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駒沢に竹波打ちて : 戦中から戦後へのあゆみ(山内舜雄編)

眼横鼻直(がんのうびちょく・げんおうびちょく)
Date:2020.12.01

書名 「駒沢に竹波打ちて : 戦中から戦後へのあゆみ」
編者 山内舜雄 
出版者 現代駒沢精神史刊行会
出版年 1962年10月
請求番号 377.2/258
Kompass書誌情報
出版者 現代駒沢精神史刊行会
出版年 2012年8月
請求番号 貸出不可資料(2F教職員著作コーナー)
Kompass書誌情報

巻頭に戦没者学生記念会(わだつみ会)の事務局長を務め、長らく本学の非常勤講師でもあったドイツ文学者(東京大学名誉教授)山下肇(1920-2008)氏の「序 流れに寄せて」を付し、第一部「戦中期」・第二部「戦後期」の二部構成よりなる本書は、編者の山内氏によれば太平洋戦争終結から17年を経た昭和37年、本学の創立八十周年を記念して編まれたものという。「大学と戦争」というと戦局の悪化に伴うそれまでの文科系学生の徴兵猶予の停止によるいわゆる学徒出陣が有名であるが、開戦前の昭和16年10月にはすでに大学・高等専門学校などの修業年限短縮が決定されており、これを広義の学徒出陣とすれば学生の戦争参加はいわばすでに常態化していた。山内氏も山下氏も昭和17年9月、繰り上げ卒業によって戦陣に赴いている。

禅宗の僧堂教育と軍隊の初年兵教育の親近性はつとに指摘されるところであるが、「駒沢大学の教練は都下で最優秀ということであった」(p51)とし、「あたえられたものにすなおに「なりきる」禅の精神の無自覚」(同上)を悔恨する若月正吾氏の一文、「仏教とは本質的に反する軍隊生活が、私が入隊一年前に経験した永平寺での特別安居の僧堂生活と類似点があることに気がついた」(p137)とする森田孝観氏の述懐、「皇軍修証義」(p123)について語る中西道瞻氏の一文は重く受け取る必要があろう。また高橋悟童氏の「ルソンの戦線から」は大岡昇平の『野火』や武田泰淳『ひかりごけ』とは別の迫力があって胸に迫る。ほかに見理文周氏の「戦中派の彷徨」も読み応えのある一編である(特にp81の朝鮮半島出身の同級生との会話、p75-76の徴兵検査時の検査官との問答など)。

本書は総頁数213ページに過ぎない小編ではあるがそこに盛られた内容はけっして軽いものではない。二度目の東京オリンピックが開催されることになっていた今年(2020年)は戦後七十五年の節目にあたるがこの年に本書にふれる意義は大きいものがあると信ずる。

仏教学部 教授 奥野 光賢

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