<1998年3月8日更新>

洒落ことば集(NEW)

1.「すいことば」刷り物

新版かわりもんく“すいことば”大坂まつや町塩善板

おほきなあほうで    ばがある

ざいしよのとうりめしで うへしたくらふてじや

いなり山のこたつで   きつあたつでじや

すつぽんのくさつたので まるでいかぬ

ほしみせのねつけで   ふとんのうへにじや

まちのやついで     だいぐちまはしてじや

みちのなかのざいもくで きこゑてじや

やまぶしのやどがへで  ほうみてじや

さこばのしけで たいなしじや

ゆきどうふのしんていで 火の中水のそこまでじや

たいこやのもちつきで どんつくじや

うとんのかみなりで きらりじや

にょうぼうのきちがひで つまらん

はをりのひもで むねにある

るすのまのかきだしで くゝりつけてじや

おしやかのうぶゆで あまいおうたじや

ぬりはしとろゝで いつかうかゝらん

ながしのたきゞで きがわるい

にわかのくろごで くびだけじや

れんじのまどで てらされてじや

ちろりのさけで のじがない

てらこのひるあがりで みうちがくろい

のりかいもので みにつかぬ人じや

こじきの正月で きたなりじや

いなりのすきだちて たまがへりじや

すもふとりのふともゝで すれあふてじや

へたなあみうちで いなしてじや

うどんやのかつをで だしぬいてじや

いけだ川のしぶながしで あいかなわん

むまのしやうべんで ぢがほれてじや

そうれいのちやうばで いふほどつけてじや

からのあんまで ぞうもんでじや

みこしのぼうで ちやうさいぼうじや

はをりのもんで ひとつもんじや

こぎやうぶねで ふねでふねをこぐのじや

ほうそうみまいのたいで ぴんぴんしてじや

やろうびうちで しりがかねじや

こしぬけのもろぐいで ゐぐひじや

ぢやうせんゑとりつきで にわかあめじや

むめぼしのおうずで すいがつてじや

ないしやうのおならで ころしてじや

いしかけのうなぎで あなづつてじや

ひいけのたどんで つちがのかぬ

げいこのとこいりで ひらいものじや

しろざけのさかづきで ゑらなめじや

とんびのふんで かゝりしだいじや

だるまのかけぢで こしがない

やうきうのじやうずで ようあてたじや

かわながれのごもくで くいにかかつてじや

いもやのうりきりで ほつとりしまいじや

うぢのゆふぐれで ちゃちゃいれてじや

しばゐのうへ木で とんとねがない

きつねのうぶやで さんくわいじや

つきよのがざみで みがない

ざいしよのけんくわで しちやたゝいてじや

とうふやのしやくしで からおだてゝじや

やうづのさかなで みがいんでゐる

ざいしよのかごかきで こしがすはらぬ

おにのけんゑつで ひとばつかりじや

大ぶつのはしらで きがふとい

<以上一枚刷り物>

2.江戸期「大阪」の洒落ことば

川流れのゴモクで杭〔くい〕にかかってる

便所の火事でやけくそや(せんちのくわじでやけくそ)

赤子の行水〔ぎょうずい〕たらいで泣いている

唐人〔とうじん〕のおいどでからけつ

太鼓屋〔たいこや〕の餅搗〔もちつ〕きでどんつく

道中〔みちなか〕の材木で木越えてじゃ

仲仕〔なかし〕の前垂〔まいだれ〕でわかったある

宇治の夕暮れで茶々入れてじゃ

鉄槌〔かなづち〕の川流れで頭〔あたま〕が上がらぬ

北国〔ほつこく〕の雷〔かみなり〕で北鳴り

烏の昆布巻〔こんまき〕でかか巻かれ

馬場〔ばんば〕の柿の木でなっとらん

やもめの行水〔ぎょうずい〕で勝手に湯〔ゆう〕取れ

柳の虫で木に入った

按摩の新兵衛〔しんべ〕はんで按新

大丸の暖簾〔のうれん〕釣りで大きなほげた

女湯の漆喰〔しつくい〕でぬかすがえらい

大和の吊〔つる〕し柿でへたなりに固まってる

肴屋のごみ箱であらたまってござる

土左衛門の川流れで杭〔くい〕にかかって動〔いの〕かん

土左衛門の川流れで呑むほど呑んで杭にかかってる

痔〔じ〕の膏薬〔こうやく〕でしりにはさんでる

輪替屋〔わがえや〕の前垂で輪摺れた

清正の雪隠〔せんち〕入りで槍放し

七月の槍でぼんやり

焙烙〔ほうらく〕の掃除でちょっと物炒〔ものい〕り

難波〔なんば〕の火事で木津〔きづ〕がない

死んだ亀さん放しにならん

唐人〔とうじん〕の塩はまりで唐〔から〕いのうからいのう

苧屋〔おー〕の看板で、おおおお

竹屋の火事でぽんぽん言うてる

狼の睾丸〔きんだま〕でこわくてさわられん

石屋の宿替で重い重い

乞食〔こじき〕の正月であもないあもない

冬の蛙でかんがえる

お寺の地震で堂ぶるい

雨降りの太鼓でどうならん

手水鉢〔ちょうずばち〕の金魚で杓〔しゃく〕にさわる

つんぼの立ち聞きそりゃ聞えん

傘屋〔かさや〕の丁稚〔でっち〕で骨折って叱られる

乞食〔こじき〕の虱〔しらめ〕で口で殺す

鼓〔つづみ〕に槍でぽんつく

前栽〔せんざい〕の松の木で塀越〔へーこー〕してる

釣れぬ魚〔うお〕釣りあした来い

幽霊〔ゆうれん〕のこっつりこんでたよりない

稗島〔ひえじま〕のお医者はんであかんさん

入口の蜘蛛〔くも〕の巣で顔にかかる

池之端〔はた〕のずいきでいけず

ちんばの他所行〔たしょい〕きでひきづめ

上町〔うえまち〕の井戸で深い仲や

安物〔やすもん〕のお稲荷さんでとりえがない

馬の糞で段々

貧乏な肴屋〔さかなや〕で小ぶりや

地黄煎屋〔ぢようせんや〕の取りつきで俄か飴じゃ

石かけ蛍で奥で光ってる

江戸もどりの土産で海苔が来た

飛脚の川はまりで状〔じょう〕べったり

朝鮮攻めでからさわぎじゃ

干店〔ほしみせ〕の根付けで布団の上にじゃ

長崎のしびりで京とい物じゃ

恵比寿のとんどで笹焼いてじゃ

両替屋〔りょうがえや〕のごもくでさしくたびれたじゃ

いかのぼりの日の丸で尾が出る

乳母〔うば〕の出替りでぼんさらばじゃ

やもめの行水〔ぎょうずい〕で湯とりがない

布袋〔ほてい〕のちんぽでもとが知れぬ

腹ぼての雪隠〔せんち〕であなが見えん

芋屋の娘で目で殺してじゃ

六匹の鼠でむちうちじゃ

蛙〔かいる〕の行列で向う見ずじゃ

鮪〔はつ〕の打ちかぎで身に引っかけてじゃ

鮪〔はつ〕のまな板でえらあぶらじゃ

風呂屋の銭取りで見おろしてじゃ

からかさ天狗風で舞い上がってじゃ

隠亡〔おんぼう〕火箸で人いろうてじゃ

地獄の摺鉢〔すりばち〕で人あえてじゃ

ばっちょう笠小便でばりつかしてじゃ

・「ばっちょう笠」は、「番匠笠」で真竹の皮を張った笠。これに小便を掛けるとバリバリと音がするところから「ばりつかす」と洒落ていう。

紐〔ひも〕ない眼鏡〔めがね〕で 鼻にかけてじゃ

・「眼鏡」は江戸時代には使われていて、紐で耳にかけていた。紐のない眼鏡は、鼻にかける。「鼻に掛ける」とは、地位・身分・富・才幹・勢力などおごって誇ることをいい、このような人物を洒落ていうのである。

燃えくいの身投げで しゅつと消えじや

明家〔あきや〕の雪隠〔せっちん〕で こえなしじゃ

狐の雪隠〔せんち〕で くゎいこくじや

・「くゎい」は狐の鳴き声。

おとがいの雫〔しずく〕で 口へ這入らぬ

焼き物の巾着で 口があかぬ

焼き物のお半で 負われどおし

猿の小便で 木にかかる

生木〔なまき〕の筏〔いかだ〕で 木が浮かん

ところてん拍子木〔ひょうしぎ〕で 音無し

三番叟〔さんばそう〕の尉〔じょう〕で えら踏みじや

ぞめきの引摺〔ひきず〕りで うすなってじゃ

奴〔やつこ〕の仕着せで だいなしじゃ

紙屋の反故〔ほうぐ〕で しわくたじゃ

大師〔だいし〕巡〔めぐ〕りの弁当で 持ってまわってじゃ

池田の牛で 伊丹〔いたみ〕入る

・落語に『池田の牛ほめ』というのがある。

池田川の渋流しで 鮎〔あい〕かなわん

みっちゃのまいで 穴うめてじゃ

月見の鼠で芋ひいてじゃ

犬の糞〔くそ〕の御用札で いらいてなしじゃ

大名の駆落ちで おかちない

鍛冶屋の飯〔めし〕で でけしだい

お釈迦の産湯〔うぶゆ〕で あまいお方じゃ

辰巳の渡しで あまくちじゃ

葬礼の帳場で 言うほどつけてじゃ

百万遍の親玉で いただいてじゃ

下手な網打ちで いなしてじゃ

・「網打ち」は、「投網〔とうあみ〕」のこと。へたくそな網打ちは、魚を捕るどころかいなしてしまう。「いなす」は「逃がす」にけなす意の「いなす」をかけていう。

深草の名物で うちわばっかり

在所の行李飯〔こうりめし〕で うえした食てじゃ

信長のかいなで 小田ててじゃ

材木屋のしけで 木がきいた

大仏の柱で 木が太い

欝金〔うこん〕の雷〔かみなり〕で きらいじゃ

太鼓屋の下職〔したしょく〕で どうしている

親子の喧嘩で こうくらしている

達磨の掛字〔かけじ〕で 腰がない

在所の駕〔かご〕かきで 腰がすわらぬ

嬢〔いと〕さんの癇癪で 琴わりじゃ

内証〔ないしょ〕のおならで 殺してじゃ

狐の産屋〔うぶや〕で さんかいじゃ

幽霊の手討〔てうち〕で しがいがない

角力取〔すもうとり〕の太股〔ふともも〕で すれ合うてじゃ

高野山〔こうやさん〕の雪隠〔せんち〕で 底が知れん

雑喉場〔ざこば〕のしけで 鯛なしじゃ

真言寺〔しんごんでら〕の空家〔あきや〕で だいじない

下女〔おなごし〕の昼前で たきつけてじゃ

鳶〔とんび〕のふんで かかり次第じゃ

うどん屋の鰹で 出し抜いてじゃ

宇治の挨拶〔あいさつ〕で 茶にしてじゃ

れんじの窓で 照らされてじゃ

お寺の色事で 堂でもよい

いかきに小便で とんとたまらん

月夜のがざみで 身がない

芝居の植木で 根がない

肴屋の打鉤〔うちかぎ〕で 引っかけてじゃ

鬼の犬悦〔けんえつ〕で 人ばっかりじゃ

・「犬悦」は、反吐を吐くこと。

稲荷の杉立〔すぎだち〕で たまがえりじゃ

馬の頭で ひんずじゃ

芋屋の売り切りで ほっこりしまいじゃ

六十六部で 前がかねじゃ

すっぽんの腐ったので 丸でいかん

つんぼの芝居行きで 見たばかりじゃ

糊かい物で 身につかん

糊こしの古いので すいの果てじゃ

甘酒の上手〔じょうず〕で かたいれじゃ

面屋〔めんや〕の火事で 顔やくじゃ

火鉢の居眠りで 顔やくじゃ

蕎麦屋の徳利〔とっくり〕で くくりつけじゃ

目のない鋸〔のこぎり〕で 切っても切れん

梅干しのしんまいで すいがってじゃ

3.現代語の洒落ことば集

 

慣用表現による洒落ことば

 立てば食欲、座ればベタン、歩く姿に無理がある。

もとの慣用句は美人形容の常套句である「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」で、「シャクヤク」を「ショクヨク」、「ボタン」を擬態語「ベタン」、「ゆり」を「ムリ」と洒落て無細工な元美人を設定した。まことに言い得て妙の感であり、当人にしてみれば「あなた私をそんな風に見てたのね」といったところか。

<以下続けて収録予定>

<1998年3月8日更新>

 

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