視野欠ける緑内障の疑い
人間ドックや健診などで、視神経乳頭陥凹の拡大を指摘され、要精密検査といわれて眼科に来られる方が最近とみに多くなりました。この意味を分かっ ていない方が多いのですが、簡単に言うと緑内障の疑いがあると いうことです。
脳からの視神経は、眼底の中心より少し鼻のほうに寄った場所で、眼球の中に入ってきます。この部分は眼底では赤味を帯びた円形として見られ、これ を視神経乳頭といいます。
視神経乳頭の中央部は、個人差がありますが、へこんで白く見えます。この陥凹が正常な人より大きくなっていると、陥凹の拡大といって問題にされま す。
陥凹が大きくなるということは、視神経の中の視神経線維の数が 減少していることを示します。これは眼底全体の神経線維が不足していることを意味し、視野の一部が欠けていることが考えられます。
緑内障は、この陥凹拡大の結果として視野が欠損し、視野の中に見えないところが出てきます。この場合、放置すると徐々に進行するため、眼圧が正常 でも、眼圧を下げる点眼薬を使用します。緑内障で起こる視野欠損は、治療で再び戻ることはありません。そのため、欠損が進む前に治療を始めることが肝心で す。
ただ、陥凹拡大のみで緑内障と診断することはありません。 眼圧、眼底、視野のすべてに異常がなければ正常で、そのような人は大勢います。いずれに しても、早めに眼科で詳しい検査を受けて、緑内障でないかどうかを確認されることをお勧めします。
井上 治郎 井上眼科病院理事長(東京・御茶ノ水)