第9回学生シンポジウムに経営学部から17チームが参加(後編)
11月30日(土)実施の学生シンポジウム、今回は後編の菅野ゼミ、鹿嶋ゼミ、齋藤ゼミからの参加チームの発表の様子をお伝えします。前回分はこちら。
菅野ゼミ① 韓国コスメのパッケージの魅力について
2024年現在、日本では第四次韓国ブームが到来しており、音楽、グルメ、ドラマ、映画といった様々なものが流行している。その中でも韓国コスメは特に注目されており、その市場規模は年々増加している。①日本での韓国コスメ、②韓国コスメの輸出額、③アメリカへの輸出額、の3つの視点から韓国コスメが世界で注目されていることが分かった。特に、日本の20代女性100人を対象にしたアンケートでは、90%の人が韓国コスメに興味・関心を持っているということが分かった。このデータから韓国コスメは日本人女性にとって欠かせないものとなっていると考えられる。私たちは「なぜ韓国がここまで人気となったのか」を原点に、「なぜ日本人女性は韓国コスメに魅力を感じるのか」というリサーチクエスチョンをたてた。そこで私たちは5つに分類される化粧品の中でも一番身近であると考えた仕上用化粧品に焦点を当てて研究を進めることにした。
私たちは、研究を進めていく中で韓国コスメには「おしゃれ感」や」「かわいい」という要素があるのではないかと考えた。この2つの要素を言語化するため、韓国コスメの購入率が高い10代から20代の女性を対象にグループインタビューを実施した。その結果をM-GTAを使い分析を行った。グループインタビューの結果から、韓国コスメと日本コスメの違いと共通点を発見することができた。
私たちの研究はグループインタビューの結果を分析するという定性調査であるが、将来的に検証したい仮説をたてた。
仮説1 韓国コスメの魅力は「シンプル」と「透明感」である。
仮説1-1 韓国コスメの「シンプル」はロゴのみの洗練されたデザインである。
仮説1-2 韓国コスメのパッケージデザインにおける「透明感」の要素は煌めきである。
仮説1-3 韓国コスメの「透明感」イメージは、商品使用後の効果によって強化される。
【参加学生の感想】
皆さんの研究テーマはどれも興味深く、とても有意義な時間を過ごすことができました。頂いたご意見はとても貴重であり、私たちの研究の新たな視点や改善点を見つける大きな手がかりとなりました。今回の経験を今後の研究に活かしていきたいと思います。
菅野ゼミ② ファッション選択の裏にある心理とは?-多元的自己がファッション選択に与える影響を探る-
毎日のファッション選択はどのように行っているのか。本研究では、ファッション選択の際にはたらく心理について、ファッションとアイデンティティの関係から明らかにしていく。またこの研究と衣服の大量消費・廃棄の問題との関連について考えていく。
近年、ファストファッション等の普及により衣服の大量生産・消費・廃棄が社会問題となっている。国内における供給数は増加する一方で、衣服一枚あたりの価格は年々安くなり、市場規模は下がっている傾向にある。
冒頭では衣服に関する消費者の消費・廃棄の現状について触れ、多元的自己の観点から若者のファッション選択の仕方についてフォーカスしていく。
まず、ファッションとアイデンティティの関係について説明する。ファッションの多様化が進んでいる今、ファッションはアイデンティティの表現方法のひとつとなっている。この2つの共通点として他者の影響が大きいという点があげられ、この他者の影響はファッション選択やアイデンティティの確立に深く関係している。また、近年ではアイデンティティを複数持つ多元的自己という考え方が一般的になっている。1980年以前はアイデンティティを一貫性のある一つの自己に統合することを理想としていたが、個人のかかわりを持つ場所や役割が増加したことで自己の統合が困難となり、自己の多元化が指摘されるようになった。この多元的自己に注目し、ファッション選択との関係について調査する。
私たちは「多元的自己の存在が、若者のファッション選択にどのような影響を与えるのか」というリサーチクエスチョンを設定し、ファッションと多元的自己の関係性について明らかにしていく。
【参加学生の感想】
普段は交流する機会のない他ゼミの皆様と、意見を交わし合える貴重な経験をさせて頂きました。私たちは消費者心理について研究しているので、参加した分科会の内容が"消費行動"であったこともあり、非常に学ぶことが多く、さらに研究を深めていくヒントを考えられる機会となりました。自分たちだけでは思いつかないような視点から様々な意見を頂いたので、今後の研究に活かしていきたいと思います。
菅野ゼミ③ 物語広告の力
現代の広告市場では、商品の特徴や機能を伝えるだけでなく、物語を通じて視聴者の心に訴えかける「物語広告」が注目されている。
ここで取り上げる物語広告とは、登場人物や情景を通じてブランドのメッセージを伝える広告手法を指す。この手法の特徴は、視聴者が登場人物に感情移入しやすい構成にある。
近年、物語広告が増加している背景には、視聴者が単に広告を視聴するだけでなく、登場人物と自分を重ね合わせることでブランドへの印象が強く残る効果があることが挙げられる。物語広告は、視聴者が広告の登場人物に自己を投影しやすい特徴を持ち、その結果、ブランドに対して好意的な態度を持ちやすいとされている。
本研究では特にキャラクターの設定に焦点をて、物語広告がどのような設定でブランド好感度に正の影響を与えるのかを探るために、リサーチクエスチョンを設定し、調査を進める。
【参加学生の感想】
普段関わることが少ない他のゼミの皆さんが行っている研究について深く知ることができる貴重な機会でした。皆さんの発表を通して、研究の内容は異なっていても、様々な刺激を受けました。そして、私たちの研究に対してもいろんな視点からご指摘いただき、新たな気づきを得ることができました。今後は今回いただいた意見を踏まえて、さらに研究を深めていきたいと思います。素晴らしい機会を提供していただきありがとうございました。
菅野ゼミ④ 消費者行動とサステナブル商品〜他者の存在とデザイン性の観点から〜
近年、気候変動や不当な労働環境など世界規模での社会問題が深刻化している。それに伴い、環境や社会に配慮したサステナブル商品の買を促進する必要性が高まっていると考える。しかし日本の消費者はサステナビリティに対する意識と行動にギャップがある。また、サステナブル商品の多くに価格が一般的な商品と比較して高いという特徴が挙げられる。例にフェアトレード商品の価格比較を行ったところ、一般的な商品よりおよそ1.4~2.5倍の価格が付けられていた。そこで私たちは、リサーチクエスチョンとして「サステナブル商品の購買意欲を高める要因は何か」を設定し、どのような場合において消費者のサステナブル商品の購買意欲を高めることが出来るのかについて仮説を展開し、研究を行っていく。
今回の研究では「他者の存在」と「パッケージデザイン」の2点に焦点を当て仮説を立てた。「他者の存在」の面では、他者の存在とその距離についての二つの仮説を立てた。他者の存在に関しては主に社会的促進理論を既存研究として活用し、他者との距離に関しては、他者との距離が近くかつ人数が多いほど高価格なブランドを選択することが指摘された既存研究を活用する。これらの既存研究をもとに、どのような他者の存在がある場合にサステナブル商品の買意欲が高くなるのか実験を行う。「パッケージデザイン」の面では、既存研究により多くの消費者が店頭で非計画買を行っていることが明らかにされ、その要因の一つにパッケージデザインが大きな影響を及ぼしていると指摘されている。私たちはパッケージに記載される環境ラベルもパッケージデザインの一つとして捉え、サステナブル商品においてもパッケージデザインと環境ラベルのデザイン性が重要であると考え、独自のデザイン性の異なるパッケージおよび環境ラベルを作成し実験を行い、それぞれ考察を進める。
【参加学生の感想】
普段なかなか関わる機会のない他の学部のゼミや他大学のゼミの方と今回のシンポジウムを通じて、様々な意見を交わすことができ有意義な時間を過ごすことができました!シンポジウムに向けて苦労することもありましたが、他のゼミの方からのいつもとは違った視点からの指摘を受け、今後もゼミ研究に励もうと思いました!
鹿嶋ゼミ① 日本の育児休業制度は有効に作用しているか
普段のゼミで読んだ本で、日本の育児休業制度が手厚いこと、それにもかかわらず取得率が世界で見ても極めて低いことを知った。ユニセフにより2021年に発表された、保育政策や育児休業政策を評価したランキングでは、日本はやはり上位には見られなかったが、育児休業制度の部門では1位を獲得している。そこで、部門別に見ると上位にある日本がなぜ全体の上位にいないのか、同ランキングで上位を獲得しているスウェーデンと比較し考察した。
研究を進めていくと、日本とスウェーデンでは制度の手厚さに大差はないと考えられるものの、育児休業の男性取得率に大きな差があることがわかった。ここで差が生まれたのはスウェーデンの制度は男性の取得を促すよう作られているからであると考えた。スウェーデン男性の育児休業取得率は2017年時点でおよそ30%に達しているが、日本の男性取得率は2021年でもおよそ14%とかなり低い数値に留まっている。この男性の育児休業制度取得率の低さから見て、私たちはテーマである「日本の育児休業制度は有効に作用しているか」に対して「有効に作用していない」と結論付けた。
男性取得率の低さには、取得したことによる会社・同僚等の周りへ迷惑をかけてしまうのではという環境面、評価に影響がでるのではという人事面、それと同時に起こる給料の変化による経済面の不安が大きいことが分かった。また制度として手厚い故に、内容が複雑で分かりにくいという要因も大きいと考えられる。
私たちは、育児休業の取り組みを行政と企業が一体となり進めていくことが、取得率上昇に繋がると考えた。さらに、経済面での不安は職場における男女の賃金格差も関係している。日本では一般的に男性の方が女性より賃金が高いというのが現状である。それにより、家庭への経済的損失が少ない女親が育児休業を取得する家庭が多く、男性取得率の低さに繋がっている。職場での役職・賃金の男女格差を是正していくことが、育児休業の男性取得率の低さの根本的な解決方法であると考えた。
【参加学生の感想】
研究を進めていくことで、育児休業制度への認識が変化しました。また他ゼミの方から様々なご意見・ご質問を頂き回答することで、より理解が深まったように思います。自分と異なる考えを知ることは何事においても重要だと改めて感じました。準備期間は大変なこともありましたが、参加して良かったです。
鹿嶋ゼミ➁ 働きがい ~日本とデンマークの比較~
国際競争力ランキング2年連続で1位となっているデンマークは、有給、育休取得の制度が確立しており、デジタル化も世界的に見て進んでいる国である。さらには経済状況、政府の効率性、ビジネス効率性、インフラ全てで上位に位置している。一方で、日本はそれら4つが特段上位に位置しているわけではなく、デジタル化という面でも遅れている現状にある。そのような二つの国を比較することで、日本が今後参考にしていくべき点や、日本の労働における問題の改善点が明らかになるのではないか。またSDGsの8番目の項目に、「働きがいも経済成長も」というものがある。この働きがいとは何なのか。そこで労働環境というところに焦点を当てて比較を行い、働きがいとは何かを明らかにしていく。
【参加学生の感想】
シンポジウムを通して、知識・語彙力・対応力など、自分の足りていない部分を多く見つけることができました。新たな知見もたくさん得られて、とても良い機会でした。
鹿嶋ゼミ③ 業務におけるカスタマーハラスメントをきっかけとする精神障害について
私たちは近年会社内でなく会社外の顧客からによる暴言や暴行、迷惑行為などが問題視されているカスタマーハラスメントについて研究を進めた。また、カスタマーハラスメントによる被害は深刻で被害を受けた労働者は精神障害を負ってしまい働けなくなってしまうほど重大である。私たちはカスタマーハラスメントがどのようなものなのか、精神障害を引き起こすメカニズム、企業のカスハラの対策例、そしてカスハラ防止のために社会全体で取り組むべきことを明らかにしていく。
【参加学生の感想】
今回学生シンポジウムに参加して別学部のゼミの方と議論を通してとても良い刺激を受けられました。自分たちだけでは得られないような知識や今まで学んできたことでも違う観点から物事にアプローチしていて視野が今まで以上に広がった感覚がありました。今後の研究に生かしていくと共に同じゼミの仲間にも良い影響を与えられるように頑張りたいと思います。
齋藤ゼミ① 身近な場所で交流の場を! ~キャンパス内での飲酒を許可すべき!?~
過去30年間、一人当たりのアルコール消費量は減少傾向にあります。個人の「飲まない」自由が尊重され、飲酒による健康被害が減少することは望ましいものの、お酒には古くからコミュニケーションを円滑にする役割が期待されてきました。大学生活では、お酒を交わすことによりサークル内や友達と親睦を深め、お酒の場を借りてこそ話せる内容など様々な用途でお酒の場が設けられています。また、会社内においても業務中のコミュニケーションだけでは社員の人柄が掴めない・話を切り出しずらいなど、社内コミュニケーションを課題とする会社も多くあります。組織内の親睦を深めるために活用されるのは一般的に飲み会が多いが、お酒が苦手・飲み会の空気自体が苦手・プライベートの時間を大切にしたいなどの理由から、飲み会の開催自体が減っていたり、飲み会があっても行かないケースが増えているのが現状です。こうした「飲みニュケーション」の減少は、人的交流を希薄なものとし、個人の生活充実度を低下させ、ひいては組織の生産性を低下させる可能性すら存在します。本研究では、アルコール消費が人々の満足度や組織の生産性にどのような影響を与えるのかについて検討し、アンケート調査やデータ分析の結果を踏まえ、提供時間やお酒の種類を限定したうえで、オフィスや学食にアルコール提供の場を設置することを提案します。キャンパスの食堂内で、お酒の得意不得意関係なく、金銭的な面も気にせずに気軽に交流できる場を作りたいと考えています。
齋藤ゼミ② 体育館が足りないじゃないか!
東京などの大都市では、体育館を利用したくても近くに施設がなかったり、つねに予約で埋まっていたりするなどの理由で利用に不便を感じることが多い。日本では体育館の需要に見合った供給がなされているのだろうか?
本研究ではまず体育館の現状分析を行った。具体的には、時系列でみた体育館数の推移や設置者別の体育館数、都道府県別体育館数の地域差を地図上に表現したうえで、体育館の現状を把握した。その結果、人口当たりで見た体育館数は、地方で多く都市部では少ないことがわかった。このことから、体育館はとりわけ都市部で不足している可能性が高いことがわかった。また設置者別の体育館数を調査し、学校などの公共部門が設置する体育館は多く存在するが、民間事業者が設置する体育館はきわめて少ないことがわかった。
次にこうした人口当たり体育館数の地位差をもたらす要因を分析するため、人口密度や所得、地価、自治体の財政状況などに回帰して、体育館の地域格差をもたらす要因について定量分析した。さらに定量分析は明らかにできない疑問点について、横浜市役所にぎわいスポーツ文化局などで聞き取り調査を実施した。また具体的な体育館を取り上げて、施設の運営にどの程度の費用がかかり、どの程度の公的資金が投入されているかについてケーススタディを行った。
以上の分析・調査結果を踏まえ、現状の体育館が抱える問題を明らかにするとともに、これからの体育館のあるべき姿について検討を行った。現時点では指定管理者制度やPPP・PFIを活用し、すでにある公共体育館をより効率的・効果的に活用する提案を検討している。
齋藤ゼミ③ ゲーム産業の未来展望 ~駒澤学生のユーザー動向と人気ジャンルの分析~
ゲーム産業は国内で2兆円超、世界では29兆円超(2023年)の市場規模を持つ巨大産業であり、今後も高い成長が見込まれている。だが一口にゲーム産業といっても、家庭用ゲーム機、パソコン、スマホなど異なるプラットフォームが存在し、市場はセグメント化されている。またゲームはストーリーや映像、キャラクター、音楽などによって構成され、生産には多様なクリエイターが参加する「総合芸術」である。さらに関連商品の生産・販売やSNSによるゲーム実況など、プロモーションのあり方も多岐にわたり、ターゲットに応じた販売戦略も重要である。こうした複雑なゲーム産業において、人気ゲームが生み出されるためにはどのような要因が重要なのだろうか。
本研究では、最初にゲーム産業を概念的に整理したうえで、駒大学生を対象としたアンケート調査を実施し、同大学生が好むゲームの特徴(ジャンル、媒体、求めている要素など)やプロモーションの影響力を分析することで、ゲーム要素として何が重要かを明らかにする。さらに最適な販売方法、効果的なプロモーションを検討する。また、大衆調査(参考資料:『ファミ通ゲーム白書2024』)と比較し、駒大学生が求めている独自のゲーム要素についても提示する。
最終的には、アンケート調査の分析結果をもとに、駒大学生にとって魅力的なゲームコンテンツの提案と、それを最大限に引き立てるプロモーション方法について考察し、今後のゲーム産業における大学生向け市場開拓の参考となる知見を提供する。
(H.K.)