2003.10.05〜2005.06.28更新
国語史参考資料
紀田順一郎著『日本の書物』<紀田順一郎著作集(三一書房 , 1998.2刊)所収>。検索語「古典、古い書物」。に見える八十二篇の資料
1、『古事記』太古のロマン。[14頁]。古代⇒「吾と汝と天の下」「日本神話の独創性」「原稿用紙六十枚の原典」
2、『風土記』古代⇒人の哀歌。[20頁]。古代⇒「歌垣に芽生えた愛」「語らいに時を忘れ」「万葉歌人も執筆?」
3、『日本書紀』古代⇒史の虚実。[26頁]。古代⇒「神秘的な童女」「迫真の暗殺場面」「広げて二百数十メートル」
4、『万葉集』もう一つの日本。[32頁]。古代⇒「古雅なリズム感」「激しい慕情表現」「最古の写本は御物」
5、『日本霊異記』古譚の宝庫。[37頁]。古代⇒「応報即決主義」「描ける女に欲を生ず」「手すさびが国宝に」
6、『竹取物語』天女幻想。[42頁]。古代⇒「重労働としての夜這い」「モデルとなった貴族」「竹取の翁の正体」
7、『古今和歌集』天地を動かす歌。[47頁]。古代⇒「“君が代”の起源」「生きとし生けるもの」「三百年後の後継者」
8、『伊勢物語』王朝の色好み。[52頁]。古代⇒「もう一つの『伊勢物語』」「胸しめつけられる叙情」「女心に灯火を……」
9、『土左日記』古代⇒の船旅。[57頁]。古代⇒「瀬戸の海賊におびえて」「死児の齢をかぞえて」「かな文学の模範」
10、『将門記』叛徒の墓碑銘。[62頁]。古代⇒「首塚の怨念」「造反將軍の興亡を描く」「雄壮な軍記文学の第一号」
11、『枕草子』誇り高き才女。[67頁]。古代⇒「宮廷女人の教養」「“おかしな女性”の名文」「孤独な死を遂げる」
12、『和泉式部日記』恋多き女。[72頁]。古代⇒「噂の女流歌人」「ふれなば落ちん」「三系統ある写本」
13、 『源氏物語』後宮の光と影。[77頁]。古代⇒「光源氏は年金受給者」「落ちにくい女」「宮内庁にある完本」
14、『更級日記』女性愛書家の生涯。[82頁]。古代⇒「書物を求めての旅」「后の位も何にかはせむ」「三重の箱に保存」
15、 『大鏡』栄華の軌跡。[87頁]。古代⇒「徹底した閨閥集団」「官位への執着」「よき時代への郷愁」
16、『梁塵秘抄』平安の流行歌。[92頁]。古代⇒「遊ぶ子どもの声」「マニアだった法皇」「焼失した原本」
17、『堤中納言物語』王朝人のいぶき。[98頁]。古代⇒「男の“色香”」「近代的性格の女人」「写本は五十部以上」
18、 『今昔物語集』王朝のワイルド。[103頁]。古代⇒「目をそらさぬ神経」「紫式部も卒倒か」「完揃いのない写本」
19、 『山家集』悩み多き聖のうた。[108頁]。古代⇒「透明な世捨て人」「高嶺の花と一夜ねて」「腰抜けか聖人か」
20、 『方丈記』小さな巨編。[114頁]。中世⇒「四畳半の庵の中で」「孤独な偏屈者」「二十三枚の証言」
21、 『平家物語』貴族の挽歌。[119頁]。中世⇒「人生の“星の時”」「生臭い人間のドラマ」「めくら法師の台本」
22、 『金塊和歌集』無垢の歌。[125頁]。中世⇒「非情な政治環境」「心の心を詠める」「山は裂け海はあせなむ」
23、 『小倉百人一首』妖艶のうた。[130頁]。中世⇒「秋はかなしき」「日本人の好みの抒情」「宮内庁に最古の写本」補遺『小倉百人一首』
24、 『吾妻鏡』覇者の交替。[135頁]。中世⇒「卑小なる死」「中世の開幕」「合意の作り話」
25、 『十六夜日記』老母の執念。[140頁]。中世⇒「尼僧の長旅」「正室と側室の暗闘」「旅の歌日記を集成」
26、 『正法眼蔵』山は是れ山。[145頁]。中世⇒「悟法の境地」「永遠の古仏の道」「水に月のやどる……」
27、 『歎異抄』悪人の慰め。[150頁]。中世⇒「越後への流罪」「性に悩んで回心」「他見をはばかる書」
28、 『蒙古襲来絵詞』神風と恩賞。[156頁]。中世⇒「恩賞の基準」「早いのが取り柄」「皇室の御物となる」
29、『とはずがたり』鎌倉一代女。[161頁]。中世⇒「六百数十年埋れた書物」「オール男性の標的」「血の出るような生臭さ」
30、 『徒然草』乱世の孤独。[166頁]。中世⇒「久米仙人傳説」「生臭坊主への転身」「みごとな筆跡の写本」
31、 『神皇正統記』逆流の孤独。[171頁]。中世⇒「“正統”論議をめぐって」「日本人には稀な執念」「一冊の書物は残った」
32、 『菟玖波集』人生の四季。[176頁]。中世⇒「本能寺の連歌」「月残る狩場の雪」「趣味と実益を兼ねて」
33、 『太平記』悪黨の肖像。[182頁]。中世⇒「楠公像の由来」「ゲリラ隊の頭目」「半世紀の記録」
34、 『曾我物語』怨念の書。[187頁]。中世⇒「水に流せぬ話」「人間性の無気味さ」「盲瞽女が原作者」
35、 『義経記』判官びいき。[192頁]。中世⇒「牛若丸像の裏に」「大の弁慶あやまった」「紅涙をしぼる切腹場面」
36、 『風姿花伝』芸道一代。[197頁]。中世⇒「奥州の木賊刈り」「美童として寵愛」「六百年目に全公開」
37、 『狂雲集』禅と風流。[202頁]。中世⇒「一休の口碑伝説」「破戒僧の抵抗」「美人の森に迷う」
38、 『早雲寺殿廿一箇条』覇者の条件。[208頁]。中世⇒「睡眠時間の歴史」「疾風迅雷のごとく」「有りのままなる心地」
39、 『御伽草子』乱世庶民の夢。[213頁]。中世⇒「竜宮パック旅行」「中世のガール・ハント」「カラー版の挿絵入り」
40、 『狂言記』南北朝の庶民像。[218頁]。中世⇒「三代目は没落」「亭主を悩ます猛妻」「テンポの早い名作」
41、 『甲陽軍鑑』人は石垣。[224頁]。近世⇒「信玄トイレ考」「花それぞれの趣」「全二十巻の大著」
42、 『昨日は今日の物語』野放図な哄笑。[229頁]。近世⇒「日伊競作の艶笑譚」「「いまのは鼻ぢや」」「読むたびに唾が……」
43、 『伊曾保物語』異教徒の置き土産。[235頁]。近世⇒「日本化した民話」「長いものには巻れろ」「女は邪路に入りやすし」
44、 『五輪書』天地を破る。[240頁]。近世⇒「文壇の武藏論争」「とにかく“斬る”」「我もなく敵もなく」
45、 『田夫物語』野暮と若衆。[245頁]。近世⇒「A感覚とV感覚」「死なばもろとも」「天下の弧本」
46、 『雑兵物語』万骨の誇り。[250頁]。近世⇒「足軽の弁当」「寝首をかく方法」「下剋上の精神」
47、 『好色一代男』元禄の英雄。[255頁]。近世⇒「一人笑いの効用」「一瀉千里の文章」「古書価七十五万円」
48、 『奥の細道』風雅のこゝろ。[260頁]。近世⇒「徒歩旅行の記録」「漂白の人生」「五年も費やして完成」
49、 『曽根崎心中』愛の逃避行。[265頁]。近世⇒「心中の時間」「生きて返らぬ死出の旅」「老いて“青春”を追求」
50、 『葉隠』死に物狂いの人生。[270頁]。近世⇒「喧嘩と武運」「大地震もこわくない」「生の実感を求めて」
51、 『養生訓』何のために生きる。[275頁]。近世⇒「六十にしてもらさず」「医師に上中下あり」「愛妻のあとを追って」
52、 『折たく柴の記』最古の自叙伝。[280頁]。近世⇒「元禄の大地震」「暮らしは低く思いは高く」「残っている自筆本」
53、 『仮名手本忠臣蔵』義理一遍。[285頁]。近世⇒「古武士の面目」「男でござる」「内ゲバで上演中止」
54、 『自然真営道』江戸のマルクス。[290頁]。近世⇒「百五十年目の発見」「聖人、武士は大泥棒」「原本は大震災で焼失」
55、 『日暮硯』虚構の賢臣。[295頁]。近世⇒「金脈も人脈もなく」「義理人情の駆引き」「小藩の夢と現実」
56、 『風流志道軒伝』おどけ咄。[300頁]。近世⇒「自由闊達な境涯」「物にふれて心動かす」「毒をもって毒を制す」
57、 『柳多留』永遠の庶民像。[305頁]。近世⇒「江戸の本屋」「川柳は半年以上寝て暮し」「八万句選み一首だけ作り」
58、 『雨月物語』江戸の怪異譚。[311頁]。近世⇒「亡霊との対決」「怪異文学の極限」「禅とオカルト」
59、 『蕪村句集』春怨思慕。[316頁]。近世⇒「人生の挽歌」「書巻の気上昇す」「月は東に日は西に」
60、 『徳和歌後万載集』滑稽のうた。[322頁]。近世⇒「タレントの元祖」「色と酒とが敵なり」「サラリーマン作家の悲哀」
61、 『海國兵談』死にたくもなし。[327頁]。近世⇒「内憂外患」「劇画的竹槍戦法」「地図の上で憤死」
62、 『玉くしげ』緩慢なる毒。[332頁]。近世⇒「国運の隆盛に貢献」「見えざる手により」「一流学者の台所」
63、 『東遊雑記』“心ある人”の旅。[337頁]。近世⇒「諸国使節考」「何でも見てやろう」「世俗の濁りを逃れて」
64、 『孔子縞烏于時藍染』反説教。[342頁]。近世⇒「政道頽廃の目かくし」「天道人を殺さず」「無縁墓がひっそりと」
65、 『近世畸人伝』風狂の人生。[347頁]。近世⇒「時代の閉塞期に」「天明のドロップアウト」「新しくて潔し」
66、 『北槎聞略』鎖国の悲劇。[352頁]。近世⇒「漂流の記録」「感動的な別離のシーン」「将軍家秘匿の原本」
67、 『東海道中膝栗毛』男の解放地。[357頁]。近世⇒「明治版の弥次喜多」「二百文の女を求めて」「続編ふくめて二十一年」
68、 『浮世風呂』庶民の“憩いの場”。[362頁]。近世⇒「熱湯好きの日本人」「裸になれば人間平等」「戯作者の商魂」
69、 『南総里見八犬伝』勧善懲悪、名詮自性。[367頁]。近世⇒「馬琴の遺跡」「八千枚の大ロマン」「明治の書生も熱狂」
70、『蘭学事始』窓を開いた人々。[372頁]。近世⇒「寄べきかたなく」「劇的な瞬間」「“生民救済”の理想」
71、 『おらが春』ふるさとへの執念。[377頁]。近世⇒「生活のうた」「義理の弟と財産争い」「幕末の信州から初版」
72、『群書類従』桜の板木は残った。[383頁]。近世⇒「遺産を守る執念」「ヘレン・ケラーも感激」「見えぬ眼に富士を思う」
73、 『夢の代』明鏡のこゝろ。[388頁]。近世⇒「豪商一代」「盲目で二千枚の著述」「江戸の百科全書派」
74、 『花暦八笑人』江戸の笑劇。[395頁]。近世⇒「茶番の流行」「「なんとでも鰯ツし」」「ギャグとドタバタ」
75、 『東海道四谷怪談』生への執念。[398頁]。近世⇒「お岩狂死の真相」「水の流れと人の身は」「幽霊笑いの秘伝」
76、 『日本外史』太平の牢獄。[404頁]。近世⇒「国賊を滅ぼさん」「情念のタイム・マシン」「すべては時勢の流れ」
77、 『慎機論』夜明け前の苦悩。[409頁]。近世⇒「米船の日本初訪問」「同じ人間に生まれて」「ひそかに流布した写本」
78、 『春色梅暦』情緒纏綿。[414頁]。近世⇒「もてた柔弱な男」「“凄艶なる音楽”」「人気作家の末路」
79、 『北越雪譜』北国の情念。[419頁]。近世⇒「三十年かけての刊行」「人と熊のみ冬ごもり」「一念のこもった書物」
80、 『江戸名所図会』近世⇒の夕映え。[424頁]。近世⇒「江戸幻滅紀行」「貴となく賎となく」「刊行まで三十余年」
81、 『江戸繁昌記』八百八町の表裏。[429頁]。近世⇒「太平の実戦場」「人情の機微をうがつ」「“無用の人”として」
82、『航米日録』近代への架け橋。[434頁]。近世⇒「ミイラの赤毛布」「タテ型社会の批判」「パック旅行第一号」
已上、上記本の<目次><本文>などから抜粋した。収載者がところどころ、文字表記や表現などを改めて収載していることをここに申しおくものである。今回、国語史の参考資料として取り上げた『日本の書物』のなかに引用されている古典文学作品資料は、一度は読んでおきたい名作品ぞろいである。そして、このすべてに網羅されている検索的小見出しは、それぞれの時代における作品への“誘いのツボ”とも云えよう。
[2000年度課題提出リポート]
坂下ちひろさん 和田麻祐子さん 今泉由佳さん 山田麻由子さん 小竹美賀さん
[2001年度課題提出リポート]
作品中にお名前を明記してあります。ご協力ありがとう。