数学特論4

トポロジー入門

講義概要:
この講義は、位相空間論、曲面の分類、基本群やホモロジー論といったトポロジーの基礎から始め、3次元多様体や結び目理論を含む応用的なテーマに発展していきます。数学の重要な概念である連続性や多様体の幾何学的構造を学びながら、実例や応用を通じてトポロジーの核心的な思想を理解することを目指します。初学者にも対応した基礎的な内容から始まり、応用的なテーマに進むことで、トポロジー全体の体系的な理解を促進します。
授業の到達目標:
1. トポロジーの基本概念を理解する: 位相空間、連続写像、基本群、ホモロジー群など、トポロジーの基礎的な概念や構造を正確に理解し、簡単な問題に適用できる。
2. 多様体や曲面の構造を把握する: 閉曲面の分類定理や3次元多様体の基本的な性質を理解し、トポロジー的なアプローチで幾何学的対象を解析できる。
3. 結び目理論や基本群の応用を理解する: 結び目理論の基礎や結び目補空間の基本群を計算し、それを用いて関連する幾何学的・トポロジー的な問題を解決する能力を養う。
4. ホモロジー理論の基礎を修得する: 単体的ホモロジー群やマイヤー・ヴィートリス完全系列を計算し、それを用いてトポロジー的な性質を明らかにする。
5. 3次元多様体の理論を応用する: デーン手術やJSJ分解を理解し、3次元多様体の構造に関する問題を解析できる。
6. トポロジーと幾何学の関係を理解する: 幾何構造の基本を学び、ポアンカレ予想や幾何化予想の内容とその影響を把握する。
7. 論理的思考力を鍛える: 定理の証明や構造の分類を通じて、数学的な論理の構築方法を修得する。
事前・事後学習の内容:
事前学習: 各回のテーマに沿って教科書を読み、定義や基本的な例を理解する。特に重要な定理や性質については、その背景や適用例を調査し、予習問題を解くことで基礎を固める。 事後学習: 授業内容を整理し、授業中の例題を復習する。新しい問題を解いて理解を深め、関連する定理や手法を他の具体例に適用して応用力を養う。また、教科書や参考文献を用いて不足部分を補強する。
授業計画:
  1. 第1回:トポロジーの基本概念
    位相空間と連続写像、連結性とコンパクト性、同相とホモトピー同値の定義と例。
    参考文献:James R. Munkres, Topology
  2. 第2回:曲面の分類
    球面、トーラス、射影平面、クラインの壺。閉曲面の分類定理の証明。
    参考文献:John Stillwell, Classical Topology and Combinatorial Group Theory
  3. 第3回:結び目の基礎
    結び目の同値関係。正則表示とライデマイスター移動。交点数、絡み数、橋数、解消数等の結び目不変量
    参考文献:村杉邦男, 結び目理論とその応用、Colin Adams, The Knot Book
  4. 第4回:多様体の基礎
    位相多様体、可微分多様体の定義と例。
    参考文献:松本幸夫, 多様体の基礎、John M. Lee, Introduction to Topological Manifolds、John M. Lee, Introduction to Smooth Manifolds
  5. 第5回:基本群の定義と計算
    基本群の定義、誘導準同型、不動点定理、基本群のホモトピー不変性。
    参考文献:松本幸夫, トポロジー入門、James R. Munkres, Topology
  6. 第6回:ファン・カンペンの定理
    自由積と融合積、ファン・カンペンの定理、群の表示、閉曲面の基本群、結び目補空間の基本群のヴィルティンガー表示。
    参考文献:松本幸夫, トポロジー入門、James R. Munkres, Topology
  7. 第7回:被覆空間と基本群の関係
    被覆空間の同値と基本群の共役、普遍被覆空間、被覆変換群、被覆空間の存在
    参考文献:松本幸夫, トポロジー入門、James R. Munkres, Topology
  8. 第8回:ホモロジー群の定義と計算
    単体的複体、ホモロジー群の定義、オイラー標数とベッチ数の関係
    参考文献:田村一郎, トポロジー、James R. Munkres, Elements of Algebraic Topology
  9. 第9回:マイヤー・ヴィートリス完全系列
    鎖準同型、マイヤー・ヴィートリス完全系列、閉曲面のホモロジー群
    参考文献:田村一郎, トポロジー、James R. Munkres, Elements of Algebraic Topology
  10. 第10回:3次元多様体の素分解とJSJ分解
    クネーザー・ミルナーの素分解定理、ザイフェルト多様体の定義、トーラス分解定理
    参考文献:森元勘治, 3次元多様体入門、Allen Hatcher, Notes on Basic 3-Manifold Topology
  11. 第11回:モース理論とヒーガード分解
    モース関数とハンドル分解、ヒーガード分解の存在、ヘンペル距離と幾何構造
    参考文献:森元勘治, 3次元多様体入門、Jesse Johnson, Notes on Heegaard Splittings
  12. 第12回:デーン手術とホモロジー球面
    デーン手術の定義、結び目に沿ったデーン手術で得られる3次元多様体のホモロジー群
    参考文献:茂手木公彦, デーン手術、Dale Rolfsen, Knots and Links
  13. 第13回:ポアンカレ予想と3次元多様体の分類
    ポアンカレ予想と幾何化予想、幾何構造、8の字結び目補空間の双曲構造、3次元多様体の分類
    参考文献:John Ratcliffe, Foundations of Hyperbolic Manifolds、William P. Thurston, The Geometry and Topology of Three-Manifolds、W.P. サーストン, 3次元幾何学とトポロジー
  14. 第14回:期末テスト
    これまで学んだことについてテストします。
教科書:
『トポロジー入門』 小沢誠
参考書:

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