船津 正悟
『配偶者選択の一規定因』
〜依存性と性役割を中心として〜
key word: 依存的態度、依存性、性役割
【問題】
どのような異性を恋愛のパートナーに選んでいくかという配偶者選択における要因のうち、外面とは別に依存性という内的要因も含まれるのではないかと考えられる。本研究では、関(1982)の「依存性は、人間に対する関心の向け方を記述するひとつの概念である」という定義をもとに依存性が男女間の性役割とどう関係し、配偶者選択をする際それがどのように影響するかを検討する。また、男性の場合、依存の対象として常に捉えられてきた母親像を女性にも求めているのではないかということも重ねて健闘する。
【方法】
被験者: 平均年齢21歳の男性24名、女性49名、合計73名を対象とした。
調査内容: 3種の質問紙でアンケートを行った。
<性役割> 日本版 Bem Sex Role Inventory(以下BSRIと略)を用い、7段階評定で回答を求めた。
<異性に求める性特性> 山口(1985)の男性性・女性性二側面測定尺度を用い、6段階評定で回答を求めた。
<依存度> 関(1982)の依存度の3尺度測定を用い、2件法で回答を求めた。
【結果】
3つの質問紙をそれぞれ平均値と標準偏差を求めた。男女の依存度では、女性のほうが男性より成熟している統合された依存が高かった。男女の性役割と依存性の相関関係を見るために相関係数を算出した。そのなかで女性の統合依存は高い相関を示した。
BSRIにおいて反対の性役割を持つ男女間の依存度では、女性性の高い男性は、統合依存が高く、依存拒否が低かった。一方、男性性の高い女性は、反対の場合でも大きな変化は見られなかった。
BSRIにおいて反対の役割を持つ者と本来の性役割を持つ同姓間の依存度では、女性性の高い男性のほうが統合依存、依存欲求が著しく高く、また依存拒否においても女性性が高いほうが低かった。
一方、異性に求める性特性での男性性・女性性の2側面測定では、男女とも親が持つ特性、親特性が一番高かった。
【考察】
本研究より、次の事が示された。
@男性のほうが依存拒否が高いことから依存する事を容易に受けいれられないことを示している。
A依存が自立の妨げになるという社会観念が男性の依存の成熟を遅らせる。
B女性の場合、依存を充分に満たす環境に置かれることが多く、自然と依存を満たす環境から自立を覚え、依存を成熟させていく。だからどんな性役割を持とうとも異存態度は変わらない。
C男性は、依存と自立を相対するものとし、女性は、共存し得るものとして捉えて行く。
D男性が持っている女性性を受け入れることが、依存を容易に受け入れられる。
E統合依存は、依存欲求を充分に満たす環境とはっきりした依存対象への分岐点の理解が必要。
F男性は、依存の成熟を獲得する為に配偶者を選択する。それは、幼いころ曖昧になった母親への足りなかった依存を探す為である。
【参考文献】
間宮 武 1979 性差心理学 金子書房