待ち行列研究の新しい潮流 (4) いろいろな入力過程モデル

小沢利久
オペレーションズ・リサーチ(日本オペレーションズ・リサーチ学会誌),43,12,pp. 680-686 (1998)


 近年における待ち行列理論の展開のひとつの流れとして,対象とする入力過程モデルの多様化があげられる.例えば,マルコフ型の入力過程モデルとしては,最も基本的なポアソン過程から始まり,MAP (Markovian arrival process) に至るまでの展開がそれに当たる.また,最近では,長期依存性 (long-range dependency) や自己相似性 (self-similarity) といった性質を持つ入力過程モデルも研究対象として扱われるようになってきた.その理由を待ち行列理論研究の外に求めるのであれば,そこには応用対象となるシステムの複雑化と観測技術の高度化が見えてくる.特に通信の分野では,コンピュータ通信に代表されるような技術の高度化・複雑化が MAP といった入力過程モデルの研究を盛んにさせる契機となった.また,トラヒック測定技術の進歩は非常に高精度で大量のデータを提供し,それが自己相似性といった特徴を浮かび上がらせるもととなった.そこで,今回は,通信分野におけるこのふたつの流れを軸に待ち行列理論で用いられている様々な入力過程モデルを紹介していく.


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