2002.03.09更新
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―国語辞書情報―
「第二版」が完結しても辞典作りの作業は続く
50万2599。昨年12月末に完結した『日本国語大辞典 第二版』(全13巻、小学館)の見出し語数である。100万用例。総文字数9100万。従来の辞典の2・5倍の一項目平均180字。語誌(言葉の由来や変遷の解説)欄の新設、用例の出典となる文献の成立年の明示。まさに「二〇〇一年までの日本語の戸籍簿として歴史にしっかり刻まれた」(あとがき)と言っていい偉業である。
刷り部数は各巻1万6000冊。当初8000部売れればと予想したそうだ。第1巻は7刷1万7000冊に達した。19万5000円という定価、日本の住宅事情を考え合わせるとちょっとうれしい。が、腹立たしい話も耳にした。国語の先生や図書館があまり買ってくれないのだそうだ。実際近くの図書館に出かけてみたが見当たらなかった。人気小説の副本問題よりも由々しき事態だと思う。
デジタル版を待って買い控えをしている人も多いかもしれない。編集部に尋ねると、JIS規格にない漢字が1万5000もあり、すぐには難しいそうだ。
「第三版」はどうなるのだろうか?
「ことばを採集し、多数の用例から意味・用法を抽出してそれを記述するという作業は……あくまでも人間の為すべき部分として残る」(同)。編集を指揮した国語学者の
松井栄一さんは、今回の改定で収められなかった用例など言葉の収集をすでに始めている。頭が下がる。朗報二つ。
漢字・方言索引、出典総覧を収めた「別巻」が今年末にも刊行される予定だ。また、英国のオックスフォード英語辞典のように、一般読者から用例を公募する「友の会」をつくりたいという。国民全体で言葉を記録する営みが始まる。「辞典は完成と同時に次の仕事が始まる」(同)。なるほど。【桐山正寿】〔毎日新聞・文化という劇場,2002年(平成14年)2月17日(日曜日)記事より所収〕辞書の世界
―江戸・明治期版本を中心に―1月28日(月)⇒2月2日(土) 午前10時から午後7時30分
丸善・東京日本橋店4Fギャラリ―
主催:慶應義塾図書館 協力:慶應義塾大学斯道文庫 協賛:丸善株式会社
慶應義塾図書館の蔵書を中心に、平安時代から明治期に至るまで、わが国でよく利用された辞書を100点余り選び、印刷文化との関りも含め、展示解説しています。
講演会 1月28日(月)「辞書と版本」………………………………
1月29日(火)「辞書と索引の歴史」………………………
紀田順一郎1月30日(水)「『広辞林』から『広辞苑』へ」…………
武藤康史1月31日(木)「中国の百科全書と日本の古典」…………住吉朋彦
2月1日(金)「歌書・歌語・歌枕―和歌と辞書」………川上新一郎
月刊「本の窓」2000年8月号 特集/
待望の第二版「日本国語大辞典」(小学館)目 次
巻頭インタビュー
/辞書は、読んで楽しむ/井上ひさし…2大江健三郎さんの師匠渡辺一夫先生「辞書なしで本を読むのは、読まないのと同じだ」
用例は言葉の伝記(戸籍簿)である・イギリスで19世紀の法律に、辞書を作る刑があった
一日に十回は辞書を引く・三つの言葉「時」「同じ」「関係」をひいて判る・
書斎で引くより居間で引く
/紀田順一郎……………………8「初孫」と書いて「ハツまご」「ういまご」
「平等」の語源
「雪たたき」という難語⇒幸田露伴『雪たたき』、典拠『足利季世記』
『日本国語大辞典』のある生活
/竹西寛子…………………10無知の自覚が促す学びに謙虚である限り、すぐれた辞書は上限のない先達と映る。
国語には起源があり、踏襲、変化があり転化がある。
消滅もあれば復活もあるが、そうした言葉の歴史はそのまま日本人の情理の歴史と読むことが出切る。
即、開く『日本国語大辞典』
/柳瀬尚紀……………………12―おお、使いが来たか。なに小使(そいつかい)な。
齊藤秀三郎『和英大辭典』の「Kozukai(小遣)」に「大遣より小遣」⇒「おおつかい」と「そいづかい」
「だかさる」「チョビ君、きみね、もう何年の付合いになる?そろそろ
抱かさってもいいだろ」「りんどう【龍胆】」「りゅうたん【龍胆】」の項からも龍胆寺雄が見つからない
世紀を越えて受け継がれる大辞典
/松井栄一………………14―松井家三代“辞書の家”の歴史
祖父・簡治と父・驥
『大日本国語辞典』の誕生
『大日本国語辞典』の成長と“辞書の家”の歴史
『大日本国語辞典』増補カードから新しい大辞典へ
『日本国語大辞典』の誕生
“辞書の家”の三代目として
座談会
/21世紀に引き継ぐ国語辞典を/林 大・松井栄一・渡辺 実・北原保雄・前田富祺……20
「第二版」への道
方言項目の増大
用例の重要性
近代例の増補
用例の拡充
語誌欄の新説
辞書欄の補充
「第三版」に向けて
コラム/中世語資料としての『文机談』/安田尚道………29
コラム/方言語彙の消長/佐藤亮一…………………………30
コラム/『日本国語大辞典』の第一歩から/笠松宏至……31
コラム/国語辞典の中の植物名/大場秀章…………………32
国語大辞典ギネス級に
天下の「オックスフォード」並み 見出し50万語 24年コツコツ増補 用例100万…全13巻〔朝日新聞2000.08.17(木)夕刊〕『日本国語大辞典』の「第二版」(全13巻)刊行へ―初版完結から24年―
5万語、25万用例を増補〔注意!〕「5万語」は増補数で、「見出し語50万語」初版全20巻の見出し語が45万語に増補という内容。「用例は漢語、中世語、近世語、近現代語、記録(歴史)語、宗教語、民族語の部会(各5〜20人)を設けて専門家が採集した。初めて用例が採集された文献は、漢語では平安時代の漢詩文『詩序集』、幕末明治期の翻訳漢語『米欧回覧実記』、明治初期の翻訳漢語辞典『布令字弁』、口語では中世の抄物『玉塵抄』など。明治の新聞や雑誌にも目配りして時事用語を補い、近代作家についても増強。代表的な40人で11万例、漱石1万2500、鴎外6700、逍遥5700例などがそれぞれ収録された。」「引用文献は4413点増えて約3万点にも及んだ。第二版では、「かわゆい」に「呉唐が子をかわゆう思ふことは鹿と人とかわることない……」(玉塵抄・1563年)という用例が加えられた。平安時代は『今昔物語(集)』で「きまりが悪い」「はずかしい」という意味で使われた言葉が、『源平盛衰記』『徒然草』の中では「ふびん、気の毒だ」と意味が転じ、中世になると、現代の若者が街角で「かわいい」を「愛らしい」の意味で使うのと同じ意味でこの言葉が使われていたことがわかる。」〔〔毎日新聞2000.08.25(金) 夕刊「文化 批評と表現」より抜粋〕読売新聞
ニュース(インターネットリンク)国語大辞典 30年ぶり改訂