2003.04.26〜2005.01.07更新

言葉の泉 ことばの溜め池 ことばの大河

古典作品に見える四字熟語

ことばの実際

アイシヤウヒタン【哀傷悲歎】三千坊ノ大衆ハ舞童ヲ感ズル大音声、俄ニ哀傷悲歎(タン)ノ小音(コゴヘ)ニ成而、着衣(チヤクエ)ノ袖ヲ湿(ヌラ)シケル。〔『塵荊鈔』巻十一下四〇七J〕

イチニンタウセン【一人當千】そのほか。ゑつちうのぜんじもりとし。かづさの惡七兵衞かげきよ。なといふ、一人當千の。つわものともを。えらひてぞ、とりける。《仮名草子『弁慶物語』286G》

イチレンタクシヤウ【一蓮托生】隣国の門家馳集り、加賀国より城作を召寄せ、方八町に相構へ、真中に高き地形あり、爰に一派水上の御堂をこう/\と建立し、前には池水を湛(タタヘ)一蓮托生の蓮を生(しやう)じ、後には弘誓(ぐぜい)の舟をうかべ、仏前に光明を輝(カカヤカシ)、利劔即是(りけんそくぜ)ノ名号ハ煩悩(ぼんなう)賊ノ怨敵(をんでき)ヲ治(ち)シ、仏法繁昌の霊地に在家を立て、甍を並べ、軒を継ぎ、福祐の煙厚く、遍(ひとへに)此法を尊み、遠国波嶋より日夜朝暮仏詣の輩道に絶えず。《太田牛一『信長公記』卷十三328F》

ウチュウダイイチ【宇宙第一】(さて)も此車(このくるま)。牛(うし)をもかけず。人(ひと)もひかざれず。おのづからめぐりつゝ。都(ミやこ)をさしてのぼりけるハ。不思議(ふしぎ)といふにもあまりあり。されば。墨縄(すミなは)が。道(ミち)に匠(たくミ)なりし事(こと)ハ。千載(せんざい)の末(すゑ)の世()にも。かたり傳()へいひつたへて。飛騨(ひだ)の匠(たくミ)と稱(しよう)しよびて。宇宙(うちう)第一(だいいち)の木工(ぼくこう)なりとは。かたおひのミどり子()まで。聞(きゝ)しらぬ者(もの)もなかりけり。かくて人々(ひと/″\)ハ。都(ミやこ)にのぼりつきて。叡慮(えいりよ)の忝(かたじけな)き次第(しだい)を。奏(そう)し聞(きこ)え奉(たてまつ)りければ。父(ちゝ)(ミかど)ハもとよりにて。御母(おんはゝ)御息所(ミやすどころ)(おん)よろこび大(おほ)かたならず。〔六樹園飯盛『飛騨匠物語』卷六・あじろ車20オF〜20ウA〕

ウヰテンペン【有為転変】然共花飛蝶衰色節ヲ見テハ、有為転変ノ理ノ涙、眼ニ遮リ、葉落虫愁ル有様ヲ見テハ、老少不定ノ歎胸ニ満。〔『塵荊鈔』巻十一下三七八J〕

十五ノ今ノ秋ノ末、別ニ近キ月ノ前、二星ノ契ヲ猜(ソネ)ミツル、詞ノ花ノ露モ又、有為転変ノ風ニチリ、雲居ノ雁ノ音信モ、古郷ヲコソ忍ブラメ。〔『塵荊鈔』巻十一下三八六D〕

爰に大坂立初めて已来、四十九年の春秋を送る事、昨日の夢のごとく、竊(ひそか)に世間の事相を観ずるに、生死ノ去来、有為転変ノ作法ハ、電光朝露ノ如ク、唯一声(いつしやう)称念ノ利劔、此功コ(くどく)を以て無為涅槃(むゐねはん)の都に至らんにはしかじ。《太田牛一『信長公記』卷十三329K》《解釈》現実の世相の意。

カンソウセイフク【盥嗽盛服】壽玄齋(じゆげんさい)感心肝に銘じ、盥嗽盛服(かんそうせいふく)して急ぎ天~に詣(もう)づれば、夢の面影ありありと、社壇の扉すこし開け、異香(いきよう)四方に薫郁(くんいく)たり。《『狗張子』卷之七231H》

キキヤウヒヤク【奇経秘訳】帝二臣ニ勅シテ、奇経秘訳ヲ出サシメ。二比丘ノ持来ル経像ト共ニ是ヲ焼クニ、仏経独リ完然(クワンゼン/マタキ也)タリ。〔『塵荊鈔』巻十一下三九四C〕

キチクボクセキ【鬼畜木石】よし/\、恩を見て恩を知らざるは、鬼畜木石(きちくぼくせき)に譬(たと)へたり。《舞の本『八島』四二六A》

グチアンペイ【愚痴暗蔽】これに五つの魂有。魂志魄意神(こんしはくいしむ)なりき。此五つの形を具足するを、仏と申。五の形欠けぬれば、愚痴暗蔽(ぐちあんぺい)の畜類たり。《舞の本『大織冠』二九I》《解釈》智慧に欠け、無智の闇に覆われていること。

クワンクワコドク【鰥寡孤獨】山人(やまびと)ハ姫宮(ひめミや)と。もろともに。あづまに歸(かへ)りつきて後(のち)(くに)を治(をさ)めて。民(たミ)をあはれび。おのれを賤(いやし)くして。賢(けん)をたつとみ。鰥寡孤獨(くわんくわこどく)を扶持(ふち)し。孝子(かうし)の家(いへ)には。ミづから至(いた)りて。其門(そのかど)(はた)をたて。あるハ門前(もんぜん)(つゞミ)を置(おき)て。民(たミ)の愁(うれ)ふる所(ところ)を聞(きく)。賞(しやう)を厚(あつ)くし。罰(ばつ)をかろくして。大(おほき)に仁政(じんせい)を行(おこな)ひければ。一國(いつこく)の中(うち)に盗賊(たうぞく)なく。路(ミち)ゆく人(ひと)は。おちたるを拾(ひろ)はず。百姓(ひやくしやう)ハ田()を譲(ゆづ)りて。(くにたミ)父母(ふぼ)のごとくしたしみなづきて。有(あり)がたき(くに)の守(かミ)よと。めであふぎ称(しよう)しけり。〔六樹園飯盛『飛騨匠物語』卷六・あじろ車20ウD〜I〕

ケンドングチ【慳貪愚癡】佛の道(みち)を願(ねが)ひ給はんと思(おぼ)しめさば、慳貪愚癡(けんどんぐち)を捨()てゝ、慈悲心(じひしん)を肝要(かんよう)にし給はゞ、たやすく佛になり給ふべし。〔仮名草子『竹齋』上104B〕

コウガンリョクハツ【紅顔緑髪】昵敷(ムツマシキ)言ヲ交ヘ結シ契人モ一息ノ気止ヌレバ、夢ニ見シ人ニ不異。紅顔緑髪何処ニカ去シ、路ノ頭リノ土ト成リテ年々春草ノミ生タリ。〔『塵荊鈔』巻四上220B〕

ゴザウロップ【五臓六腑】秦ノ始皇ノ三尺鏡ハ五臓六腑ヲ移シ、始皇崩ジテ後、同ク共ニ失(ウ―)ニキ。〔『塵荊鈔』巻十一下395E〕

コラウヤカン【虎狼野干】竜女はいとゞあこがれて、「あら、恨めしの人の言葉や。野に伏し、山を家とする、虎狼野干(こらうやかん)の類(たぐひ)だにも、情は有とこそ聞け。《舞の本『大織冠』二八A》

コワウコンライ【古往今来】古往今ヨリ山下路頭ノ辺ニワ、柳サクラ、松、尽ク色ヲマシタゾ。《快庵的伝大中寺禅室内秘書』二・九一「風穴祖師心印」二五五H》

ゴンゴダウダン【言語道断】又歴代祖師ノ言句多シト云ドモ、言句ノ義理ヲ人習学セシムベキニハ非ズ。仏法ノ正理ハ言句ノ上ニ非ズト示ベキ為也。然レドモ言語道断ヲ宗旨トスルニモ非ズ。寂黙沈空ヲ指出スルニモ非ズ。〔『塵荊鈔』巻三165G〕

御座敷惣金、間毎に狩野永徳仰付けられ、色々様々あらゆる所の写絵(うつしゑ)筆に尽くさせられ、其上四方の景気、山海。田薗・郷里、言語道断(ごんごだうだん)面白き地景申すに計りなし。《太田牛一『信長公記』卷十五374G》

ザウジテンパイ【造次顛沛】信長公御威光に恐れ、濁世末代となつて、観世音の力も尽果て、当寺、狐狼野干(やかん)の棲とならん事を造次顛沛(ざうじてんぱい)歎くといへども叶はず。《太田牛一『信長公記』卷十四354E》《解釈》わずかの間。

サンセンユウコク【山川幽谷】或時天竺到リ給。西天十萬里山川幽境ヲ一時中天竺舎衞國給ヘリ。《『嚢鈔』卷第一「五節供」1》

シウアヒレンボ【執愛恋慕】かくて、執愛恋慕(しうあひれんぼ)のわりなき契りと見えつるが、三日も過ぎざるに、掻き消すやうに失せぬ。《舞の本『大織冠』三三I》

シウアヒレンボ【執愛恋慕】それは、皆/\、執愛恋慕(しうあひれんぼ)のわりなき契りとは云ながら、かゝる哀れは稀なるべし。《舞の本『大織冠』四一K》

シクヮウハッキョク【四荒八極】彼菊藥ナル因縁穆王八疋乘テ四荒八極ニ不至ト云所ナシ。《『嚢鈔』卷第一「五節供」1》解釈》四方の辺境と八方の全地域、全世界。

シチレイハチラク【七霊八落】此ノ隠密底ノ人ワ雷光ノサキニ先キ立ツタゾ程ニ、ヒツカトシタモ跡生也。何ント付タモ、七霊八落サガツタゾ。《快庵的伝大中寺禅室内秘書』二・九一「風穴祖師心印」二五六C》

シヤウラウビヤウシ【生老病死】武家の愁傷(シウシヤウ)ありときいて、弔ひにつかはす口上に、「御親父逝去の事、是非なし。しかし生老病死の習ひ、いたつて歎きあるまじく候といへ」。《咄本『醒睡笑』巻八、下224頁》《解釈》生老病死は世の習いですから、あまりお嘆きなさらぬようにと。

シヤウジヤウセゼ【生々世々】昔佛之物リシヒトハ、生々世々ユエナキ報受。朱砂取タリシ物、ツネニテアカク侍ケリ。《宮内庁書陵部藏『寳物集』34オ十二》《校合解釈》岩波新新日本古典大系所収の第二種七巻本(吉川泰雄氏蔵本、元は島原深溝家松平忠房旧蔵本:京都深草瑞光寺本とは親子関係にある)には、この箇所を「しかのみならず、仏の物をぬすめりし人は、生々(しやうじやう)に手なきものにむまれ、朱砂(しゆしや)をとりたりし者は、世々(せぜ)に指赤く侍りけり。」〔新大系卷第五200O〕として収載する。意味は仏の物を盗みし者は、生まれながらにして手のないものとして生まれ、朱砂をとった者は、この世にあるかぎり指を赤くなってしまうという。

其折(そのをり)からハ。遠(ゑんごく)へ罷(まか)り候所(ところ)おのれが留守(るす)をはかり候て。女(をんな)めと草飼(くさかひ)めがかたらひあハせ父(ちゝ)を殺(ころ)さんとたくみて候を。御(おん)かた/″\の力(ちから)を以(もつ)て父(ちゝ)が命(いのち)を救(すく)はれて候事(こと)生々世々(しやう/\せゝ)わするべく候はず。〔石川雅望『飛騨匠物語』卷六・からねこ07オC〜F〕

シヤウジンケツサイ【精進潔斎】我も是を追(おふ)て祈誓(きせい)せばやとおもひ、精進(しやうじん)潔斎(けつさい)して天狗をよぶ事一聲(いつせい)すると忽(たちまち)せのたけ壱丈餘(あまり)もあらんかと思ふ大天狗前(まへ)に立またがり、からびたる聲(こゑ)にてから/\と笑(わら)ひたて愚癡(ぐち)なる事を云ふ男かな。汝(なんぢ)が樣なるじやう乃こハき不合点者(ふがつてんもの)もめづらし。先達る藝術問答に其心のおもむく所こまかにときおくをば、汝も能みながら、又々左樣に近道(ちかミち)の術を得たきなどゝいのる事以(もつて)の外(ほか)のひが事なり。《『本朝弓馬要覧』藝術・上07@〜09ウ@》

ジヤウラクガジヤウ【常楽我浄】島より陸地へは反橋をかけさせ、橋の下には浦島太郎が釣舟、童男丱女(どうなんくわぢよ)が空舟(うつをぶね)を、五色の糸にて繋がせ、常楽我浄(じやうらくがじやう)の風吹かば、汀へ寄れと繋ひだるは、いつも夏かと見えにけり。《舞の本『八島』四〇七D》《解釈》「常住不変」で煩悩の苦もなく安楽で、「自在無碍」で、清浄であること。

シンタイハツプ【身体髪膚】事新しき申状、述懐に似たりと言へど、義経、身体髪膚(はつぷ)を父母に受け、莫大の時節を経ずして、故頭殿、御他界の後、孤児と成はて、母の懐に抱かれ、大和の国宇多の郡に赴きしよりこの方、一日片時安堵の思ひに住せず。《舞の本『腰越』三四七E》《典拠身體髪膚、受之父母、不敢毀傷、孝之始也。〔『古文孝経』開宗明誼章第一〕

スイブケフカ【酔舞狂歌】春ルニ逢ト云ヨリ、酔舞狂歌堕巾ト、太平ノ底ヲ云テ於イタ、木衛(コノヱ)関白、花山ノ院ノ金達ナドガ歌ツ舞ツシテ、衣衫ヲヲツルヲモ知ラズ、遊乱シタ。酔舞――ト云ハ、真トニカミナドモ乱テ、遊戯シタ人ダ。サテ天然スラズ、落チビレヌ人デハ無イ歟。《快庵的伝大中寺禅室内秘書』二・一〇八「曹山霊衣」二七八O》

セイレイミサイ【清麗微細】去程に、王城の鎮守を始め奉り、衣冠を脱ぎ替へ鎧を召し、清麗微細(せいれいみさい)の色の上には、夜叉羅神の形を現じ、雲に乗り、霞に乗り、一つは国家を守らんため、又は氏子を守護せん為、我氏子わが氏子、形に影の添ふごとく、先に立てぞ守らるゝ。《舞の本『百合若大臣』四七@》《解釈》清らかで美しく、云うに言われない色。

セツサタクマ【切磋琢磨】(あまつさ)切磋琢磨(せつさたくま)の功を終えずして、新法小利に走り、先賢の古術をすてて、専(もつぱ)ら奇兵詭譎(きけつ)を先とし、また正兵の極致あることを識(し)らず。《仮名草子『狗張子』卷之七、二二九F》

ゼンダイミモン【前代未聞】ニ三河ヲ流シ、前ニ小山ヲ抱ケル相好、前代未聞ノ見事也。〔『塵荊鈔』巻十一、下四〇六H〕

今度、因幡国取鳥、名城と云ひ、大敵と云ひ、一身の覚悟を以て、一国平均に申付けらるゝ事、武勇の名誉前代未聞(ぜんだいみもん)の旨、御感状をなされ、頂戴、面目の至り申すばかりなり。《『信長公記』卷十五・角川文庫372三》

ソクサンヘンド【粟散辺土】そも我朝と申は、国は粟散辺土(そくさんへんど)にて、小さしと申共、神代(じんだい)よりも伝はれる三の宝、これあり。《舞の本『百合若大臣』四五D》

ダイツウジザイ【大通自在】海の上にて馬を乗り、猛火(みやうぐわ)の中に身を隠し、大通自在(―つうじざい)に駆け廻れば、還国(げんこく)の兵(つはもの)、数を尽くして討たれけり。《舞の本『入鹿』七M》《》自由自在。

タンゴンビレイ【端厳美麗】、吾家ニ置(ヲ)クニ、七日ヲ経(ヘ)テ、端厳美麗ノ小女ト成而、放。乃翁ガ子トシテ赫姫(カクヤヒメ)ト名。〔『塵荊鈔』卷十一374F〕

テツタウテツビ【徹頭徹尾】赤体挨リ∨剱刃來徹頭徹尾一般齊從前慣テ∨フニ‖飢人ヲ|諸方臭口開ヲ|筋谷源二。《義堂周信『貞和集』巻八13オ@》

テンエンサクイ【天然作意】江州(がうしう)志賀の浦に姥あり。天然作意(てんねんさくい)、うまれつきて、かすり、秀句をいふに上手なり。《咄本『醒睡笑』巻八、下225頁》《》生まれつき工夫がよい。

テンガムサウ【天下無双】中古之比カヤ、俊惠法師ト云シ者、天下無双之物數奇ノ仁タリ。〔『塵荊鈔』卷十一、下三七八B〕

真俗相依ノ大法会トシテ、天下無双ノ梵筵也。〔『塵荊鈔』卷十一、下四〇七I〕

デンクワウセツクワ【電光石火】電光石火機難棒喝交馳何ソ太(ソムク)笑老胡無コトヲ∨計較要鉄網ト|∨珊瑚。《義堂周信『貞和集』巻七35ウ@》

デンクワウテウロ【電光朝露】(なに)につけても數(かず)ならぬ恨(うらみ)の介(すけ)は、わが身の程(ほど)を案(あん)ずるに、電光朝露(でんくわうてうろ)、石の火の光(ひかり)の内(うち)を頼(たの)む身の、しばし慰(なぐさ)む方(かた)も無(な)し。《仮名草子『恨の介』上・52E》

トウジヤウケンゴ【闘諍堅固】四月廿日夜に入り、寺僧老若七・八百人、武具を着し、闘諍堅固(とうじやうけんご)(もつぱら)にして、各(おの/\)観音堂に参り、御本尊に名残(なごり)を惜しみ、故郷離散を悲しみ、と一度に叫(サケブ)声諸伽藍に響き、雷電・なるかみのごとくなり。《太田牛一『信長公記』卷十四354G》

ななフシギ【七不思議】抑当社諏訪大明神は、日本無双(ぶさう)、霊験殊勝、七不思議、神秘の明神なり。《太田牛一『信長公記』卷十五・386I》

ナンギヤウクギヤウ【難行苦行】仏とならん其ため、難行苦行(なんぎやうくぎやう)せんもの、いかで善悪乱るべき。《舞の本『大織冠』三二D》

ニホンブサウ【日本無双】抑当社諏訪大明神は、日本無双(ぶさう)、霊験殊勝、七不思議、神秘の明神なり。《太田牛一『信長公記』卷十五・386I》

バンシイッセイ【万死一生】風邪の心地にもてなし、日を経て万死一生(ばんしーせい)のふりを学び給へば、宮中の上下、問はせ給はぬ人はなし。《舞の本『入鹿』七B》

ヒジヤウサウモク非情草木】建春門院は、七月八日かくれおはさしましにしかば、七夕のあかぬ別れにたちまさりて、一天くれふたがりて、麻耶夫人うつり給ひしゆふべにかはる事なく、非情草木にいたるまで、なげきかなしめる色にて侍りし。《『寳物集』卷第四158C》

ヒンクゲセン貧苦下賤】又、二十百千歳、黒縄地獄におちて、その業をつぐのひて、人界に生をうけたりといへども、五百世の中に、眼くらく、正念なくして、つねに貧苦下賤の家にむまれて、形みにくき者也。《『寳物集』卷第五227D》

フツキハンジヤウ冨貴繁昌】抑槇尾寺本尊は、西国(さいごく)三十三所四番目の順礼観音、霊験あらたなる大伽藍、冨貴(ふつき)繁昌、高野山の境内なり。《太田牛一『信長公記』卷十四353O》

フラウフシ不老不死是ノミナラス此谷ノ水ヲ汲テ飲ケル。民三百餘家皆病速ニ消滅シテ不老不死ノ上壽ヲ保ケリ。《『嚢鈔』卷第一・五節供1》※典拠『太平記』に、「これ()のみならず、この()谷の流れの()を汲みて飲みける民三百余家すなはち(速に)消滅して不老不死の上寿を保()。」とある。

フンコツサイシン粉骨砕身】只ダシ廿年モ卅年モ粉骨砕身シテ見デワ何ントカナ。《快庵的伝『大中寺禅室内秘書』二・七六「山鉄磨」227M》

ヘウキギョクコツ【氷肌玉骨】露寒シト云ガ氷肌玉骨ハ、ミヤビヤカナ肌ヱノコトデヲリヤル。《快庵的伝大中寺禅室内秘書』二・一一四「雪獅子話」二八六I》

ミヤウセウジシヤウ【名証自性】本手授テ後、志未尽ズハ亦授ベシ。但器用ノ仁多共、唯授一人ヲバ一人限也。名証自性ニテ知ベシ。此外再返品々口訣アリ。〔『塵荊鈔』巻九、下二八四J〕《》「名詮自性」。

ミヤウセンジシヤウ【名詮自性】(こと)に我朝(わがてう)の上宮(じやうぐう)太子、救世(くせ)菩薩(ぼさつ)と名()のり給へり。名詮(ミやうせん)自性(じしやう)の故(ゆへ)に愍念(ミんねん)衆生(しゆじやう)のおもひふかく國乃つゐえをかへりミ、人乃うれへをあハれミ給へるあひだ、太子の御すみか班鳩(いかるが)の宮(ミや)をバしるくふつかうし、ふかくしうしんし、おぼしめされざりけるなり。《卷第七15ウA》

ムグウジザイ無窮自在】守屋の能に、「守屋の首を斬る」と云所、こゝをば、節にて首を斬るべき所也。井阿弥生れ替りても知るまじき也。守屋と論議に云て落しべし。無窮(ムグウ)子細に云々て、「首を斬る」と云て、さつとして入るべき所也。《世阿弥『猿楽談儀』二八九E》《》のびのびと自由自在に。

ヨウガンビレイ容顔美麗】さてさて上人は、若(わか)き女房(ばう)の手をむずと取、「あら美(うつく)しの御手()かな。かゝる容顔美麗(ようがんびれい)にて、形(かたち)は春の花なれど、罪障(ざいしやう)の嵐(あらし)(はげ)しく吹落()ちて、夕にはあぐたとなる」。〔仮名草子『竹齋』上102A〕《》容貌がきわめて美しいさま。御伽草子の慣用句。《》「容顔美麗なる女房」〔『蛤の草紙』〕※「あぐた」は、「あくた【芥】」の誤刻。

ラウセウフジヤウ【老少不定】然共花飛蝶衰色節ヲ見テハ、有為転変ノ理ノ涙、眼ニ遮リ、葉落虫愁ル有様ヲ見テハ、老少不定ノ歎胸ニ満。〔『塵荊鈔』巻十一下三七八D〕

リヒフンミヤウ【理非分明】時頼入道の政道理非分明にして、奉行頭人評定衆、其掟少しは古風に立帰るかと見えしかども、諸国の守護地頭等は尚も私欲非義のことあり、訴論更に絶えやらず、時頼入道これを歎き、《中略》二階堂入道たゞ一人を召具し、密かに鎌倉を忍び出で、貌を窶して六十余州を修行し給ふこと三箇年、在々所々の無道残虐を聞出さんが為とかや。《『鎌倉北条九代記』第九、時頼入道諸国修行の条》

リロクミヤウモン【利祿名聞】たまたま武藝學問に志ある人も、利祿名聞(りろくみようもん)の爲にして、忠良の志つゆばかりもなし。《『狗張子』卷之七、229D》

レイケンシユシヤウ【霊験殊勝】抑当社諏訪大明神は、日本無双(ぶさう)霊験殊勝七不思議、神秘の明神なり。《太田牛一『信長公記』卷十五・386I》

ヲンアイベツリ【恩愛別離】終ニ遁ヌ路ヲ歎(ナゲ)カント、恩愛別離ノ悲ミ、老少前後ノ恨ミ、何事カ是ニ増ラント思取リ、長(タケ)ナル髪ヲ押切(キ)リ、 曾利古保須吾黒髪乃躬留不佐和涙乃海乃物爾古曾阿礼 トテ嬋娟タル秋ノ蝉ノ初髻(ハツモトユイ)ヲ剃落(ソリヲロ)シ、宛転(エンー)タル峨眉ノ黛ノ匂ヲ洗イ棄(ス)テ、水旱{干}大口引換(カ)ヘテ、濃墨染ニ身ヲ窶(ヤツ)シ、三皈五戒ヲ持チ給。〔『塵荊鈔』巻十一、下四〇八F〕

 

参考資料

嚢鈔』(大東急記念文庫藏、古辞書叢刊)

仮名草子『弁慶物語』(室町時代小説集)

仮名草子『恨の介』(岩波日本古典文学大系)

仮名草子『竹齋』(岩波日本古典文学大系)

仮名草子・釋了意著『狗張子』(元禄五(1692)年・古典文庫)

漢詩集 義堂周信貞和集』(重刋貞和類聚祖苑聯芳集、嘉慶二年)

軍記・太田牛一『信長公記』(角川文庫)

世阿弥『猿楽談儀』(岩波日本思想大系24)

快庵的伝大中寺禅室内秘書』二(後近代体究所編・小林印刷出版)

塵荊鈔』(国会図書館蔵、古典文庫本文翻刻)

咄本『醒睡笑』(岩波文庫) 

仏教説話集『寳物集』(岩波日本古典文学新大系)

北条九代記』(内閣文庫藏・延寳三(1675)年十月刊)

本朝弓馬要覧』藝術(天明七(1787)年丁未八月刊)

舞の本『入鹿』(岩波日本古典文学新大系)

舞の本『腰越状』(岩波日本古典文学新大系)

舞の本『大織冠』(岩波日本古典文学新大系)

舞の本『八島』(岩波日本古典文学新大系)

舞の本『百合若大臣』(岩波日本古典文学新大系)

読本・六樹園飯盛(石川雅望)『飛騨匠物語』(文化六(1809)巳已年版本)

 

言葉の泉 ことばの溜め池 ことばの大河