陸上競技部

DATE:2022.11.12陸上競技部

全日本3連覇!駒大初の大学駅伝3冠へ王手

221106_1-1
(撮影:宮澤希々)

第54回秩父宮賜杯全日本大学駅伝対校選手権大会が11月6日、愛知県・熱田神宮から三重県・伊勢神宮内宮宇治橋前までの全6区間106.8kmで行われた。
駒大は3区でトップに立つと、首位をキープしたまま5時間6分47秒の大会新記録でゴールし、3連覇を果たした。なお、この記録は従来の大会記録を4分以上塗り替える好記録だった。結果は以下の通り。

総合成績
1位 駒澤大学 5:06:47 ※大会新
2位 國學院大學 5:10:08 ※大会新
3位 青山学院大学 5:10:45 ※大会新
4位 順天堂大学 5:10:46 ※大会新
5位 創価大学 5:12:10
6位 早稲田大学 5:12:53
7位 中央大学 5:13:03
8位 東洋大学 5:13:10
個人成績
※( )は通過順位[ ]は区間順位
【1区】9.5km 円健介(仏4) 27:17 (4) [4]
【2区】11.1km  佐藤圭汰(経1) 31:13 (2) [2] ◎区間新
【3区】11.9km 山野力(市4) 34:01 (1) [5]
【4区】11.8km 山川拓馬(営1) 33:41 (1) [1] ※区間賞
【5区】12.4km 篠原倖太朗(地2) 36:00 (1) [2]
【6区】12.8km 安原太陽(地3) 37:27 (1) [4]
【7区】17.6km 田澤廉(経4) 49:38 (1) [1] ※区間賞 ◎区間新
【8区】19.7km 花尾恭輔(商3) 57:30 (1) [1] ※区間賞

戦評

1区

221106_1-2
(撮影:宮澤希々)

1区を任されたのは三大駅伝初出走となる円。監督からの「冷静にいけ」という指示通り、序盤から飛び出した青学大にはついていかず、2位集団の先頭で落ち着いたレースを進める。ラスト1キロ手前でスパートをかけ始め、中大と集団から抜け出す。しかし、後続を突き放し切ることができず、団子状態で2区の佐藤へと4位でタスキを繋いだ。

2区

221106_1-3
(撮影:大﨑陽凪)

各校のエース級ランナーが集う2区を任されたのはスーパールーキー佐藤圭汰。1区の円から4位でタスキを受けとり、先頭の大東大をとらえていく。力強くも冷静な走りで上位へと浮上。中盤、創価大とトップを争い、一時は首位へ躍り出る。残り1キロでスパートをかけるも、第2中継所手前で創価大に捉えられ、2位でタスキ渡し。しかし、結果は区間2位の31分13秒で区間新記録。次の3区山野へといい流れを作った。

3区

221106_1-4
(撮影:髙貫真裕)

2区佐藤からタスキを受け取ったのは当日のエントリー変更で3区を走ることになった主将・山野。首位の創価大と1秒差でスタートし、序盤は創価大・吉田との並走が続くも徐々に差を広げる。5キロ地点では約10秒差、7.5キロ地点で役25秒差と余裕の走りを見せつけ、首位に立つ。快調な走りを見せた山野は2位順大に38秒差をつけ、4区にタスキを繋いだ。

4区

221106_1-5
(撮影:伊藤美咲)

全長11.8キロの4区を走るのは三大駅伝デビュー戦のルーキー山川。2位と38秒差の1位で山野からタスキを受けとると、監督車も無い単独走が続くなか順調に距離を消化。ときおり苦しい表情を見せた後半も、大きくペースを落とすことなく5区篠原へタスキを繋いだ。2位との差を61秒に広げ、優勝へ大きく歩みを進める結果となった。また、山川は33分41秒で区間賞を獲得し鮮烈な大学駅伝デビューを飾った。

5区

221106_1-6
(撮影:横田瑞歩)

故障明け初レースとなった篠原は12.4キロの5区を担当。4区山川から1位でタスキを受け取り、2位の早大と1分11秒差でレースをスタートした。 序盤から軽快なテンポで進み、3キロ地点でもかわらず首位を独走。日差しが強く汗をかき始め、ときおり苦しい表情を見せたが自分のペースを保ち、区間2位の36分ジャストで6区安原へとタスキを渡した。

6区

221106_1-7
(撮影:清水呼春)

5区篠原から1位でタスキを受け取った安原。前回大会区間2位で走った安原は今大会でも6区を任された。2位の國學大とは1分38秒差でタスキを受け取り、第6中継所まで独走を続けた。区間賞を目標としている安原は前半落ち着いて入ったが後半ペースを上げることができず区間4位。しかし第5中継所であった2位との差を20秒広げ、田澤へタスキリレー。6区12.8kmを37分27秒と前回大会より3秒早い記録で走り切った。

7区

221106_1-8
(撮影:中西真雪)

6区安原から良い流れのままトップでタスキを受け取ったのは、7区大エースの田澤。田澤にとってこれが3度目の7区。コースを熟知し、強い日差しが照り付ける中、昨年度よりも大幅に速いペースでレースを進める。残り1キロ、顔には汗がにじみ苦しい表情ながら、勝負所の苦手な上り坂でもペースを落とすことはなかった。そのまま第7中継所に飛び込み、脅威の49分38秒という区間新記録。伊勢路では日本人2人目となる4年連続区間賞を獲得し、3年連続大会MVPにも選出された。

8区

221106_1-9
(撮影:宮澤希々)

田澤からタスキを受け取ったのは花尾。8区は全区間最長の19.7キロだ。花尾は昨年度の全日本でもこの最終区を任され、青学大に競り勝ち優勝のゴールテープを切っている。その花尾は今年も安定感のある走りを見せ、2位青学大と第7中継所では2分27秒あった差を 11.8キロ付近では3分14秒にまで広げた。2位とは3分21秒差のトップでゴールし、3連覇。また花尾は57分30秒で区間賞を獲得、三大駅伝で初めての区間賞獲得となった。

インタビュー

【1区】円健介

――自身の走りを振り返って
「まず最初に青学大の選手が飛び出したが、監督から『しっかり冷静にいけ』と指示を受けていたので集団で走った。しかし集団のペースが遅く、5kmの通過が14分40秒くらいだったので、先頭の青学大との差が30秒ほどに開いていた。そこで少しペースを上げないといけないと思い、自分が前に行ってレースを引く形になった。粘ることができたので、1区を走る選手としては最低限のことができたと思う。初出走ということもあり、今回大学駅伝を走れると決まって緊張した。だが、大学駅伝を走るというのが夢で駒大に入ったので、その夢を叶えられることに対してワクワクしていた。そのため、レースを楽しみたいという気持ちでレースに挑むことができた。自分以外の選手もすごく良い走りをしてくれて大会新を出せたので、チームのみんなを誇らしく思う」

――部内競争は激しくなっていると感じるか
「チーム内での競争は去年よりも激しいのと、競争するレベルも去年よりも1段階2段階くらいは一気に上がっていると実感している。今回全日本に出走したメンバーのタイムを見ていれば分かると思うが、主力の選手達も調子がよく、補欠の選手やメンバー外の選手も調子はいいのでチーム全体の調子はいい。箱根に向けてはこれからもチーム内での競争は高くなっていくと思う。自分としても最後の箱根になるのでまずはチーム内競争を勝ち取って行けたらと思う」

【2区】佐藤圭汰

――自身の走りを振り返って
「トップが見える位置だったので早めについて、自分のペースで行こうと思っていたが、創価大の葛西選手と同じペースで進んでいった。8キロくらいまでずっと一緒だったが、そこから葛西選手がペースを上げ少しきついと感じた。そこで焦るのではなく、ペースをしっかり刻んで後半上げていこうと考えた。しっかり9キロで追いついてラスト3キロから仕掛け、セーブをするようにと指示を受けていた。セーブして葛西選手と少し差を広げることができたが、ラスト直線でさされてしまって、区間2位ということになってしまった。区間賞という目標を達成できず、区間2位で最後に爪の甘さが出てしまった。優勝をすることと区間新記録を更新することができたことはとても自信になった。この自信を箱根駅伝に向けて継続していきたい。箱根駅伝は長い距離になるため、長い距離でもしっかり対応できるように練習や生活をしていき、自信をつけて過ごしていきたい」

【3区】山野力

――自身の走りを振り返って
「毎年、全日本は前半組が遅れて、後半組頼みということが多かった。今回は宿舎が一緒の1区から3区の3人で『前半組でしっかりトップに立つ』という目標を話し合った。今回、自分のところにタスキが来たのが1位と秒差だった。自分がここで先頭に立って、次は駅伝が初めての1年生の山川だったので、山川にどれだけ貯金が作れるかという感じで走った。いつもは繋ぎの区間を走っているが、今回は繋ぎの区間よりも、同じ区間に強くて速い選手がいっぱいいた。追いつかれても後半引き離す余力を残しつつ走っていたので、そこが全部区間順位に影響してしまったと思うので、反省。今日のレースでしっかり2冠目を達成したということで、チーム自体にも勢いがさらに付いてきた。箱根駅伝は1番難しい駅伝になってくると思う。この勢いのまま、故障者が増えないようにこれからやっていきたいと思う」

【4区】山川拓馬

――自身の走りを振り返って
「4区を走って、自分は(大学での)駅伝が初めてで緊張することもあったが、山野さんが1位で持ってきてくれた。そのまま1位で(5区へ)繋ぎたい気持ちが強いなかで前半を走った。14分1秒という自分のベストと同じタイムで走ってしまい、5~6キロくらいの所できつくなってしまった。もう少し落ち着いて入れば良かったという気持ちもあったが、逆にそれがいい流れになって、今回区間賞を取れるようないいレースになったと思う。自分の中で1番の欠点である序盤に突っ込みすぎてしまうところをもう少し考えて走れるようにしていきたい」

――区間賞を獲った感想は
「初めての駅伝で区間賞を獲れたというのは、強い選手がいっぱいいる中で自分の自信に繋がったのではないかと思う。タイムは設定タイムよりも1分近く速く走れたので、そこは嬉しい」

――部内競争は激しくなっていると感じるか
「自分もギリギリ全日本に出られるか分からない状態で、今回1学年の中でも自分と同じくらいの人が多くいた。日頃の練習で自分の方が全然できていない練習も多かった。どんどん部内でも競り合ったりしているので、油断は全くできない状態だと思っている」

【5区】篠原倖太朗

――自身の走りを振り返って
「自分はけがの影響もあって、出雲に出られず悔しい思いをした。全日本では、しっかりとチームの優勝に貢献するという思いを持って、スタートラインに立った。山川が初めての駅伝だということを感じさせないくらい良い走りをしてきてくれて、その流れに乗れた。練習もけが明けということもあり、完璧にできていたわけではなく不安もあった。監督が自分を使ってくれたので、しっかり応えようと思い、走って、区間2位というのは悔しい部分もある。しかし、1年生の時に比べれば、『自分は強くなっている』と改めて思った。反省するところはしっかりして、自信になるところは自信を持って、これからまたしっかりと練習を積んで箱根にいきたいと思う」

――部内競争は激しくなっていると感じるか
「自分は出雲の時にけがをしていて、それでも正直昨年度、(けがをしていた)山野さん芽吹さんがメンバーに入っていたので自分も怪我をしていてもメンバーに入れるという慢心があった。(出雲で)外れて改めて、部内での競争がレベルの高いものになったと感じた。
昨年は自分と佐藤(条二)だけ(三大駅伝エントリー)という感じだったが、新たに(2年生の)吉本とかもエントリーに選ばれたりして、学年としてもレベルが上がっていると思う」

【6区】安原太陽

――自身の走りを振り返って
「今年も昨年に引き続き6区を走らせてもらった。自分の中で区間賞を獲ることを大きな目標にして、今回のレースに臨んだ。他の選手のレベルも高く、目標としていたタイムを超えるレースになった。前半落ち着いて入ったが、後半ペースを上げ始めるのが遅くなってしまい、結果的に去年とあまりタイムが変わらなかった。前半から非常にいい流れができていて、その流れを崩すことなく田澤さんと花尾に渡すことができたのではないかと感じている」

【7区】田澤廉

――自身の走りを振り返って
「今回も7区を走らせてもらった。自分は出雲の時に調子が良くなく、エースとしての走りができなくて自分の中で思うことがあった。(全日本では)体調を整えて他の人を寄せ付けない走りを目標にした。走る前に自分の中で49分台を目標に走ろうと思った。状態も良かったということもあり(49分台を)達成することができてよかったなと思う。だが思ったより青学大の近藤選手が力をつけていて『距離を離せなかったな』というのが誤算。(近藤選手と)1分以上離すと思っていた。しかし、やはり彼も力を付けているなとは思いつつも、今後の箱根では駒大のエースとして他を寄せ付けない走りをしたいと思っている。チームも2冠とあと一つのところまできているので、チームとしてまた引き締めて箱根に臨みたいと思う」

――区間賞を獲った感想は
「自分は区間賞を獲って当たり前。全日本では4年連続区間賞がかかっていたので思い入れはあったが、受賞は当たり前だと思う。嬉しいは嬉しい」

【8区】花尾恭輔

――自身の走りを振り返って
「今回まだコロナ禍という中でこういう大会を開いていただき、とても感謝の気持ちで一杯。2年連続アンカーを走らせてもらって、昨年は競ってなんとか勝ったという感じだったが、今年はしっかり3年生として、上級生の自覚を持ってアンカーを走れた。大学生になって初めての区間賞を取ることができて自信になった。2冠することができ、次は箱根なのでしっかりとチーム一丸となって全員で頑張っていきたいと思う」

――区間賞を獲った感想は
「区間賞を獲れたことはすごく嬉しかった。タイムも追い風の中だったのである程度いいタイムで走ることができた」

大八木弘明監督

221106_1-10
(撮影:伊藤美咲)

――今回のレースを振り返って
「全日本はうちの大学にとって自信のある大会。今回は4区5区までの前半までに3番以内にいれば、と思っていた。昨年も6区7区8区で逆転して優勝していて、後半には自信があった。とにかく前半の5区までに、できる限り前にいたいと考えていた。今回は1区からずっと上位にいてくれたし、駅伝に初めて出場した選手たちもしっかり良い走りをしてくれた。そういう結果、追い風もあったと思うが大会新記録が出た。そこまで最後上がるとは思わなかったが、私たちの設定として5時間10分台を目指していた中でそれよりも良い記録が出た。私としてもびっくりしている。大学駅伝のレベルも上がっていかなくてはならないという思いがあったので、こういう結果が出るということは今の大学の選手たちの力が出てきたということだと思う。だからこそ、今回3連覇できたことは本当にうれしい。これで良い弾みになると思うので、次の箱根に向けて良い準備をしたい」

――勝因はどこの区間か
「2区。圭汰がいいところまで持っていって、山野がトップで走って。山川は度胸がいいので。あの子は練習で見ていても、大会でそんなに緊張するタイプでもなかった。使ってみたい選手だったので、本当に使って成功したと思っている」

――芽吹選手がいない中全国大会で完勝できるというのは、レースの度に駒大の強さを感じるが
「みんな出たい選手ばかりなので、誰かが外れればもう俺がやるという気持ちにチームがなっている。それこそ青柿とか吉本も。本当は赤星が1番走りたかったと思う。去年も走っているし、今年も本当は出てもおかしくなかったが、1年生を試したかった」

――指揮を取っていても駒大史上最速最強という感じはするか
「良いチームだと思う。みんなクラスに分かれて切磋琢磨して上がっているので、ライバル同士でいい練習ができている。それがいいのではないか」

――長い間選手を指導しているが、何か選手に気付かされること、そこから新しい学びはあるか
「いっぱいある。期待していた選手がやっぱり答えてくれるなど、こういう接し方をすれば、この子にはいいのだとわかる。同じじゃなくて一人ひとり人間的に違うから、どういう風に接したらいいのかを今の子供たちに教わった様に感じる。だから、前みたく『俺が!』って感じではない」

――箱根の戦い方は
「今までと違って準備はしている。ここが1番難しいので、山登り山下りを準備する目処がだんだん出来上がってきた。平坦を走る人は、全日本でも走っている子たちが準備をしながら次の箱根を狙っている」

――箱根に向けて
「箱根に向けては、またみんなで1つになると思う。選手たちが三冠を狙いたいと思っているところがあるので。それにやはり、叶えてあげようと思うからやっぱりそういうチームになってきている。頑張ってくれると思う。雰囲気は良い、自分たちが目指しているところだから。子ども達が絶対三冠やるんだ、監督に三冠のプレゼントをしたいと言ってくれていたのでありがたいです」

【戦評】
宮澤希々、大﨑陽凪、井上義郎、小川裕貴、横田瑞歩、坂元采夏、中西真雪、髙貫真裕
【執筆者】
宮澤希々

関連記事 - 「陸上競技部」カテゴリーの新着記事

一覧を見る