第 1 回 |
授業の計画・内容 |
授業についての概要説明
帰国以後の道元禅師
安貞元(一二二七)年の帰国以後、興聖寺破却に至るまでの道元禅師の行状を、史伝や著述資料に基づいて概観する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
二年次必修科目「宗典」履修を踏まえ、帰国以後の行状より授業を開始する。松田担当の「宗典」履修者は前年度「宗典」の配布資料を見直しておくこと。松田担当の「宗典」を履修していない者は、道元禅師の行状について確認しておくこと。 |
60分 |
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第 2 回 |
授業の計画・内容 |
北越移錫以後示寂までの道元禅師
寛元元(一二四三)年以降、北越移錫以後示寂にいたる動向について確認する。特に最晩年の状況について、義介撰述の『永平開山御遺言記録』より確認し、義介の達磨宗相続の確認の応対の持つ意味について考察する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
時系列にて示される事項が、それぞれいかなる文献に根拠を持つものかを意識して配布資料を読むこと。道元禅師を中心とする立場とともに、門下である義介の視点もあわせて検討すること。 |
60分 |
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第 3 回 |
授業の計画・内容 |
道元と義介―嗣法相続の意識をめぐって―
『永平開山御遺言記録』より道元禅師と義介との応答及び懐奘と義介との問答より、義介の達磨宗及び曹洞宗の嗣法についての意識について検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
懐奘・義介・懐鑑ら門下の立場・関係を理解しておくこと。資料の中で意味の不明な箇所はメモをしたり、また関連する研究書を確認しておくこと。春秋社『現代語訳道元禅師全集』の該当巻から現代語訳等を参照しておくことが望ましい。 |
60分 |
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第 4 回 |
授業の計画・内容 |
三代相論①―第一次・二次紛争―
『三大尊行状記』の文献的意義を見直した上で、永平寺三世義介の退院をめぐる事項を検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
文言の解釈にあたって微妙な箇所もあるので、資料に書き加えながらじっくり理解すること。義介の立場を十分に理解する。 |
60分 |
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第 5 回 |
授業の計画・内容 |
三代相論②―第二次紛争の問題―
第二次紛争において、義介の再住からの退院説について広福寺蔵『法衣相伝書』等を中心に検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
一読しただけではわかりにくいので、自分でノートや配布資料にわかりやすくメモして理解すること。 |
60分 |
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第 6 回 |
授業の計画・内容 |
三代相論③―紛争の要因と第三次紛争―
義介が瑩山に与えた二通の附法状より、義介の嗣法観を検討する。
義介・義演滅後に起きたとされる第三次紛争の内容と、その意図について検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
附法状からどのような義介の意識がわかるか、を具体的に文章としてノートまたは配布資料に書き込んで理解すること。文献資料の歴史的記述は客観的事実ではなく、作者の意図や立場を明らかにするものとして読むこと。 |
60分 |
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第 7 回 |
授業の計画・内容 |
小テスト
瑩山の永光寺開創―「尽未来際置文」―
三代相論をまのあたりにし義介から嗣法した瑩山の、永光寺開創について「尽未来際置文」より検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
小テストにあたっては、配布資料をよく読み、重要な人物名や文献名を確認する。特に各文献資料から、嗣法相続の意識に関連して、道元禅師や義介らの当時の状況や立場を考察して、自分で説明文を作成して確認しておくこと。配布資料にあるからといって安心せず、時系列で各事項を頭に入れておくこと。 |
90分 |
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第 8 回 |
授業の計画・内容 |
永光寺五老峯設立の意義
「尽未来際置文」より、五老峯を設立した瑩山の立場、その意図や目的を嗣法観から具体的に検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
配布資料に安心せず、必ず講義ノートや資料中に短い文章でかまわないので自分で筆記しておくこと。 |
60分 |
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第 9 回 |
授業の計画・内容 |
總持寺の五院輪住制
瑩山が開創し、その法嗣である明峰・峨山によって護持される永光寺・總持寺の輪住制について確認する。特に峨山の總持寺門派が全国的に拡張したことの要因について検討する。寺院の本末関係を調査する文献資料についても紹介する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
個人的嗣法相続を根拠にして、寺院相続の本・末のネットワークが形成されることを自ら図にするなどして理解する。寺院出身者は、近世期の本末牒などを通じて師寮寺の関係する本寺・末寺について調査しておくこと。 |
90分 |
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第 10 回 |
授業の計画・内容 |
中世戦国期の寺院法度―嗣法相続に関連して―
江戸幕府直前の信濃・甲斐の武田氏領国内の曹洞宗寺院の法度を取り上げ、当時の嗣法相続の実態並びに意識について検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
法度の文言の検討にあたっては、書き下し文だけではなく原文にも注目すること。 |
60分 |
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第 11 回 |
授業の計画・内容 |
了庵派法度及び大洞院六派の法度
總持寺通幻派で大雄山最乗寺(神奈川県小田原市)を拠点とする了庵派の法度及び太源派の大洞院(静岡県周智郡森町)の法度を講読する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
中世から近世にわたる法度の中で、寺院相続に至るまでの僧侶の修行過程の年限等がどのように規定されているかに注意する。 |
60分 |
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第 12 回 |
授業の計画・内容 |
曹洞宗法度と永平寺・總持寺法度
徳川家康によって下された曹洞宗に対する僧録制度、本末制度の根拠となる法度を取り上げ、幕府の曹洞宗寺院統括のシステムについて確認する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
法度の本文は、書き下し文ではなく訓点付の漢文のみを示すので、訓読が困難な箇所は書き下し文を作成したり漢文に読みなどを補うなどして、授業後も自分で書き下し文を作成することができるようにしておくこと。 |
60分 |
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第 13 回 |
授業の計画・内容 |
転衣事件と黄檗宗の影響
永平寺と總持寺の転衣をめぐる相論について具体的に検討する。また、隠元隆琦によってもたらされた黄檗宗が、江戸期の曹洞宗の僧侶に与えた影響についても検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
関連する研究書は少ないが、授業中に紹介するので参照しながら内容把握につとめること。 |
60分 |
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第 14 回 |
授業の計画・内容 |
伝法公事―因院易嗣について―
関三刹の一である総寧寺英峻が永平寺晋住するにあたって、後住となる可睡斎松頓が伽藍法相続を求めて訴え出た伝法公事の事件を、具体的文書を通じて検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
関連文書は長文であり、書き下し文を附さないので不明な字句などは事前に辞書などを引いて読みを確認しておくこと。授業後も一人で訓読してその内容を確認しておくこと。 |
60分 |
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第 15 回 |
授業の計画・内容 |
小テスト
(予備) |
準備学習 (予習・復習等) |
論述問題を出題するので、取り上げた諸資料が示す内容や意義を、事前に文章でまとめておくこと。 |
90分 |
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第 16 回 |
授業の計画・内容 |
法制化された因院易嗣
伽藍相続における嗣法について規定する掟などから、因院易嗣の実態について確認する。因院易嗣という伽藍法相続としての嗣法が、幕府による集権的統轄が行われる近世期になって問題視されることを具体的に考察する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
関三刹または總持寺などからの掟などについては、書き下し文を配布資料にあげないので、講義を聞きながら後で見直してもわかりやすくしておくために、訓読が難しい箇所には書き入れるなどして読みやすい資料にしておくこと。 |
60分 |
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第 17 回 |
授業の計画・内容 |
宗統復古運動①―『宗統復古志』『護法明鑑』―
卍山道白、梅峯竺信らの嗣法制度改革において、改革すべき嗣法の弊風として意識されていた実態について、卍山・梅峰らの口上書を講読して確認する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
以降の配布資料であげる文献資料は江戸期の版本をそのままあげて講読するので、事前に訓読を確認しておくこと。できるだけ講義ノートに書き下し文をあらかじめ書いておき、授業内で補正しながら理解していくこと。 |
60分 |
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第 18 回 |
授業の計画・内容 |
宗統復古運動②―『東海一滴集』―
嗣法制度改革に先立って卍山が刊行した『正法眼蔵』「面授」巻に付した跋文及び改革への助力を願って永平寺住持石牛天梁に宛てた書翰を講読して、制度改革の根拠としてあげられる『正法眼蔵』「面授」巻などの本文への解釈を検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
卍山の引用意図である制度改革の内容と『正法眼蔵』本文の本意とが異なっていることを前提として考察すること。漫然と講義を聞き流すのではなく、必ず講義ノートにメモを取りながら講義を受けること。 |
60分 |
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第 19 回 |
授業の計画・内容 |
田翁牛甫の訴願と幕府側の聴聞―『感應護国徙薪論』―
卍山・梅峰の出訴が却下されるなか、瑠璃光寺田翁牛甫の訴願と寺社奉行の聴聞の内容を取り上げて、制度改革を阻む諸問題について考察する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
講義のみで内容を理解することは難しいので、配布資料を事前に読んでおき、訓読が困難な字句は漢和辞典を引いておくこと。 |
60分 |
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第 20 回 |
授業の計画・内容 |
両大本山・関三刹らの議論と幕府の裁定―『宗統復古志』『洞門衣袽集』―
制度改革の議論の中心となった室内三物の定義に関わる議論と、その議論をうけた幕府の裁定について検討する。
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準備学習 (予習・復習等) |
幕府の裁定の前後の経緯を確認して、議論がどのように推移していったかをよく理解すること。配布資料を受け取り聞くだけでは理解できないので、事前の予習をおこない、講義中には資料または講義ノートに書き込みながら積極的にさんかすること。 |
60分 |
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第 21 回 |
授業の計画・内容 |
裁定後の卍山に対する批判①―『洞門衣袽集』(「対客二筆」「対客随筆」)―
裁定に対する卍山の認識および裁定前後の卍山の三物論の定義の変化について取り上げる。さらに裁定後、卍山の制度改革に対する批判に対する卍山の応答を検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
関係文献を読みながら、その内容を自分でまとめることを前後に行うこと。 |
60分 |
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第 22 回 |
授業の計画・内容 |
小テスト
裁定後の卍山に対する批判②―『洞門衣袽集』(「対客随筆」)『獅子一吼集』―
卍山の「面授」説の形式性に対する批判を取り上げ、卍山の応答を確認する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
訓点の付いている漢文(木版本)を、書き下し文を作成することなく読んで内容を理解できるように習熟すること。 |
60分 |
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第 23 回 |
授業の計画・内容 |
裁定後の卍山に対する批判③―『洞門衣袽集』(「対客随筆」「菩薩戒大事図説)―
卍山の未語嗣法説について検討する。また、卍山の三物授受の正当性を示す箇所についても検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
多くの文献資料を時系列で整理して理解すること。特撰者の異なる各文献の立場を明確に区分すること。配布資料であげていない箇所で関心があれば図書館で文献資料を直接参照することも有効である。 |
60分 |
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第 24 回 |
授業の計画・内容 |
天桂伝尊の卍山批判①―『正法眼蔵弁註』―
卍山の嗣法論に対する批判として著された『正法眼蔵』全体に対する註釈書である『正法眼蔵弁註』を講読して、卍山と異なる嗣法論について検討する。特に卍山の未語嗣法説に対する批判を検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
卍山と天桂の主張の違いを把握し、そのことを自分で説明できるように文章化し講義ノートなどに書いておくこと。 |
60分 |
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第 25 回 |
授業の計画・内容 |
天桂伝尊の卍山批判②―『正法眼蔵弁註』『護法集』―
卍山が取り上げ中国曹洞宗の大陽・投子の代付問題について、天桂の反駁から分析検討する。特に天桂が卍山のほかに批判対象とする覚範慧洪や独庵玄光らの主張も同時に検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
卍山・覚範・独庵・天桂のそれぞれの主張をよく考えること。代付を肯定するか否定するかという議論から、どのような嗣法論が導き出されるかに注目すること。 |
60分 |
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第 26 回 |
授業の計画・内容 |
天桂伝尊の卍山批判③―『正法眼蔵弁註』―
天桂が指摘する卍山の『正法眼蔵』「面授」巻本文の引用をめぐる問題を取り上げ、天桂・卍山の意図を検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
卍山の引用意図に対する、天桂の批判内容を具体的に検討できるよう、配布資料をよく読んでから講義を受けること。 |
60分 |
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第 27 回 |
授業の計画・内容 |
天桂伝尊の卍山批判④―『正法眼蔵』「面授」巻―
卍山・天桂の立場を踏まえた上で、双方が問題とする『正法眼蔵』「面授」巻本分の内容解釈について検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
『正法眼蔵』本文にたちかえり、卍山・天桂の嗣法論の立場を離れて解釈することにつとめること。 |
60分 |
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第 28 回 |
授業の計画・内容 |
小テスト
天桂伝尊に対する批判①―『雪夜爐談』―
天桂の所説に対して反駁した、面山瑞方の著述をとりあげ、天桂の所説がどのように受けとめられたかを確認する。
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準備学習 (予習・復習等) |
配布資料などを事前に読んで、面山の反駁が果たして天桂の所説のどの面に向けられているかを考察する。講義後はその考察を文章化しておくこと。 |
60分 |
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第 29 回 |
授業の計画・内容 |
天桂伝尊に対する批判②―『正法眼蔵続絃講義』『正法眼蔵諫蠹録』―
天桂の『正法眼蔵弁註』に対する直接批判した乙堂喚丑の『正法眼蔵続絃講義』万仭道坦の『正法眼蔵諫蠹録』の所説をそれぞれ検討する。 |
準備学習 (予習・復習等) |
文献に対する具体的説明にたよらず、必ず文献上の根拠となる箇所に注目して解釈する。 |
60分 |
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第 30 回 |
授業の計画・内容 |
小テスト
(予備) |
準備学習 (予習・復習等) |
これまでの配布資料をよく読み、江戸期の嗣法論が視点論点を変えながら展開して、現在の宗学的視点の基礎を構築してきたことを理解すること。 |
60分 |
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