駒澤大学 シラバス照会

 履修コード/科目名称  342401 / 宗教学
 開講年度・期  2020年 通年  開講曜日・時限  火曜日 6時限
 単位数  4
 付記  ◎予・〔比較宗教文化〕
 主担当教員氏名(カナ)  田中 かの子(タナカ カノコ)
 副担当教員氏名(カナ)  
 授業概要 A. 本講のキーワード: 「ありのまま」をみる、異質にみえるものどうしの「つながり」を見つける、見方・考え方・生き方の多様性を知る。

B. 授業形態: 傾聴者に語りかける講義形式。

C. 学生に求められる学問姿勢・履修態度: 毎回の出席と傾聴を前提として、受講中に思考・連想する内容をノートしてゆく、クリエイティヴな作業。

D. 本講の趣旨・概要: 本講には、いつの頃からか、「比較宗教文化」という副題が付けられていますが、いったい、なぜ、比較するのでしょうか。ふつう、比較するのは、違ってみえる〔二つ以上の〕ものどうしですが、実際には、それらの違いが成り立つのは、それらすべてに、何らかの共通性(あるいは類似性)があるからなのです。

 諸宗教の場合も、信仰生活の中に、人種や言語その他の相違にもかかわらず、わかり合えることが見つかります。その共感・共鳴・共有しうる事柄を、教員自身の留学・研究(つまりは生活)体験を伴う地域(インド・ヨーロッパ)を中心に、汲み上げてゆきます。そこに、机上では知りえず、教義一辺倒ではない、活きた宗教(つまりは「~教徒」以前の、人間そのもの)の姿を観ていただけるようにします。

※ 前半(比較宗教の手法)では、後半へのつなぎとして、宗教全般について考えるのに役立つトピックを選び、その中に「比較」作業を織り込むことで、宗教の多面的理解を行ないます。

※ 後半(仏教をめぐる諸宗教)は、仏教とその他の諸宗教との「つながり」をみます。駒澤大学が継承する「正伝の仏法」(歴史上の仏陀である釈尊の教え)も、あらゆるものの「つながり」(因縁生起)を説きますので、宗教学と仏教の相性は良いのです。「正伝」の「正」には、ありのまま(眞實)をみる、極端を離れる(中道)、どこにでもあてはまる(普遍性)という意味がありますので、わたくしたちの「宗教学」も、その正しさを心がけます。
 到達目標(ねらい)  (1)限られた一生の時間内に、出会える人の数は限られていますが、海外へ旅行・赴任したり、国内のどこか(居住地・職場など)において外国人と交流する機会が増えつつある今日、ただ、一緒に写真を撮ったり、メールのやり取りをしたりするだけではなく、本当の意味での善い人間関係を築こうとすれば、相手が生きるよりどころとしている信仰生活を正しく理解し、尊重する必要があります。
 本講の受講生は、表立って宗教を話題にする機会は皆無(あるいは、敢えて慎むことが無難)だとしても、相手の生き方を知るのに不可欠な宗教知識を、身に着けられるようになります。その結果、受講前に比べれば、異文化の人々に対し、より深い好意的関心を持てるようになることでしょう。
 また、無宗教を標榜している人たちにも、信仰者と共通する生き方がみられるということにも、気付くことでしょう。

 (2)高校までの科目(世界史、地理、倫理など)で習った初歩的な基礎知識を補足・検証し、新聞・テレビその他のメディアでは誤って報道されている事柄(外国語の文字・発音とその和訳、カタカナ表記、情報そのもの)を指摘する講義内容から、受講生は、過去の学びを修正・更新することができます。それがさらには、本講の内容にもとらわれない、自分なりの積極的な学びへの意欲(例:「もっと、こんなことを調べて、その信憑性を確かめたい」といった気持ち)を生み出すことでしょう。

 (3)本講で紹介した異文化に対する違和感・共感・疑問などを通して、あなた自身の見方・考え方・生き方の個性を再発見できます。それが同時に、専攻・専攻外にかかわらず、大学で受講する、ありとあらゆる科目に対する取り組み方の視野を拡げ、科目相互の「つながり」を見つける切っ掛けとなることを、心より願っております。
 なぜなら、物事の間にある「つながり」こそが、革新的な技術を生み、個人と社会にとって有意義なものを想像・創造するためのヒントになるからです。
 授業スケジュール
第 1 回
授業の計画・内容 イントロダクション:
講義の概要、課題カードと、学年末行なう定期試験(評価してもらえる絶好のチャンス)のガイダンス。※プリント配布
準備学習
(予習・復習等)
教科書を開けて、関心のあるページを眺め渡しておきましょう。一覧表、写真・絵、索引などを参照しながら、「宗教」というものの多様性を把握しておいてください。
※ 教科書の口絵(宇宙からみた日本列島を撮影した、地球の写真)を初めて目にした瞬間の感想を、覚えておきましょう。世界を俯瞰する体験が、世界の諸宗教を学ぶ本講の「俯瞰」にも、つながるからです。

さらに、ご自分が思い描く「宗教」や「宗教学」についても、まとめておくと、履修し終えた学年末の時点での考えと、どう変わったのかどうかが、分かりやすくなります。
60分
第 2 回
授業の計画・内容 【第1部(第1回~第15回): 比較宗教の手法】

「宗教」と「宗教学」
準備学習
(予習・復習等)
既成概念としての「宗教」や「宗教学」の枠にとらわれず、その意味しうる、限りなく広範囲にわたる世界があるということに気付いてください。 60分
第 3 回
授業の計画・内容 「いのち」が成り立つ基本条件に、「宗教:」の本質をみる
準備学習
(予習・復習等)
教科書の5~6ページにみられる「自己」や「自分」という表現の意味について、ご自身がどう感じたか・考えたかを、まとめておきましょう。 60分
第 4 回
授業の計画・内容 諸宗教の「いのち」を構成するもの
準備学習
(予習・復習等)
教科書の84~87ページの一覧表を中心に、関連するページを探して、読んでおきましょう。 60分
第 5 回
授業の計画・内容 比較宗教の目的・方法・実利面
準備学習
(予習・復習等)
複数の宗教を比較する宗教学では、比較することで諸宗教の価値を平等に認めますが、世間一般にいう「比較」には、様々な弊害もみられますね。「比較」の長所・短所について、考えをめぐらせておきましょう。 60分
第 6 回
授業の計画・内容 諸宗教の行なわれる生活の場で配慮すべきこと
~教員自身が体験した事例の紹介~
準備学習
(予習・復習等)
信仰を持つかどうかにかかわらず、互いに文化の違う者どうしの関係を良好に保つための大切な配慮とは何かを、日頃の経験から、思い出してみましょう。 60分
第 7 回
授業の計画・内容 異文化(もしくは他宗教)の人への贈り物
準備学習
(予習・復習等)
文化圏の異なる人への挨拶状には、どんな工夫をすべきか、贈り物は何がよいのか、について、先ずは、ご自分で考えてみてください。(言い換えれば、相手が何を喜ぶか、嫌がるのかを、想像するということです。) 60分
第 8 回
授業の計画・内容 食生活にみられる宗教思想
準備学習
(予習・復習等)
何らかの「いのち」を摂取しなけれrば生きてゆけないのが、生きものの定めであることを踏まえ、今日、食べたものが何だったのかを、思い出してみましょう。 60分
第 9 回
授業の計画・内容 「いけにえ」よりも「あわれみ」
準備学習
(予習・復習等)
大切な「いのち」だからこそ捧げられた「いけにえ」の文化に、どんなものがあるのかを、調べてみましょう。 60分
第 10 回
授業の計画・内容 罪の「ゆるし」をめぐる諸問題
準備学習
(予習・復習等)
「ゆるし」を、どんな漢字で表現するのかによって、その意味がまるで違ってくることに、気付いておきましょう。 60分
第 11 回
授業の計画・内容 迫害の要因と、克服の諸相
準備学習
(予習・復習等)
信仰心が篤いほど受けやすくなる迫害に、どう対処し、克服するのか。宗教的な意味での「迫害」に、日常的な「試練」を置き換え、自分ならばどのように苦難を乗り越えてゆきたいか、について、考えましょう。 60分
第 12 回
授業の計画・内容 偶然と必然
~自然災害に対する人間の態度(その2)~
準備学習
(予習・復習等)
地震や津波で「いのち」が助かるかどうかの違いをどうとらえるのかを、課題図書の第1章を読みながら考えてみましょう。 60分
第 13 回
授業の計画・内容 「生者と死者」という既成概念
~自然災害に対する人間の態度(その2)~
準備学習
(予習・復習等)
人類の歴史において、はたして、「生」と「死」は、明瞭に区別されてきたのか、どうか。亡くなった人を「死者」と考えるべきかどうかを、検討してみましょう。 60分
第 14 回
授業の計画・内容 宗教等の相違を超えた、人間の「いのち」の輝きとは?
準備学習
(予習・復習等)
その人が輝いてみえるのは、どんな時なのか、について、先ずは、ご自身の経験から、できるだけ深く考えておいてください。 60分
第 15 回
授業の計画・内容 たった一度だけの生涯
準備学習
(予習・復習等)
たとえ、再生と再死を繰り返すインドの輪廻思想でも、いま・ここでの生涯は、一度限り。貴重なこの一生をいかに過ごすかについて、思いを馳せてご覧なさい。 60分
第 16 回
授業の計画・内容 【第2部(第16回~第30回): 仏教をめぐる諸宗教】

縁起する諸宗教の歴史
準備学習
(予習・復習等)
教科書62ページの一覧表、85ページと87ページの右端にあるマス目(6.):「宗教史における発祥・成立・展開の因果関係」の欄を参照しておきましょう。 60分
第 17 回
授業の計画・内容 思い・言葉・行ない
~身口意をめぐるインド・イランの思想~
準備学習
(予習・復習等)
教科書のゾロアスター教に関する章を読んでおきましょう。 60分
第 18 回
授業の計画・内容 ありのままをみて、鵜呑みにしない批判精神
~仏教の真実相と、ユダヤ人の教育方針~
準備学習
(予習・復習等)
教科書のユダヤ教に関する章を読んでおきましょう。 60分
第 19 回
授業の計画・内容 「聞く耳」を持つ人に説く教え
~聴衆のすべてを掌握できなかった仏陀とキリスト~
準備学習
(予習・復習等)
教科書のキリスト教に関する章(特に124・126ページなど)を読んでおきましょう。 60分
第 20 回
授業の計画・内容 母親との絆
~シッダールタ太子、大工イエス、の場合~
準備学習
(予習・復習等)
世界の偉人には、様々な伝説があります。彼女・彼らがなぜ。偉大な人物に成長したのかを、その生い立ちを踏まえて、考えてみましょう。 60分
第 21 回
授業の計画・内容 祖国の滅亡
~シャーキャ族の首都カピラヴァストゥと聖都エルサレム~
準備学習
(予習・復習等)
教科書の62ページ(年表)の「B.C.383以前」と167ページの最終行(3行分)とその周辺の内容を参照しておきましょう。 60分
第 22 回
授業の計画・内容 “偶像”という概念の諸段階
~仏教、ユダヤ教、イスラームの“偶像観”~
準備学習
(予習・復習等)
“偶像”の英訳は“idol”です。世間いう「アイドル」とはどんな存在で、どんな意味を持つのか、その特徴(長所・短所)について、考えておいてください。 60分
第 23 回
授業の計画・内容 親を早くに失うということ
~シッダールタ太子、孔子、ムハンマド~
準備学習
(予習・復習等)
親を早くに失った人の悲しみ、苦労が、人間としての成長にどう影響するのかを考えてみましょう。 60分
第 24 回
授業の計画・内容 人格化された聖典の文化
~シーク教と仏教の経典~
準備学習
(予習・復習等)
書物、特に、聖典と呼ばれるものに込められた長い歴史における人々の情熱が、どこからくるのか、について考えてみましょう。 60分
第 25 回
授業の計画・内容 神々が仏陀を守護する理由
~ヒンドゥー教と仏教、神道と仏教~
準備学習
(予習・復習等)
教科書のヒンドゥー教、神道に関する章と、仏教に関する章を読み、相互の関連性について、気付いておきましょう。 60分
第 26 回
授業の計画・内容 「いのち」ゆえに「いのち」を尊ぶ思想
~ジャイナ教と仏教~
準備学習
(予習・復習等)
教科書のジャイナ教(158ページ)と仏教(167ページ)を読み、両教の共通性を確認しておきましょう。 60分
第 27 回
授業の計画・内容 平和思想の背景にある戦乱の歴史
~心の安らぎを説く仏教~
準備学習
(予習・復習等)
宗教史における偉人が生まれ育った環境が、恵まれた、平和なものだった事例を、探してみましょう。 60分
第 28 回
授業の計画・内容 都会の思想と田舎の思想
~儒教と道教、そして仏教~
準備学習
(予習・復習等)
教科書の儒教と道教に関する章を読み、どちらにも、人の生き方に益するものがあることを学びましょう。 60分
第 29 回
授業の計画・内容 今を生きる「中今」の思想
~仏教と神道~
準備学習
(予習・復習等)
教科書の神道に関する章と最終節の「神道をめぐる諸宗教」を読んでおきましょう。どちらにも、世界の諸宗教との「つながり」を見出すことができるでしょう。 60分
第 30 回
授業の計画・内容 まとめ
※定期試験(計二問)についてのヒントを交えたガイダンス
準備学習
(予習・復習等)
この一年を通して、教員が、皆さん、ひとりひとりに向けて伝えたかったことを含めた、定期試験のヒントに言及しますので、よく傾聴してください。 60分
 履修上の留意点等 ※履修上の前提: 受講前の予備知識は、特にありません。知識は時として、先入観や偏見となり、かえって、真実を見失う原因となるからです。

 そもそも、宗教に関する事柄は、あらゆる人間生活の中に、既に多様な形でみられます。履修する人それぞれの生き方をとおして受け取られた講義内容の中に、その人にとって必要な「知識」ともいえるものを、探し当てることができればよいのです。

※履修上のルール: 前期から後期への流れは、教科書の構成に沿っていますので、一度でも欠席した場合は、該当箇所のページを補習しておくとよいでしょう。
 授業中は、教科書の本文・註、一覧表、写真・絵、年表、聖典のテキストとその解説文などを、縦横に参照する機会がありますので、素早くページを開けるようにしましょう。
 受講しながら、自身の心の声に耳を澄ませている時は、その思考内容を取り逃がさないように、ノートしておきましょう。大学生のノートは本来、板書を写すだけの受け身の姿勢からは生まれない、クリエイティヴなものなのですから。

※従来どおり、出席カードの裏面かメモ用紙に質問を書いて提出した人には、次回、A4用紙に応答を書いた回答書をお渡しします。課題の採点期間には、その総評を公表します。
 成績評価の方法
60 % 試験
レポート
小テスト
平常点
40 %
課題カード(提出期限は、最終回の講義日)



(1)4月当初から配布を開始するガイダンスのプリントに、使用する教科書の詳細、及び、課題カードと定期試験(教科書と課題図書の両方からの出題)についての注意点などが書かれています。
 ルールを守ったうえでの取り組み方(解釈)は、自由です。「こんなやり方をしてみたいのだが、大丈夫だろうか?」と迷ったら、相談に来ること。

(2)課題カードは、調べ物や報告書(リポート)ではありません。課題図書の内容を参考にしながらも、自らの発想と創造力を発揮するための場です。
 「カード」という名称にしているのは、はがきサイズの紙(コピー用紙などを切り抜いて作ってもよい。書式自由。裏面にも記入可)に書いていただくからです。

※教科書以外に課題図書を指定しているのは、日本列島のどこかで必ずまた起こる大規模な自然災害への危機意識を高めると同時に、「いのち」の「つながり」を重視する本講義の内容を、より実践的な意味で深めるため、なのです。普段の多忙な日々に紛れて、おろそかになりがちな点ですので、この際、真剣に取り組んでください。

 (3)問いに対する理解の深さ、独創力、文章力(推敲の跡がみられる文章、漢字の誤りにも注意)などをみたうえで、総合的に評価させていただきます。
 教科書/テキスト
書籍名 『比較宗教学ー「いのち」の探究』
著者名 田中かの子 出版年 2020 価格 3,100円
出版社 北樹出版 ISBN 978-4-7793-0280-0
備考
書籍名 『3・11-〈絆〉からの解放と自由を求めて』
著者名 田中かの子 出版年 2018 価格 1,700円
出版社 北樹出版 ISBN 978-4-7793-0581-8
備考
 参考書
 図書館蔵書検索 図書館蔵書検索
物事を多面的にとらえた柔軟な視点の著作(自然科学、人文科学などのジャンルを問わない)で、格調の高い文章や、すぐれた映像(映画など)を、折に触れ、ご紹介します。皆さんも、「宗教」や「宗教学」に関連があるかどうかにかかわらず、また、専攻している学問だけにとどまらず、どんなことにも関心を持って、広く、自由に、学んでください。
 学生による授業アンケート結果等による授業内容・方法の改善について  (1)教員の熱意が、真摯に受講してきた方々に、きちんと伝わっているのを確認でき、うれしく思います。

 (2)黒板のスペースは限られており、講義時間も制限があるので、板書したどこかを消しながら、重要な言葉だけを覚え書きするようになります。講義の流れに即して、どこにそれを記せば、わかりやすくなるのかを、積極的にクリエイトするのが、大学生としての、腕の見せどころなのです。板書の行間を埋めるのは自分の言葉であることを自覚して、板書を写せばよいとう、受け身の態度を卒業しましょう。

 (3)本講では、恒例の、教員による独自のアンケートを、学年末に実施しています。記名式であるにもかかわらず、忌憚のない意見や要望、忘れえぬメッセージなどが、履修生本人の肉筆で寄せられてきました。それよりも早期に行なわれている匿名式の「授業アンケート」は、まだまだ、参加人数が少ないようです。

※教員は、学生の履修成果を積極的に「評価」するための課題や試験を工夫します。同様に学生も授業アンケートでは、教員と自分自身の双方にとって、ためになるような、礼節ある回答・記述(前期からの講義内容を踏まえた、総合的かつ客観的な評価)を行なう責任があります。送信する前に、三度は、入力内容を見直しましょう。(『正法眼蔵随聞記』巻一、三参照)
 関連リンク
 実務経験がある教員による授業科目
 アクティブラーニング型の授業科目