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大化改新 : 六四五年六月の宮廷革命(遠山 美都男著)

眼横鼻直(がんのうびちょく・げんおうびちょく)
Date:2021.01.01

書名 「大化改新 : 六四五年六月の宮廷革命」
編者 遠山 美都男 
出版者 中央公論社
出版年 1993年2月
請求番号 080/11-1119
Kompass書誌情報

今から27年前に出た中公新書であるが、日本の古代史に興味をもつ学生にはぜひ一読を勧めたい。さほど歴史に興味をもたない学生にも図書館にあるのでみてほしい一冊である。

大化改新、この事件自体については大方の学生は知っていることと思う。専横をふるった蘇我氏に対して、中大兄皇子と中臣鎌足が中心となって蘇我氏を倒し、政治を一新し孝徳天皇を中心とした体制をつくった古代史上の大事件というのが一般的な理解かと思う。

つまり、中大兄皇子がこの事件の主人公でヒーローであり、一方、蘇我氏は悪役ということになる。こうした評価は、現在でも通説といってよいであろう。遠山美都男氏は、これに対して、大化改新の主人公は、中大兄皇子ではなく、孝徳天皇であることを『大化改新』の中で主張したのである。わたしなどは、大化改新という有名な事件の評価はすでに決まっていて、異論はないものと思っていただけに、ビックリしたことを記憶している。それも主人公が孝徳天皇だというのであるからなおさらである。従来は、老齢の孝徳は中大兄皇子によって立てられたいわばロボットのような存在と思われていた。その孝徳が大化改新の黒幕であるというのである。

遠山氏は、古代史の専門研究者であり、大化改新に関しても多くの論点をあげているが、簡単にいうと、大化改新で最も得をしたのは誰かというと天皇になった孝徳だというのである。したがって、その孝徳を黒幕と考えるのが一番、妥当だというのである。いわれてみれば、なるほどと合点がいく。

その是非についてはともかく、『大化改新』は、どんなにきまりきったように思われることがらに対しても先入観をとりはらって考えてみることが大切であると語っているように思われる。そこにはまだ新しい視点が埋もれている可能性があるかもしれないのである。

文学部 教授 瀧音 能之

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