数学特論1

ポアンカレ予想

講義概要:
ポアンカレ予想は、1904年にフランスの数学者アンリ・ポアンカレによって提出された。 ポアンカレ予想は「単連結な3次元閉多様体は3次元球面に同相である」という予想である。 噛み砕いて言うと、もしも宇宙空間で地球からロープを垂らし、ある軌道を辿り、再び地球に戻ってきたとき、そのロープは手で引っ張ってスルスルと手繰り寄せることができたとする。あらゆる軌道について、同様にロープを手繰り寄せることができるならば、地球外部の宇宙空間は、地球と同様に3次元のボールであるという予想がポアンカレ予想であると言える。 このポアンカレ予想は100年もの間、未解決であったが、ロシアの数学者グリゴリー・ペレルマンによって解決された。実際、ペレルマンは、ポアンカレ予想を含む大きな予想である幾何化予想を解いている。 この授業では、ポアンカレ予想を予備知識なく理解できるよう説明し、幾何化予想についても可能な限り触れたい。
授業の到達目標:
先ず、多様体の定義と例を紹介し、多様体の代数的不変量であるホモロジー群と基本群を学ぶ。 この時点で、ポアンカレ予想のステートメントを理解する。 更に、ポアンカレ予想をより深く理解する為、被覆空間、ヒーガード分解、デーン手術、ザイフェルト多様体、ハーケン多様体など、3次元多様体論の基礎的部分を学ぶ。 その後、幾何化予想の理解に向けて、球面・トーラス分解について学び、ペレルマンの解法について触れる。
事前・事後学習の内容:
参考文献に挙げた書籍等を事前に読んでおくと理解がよりスムーズになると思います。
授業計画:
  1. 多様体の定義と例1
  2. 多様体の定義と例2
  3. ホモロジー群の定義
  4. ホモロジー群の計算例
  5. 基本群の定義
  6. 基本群の計算例
  7. 被覆空間
  8. ヒーガード分解
  9. デーン手術
  10. ポアンカレ・ホモロジー球面
  11. ザイフェルト多様体
  12. ハーケン多様体
  13. 球面・トーラス分解
  14. 幾何化予想
  15. テスト
教科書:
ポアンカレ予想 小沢誠著
参考文献:
「ポアンカレ予想を解いた数学者」ドナル・オシア著 日経BP社
「ポアンカレ予想」ジョージ・G・スピーロ著 早川書房
成績評価方法:
主に、テストで評価する。また、レポートも考慮する。

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