさ)を忍(しの)びて重着(かさねぎ)するなり。〔128オ四、129オ三〕
Giu<bucu.ヂュウフク(重服) Casane qiru.(重ね服る)着物の上に着物を重ねて着ること,または,裏をつけた綿入れの着物.→次条.〔邦訳320l〕
†Giu<bucu.ヂュウフク(重服) Casanuru qirumono.(重ぬる服る物)寒さのために,着物の上にさらに着物を重ねて着ること.〔邦訳320l〕
Giu<bucu.ヂュウフク(重服) 父,あるいは,親戚が死んで間もない頃,〔喪に服する〕礼法により,または,物忌みによって外出しないこと.〔邦訳320l〕
ぢュう-ぶく〔名〕【重服】(一)喪に輕重の二あり、重服は其一にして、父母の忌服(きぶく)を云ひ、これに對して、其餘の服を輕服(きやうぶく)と云ふ。名目抄(藤原實X)「重服(ヂウフク)、父母、夫、主君」天武紀、下、七年十月「重服(オヤノウレヘ)」軍防令義解「凡衞士、云云、其上番年、雖有二重服一」(謂二父母喪一也)不レ在二下限一」レ(二)忌服中に、又、更に、忌服のかかること。保元物語、三、謀叛人各遠流事「兄弟四人、各重服の裝束にて」〔1292-2〕
炎天(エンテン) 。〔元亀二年本335九〕
炎天(ヱンテン) 。〔静嘉堂本401二〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作身苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲身閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛身長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎身傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「炎天」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「ヱン(テン)」、経覺筆本に「エンテン」、文明四年本に「エン(テン)」と記載する。
弊天(ヱンテン/ホノヲ、ソラ)[去・平] 。〔態藝門707六〕
炎天(エンテン) 夏。〔弘・時節門193一〕
炎天(エンテン) ―上。―旱。〔永・言語門161一〕
炎天(ヱンテン) ―旱。―上。〔堯・天地門148四〕 炎天 ―上。―旱。〔堯・言語門150二〕
炎天(エンテン) 夏天。〔乾坤門161六・天理図書館蔵下13ウ六〕
このように、上記当代の古辞書においては、易林本『節用集』に標記語「炎天」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
725塩噌飲水浅味ノ熱湯寒氣ノ薄衣炎天ノ重服皆以禁忌之亊候有テ‖御意得|可∨被‖養性|也。恐々謹言〔謙堂文庫蔵六二右F〕
とあって、標記語「炎天」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)寒氣(カンキ)ノ薄衣(ハクヱ)炎天(ヱンテン)ノ重服(ヂウブク)皆(ミナ)以テ禁忌(キンキ)ノ事ニ候有テ二御意得(エ)一可キレ被(ラル)二養性(ヤウジヤウ)一也淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)ハ。漂(シホ)モナク淡(アワシ)キ物ヲ食(クウ)テ熱(アツ)キ湯ヲ飲ム事是毒(トク)ナリ。残(ノコ)リハ。大乎(カイ)文章ノ字面ニテ聞(キコ)ユルナリ。〔下38ウ五〜七〕
炎天(ゑんてん)の重服(ぢうふく)/炎天ノ重服夏の暑さを忍ひて厚着(あつぎ)するをいふなり。 〔96ウ七〕
とあって、この標記語「炎天」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(ゑんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲炎天ノ重服ハ暑気(あつさ)を忍(しの)びて重着(かさねぎ)するなり。〔71ウ一、71ウ八〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲炎天ノ重服ハ暑気(あつさ)を忍(しの)びて重着(かさねぎ)するなり。〔128オ四、129オ三〕
Yenten.エンテン(炎天) Atcuqi sora.(炎き天) 暑くて焼けつくような天候.¶Yentenuo xinogu.(炎天を凌ぐ)非常な暑さをきりぬける.〔邦訳820l〕
えん-てん〔名〕【炎天】暑中の、もゆるが如き天(そら)。孔融詩「巖巖鍾山首、赫赫炎天路」小町踊、夏、雲嶺「富士山や、炎天に見る、雲の峰」〔280-4〕
薄衣(ハクエ) 。〔元亀二年本26六〕
薄衣(ハクヱ) 。〔静嘉堂本24八〕〔天正十七年本上13ウ三〕〔西來寺本〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作身苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲身閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛身長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎身傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「薄衣」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「ハクヱ」、経覺筆本に「ハクイ」、文明四年本に「(ハク)ヱ」と記載する。
薄衣(ハクヱ・キル/ウスシ、イ・コロモ)[入・去] 。〔態藝門65三〕
このように、上記当代の古辞書においては、広本『節用集』『運歩色葉集』に標記語「薄衣」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
725塩噌飲水浅味ノ熱湯寒氣ノ薄衣炎天ノ重服皆以禁忌之亊候有テ‖御意得|可∨被‖養性|也。恐々謹言〔謙堂文庫蔵六二右F〕
とあって、標記語「薄衣」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)寒氣(カンキ)ノ薄衣(ハクヱ)炎天(ヱンテン)ノ重服(ヂウブク)皆(ミナ)以テ禁忌(キンキ)ノ事ニ候有テ二御意得(エ)一可キレ被(ラル)二養性(ヤウジヤウ)一也淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)ハ。漂(シホ)モナク淡(アワシ)キ物ヲ食(クウ)テ熱(アツ)キ湯ヲ飲ム事是毒(トク)ナリ。残(ノコ)リハ。大乎(カイ)文章ノ字面ニテ聞(キコ)ユルナリ。〔下38ウ五〜七〕
寒氣(かんき)の薄衣(はくゑ)/寒氣ノ薄衣冬の寒さを忍ひて薄着するをいふなり。 〔96ウ六・七〕
とあって、この標記語「薄衣」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲寒気ノ薄衣ハ寒気(さむき)を堪(こら)へて薄着(うすぎ)する也。〔71ウ一、71ウ八〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲寒気ノ薄衣ハ寒気(さむき)を堪(こら)へて薄着(うすぎ)する也。〔128オ五、129オ二〕
Facuye.ハクエ(薄衣) Vsuguinu(薄衣)に同じ.絹の薄い織物.〔邦訳195r〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作身苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲身閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛身長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎身傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「寒氣」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「(カン)キ」、文明四年本に「カンキ」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「寒氣」の語は未収載にあって、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
725塩噌飲水浅味ノ熱湯寒氣ノ薄衣炎天ノ重服皆以禁忌之亊候有テ‖御意得|可∨被‖養性|也。恐々謹言〔謙堂文庫蔵六二右F〕
とあって、標記語「寒氣」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)寒氣(カンキ)ノ薄衣(ハクヱ)炎天(ヱンテン)ノ重服(ヂウブク)皆(ミナ)以テ禁忌(キンキ)ノ事ニ候有テ二御意得(エ)一可キレ被(ラル)二養性(ヤウジヤウ)一也淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)ハ。漂(シホ)モナク淡(アワシ)キ物ヲ食(クウ)テ熱(アツ)キ湯ヲ飲ム事是毒(トク)ナリ。残(ノコ)リハ。大乎(カイ)文章ノ字面ニテ聞(キコ)ユルナリ。〔下38ウ五〜七〕
寒氣(かんき)の薄衣(はくゑ)/寒氣ノ薄衣冬の寒さを忍ひて薄着するをいふなり。 〔96ウ六・七〕
とあって、この標記語「寒氣」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲寒気ノ薄衣ハ寒気(さむき)を堪(こら)へて薄着(うすぎ)する也。〔71ウ一、71ウ八〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲寒気ノ薄衣ハ寒気(さむき)を堪(こら)へて薄着(うすぎ)する也。〔128オ五、129オ二〕
Foyacu.カンキ(寒氣) .〔邦訳r〕
かん-き〔名〕【寒氣】寒き程(ほど)。さむさ。禮記、月令篇「季春行冬令則寒氣時發、草木皆肅、國有二大恐一」太平記、十二、~泉苑事「寒氣膚を侵し、五體に水を灑が如し」〔423-3〕
熱湯(タウ) 。〔元亀二年本163八〕〔静嘉堂本181一〕
養湯(タウ) 。〔天正十七年本中21ウ一〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作身苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲身閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛身長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎身傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「熱湯」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「ネツトウ」、文明四年本に「ネツタウ/あつゆ」と記載する。
熱湯(ネツタウ) 。〔弘・言語進退門135三〕
このように、上記当代の古辞書においては、『運歩色葉集』、弘治二年本『節用集』に標記語「熱湯」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
725塩噌飲水浅味ノ熱湯寒氣ノ薄衣炎天ノ重服皆以禁忌之亊候有テ‖御意得|可∨被‖養性|也。恐々謹言〔謙堂文庫蔵六二右F〕
とあって、標記語「熱湯」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)寒氣(カンキ)ノ薄衣(ハクヱ)炎天(ヱンテン)ノ重服(ヂウブク)皆(ミナ)以テ禁忌(キンキ)ノ事ニ候有テ二御意得(エ)一可キレ被(ラル)二養性(ヤウジヤウ)一也淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)ハ。漂(シホ)モナク淡(アワシ)キ物ヲ食(クウ)テ熱(アツ)キ湯ヲ飲ム事是毒(トク)ナリ。残(ノコ)リハ。大乎(カイ)文章ノ字面ニテ聞(キコ)ユルナリ。〔下38ウ五〜七〕
淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)/浅味ノ熱湯味あわき物を食してあつき白湯(さゆ)を飲を云也。 〔96ウ五・六〕
とあって、この標記語「熱湯」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲淺味ノ熱湯たぎりたる素湯(さゆ)などを多(おほ)くのむ也。〔71ウ一、71ウ七・八〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲淺味ノ熱湯ハたぎりたる素湯(さゆ)などを多(おほ)くのむ也。〔128オ四、129オ二〕
Atcuyu.アツユ(熱湯) すなわち,Atcuiyu.(熱い湯)熱湯.〔邦訳37l〕
Netto<.ネツタウ(熱湯) 極度に熱い湯.または,沸き立っている風呂.〔邦訳460l〕
ねッ-たう〔名〕【熱湯】にえゆ。沸きたちたる湯。禮記、月令篇「季夏之月、云云、土潤溽暑、大雨時行、燒薙行レ水、利二以殺一レ草、如レ以二熱湯一」太平記、廿六、正行參二吉野一事「將軍左兵衞督の周章、唯熱湯にて手を濯ふが如し」〔1524-3〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作身苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲身閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛身長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎身傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「淺味」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「セン(ミ)」、経覺筆本・文明四年本に「センミ」と記載する。
浅味(せンミ/アサシ、ビ・アヂワイ)[平去・去] 。〔態藝門1105一〕
このように、上記当代の古辞書においては、広本『節用集』に標記語「浅味」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
725塩噌飲水浅味ノ熱湯寒氣ノ薄衣炎天ノ重服皆以禁忌之亊候有テ‖御意得|可∨被‖養性|也。恐々謹言〔謙堂文庫蔵六二右F〕
とあって、標記語「淺味」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)寒氣(カンキ)ノ薄衣(ハクヱ)炎天(ヱンテン)ノ重服(ヂウブク)皆(ミナ)以テ禁忌(キンキ)ノ事ニ候有テ二御意得(エ)一可キレ被(ラル)二養性(ヤウジヤウ)一也淺味(せンミ)ノ熱湯(ネツタウ)ハ。漂(シホ)モナク淡(アワシ)キ物ヲ食(クウ)テ熱(アツ)キ湯ヲ飲ム事是毒(トク)ナリ。残(ノコ)リハ。大乎(カイ)文章ノ字面ニテ聞(キコ)ユルナリ。〔下38ウ五〜七〕
淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)/浅味ノ熱湯味あわき物を食してあつき白湯(さゆ)を飲を云也。 〔96ウ五・六〕
とあって、この標記語「淺味」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲淺味ノ熱湯たぎりたる素湯(さゆ)などを多(おほ)くのむ也。〔71ウ一、71ウ七・八〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲淺味ノ熱湯ハたぎりたる素湯(さゆ)などを多(おほ)くのむ也。〔128オ四、129オ二〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作身苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲身閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛身長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎身傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、建部傳内本は「身傷」、至徳三年本・宝徳三年本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「飲水」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「インスイ」、経覺筆本・文明四年本に「ヲンスイ」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「飲水」の語は未収載にあって、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
725塩噌飲水浅味ノ熱湯寒氣ノ薄衣炎天ノ重服皆以禁忌之亊候有テ‖御意得|可∨被‖養性|也。恐々謹言〔謙堂文庫蔵六二右F〕
とあって、標記語「飲水」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
闕乏(ケツホク)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食(ヤシヨク)五更(ゴカウ)ノ空腹(クウフク)漂増(エンソウ)ノ飲水(インスイ)闕乏(ケツボク)ノ失食トハ。物ヲクウツクハデ有ツ蟲(ムシ)ヲ飢(ウヤ)シタリナンドスル事ナリ。〔下38ウ三〜五〕
塩増(えんそう)の飲水(いんすい)/塩増ノ飲水塩からき物を食して後水を呑をいふ也。〔96ウ五〕
とあって、この標記語「飲水」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲闕乏ノ失食ハ食物(しよくもつ)闕乏(かけとほし)くして食ハさるをいふ。〔71オ八、71ウ六・七〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲闕乏ノ失食ハ食物(しよくもつ)闕乏(かけとぼし)くして食(くら)ハざるをいふ。〔128オ三、128ウ六〜129オ一〕
Insui.インスイ(飲水) Nomu mizzu.(飲む水)飲料水.〔邦訳336r〕
Vonsui.ヲンスイ(飲水) むしろ,Vonzui(飲水)と言う方がまさる.Mizzuo nomu.(水を飲む)水を飲むこと.文書語.〔邦訳715l〕
いん-すゐ〔名〕【飲水】のみみづ。飲料水。謡曲、大原御幸「海に臨めども、潮なれば飲水せず」〔212五〕
漂噌(ソ) 。〔元亀二年本337一〕
塩噌(ソ) 。〔静嘉堂本371六〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作身苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲身閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛身長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎身傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明十四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本は「塩○」、宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明十四年本には、「塩増」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「ヱン(ゾウ)」、経覺筆本に「エン(ゾウ)」、文明十四年本に「エンゾウ」と記載する。この文明十四年本が「エンソ」でなく「エンゾウ」と表記するところに訓みの混用が見て取れよう。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「塩増」の語は未収載にあって、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
725塩噌飲水浅味ノ熱湯寒氣ノ薄衣炎天ノ重服皆以禁忌之亊候有テ‖御意得|可∨被‖養性|也。恐々謹言〔謙堂文庫蔵六二右F〕
※国会図書館藏『左貫註』は、「塩増(エンソウ)」、天理図書館藏『庭訓往來註』は「漂増(ヱンソウ)」と表記する。
とあって、標記語「塩噌」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
闕乏(ケツホク)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食(ヤシヨク)五更(ゴカウ)ノ空腹(クウフク)漂増(エンソウ)ノ飲水(インスイ)闕乏(ケツボク)ノ失食トハ。物ヲクウツクハデ有ツ蟲(ムシ)ヲ飢(ウヤ)シタリナンドスル事ナリ。〔下38ウ三〜五〕
塩増(えんそう)の飲水(いんすい)/塩増ノ飲水塩からき物を食して後水を呑をいふ也。〔96ウ五〕
とあって、この標記語「塩増」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲塩増ノ飲水ハ塩気(しほけ)つよき飲水(のミもの)を過(すご)す也。〔71オ八〜ウ一、71ウ七〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲塩増ノ飲水ハ塩気(しほけ)つよき飲水(のミもの)を過(すご)す也。〔128オ四、128ウ六〜129オ一・二〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、建部傳内本は「身傷」、至徳三年本・宝徳三年本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「空腹」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「クウブク」、経覺筆本に「(クウ)フク」、文明四年本に「クウフク」と記載する。
空腹(クウフク/ムナシ、ミチ・ハラ)[平・入] 。〔態藝門549八〜550一〕
このように、上記当代の古辞書においては、廣本『節用集』だけに標記語「空腹」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「空腹」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
闕乏(ケツホク)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食(ヤシヨク)五更(ゴカウ)ノ空腹(クウフク)漂増(エンソウ)ノ飲水(インスイ)闕乏(ケツボク)ノ失食トハ。物ヲクウツクハデ有ツ蟲(ムシ)ヲ飢(ウヤ)シタリナンドスル事ナリ。〔下38ウ三〜五〕
五更(ごかう)の空腹(くうふく)/五更ノ空腹五更ハ丑(うし)の時(とき)也。深更の夜食毒(とく)なればして夜ふけて飢(うへ)たるを忍(しの)ふも又毒なり。 〔96ウ二・三〕
とあって、この標記語「空腹」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲五更空腹五更ハ寅(とら)の時暁(あけ)七ッをいふ。其頃(そのころ)に腹(はら)の空(す)きたる也。〔71オ八、71ウ六・七〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲五更空腹五更ハ寅(とら)の時暁(あけ)七ッをいふ。其比(そのころ)に腹(はら)の空(す)きたる也。〔128オ四、129オ一〕
Cu'bucu.クウブク(空腹) Munaxij fara.(空しい腹)すなわち,Suqi fara.(空腹)からっぽの腹,すなわち,何も食べないでいること.〔邦訳159r〕
くう-ふく〔名〕【空腹】はらの、へること。食に飢ゑたること。すきはら。怨腹。白居易詩「卯時十分空腹杯」本草綱目、酒「一人飲酒、一人飽食、一人空腹」庭訓往來、十一月「五更空腹」〔514-1〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「五更」と表記し、訓みは文明四年本に「(ゴ)カウ」と記載する。
五更(ゴカウ) ―夜(ヤ)。〔乾坤門152七・天理図書館蔵下9オ七〕
このように、上記当代の古辞書においては、易林本『節用集』に標記語「五更」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「五更」の語を収載し、この語における語注記は、「『顔氏ガ家訓』に、或は問ふ、一夜、何の故ぞ、五更とす。更何の訓ずる所ぞや。答(て)曰く、漢魏より以来、甲夜・乙夜・丙夜・丁夜・戌夜を五更に為り曰ふ。更なり。{暦なり}、経るなり。『西都府』に曰く、夕より旦に至るなり。冬夏の鍠(かげ){鞁}、長短参差と雖も盈るに六を尽きざるを縮るに四に至らざるに、退きて五時の間に在り。故に五更と云ふ」と記載する。
闕乏(ケツホク)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食(ヤシヨク)五更(ゴカウ)ノ空腹(クウフク)漂増(エンソウ)ノ飲水(インスイ)闕乏(ケツボク)ノ失食トハ。物ヲクウツクハデ有ツ蟲(ムシ)ヲ飢(ウヤ)シタリナンドスル事ナリ。〔下38ウ三〜五〕
五更(ごかう)の空腹(くうふく)/五更ノ空腹五更ハ丑(うし)の時(とき)也。深更の夜食毒(とく)なればして夜ふけて飢(うへ)たるを忍(しの)ふも又毒なり。 〔96ウ二・三〕
とあって、この標記語「五更」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲五更空腹五更ハ寅(とら)の時暁(あけ)七ッをいふ。其頃(そのころ)に腹(はら)の空(す)きたる也。〔71オ八、71ウ六・七〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲五更空腹五更ハ寅(とら)の時暁(あけ)七ッをいふ。其比(そのころ)に腹(はら)の空(す)きたる也。〔128オ四、129オ一〕
Goco<.ゴカウ(五更) 暁または夜明けの頃,時.¶Goco<no ten.(五更の天) 同上.〔邦訳304r〕
ご-かう〔名〕【五更】〔かう(更)を見よ〕午前四時より六時までの閨Bとらのとき。五夜。戊夜。韓愈詩「鶏三號更五點」太平記、七、先帝船上臨幸事「時打つ鼓の聲を聞けば、夜はまだ、五更の初なり」浄瑠璃物語(室町時代)御座うつり「五更の天も過ぎゆけば、人目や夢をさますらむ」〔654-1〕
夜食(シヨク) 。〔元亀二年本201三〕〔静嘉堂本227四〕〔天正十七年本中43ウ四〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「夜食」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、『運歩色葉集』にだけ標記語「夜食」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「夜食」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
闕乏(ケツホク)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食(ヤシヨク)五更(ゴカウ)ノ空腹(クウフク)漂増(エンソウ)ノ飲水(インスイ)闕乏(ケツボク)ノ失食トハ。物ヲクウツクハデ有ツ蟲(ムシ)ヲ飢(ウヤ)シタリナンドスル事ナリ。〔下38ウ三〜五〕
深更(しんかう)の夜食(やしよく)/深更ノ夜食夜ふけて食事するをいふなり。 〔96ウ三・四〕
とあって、この標記語「夜食」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲深更夜食ハ夜更(よふけ)て食事(しよくし)する也。〔71オ八、71ウ七〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲深更ノ夜食ハ夜更(よふけ)て食事(しよくし)する也。〔128オ三・四、129オ一〕
Yaxocu.ヤショク(夜食) Yoru xocu suru.(夜食する)夜,食事をすること.〔邦訳814l〕
や-しょく〔名〕【夜食】(一){昔、一日二食なりし時、夜に入りて別に設くる食事。心中重井筒(寛永、近松作)上「道なら些と送って、それ言ひ立に、夜食喰ふといふ事か」(二)今は、夜の食事。夕飯。ばんめし。晩餐。〔2036-4〕
深更(ガウ) 。〔元亀二年本306四〕
深更(カウ) 。〔静嘉堂本356七〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「深更」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「シンコウ」、経覺筆本・文明四年本に「シンカウ」と記載する。
深更 同(天文部)。〔黒川本・畳字門下76ウ八〕
深夜 〃厚。〃妙。〃遠。〃重。〃更。〃漏。〃草。〃山。〃浅。〃林。〃誡カイ。〃谷。〔卷第九・畳字門196六〕
深更(シンカウ) 。〔時節門148三〕
このように、上記当代の古辞書においては、『運歩色葉集』・饅頭屋本『節用集』に標記語「深更」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「深更」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
闕乏(ケツホク)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食(ヤシヨク)五更(ゴカウ)ノ空腹(クウフク)漂増(エンソウ)ノ飲水(インスイ)闕乏(ケツボク)ノ失食トハ。物ヲクウツクハデ有ツ蟲(ムシ)ヲ飢(ウヤ)シタリナンドスル事ナリ。〔下38ウ三〜五〕
深更(しんかう)の夜食(やしよく)/深更ノ夜食夜ふけて食事するをいふなり。 〔96ウ三・四〕
とあって、この標記語「深更」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲深更ノ夜食ハ夜更(よふけ)て食事(しよくし)する也。〔71オ八、71ウ七〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲深更ノ夜食ハ夜更(よふけ)て食事(しよくし)する也。〔128オ三・四、129オ一〕
Xioco<.シンガウ(深更) すなわち,Yono fuquru koto.(夜の更くること)深夜.例,Xinco<ni voyobu.(深更に及ぶ)深夜になる.文書語.〔邦訳769l〕
しん-かう〔名〕【深更】夜の、深(ふ)けたること。よふけ。(更(カウ)の條を見よ)曹伯啓詩「樓辨二深更一」源平盛衰記、三十九、重衡酒宴事「夜は、深更になりぬ、人は鳴を鎭たりければ」〔937-1〕
失食(ジキ) 。〔元亀二年本310六〕
失食(シツジキ) 。〔静嘉堂本363一〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「失食」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「シチ(シヨク・シキ)」、経覺筆本に「シツシヨク」、文明四年本に「シチシキ」と記載する。
失食(シチジキ/ウシナウ、クラウ)[入・入] 。〔態藝門962八〕
失食(ジキ) 。〔弘・言語進退門245七〕
失墜(シツツイ) ―脚。―錯(シヤク)。―念/―食(ジキ)。―礼。〔永・言語門210一〕
失墜(シツツイ) ―脚。―錯。―念/―食。―礼。〔堯・言語門194二〕
失墜(シツツイ) ―却(キヤク)。―念(ネン)。〔言辞門216六・天理図書館蔵下41オ六〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「失食」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。但し、経覺筆本及び下記注釈本の訓み「シツシヨク」は、古辞書に見えていない。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「失食」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
闕乏(ケツホク)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食(ヤシヨク)五更(ゴカウ)ノ空腹(クウフク)漂増(エンソウ)ノ飲水(インスイ)闕乏(ケツボク)ノ失食トハ。物ヲクウツクハデ有ツ蟲(ムシ)ヲ飢(ウヤ)シタリナンドスル事ナリ。〔下38ウ三〜五〕
闕乏(けつぼく)の失食(しつしよく)/闕乏ノ失食闕ハかける。乏ハとほしと訓す。物をくひつくはて腹をうゆすをいふなり。 〔96ウ二・三〕
とあって、この標記語「失食」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲闕乏ノ失食ハ食物(しよくもつ)闕乏(かけとほし)くして食ハさるをいふ。〔71オ八、71ウ六・七〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲闕乏ノ失食ハ食物(しよくもつ)闕乏(かけとぼし)くして食(くら)ハざるをいふ。〔128オ三、128ウ六〜129オ一〕
Xitjiqi.シッショク(失食) 欠食すること.¶Xitjiqiga ita.(失食がいた)ある人が食べる物を持たない.〔邦訳782r〕
闕乏(ケツボク) 。〔元亀二年本216六〕〔静嘉堂本246六〕
闕乏(ケツホク) 。〔天正十七年本中52ウ四〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「闕乏」と表記し、訓みは経覺筆本に「ケツホウ」、山田俊雄藏本・文明四年本に「ケツボク」と記載する。
闕乏(ケツボク/タカトノ・カク、トボシ)[入・入] 。〔態藝門596五〕
闕乏(ケツボク) 。〔弘・言語進退門175六〕
闕所(ケツシヨ) ―分(ブン)。―請(ジヤウ)。―乏(ボク)。―怠(タイ)。―減(ゲン)。―如(ジヨ)。―官(クハン)。〔永・言語門144一〕
闕所(ケツシヨ) ―分。―請。―乏。―怠/―減。―如。―官。〔堯・言語門133八〕
闕所(ケツシヨ) ―如(ジヨ)。―乏(ボク)。〔言辞門147二・天理図書館蔵下6ウ二〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「闕乏」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「闕乏」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
闕乏(ケツホク)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食(ヤシヨク)五更(ゴカウ)ノ空腹(クウフク)漂増(エンソウ)ノ飲水(インスイ)闕乏(ケツボク)ノ失食トハ。物ヲクウツクハデ有ツ蟲(ムシ)ヲ飢(ウヤ)シタリナンドスル事ナリ。〔下38ウ三〜五〕
闕乏(けつぼく)の失食(しつしよく)/闕乏ノ失食闕ハかける。乏ハとほしと訓す。物をくひつくはて腹をうゆすをいふなり。 〔96ウ二・三〕
とあって、この標記語「闕乏」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲闕乏ノ失食ハ食物(しよくもつ)闕乏(かけとほし)くして食ハさるをいふ。〔71オ八、71ウ六・七〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲闕乏ノ失食ハ食物(しよくもつ)闕乏(かけとぼし)くして食(くら)ハざるをいふ。〔128オ三、128ウ六〜129オ一〕
Qetbocu.ケツボク(闕乏) Caquru,toboxij.(闕くる,乏しい)必需品の欠乏.¶Fio<ro<ga qetbocu xita.(兵糧が闕乏した)食糧が不足した.〔邦訳490l〕
けつ-ばふ〔名〕【?乏・闕乏】物の、?(か)けて、乏しきこと。減りて、少なくなること。五代史、孔謙傳「晉興レ梁相二拒河上一十餘年、大小百餘戰、謙、調發供給、未二嘗?乏一」金史、高汝礪傳「章宗時用甚多、而得レ不二闕乏一者、蓋先朝有二以遺一レ之也」庭訓往來、十一月「愁歎勞傷、闕乏失食」〔617-2〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、建部傳内本は「労傷」、至徳三年本・宝徳三年本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「勞傷」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「(ラウ)せウ」、文明四年本に「ラウシヤウ」と記載する。
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「勞傷」の語は未収載にあって、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「勞傷」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
長途(チヤウド)窮屈(キウクツ)旅所(レヨシヨノ)疲勞(ヒラウ)閑居(カンキヨノ)朦氣(モウキ)愁歎(シユウタンノ)勞傷(ラウシヤウ)長途(チヤウト)ノ窮屈(キウクツ)トハ。遠(トヲ)ク旅(タビ)ヘ出デ家路(イヘヂ)ノ事夢(ユメ)ニモ見ザル程。行ノビテ辛苦スル也。漸々帰テクタビレタル事ナリ。〔下38ウ二・三〕
愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)/愁嘆勞傷愁ハうれい。嘆ハなけく。なけきかなしむ事の甚しくて心気をやふるをいふなり。 〔96ウ一・二〕
とあって、この標記語「勞傷」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁歎勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲愁歎ノ勞傷ハ深(ふか)く愁歎(うれひなけき)に沈(しづ)ミて心気(しんき)を傷(やぶ)るをいふ。〔71オ七、71ウ六〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲愁歎ノ勞傷ハ深(ふか)く愁歎(うれひなけき)に沈(しづ)ミて心気(しんき)を傷(やぶ)るをいふ。〔128オ三、128ウ六〕
Ro<xo<.ラゥシャウ(勞傷) 労働による衰弱と疲労.〔邦訳543l〕
らう-しャう〔名〕【勞傷】苦勞して、心を傷(いた)むること。庭訓往來、十一月「閑居朦氣、愁歎勞傷、闕乏失食、深更夜食」〔2107-5〕
愁歎(せウタン) 。〔元亀二年本310十〕
愁歎(タン) 。〔静嘉堂本363五〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、宝徳三年本・山田俊雄藏本に「愁嘆」、至徳三年本・建部傳内本・経覺筆本・文明四年本には、「愁歎」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「シユウタン」、経覺筆本に「(シウ)タン」、文明四年本に「シウタン」と記載する。
愁歎(シウタン/ウレイ、ナゲク)[平・平去] 。〔態藝門953七〕
愁歎(タン) 。〔弘・言語進退門246八〕
愁訴(シウソ) ―鬱。―歎。〔永・言語門210一〕〔堯・言語門194三〕
愁傷(シウシヤウ) ―歎(タン)。―訴(ソ)。―鬱(ウツ)。〔言辞門215二・天理図書館蔵下40ウ二〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「愁歎」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「愁歎」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
長途(チヤウド)窮屈(キウクツ)旅所(レヨシヨノ)疲勞(ヒラウ)閑居(カンキヨノ)朦氣(モウキ)愁歎(シユウタンノ)勞傷(ラウシヤウ)長途(チヤウト)ノ窮屈(キウクツ)トハ。遠(トヲ)ク旅(タビ)ヘ出デ家路(イヘヂ)ノ事夢(ユメ)ニモ見ザル程。行ノビテ辛苦スル也。漸々帰テクタビレタル事ナリ。〔下38ウ二・三〕
愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)/愁嘆勞傷愁ハうれい。嘆ハなけく。なけきかなしむ事の甚しくて心気をやふるをいふなり。 〔96ウ一・二〕
とあって、この標記語「愁嘆」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁嘆勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲愁歎ノ勞傷ハ深(ふか)く愁歎(うれひなけき)に沈(しづ)ミて心気(しんき)を傷(やぶ)るをいふ。〔71オ七、71ウ六〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲愁歎ノ勞傷ハ深(ふか)く愁歎(うれひなけき)に沈(しづ)ミて心気(しんき)を傷(やぶ)るをいふ。〔128オ三、128ウ六〕
Xu<tan.シウタン(愁歎) Vrei naguequ.(愁ひ歎く)悲しみ,あるいは,悲嘆.〔邦訳803l〕
しう-たん〔名〕【愁歎】うれへ、なげくこと。沈怜期詩「妾心君未レ察、愁歎劇二繁星一」源平盛衰記四十五、重衡向二南都一被レ斬事「五逆伴黨輕し、外を求むべからず、衆徒多別亡し、君臣大に愁歎す」〔876-2〕
濛氣(キ) 。〔元亀二年本348七〕〔静嘉堂本419四〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「朦氣」と表記し、訓みは経覺筆本・文明四年本に「モウキ」と記載する。
蒙機(モウキ/カウムル、ハタモノ)[平・平] 或作二朦氣(キ)ト一。〔態藝門1072七・八〕
蒙氣(キ) ―機。〔弘・言語進退門260八〕
蒙昧(モウマイ) 無智。―鬱(ウツ)。―機(キ)又気。――――(モウ/\)。〔永・言語門222二〕
蒙昧(モウマイ) 无智。―鬱。―機又気。――。〔堯・言語門208五〕
蒙求(モウギウ) 書ノ名。―昧(マイ)。―愚(グ)/―霧(ブ)。―鬱(ウツ)。―氣。〔言辞門231四・天理図書館蔵下48ウ四〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語ではないが、広本『節用集』の語注記中に「朦氣」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「朦氣」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
長途(チヤウド)窮屈(キウクツ)旅所(レヨシヨノ)疲勞(ヒラウ)閑居(カンキヨノ)朦氣(モウキ)愁歎(シユウタンノ)勞傷(ラウシヤウ)長途(チヤウト)ノ窮屈(キウクツ)トハ。遠(トヲ)ク旅(タビ)ヘ出デ家路(イヘヂ)ノ事夢(ユメ)ニモ見ザル程。行ノビテ辛苦スル也。漸々帰テクタビレタル事ナリ。〔下38ウ二・三〕
閑居(かんきよ)の朦氣(もうき)/閑居ノ朦氣閑ハひまともしつかなり共訓す。手に取(とる)業(わさ)もなくくらして鬱陶(うつとう)として気の朽(くち)るをいふ也。 〔96オ八〜96ウ一〕
とあって、この標記語「朦氣」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁嘆勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲閑居ノ蒙氣ハ閑(しづか)に淋(さひし)き所に籠(こも)り居(ゐ)て気(き)の鬱陶(うつとう)するをいふ。〔71オ七、71ウ六〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲閑居ノ蒙氣ハ閑(しづか)に淋(さびし)き所に籠(こも)り居(ゐ)て気(き)の鬱陶(うつとう)するをいふ。〔128オ二、128ウ五・六〕
する也。〔127ウ六、128ウ三〕
Mo>qi.モウキ(朦気) 父とか子どもとかに死なれて憂鬱であること,または,その悲しみ.¶また,病気.例,Gomo>qi degozaru.(御朦気でござる)ある尊敬すべき人が病気している.〔邦訳422r〕
もう-き〔名〕【朦氣・濛氣・蒙氣】(一)もうもうと立ちこむる氣。漢書、京房傳「辛酉以來蒙氣衰去、太陽精明、臣獨欣然」(二)心氣、鬱して、爽快ならざること。庭訓徃來、十一月「旅所疲勞、閑居朦氣、愁歎勞傷」太平記、廿、結城入道墜二地獄一事「常に死人の首を目に見ねば、心地の朦氣(蒙氣イ)するとて、僧俗男女をいはず、云云」〔1998-3〕
閑居(カンキヨ) 。〔元亀二年本97一〕〔天正十七年本上59ウ三〕〔西來寺本〕
閑居 。〔静嘉堂本121二〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「閑居」と表記し、訓みは山田俊雄藏本に「(カン)キヨ」、文明四年本に「カンキヨ」と記載する。
閑居 同(居處部)/逃名/カンキヨ/請老。〔黒川本・畳字門上89オ四〕
閑居(カンキヨ/シヅカ、イル)[平・平] 三人曰二燕居一。一人曰二閑居一。又義。大勢曰二燕居一。一人曰二閑居一。〔態藝門280一〕
閑居(カンキヨ) 。〔弘・言語進退門86八〕
閑居(カンキヨ) ―談(タン)。―素(ソ)。〔永・言語門82五〕
閑居(カンギヨ) ―談。―素。〔堯・言語門74九〕
閑居(カンキヨ) ―談。―素。〔両・言語門90一〕
閑居(キヨ) 。〔言語門75一・天理図書館蔵上40オ一〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「閑居」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。上記古辞書中、広本『節用集』の語注記は、他の古辞書及び真名註には未収載の内容となっている。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「閑居」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
長途(チヤウド)窮屈(キウクツ)旅所(レヨシヨノ)疲勞(ヒラウ)閑居(カンキヨノ)朦氣(モウキ)愁歎(シユウタンノ)勞傷(ラウシヤウ)長途(チヤウト)ノ窮屈(キウクツ)トハ。遠(トヲ)ク旅(タビ)ヘ出デ家路(イヘヂ)ノ事夢(ユメ)ニモ見ザル程。行ノビテ辛苦スル也。漸々帰テクタビレタル事ナリ。〔下38ウ二・三〕
閑居(かんきよ)の朦氣(もうき)/閑居ノ朦氣閑ハひまともしつかなり共訓す。手に取(とる)業(わさ)もなくくらして鬱陶(うつとう)として気の朽(くち)るをいふ也。 〔96オ八〜96ウ一〕
とあって、この標記語「閑居」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁嘆勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲閑居ノ蒙氣ハ閑(しづか)に淋(さひし)き所に籠(こも)り居(ゐ)て気(き)の鬱陶(うつとう)するをいふ。〔71オ七、71ウ六〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲閑居ノ蒙氣ハ閑(しづか)に淋(さびし)き所に籠(こも)り居(ゐ)て気(き)の鬱陶(うつとう)するをいふ。〔128オ二、128ウ五・六〕
Canqio.カンキョ(閑居) Xizzucani iru.(閑かに居る)人里離れた所など静かな所に引き込んでいること.〔邦訳91r〕
かん-きょ〔名〕【閑居】閑(しづ)かなる地の住居。幽居。幽棲。後漢書、梁竦傳「大丈夫居レ世、云云、如其不レ然、閑居可二以養一レ志」方丈記「閑居の氣味も、亦かくの如し、住まずして誰れか覺らん」〔423-5〕
旅所(シヨ) 。〔元亀二年本72一〕〔静嘉堂本86五〕
旅所 。〔天正十七年本上43オ八〕〔西來寺夲〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、建部傳内本は「旅之」、至徳三年本・宝徳三年本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「旅所」と表記し、訓みは文明四年本に「レヨ(シヨ)」と記載する。
旅所(リヨシヨ/タビ、トコロ)[○・上] 。〔態藝門198六〕
旅所(リヨシヨ) ―宿(シユク)。―行(カウ)。―粮(リヤウ)。〔永・言語門59二〕
旅所(リヨシヨ) ―宿。―行。―粮。〔堯・言語門53六〕
旅所(リヨシヨ) 。〔両・言語門61八〕
旅所(シヨ) 。〔言語門58三・天理図書館蔵上29ウ三〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「旅所」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「旅所」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
長途(チヤウド)窮屈(キウクツ)旅所(レヨシヨノ)疲勞(ヒラウ)閑居(カンキヨノ)朦氣(モウキ)愁歎(シユウタンノ)勞傷(ラウシヤウ)長途(チヤウト)ノ窮屈(キウクツ)トハ。遠(トヲ)ク旅(タビ)ヘ出デ家路(イヘヂ)ノ事夢(ユメ)ニモ見ザル程。行ノビテ辛苦スル也。漸々帰テクタビレタル事ナリ。〔下38ウ二・三〕
旅所(りよしよ)の疲労(ひろう)/旅所ノ疲労旅ハたび。疲も労もつかるゝと訓す。強(しい)て長旅(ながたび)をして身も心もつかれはつるをいふ也。 〔96オ七・八〕
とあって、この標記語「旅所」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁嘆勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲旅所ノ疲労ハ長旅(ながたび)に屈(くつ)して身の疲(つか)るゝ也。〔71オ七、71ウ五・六〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲旅所ノ疲労ハ長旅(ながたび)に屈(くつ)して身の疲(つか)るゝ也。〔128オ二、128ウ四・五〕
Reoxo.リョショ(旅所) 人が自分の家以外に居る所.〔邦訳530r〕
りょ-しょ〔名〕【旅所】りょかう(旅行)に同じ。易林節用集、上、言辭門「旅所、リヨシヨ」〔2136-2〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「長途」と表記し、訓みは山田俊雄藏本・経覺筆本に「(チヤウ)ト」、文明四年本に「チヤウト」と記載する。
長途(チヤウト・ヲサ、―/ナガシ、ミチ)[平去・平] 云二遠路ヲ一也。〔態藝門175二〕
長途(チヤウト) 。〔弘・言語進退門52四〕
長遠(ヲン) ―途(チヤウト)。―生。―日(ジツ)。―講。―短(タン)。―久(キウ)。〔永・言語門53一〕
長遠(ヲン) ―途。―生。―日。―講。―命。―短。―久。―大息。―座。〔堯・言語門48三〕
長途(ト) 。〔言語門53三・天理図書館蔵上27オ三〕
このように、上記当代の古辞書においては、易林本『節用集』に標記語「長途」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「長途」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
長途(チヤウド)窮屈(キウクツ)旅所(レヨシヨノ)疲勞(ヒラウ)閑居(カンキヨノ)朦氣(モウキ)愁歎(シユウタンノ)勞傷(ラウシヤウ)長途(チヤウト)ノ窮屈(キウクツ)トハ。遠(トヲ)ク旅(タビ)ヘ出デ家路(イヘヂ)ノ事夢(ユメ)ニモ見ザル程。行ノビテ辛苦スル也。漸々帰テクタビレタル事ナリ。〔下38ウ二・三〕
長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)/長途ノ窮屈長途ハ遠き道也。窮ハきわまる、屈ハかゝまると訓す。身にたへさる道のりを歩行(あるき)て殊(こと)の外につかるゝを云也。 〔96オ六・七〕
とあって、この標記語「長途」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁嘆勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲長途ノ窮屈ハ身(ミ)に堪(た)へぬ遠路(とをミち)を歩(あゆ)ミて気(き)の屈(かゞ)まる也。〔71オ六、71ウ五〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)長途ノ窮屈ハ身(ミ)に堪(た)へぬ遠路(とをミち)を歩(あゆ)ミて気(き)の屈(かゞ)まる也。〔128オ一・二、128ウ四・五〕
ちゃう-と〔名〕【長途】ながき道のり。遠き旅路。ながち。史記、司馬相如傳「輦道〓屬、歩姜周流、長途中宿」太平記、五、大塔宮熊野落事「華軒、香車の外を出でさせ給はぬ御事なれば、御歩行の長途は、定めて叶はせ給はじ」「長途の疲れ」〔1282-2〕
恋慕(ホ) 暮(ホ)。〔元亀二年本149七〕
戀暮(レンボ) 。〔静嘉堂本163二〕
戀慕(レンホ) 。〔天正十七年本中13ウ一〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「戀慕」と表記し、訓みは山田俊雄藏本・文明四年本に「レンボ」と記載する。
戀暮 同(民俗分)/レンホ。〔黒川本・畳字門中14ウ六〕
戀慕 〃菓。〃舌。〔卷第四・畳字門516四〕
戀慕(レンボ) 。〔畳字門159五〕
恋慕(レンボ) 。〔弘・言語進退門116八〕〔永・言語門99五〕〔両・言語門109六〕
戀慕(レンボ) 。〔堯・言語門90三〕
戀慕(レンボ) 。〔言辞門98六・天理図書館蔵上49ウ六〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「戀慕」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
724恋慕ノ辛苦長途ノ窮屈旅所ノ疲労閑居ノ朦気愁歎ノ労傷(シヤウ)闕乏(ケツ―)失食深更ノ夜食五更ノ空服 顔氏カ家訓或ハ問一夜何ノ故ソ。五更トス々何ノ所ソヤ∨訓。答曰漢魏ヨリ以来曰‖甲夜乙夜丙夜丁夜戌夜ヲ|。為‖五更|々□也。経也。西都府ニ曰、自∨夕至∨旦ニ也。雖‖冬夏ノ咎長短参差|盈ルニ不∨尽∨六ヲ縮ルニ不∨至∨四ニ。退テ在‖五時之間ニ|。故ニ云‖五更ト|。〔謙堂文庫蔵六二右B〕
とあって、標記語「戀慕」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
戀慕(レンボ)ノ辛苦(シンク)ノ事。人ヲコイ人ヲシタフニ。餘多(タ)アリ。何(イヅレ)モ/\心ヲ盡(ツク)シ物ヲクハズ夜ヲ寐(ネ)ズ明暮(アケクレ)辛苦(シンク)スル事命(イノチ)ノ短(ツヽ)マル大毒(トク)ナリ。〔下38ウ一〜二〕
戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)/戀慕ノ辛苦辛ハからし。労ハつかると訓す。事をなして心気をつからするをいふ也。 〔96オ五・六〕
とあって、この標記語「戀慕」の語を収載し、語注記は未記載にする。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁嘆勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲戀慕ノ辛苦ハ人を慕(した)ふ情(しやう)のいたく苦(くるし)きをいふ。〔71オ六、71ウ五〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲戀慕ノ辛苦ハ人を慕(した)ふ情(しやう)のいたく苦(くるし)きをいふ。〔128オ一、128ウ四〕
Renbo.レンボ(戀慕) Coi xito<(恋ひ慕ふ)みだらな,あるいは,肉欲の愛.例,Fitouo renbo suru.(人を恋慕する)肉欲の情から人を愛する.※男女間の愛をこのように説明しているのは,宗教的立場から加えたもの.〔Coi(恋)の注〕〔邦訳528r〕
れん-ぼ〔名〕【戀慕】(一)こひしたふこと。三國志、魏志、滿龍傳「兵民戀慕、大小相率、奔魔二道路一、不レ可二禁止一」平家物語、三、少將都歸事「盡き難きは、戀慕の今の涙なり」古今著聞集、二、釋教「戀慕のやすみ難きに堪へず」(二)元禄頃、流行したる小唄の名。もと一節切(ひとよぎり)の戀慕と云ふ曲より出でしものと云ふ。小唄總まくり「夕べ夕べに身は淺草の、露を踏み分けあの吉原に、しどろもどろと君故たどる、れんぼ、れれれつれ」〔2148-1〕
辛労(シンラウ) 。辛苦(ク) 。〔元亀二年本306三〕
辛労(シンラウ) 。辛苦(シンク) 。〔静嘉堂本371六〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本に「勞苦」、山田俊雄藏本に「身勞」、建部傳内本・経覺筆本・文明四年本に「辛苦」と表記し、古写本の表記にあって四種の異なりを有している。訓みは山田俊雄藏本に「シンロウ」、文明四年本に「シンク」と記載する。
辛苦 ――分/シンク。〔黒川本・畳字門下78オ八〕
辛苦 〃芥。〃菜。〃勤。〔卷第九・畳字門216一〕
辛苦(シンク・ネンゴロ/カノト・カラシ、クルシム)[平・去] 。―勞(ラウ/ツカルヽ)[平・平]〔態藝門962四〕
勞苦(ラウク/ネキラウ・イタワル、クルシム)[平・上去] 。〔態藝門456二〕
辛苦(シンク) 。辛労(ラウ) 。〔弘・言語進退門249四〕
辛苦(シンク) ―労。〔永・言語門210二〕〔堯・言語門194三〕
辛勞(シンラウ) ―苦(ク)。〔言辞門216三・天理図書館蔵下41オ三〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「辛苦」「辛勞」「勞苦」の三語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本「辛苦」で収載しているのである。ただし、至コ本の「身苦」の語はいずれも未収載にある。
723睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作ノ辛苦 書‖疲気|也。〔謙堂文庫蔵六二右A〕
とあって、標記語「辛苦」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
所作(シヨサ)之(ノ)辛勞(シンラウ)トハ。日々ニナスワザヲ間(マ)モナク営(イトナ)ミ心ヲ屈(クツ)シ日ヲ尽シ骨(ホネ)ヲ碎(クタク)事是毒也。〔下38オ八〜38ウ一〕
所作(しよさ)の辛労(しんらう)/所作ノ辛労辛ハからし。労ハつかると訓す。事をなして心氣(しんき)をつからするをいふ也。 〔96オ四・五〕
とあって、この標記語「辛労」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁嘆勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲所作ノ辛労ハ萬(よろづ)所作(しよさ)の身(ミ)に過(すぎ)て辛(から)く心気(しんき)を疲労(つから)すをいふ。〔71オ六、71ウ四・五〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲所作ノ辛労ハ萬(よろつ)所作(しよさ)の身(ミ)に過(すぎ)て辛(から)く心気(しんき)を疲労(つから)すをいふ。〔128オ一、128ウ三・四〕
Xincu.シンク(辛苦) Caraqi curuximi.(辛き苦しみ)苦しみ,あるいは,難儀.〔邦訳769l〕
Xinro<.シンラゥ(辛労) 難儀.例,Xinro<uo yasumuru.(辛労を休むる)骨折りを休め,休息する.¶Xinro<uo corayuru,lxinogu.(辛労を堪ゆる,または,凌ぐ)苦難を堪え忍ぶ,または,きりぬける.〔邦訳773l〕
Ro<cu.ラウク(労苦) Xinro< curuximi.(辛労苦しみ)骨折り,苦しみ,また,疲れ.〔邦訳539l〕
しん-く〔名〕【辛苦】〔書經、洪範篇、正義「辛苦之味入レ口、猶二困阨之事在一レ身故、殃厄勞役事、爲二辛苦一」〕辛き目に遇ひて、甚しく心身を使ふこと。苦辛。困苦。史記、呉太伯世家「勾踐爲人能辛苦」〔938-5〕
しん-らう〔名〕【辛勞】ほねをり。苦勞。辛苦。甲陽軍鑑、十四、品第四十、下「辛勞して仕る高名は、首級(しるし)一つにても、ちと、くたびれ候」〔953-3〕
らう-く〔名〕【勞苦】ほねをり。苦勞。勞。又いたづき。荀子、王霸篇「必自爲レ之、然後可、則勞苦啌蘇莫レ甚レ焉」〔2107-1〕
「しん-く【辛苦】〔名〕(形動)(古くは「しんぐ」)@つらいめにあって苦しむこと。また、そのさま。つらい苦しみ。艱難。困苦。A辛味と苦味。辛く苦いこと。また、そのさま」
「しん-らう【辛勞】〔名〕ほねを折ること。つらい苦労をすること。また、そのさま。辛苦」
「らう-く【勞苦】〔名〕からだや心が、疲れたり苦しい思いをしたりすること。骨折ったり心配したりすること。苦労」
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「所作」と表記し、訓みは文明四年本に「シヨサ」と記載する。
所作(シヨサ) 。〔態藝門85六〕
耕桑(カウサウ/タガヱス、クワ)[○・平] 耕ハ男(ヲトコ)ノ所作(シヨサ)。桑ハ女ノ蚕桑。〔態藝門282八〕
農桑(ノウサウ/ナリワイ・タツクリ、クワ)[平・平] 農ハ男(ヲトコ)ノ所作(シヨサ)。桑ハ女ノ績(ウム)織(ヲル)。〔態藝門493一〕
所望(シヨマウ) ―行(ギヤウ)。―職(シヨク)。―為(イ)。―課(クワ)。―勘(カン)。―務(ム)年貢。―帯(タイ)。―領(リヤウ)。―役(ヤク)。―當(タウ)。―労(ラウ)。―作(サク)。―詮(セン)。〔弘・言語進退門245二〕
所職(シヨシヨク) ―行。―為。―課。―望。―勘。―務(ム)。―役。―當。―労。―詮。―帯。―作。〔永・言語門210四〕
所職(シヨシヨク) ―行。―為。―課。―務。―役。―労。―望。―勘。―領。―當。―詮。―帯。―作。―持。―存。―用。〔堯・言語門194五〕
所得(シヨトク) ―謂(イ)。―詮(セン)。―犯(ホン)。―知(チ)。―役(ヤク)。―作(サ)。―願(グワン)。―辨(ベン)。―用(ヨウ)。―縁(エン)。―期(ゴ)。―領(リヤウ)。―職(シヨク)。―望(マウ)。―爲(ヰ)。―帯(タイ)。―學(ガク)。―存(ゾン)。〔言辭門214四・天理図書館蔵下40オ四〕
このように、上記当代の古辞書においては、『下學集』に標記語「所作」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
723睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作ノ辛苦 書‖疲気|也。〔謙堂文庫蔵六二右A〕
とあって、標記語「所作」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
所作(シヨサ)之(ノ)辛勞(シンラウ)トハ。日々ニナスワザヲ間(マ)モナク営(イトナ)ミ心ヲ屈(クツ)シ日ヲ尽シ骨(ホネ)ヲ碎(クタク)事是毒也。〔下38オ八〜38ウ一〕
所作(しよさ)の辛労(しんらう)/所作ノ辛労辛ハからし。労ハつかると訓す。事をなして心氣(しんき)をつからするをいふ也。 〔96オ四・五〕
とあって、この標記語「所作」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁嘆勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲所作ノ辛労ハ萬(よろづ)所作(しよさ)の身(ミ)に過(すぎ)て辛(から)く心気(しんき)を疲労(つから)すをいふ。〔71オ六、71ウ四・五〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲所作ノ辛労ハ萬(よろつ)所作(しよさ)の身(ミ)に過(すぎ)て辛(から)く心気(しんき)を疲労(つから)すをいふ。〔128オ一、128ウ三・四〕
Xosa.ショサ(所作) Nasu tokoro.(作す所)しわざ.〔邦訳795r〕
しょ-さ〔名〕【所作】(一)爲(な)すところ。しわざ。おこなひ。ふるまひ。所爲。新婆娑論「欲レ有レ所レ作、皆先思惟」榮花物語、三十、鶴林「日日の所作に、大佛頂をこそ、七遍讀み給ひけれ」古今著聞集、四、文學「古人の所作、仰而可レ信歟」(二)所作事(手振)、振事(身振)、等のしかた。體のこなし。(舞踊に云ふ)〔1013-4〕
飽満(バウマン) 。〔元亀二年本27二〕
飽滿(バウマン) 。〔静嘉堂本25七〕〔天正十七年本上14オ一〕〔西來寺本〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「飽満」と表記し、訓みは山田俊雄藏本・文明四年本に「バウマン」と記載する。
飽滿 同(飲食部)樂詞/ハウマン。〔黒川本・畳字門上26ウ五〕
飽滿 。〔卷第一・畳字門217一〕
飽満(バウマン) 。〔言辭門149五〕
飽満(バウマン/アク、ミテル)[上・平上] 。〔態藝門82三〕
飽満(バウマン) 。〔弘・言語進退門25三〕
飽滿(バウマン) 。〔永・言語門23二〕
飽満(バウマン) ―食。〔堯・言語門20八〕
飽満(ハウマン) 。〔両・言語門25一〕
飽滿(バウマン) 。〔言語門21三・天理図書館蔵上11オ三〕
このように、上記当代の古辞書においては、標記語「飽満」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
723睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作ノ辛苦 書‖疲気|也。〔謙堂文庫蔵六二右A〕
とあって、標記語「飽満」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
行儀(ギ)ノ散動(サンドウ)食物(シヨクブツ)飽滿(バウマン)ハ。荒(アラ)ク。ハタラキテ身ヲ狂(クル)ハせテ血(チ)ヲ乱(ミタ)ス事第一ノ毒也。〔下38オ七・八〕
食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)/食物ノ飽満飽ハあく。満ハミつると訓す。あくまて大食するをいふ也。 〔96オ四〕
とあって、この標記語「飽満」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁嘆勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲食物ノ飽満ハ飽(あく)まで大食(たいしよく)する也。〔71オ六、71ウ四〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲食物ノ飽満ハ飽(あく)まで大食(たいしよく)する也。〔127ウ六、128ウ三〕
Bo<man.バウマン(飽満) Aqimitcuru.(飽き満つる)もうこれ以上は食えないほど食い飽きて嫌気がさすこと.¶Bo<man suru.(飽満する)それ以上は食えないほどに満腹する.→Qibo<(飢飽).〔邦訳60r〕
ばう-まん〔名〕【飽滿】飽くまで食ひて、腹に滿つること。腹一杯に食ふこと。飽食。易林本節用集(慶長)上、言辭門「飽滿、バウマン」書言字考節用集、六、服食門「飽滿、バウマン」庭訓徃來、十一月「食物飽滿、所作勞苦」〔1562-1〕
食物(モツ) 。〔元亀二年本313一〕
食物(シヨクモツ) 。〔静嘉堂本366六〕
娠坊内過度濁酒酔酊睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作労苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲労閑居朦氣愁歎勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩○飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌候也〔至徳三年本〕
娠房内過度濁酒醉酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作勞苦戀慕辛苦長途窮崛旅所疲勞閑居朦氣愁嘆勞傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天重服皆以禁忌事也〔宝徳三年本〕
凡房内過度濁酒酩酊睡眠昏沈形儀散動食物飽満所作之辛苦戀慕辛労長途窮屈旅之疲労閑居朦氣愁歎労傷闕乏失食深更夜食五更空腹塩増飲水淺味熱湯寒氣薄衣炎天之重服皆以禁忌事候也〔建部傳内本〕
凡房(ボウ)内ノ過度(ド)濁(タク)酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠(スイメンノ)昏沈(コンチン)形儀(ギヤウキ)ノ散動(サンドウ)食物ノ飽満(バウマン)所作ノ辛勞(シンロウ)戀慕(レンボ)ノ労苦長途(ト)ノ窮屈旅所ノ疲勞(ヒラウ)閑居(キヨ)ノ朦氣愁嘆(シユウタン)ノ勞傷(せウ)闕乏(ケツボク)ノ失(シチ)食深更(シンコウ)ノ夜食五更ノ空腹(クウブク)塩(ヱン)増ノ飲水(インスイ)淺(せン)味ノ熱湯(ネツトウ)寒氣ノ薄衣(ハクヱ)炎(ヱン)天ノ重(デウ)服皆以禁忌(キ)ノ事候也〔山田俊雄藏本〕
凡ソ坊内ノ過度濁酒ノ酩酊(メイテイ)睡眠ノ昏沈(コンチン)形儀ノ散動食物ノ飽満所作ノ辛苦戀慕辛方長途(ト)ノ窮屈旅(レヨ)所ノ疲(ヒ)労閑居ノ朦氣(モウキ)愁歎(タン)ノ勞傷闕乏(ケツホウ)ノ失食(シツシヨク)深更(シンカウ)ノ夜食五更ノ空腹(フク)塩(エン)増ノ飲水(ヲンスイ)淺味(センミ)ノ熱湯寒氣(キ)ノ薄衣(ハクイ)炎天(エンテン)ノ重服皆以テ禁忌ノ事也〔経覺筆本〕
凡(ヲヨソ)房内ノ過度(クワド)ノ濁酒(チヨクシユ)酩酊(メイテイ)睡眠(スイメン)之昏沈(コンチン)形儀(ギヤウギ)散動(サンドウ)食物(クツク)飽満(バウマン)所作(シヨサノ)辛苦(シンク)戀慕(レンホノ)辛苦(シンク)長途(チヤウト)窮屈(キウクツ)旅所之(ノ)疲労(ヒラウ)閑居(カンキヨ)朦氣(モウキ)愁歎(シウタン)之勞傷(ラウシヤウ)闕乏(ケツボク)失食(シチシキ)深更(シンカウ)夜食五更(カウ)之空腹(クウフク)塩増(エンゾウ)之(ノ)飲水(ヲンスイ)淺味(せンミノ)熱湯(ネツタウ)アツユ寒氣(カンキノ)薄衣(ヱ)炎(エン)天重服(チウフク)皆(ミナ)以テ禁忌(キノ)事候也〔文明四年本〕※熱(ネツ)。寒(カン)。温(ウン)。重服(ジウフク)。愁歎(シウタン)。朦氣(モウキ)。闕乏(ケツホク)。禁忌(キンキ)。
と見え、至徳三年本・宝徳三年本・建部傳内本・山田俊雄藏本・経覺筆本・文明四年本には、「食物」と表記し、訓みは文明四年本に「ク□ツク」と記載する。この和訓が不明である。
食物(シヨクブツ/クラウ、モノ)[入・入] 。〔態藝門954七〕
食耽(シヨクタン) ―物(モツ)。―後(ゴ)。―時(シ)。―事(ジ)。〔言辞門217二・天理図書館蔵下41ウ二〕
このように、上記当代の古辞書においては、広本『節用集』に「シヨクブツ」、『運歩色葉集』と易林本『節用集』(熟語群)に「シヨクモツ」の訓みで、標記語「食物」の語を収載し、これを古写本『庭訓徃來』及び下記真字本が収載しているのである。
723睡眠昏沈形儀散動食物飽滿所作ノ辛苦 書‖疲気|也。〔謙堂文庫蔵六二右A〕
とあって、標記語「食物」の語を収載し、この語における語注記は未記載にする。
行儀(ギ)ノ散動(サンドウ)食物(シヨクブツ)飽滿(バウマン)ハ。荒(アラ)ク。ハタラキテ身ヲ狂(クル)ハせテ血(チ)ヲ乱(ミタ)ス事第一ノ毒也。〔下38オ七・八〕
食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)/食物ノ飽満飽ハあく。満ハミつると訓す。あくまて大食するをいふ也。 〔96オ四〕
とあって、この標記語「食物」の語を収載し、語注記は上記の如く記載する。これを頭書訓読『庭訓徃來精注鈔』『庭訓徃來講釈』には、
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くハど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)乃昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)乃辛苦(しんく)長途(ちやうど)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)乃朦氣(もうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)剩更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)鹽増(えんぞう)乃飲水(ゐんすい)淺味(せんミ)の熱湯(ねつとう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)之(の)事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)/凡房内ノ過度。濁酒ノ酩酊。睡眠ノ昏沈。行儀ノ散動。食物ノ飽満。所作ノ辛労。戀慕ノ辛苦。長途ノ窮屈。旅所ノ疲勞。閑居ノ朦氣。愁嘆勞傷。闕乏ノ失食。深更夜食。五更空腹。塩増ノ飲水。淺味熱湯。寒氣薄衣。炎天重服。皆以禁忌事ニ候フ也▲食物ノ飽満ハ飽(あく)まで大食(たいしよく)する也。〔71オ六、71ウ四〕
凡(およそ)房内(ばうない)の過度(くわど)濁酒(だくしゆ)の酩酊(めいてい)睡眠(すゐめん)の昏沈(こんちん)行儀(ぎやうぎ)の散動(さんどう)食物(しよくもつ)の飽満(ばうまん)所作(しよさ)の辛労(しんらう)戀慕(れんぼ)の辛苦(しんく)長途(ちやうと)の窮屈(きうくつ)旅所(りよしよ)の疲労(ひらう)閑居(かんきよ)の朦氣(まうき)愁嘆(しうたん)の勞傷(らうしやう)闕乏(けつぼふ)の失食(しつしよく)深更(しんかう)の夜食(やしよく)五更(ごかう)の空腹(くうふく)塩増(えんぞう)の飲水(いんすゐ)淺味(せんミ)の熱湯(ねつたう)寒氣(かんき)の薄衣(はくえ)炎天(えんてん)の重服(ぢうふく)皆(ミな)以(もつ)て禁忌(きんき)の事(こと)に候(さふら)ふ也(なり)▲食物ノ飽満ハ飽(あく)まで大食(たいしよく)する也。〔127ウ六、128ウ三〕
Iiqimot.ジキモッ(食物) Cuimono.(食ひ物)食物.〔邦訳364r〕
Xocubut.ショクブツ(食物) Cuimono.(食ひ物)食事,または,食物.〔邦訳789l〕
しョく-もつ〔名〕【食物】じきもの。又、くひもの。食ふべき物。食料。くひもの。史記、匈奴傳「得二漢食物一、皆去レ之、以示レ不レ如二俔酪之便一美也」古今著聞集、二、釋教、高辨上人「晝つ方、番匠が、食物を並み据ゑたる時」〔1012-4〕
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