岡本 隆男
『現代青年の犯罪に対する罪意識』
key word: 青少年非行、犯罪及び非行行為の体験率、犯罪及び非行行為の許容率
【問題】
社会には、一般に、成人に対しては許容されているが、青少年に対しては、あるいはある年齢に達するまでは許容されていない行為領域が存在している。
しかし、行為によっては、身体的成熟の発達加速現象を背景として少なくとも青少年において、いわゆる許容年齢が低下してきていると思われる。そこで本研究では、現代の青少年達が犯罪及び非行行為についてどのような意識を持っているかを調べた。今回の調査では、非行体験を中高別、男女別に比較する事により非行および犯罪の体験率が年齢と共にまたは男女とではどのように変化するかを明らかにした。そして、今回は、体験だけではなく、そのような行為に対する許容性、過罰性についても尋ねた。それは、反社会的行為を彼らがどの程度の罰を与えるべきか、またはどの程度許し実行しているのかを明らかにする為である。
【方法】
1、調査対象
@中学生 私立土佐中学(高知県高知市内)に在学している中学2年生、男女50人。
A高校生 同じく土佐高校に在学している高校2年生、男女50人。(土佐高校は中高一環教育である。)
2、調査方法
@調査は無記名による自己報告法により学級内で一斉に行った。調査日時は1999年9月12日。帰りの学級会の時間を使わせてもらった。
A自己報告を求めた非行行為(犯罪ばかりではなく不良行為、問題行動も含む)は25の行為である。これは内山ら(1988)が行った調査を元にして作成した。
【結果と考察】
1、非行体験の年齢的変化 中高及び男女別比較
中学生、高校生の男女それぞれについて全体の人数の結果を表1〜12に示した。また、過去2、3年の間に少なくとも1度は行った事がある者の比率(体験率)を表13に示した。この体験率は、最高76.2%から0.0%まで分布しているが、総じて中学生よりは高校生、女子よりは男子、法律違反行為よりは不良的行為のほうが高い傾向にある。また、法律違反行為については、総じて体験率が低かった。不良的行為と異なり、中学生と高校生とでは、ほとんど違いが見られない。すなわち、法律違反行為の体験は、年齢とほとんど関係ないといえる。
2、各種反社会行為に対する許容性 中高及び男女別比較
各行為について「時にはしても良いし、その行為者を罰する事はない」と判定するものの割合(以下、許容者率と呼ぶ)を表14に示した。
総じて見ると、中学生より高校生が、女子よりも男子が、法律違反行為よりは不良的行為が許容率が高い。やはり、法律違反によって与えられる罰を考える為であろうか。次に過去の同種の調査結果と比較対照する事によって時代によって青少年にどのような意識の変化が見られるか調べたが、総じてそれ程の違いは見られなかった。
【参考文献】
@ 鈴木 眞吾 1984 自己報告法による非行体験の年齢的変化 科学警察研究所報告防犯少年編
A 青少年白書 (平成10年度版)