寺島 愛

『大学生の自己開示について』

〜親の養育態度と性差からの一考察〜

key word: 自己開示・養育態度・性差


【問題】


 自己開示研究とは「個人的な情報を他者に知らせる行為であり、相手にわかるように自分自身をあらわにする行為」であり、ジュラード(Jourard,S.M.)以来心理学の領域で様々な形で行われてきた。

 本研究では親の養育態度が子どもの性役割受容に及ぼす影響についても検討した上で、性別・性役割観と自己開示、親の養育態度と自己開示のそれぞれの相関関係について検討することにした。


【方法】


 被験者: 駒澤大学学生(1〜4年生 計144名)と親(計73名)

 手続き: 学生には榎本の自己開示質問紙、日本版BSRI、親の養育態度質問紙を、親には親の養育態度質問紙のみを配布し調査を行う。自己開示質問紙についてはより親しい方の親、一番親密な友人(男女問わず)の2通りの回答を促し、また親の養育態度質問紙については自己開示質問紙にて選択した方の親のイメージをもとに回答を求める。親に対する調査は、先に学生が選択した方の親に対して行い、後に投函法により回収する。


【結果】


 自己開示度を男女別に見ると男女ともに親に比べ友人に対する自己開示度の方が高く、親・友人に対する開示度のいずれも女性の平均値が高かった。

 自己開示度を性尺度別に見てみると、親・友人に対する開示度のいずれも女性性が強い人の平均値が最も高かった。各性尺度と自己開示間の相関係数を算出すると、女性性と友人に対する自己開示間に相関が見られた(図1)。

 親の養育態度については性別・調査対象を問わず受容的・子ども中心的かかわり尺度の平均値が最も大きくなった。また性尺度別に見ても同様の結果が得られた。各性尺度と親の養育態度の相関関係は、中性と責任回避的かかわり尺度との間に逆相関が見られた。

 自己開示と親の養育態度の相関関係については親に対する自己開示と受容的・子ども中心的かかわり尺度との間にのみかなりの相関があった。


【考察】


 本研究より、女性性が強い人ほど友人にたいする開示度が高くなることが示された。その開示度は「友達のうわさ話」「異性関係における悩み事」「好きな異性に対する気持ち」で高くなり、親しい友人との会話に、共に話題を楽しむだけでなく自分の悩みや気持ちについても共有し合うことを求めている事が伺われる。

 また子どもにたびたび話しかけ、子どもの言い分を受容し、子どもに常に気配りをするという親の態度が、子の親に対する自己開示を促している事がわかった。

 一方で親の無責任な、若しくは一方的で厳しいかかわりが子どもの人間として望ましい性質の獲得を妨げていると考えられる。

 以上の様に自己開示・親の養育態度・性役割の間にはそれぞれ何らかの相関関係が見られた。しかし本研究では成し得なかった、例えば自己開示研究の開示対象の幅を両親、男女それぞれの親しい友人に広げる等、今後各調査のより厳密な研究をしたうえでの新たな検討が求められる。


【参考文献】


 榎本 博明  1997 「自己開示の心理学的研究」 北大路書房

 榎本 博明  1983b 青年の自己開示 青年心理 37、141-147     他