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~襷~ 故郷の未来をつくるライフワーク

【襷(たすき)】は、駒澤大学に通う皆さんが「どのような社会人生活を送りたいか」をイメージできる、キャリアセンター発の連載企画です。在学生が現在活躍する駒大OB・OGを訪問し、先輩たちのリアルな声をお届けします。

日野原 明先輩に、法学部4年 橋本が取材しました!(2025年3月取材)

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大学時代から地域を見つめるキャリアの原点

大学時代はどのような活動をされていましたか?

大学時代は政治学科のゼミ、放送研究会でのサークル活動、テレビ局でのアルバイトの3本柱で過ごしていました。政治学科では政治過程論のゼミに所属し、政策が決まっていく過程や、世の中がどう動くのかといったことを勉強していました。サークルは放送研究会に所属し、FM世田谷のラジオパーソナリティーや学内ニュースの撮影、番組制作などを経験。アルバイトは、テレビ局でニュースのデータ放送の校正などを担当していました。

これらの活動は就職活動のためではなく、純粋に自分が興味を持った分野に没頭した結果です。子どもの頃から野球中継を見て、実際の球場で見る野球とテレビ中継のエンターテイメント性の違いに魅力を感じていたことが、マスコミへの関心につながったのかもしれません。

ゼミではどのようなテーマに取り組まれたのですか?

農業政策や選挙制度について研究していました。実家が農家だったこともあり、JAの役割や農家を取り巻く政策を研究した経験は、結果的に後の地域経済や地方創生を考える上での土台になっています。また政治過程論で学んだ「物事がどう決まっていくか」という視点は、様々な関係者と連携する現在の仕事にも活きています。

駒澤大学と地元群馬はどのように関わってきましたか?

法学部政治学科で学ぶために駒澤大学を選びました。キャンパス移動がないことや、学部を超えて多様な人と出会える環境に魅力を感じたからです。就職活動ではマスコミ業界一本で活動し、最終的に地元群馬の新聞社に入社。地元の魅力を発信したいという思いからUターン就職を選びました。

14年半にわたる新聞社での経験は、現在の仕事につながる重要な基盤となりました。特に地元での人脈形成や地域課題への理解、広告営業とイベント運営の経験は、現在の地方創生の仕事に直結しています。また新卒の就活生向けの合同企業説明会の運営など、「働く」をテーマにした取り組みは、今のキャリアを形作る重要な経験となりました。
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タイミーでの現在の仕事

「タイミー」とはどのようなサービスですか?

現在は株式会社タイミーでスポットワーク研究所に所属し、地方自治体向けの営業を担当しています。タイミーは「スキマバイト」と呼ばれる単発バイトのマッチングサービスを提供している会社です。最短1時間から、気軽に始められる仕事を探せるアプリを運営しています。

物流が全体の4割、飲食が2割、販売が3割程度と様々な業種の求人があり、最近ではホテル、介護、第一次産業などにも広がっています。稼働率は84.6%(2025年1月時点)と高く、人手不足に悩む地方の企業にとって大きな魅力となっています。

自治体とはどのような連携を行っているのですか?

私の主な仕事は、自治体との連携協定締結から始まります。具体的には地域の企業向けに「スキマバイト」を活用した人材確保の方法を提案するセミナーを開催したり、自治体の労働政策と連携した取り組みを進めたりします。例えば、ホテルなどの観光業で人手不足に悩んでいる地域では、ホテルの業務を細分化し、専門スキルが必要なベッドメイキングと比較的簡単なシーツ回収を分けることで、後者をスキマバイトで補完する提案をしています。

また、介護現場では資格の有無や経験に応じて仕事を細かく分解することで、資格がなくてもできる業務をスキマバイトで補うことができます。こうした取り組みは既存の従業員の働き方改革にもつながり、本来の専門業務に集中できる環境づくりにも貢献しています。

具体的な自治体連携の事例を教えていただけますか?

最近では長野県佐久市との連携が印象的な事例です。夏休みや年末年始に帰省する大学生と地元企業とのマッチングが起きる仕掛けをつくり、UIJターン就職の可能性を広げる取り組みを進めています。多くの若者が地元企業を知らないまま都市部に出てしまう現状に対して、帰省時にスキマバイトとして地元企業で働く機会を提供することで、将来的な地元回帰のきっかけにもなると考えています。

このような取り組みは単なる求人マッチングにとどまらず、地域の「関係人口」を増やし、長期的には移住・定住促進にもつながる可能性を秘めています。例えば、他の県の事例では、地域のお祭りなどでタイミーを利用してスタッフとして働いた人が、その地域に愛着を持ち、定期的に訪れるようになるといった好循環も生まれつつあります。
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リモートワークと全国での活動について教えてください

基本的にはフルリモートで群馬から働いており、必要に応じて全国各地に出張して自治体や経済団体などと打ち合わせをしています。先週だけでも埼玉、新潟、岩手と東日本各地を回りました。多様な働き方ができる環境はありがたいと感じています。現地に入って実際に地域の人と交流することで、より深い信頼関係が築け、地域に根差したソリューションを提案できる点は、魅力かなと考えています。

ベンチャー企業での働き方と成長

ベンチャー企業で働くうえで大切にしていることは何ですか?

タイミーは創業8年目のベンチャー企業で、社員の平均年齢が30歳前後と若く、代表も27歳です。スピード感が特徴だと感じています。どんどん変化していくことを楽しみたいと心がけて仕事をしています。

このような環境で仕事をする上で大切にしていることは、自分の仕事が世の中にどう役立つのかという視点をしっかり持つことです。特に、目的と手段が混同してしまうと、提案の質も低下してしまうと思います。特にスピード感が早い環境ではなおさらです。「手段が目的化する」危険性を常に意識し、本来の目的に立ち返りながら仕事を進めることが重要だと感じています。

タイミーが提供するサービスにはどのような社会的意義がありますか?

単に人手不足を解消するだけでなく、これまで労働市場に参加できなかった「潜在労働力」を掘り起こす社会的意義も持っています。子育て世代やシニア層など、フルタイムでは働けないけれど短時間なら働ける人たちが活躍できる場を提供することで、新たな働き方の選択肢を広げています。

また企業側にもメリットがあります。8時間の求人を出して埋まらないより、4時間の求人を出して確実に人材を確保できる方が効果的となる場合もあります。さらに「実際に働いてみて良かった人は、将来的に正社員として採用する」といった形で採用活動の一環としても活用されています。実際の働きぶりを見て企業にとっても合う人材に出会うことができる点が評価されています。
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キャリア形成においてどのような考え方を大切にしていますか?

私の場合は、キャリアの歩み方として、明確な目標から逆算するよりも、地方創生という軸と定期的な点検を大切にしながら、面白いと思った仕事に全力で取り組む方が自分に合っているように思います。

「自分の選択を正解にしていく」という考え方を大切にしています。キャリアは必ずしも最初から明確な目標があるとは限りません。自分が選んだ道を歩む中で、何が足りないのかを考え、それを補いながら前に進むことで、その選択が正解になっていきます。その過程で責任感も育まれ、「決めたからにはやろう」という姿勢も身につきます。

これからの挑戦と展望

今後どのようなキャリアを目指していますか?

地方創生というテーマをライフワークとして追求していきたいと考えています。タイミーのビジョンは「一人ひとりの時間を豊かに」で、ミッションは「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」です。このビジョン・ミッションのもと、地域の労働環境の改善や人材確保の課題解決に取り組んでいきたいです。

現在の目標は、出会いや可能性を大切にして「地方創生のプロ」になることです。地域での良い事例作りに関わることができればと思っています。

「働く」を通じた地域活性化にはどのような可能性がありますか?

タイミーが提供するスキマバイトサービスを通じて、今後さらに多様な働き方を提案していきます。現在の短時間・単発の仕事から、さらに長期的な仕事や正社員への橋渡しなど、サービスの幅が広がれば、地域の働き方はさらに変革していくでしょう。

地方では若者の流出が深刻な課題となっていますが、このサービスを通じて地元企業と若者の接点を増やし、Uターン就職の可能性を広げることで、地域の活性化につなげていきたいと考えています。「働く」ことを通じた地方創生の可能性を追求していきます。

後輩へのメッセージ

学生時代はとても貴重な時間です。就職活動のためだけでなく、自分が興味を持ったことに思い切り取り組んでください。私自身、純粋に自分が面白いと思ったことに熱中していましたが、結果的にそれが今の仕事につながっています。

今しかない時間を大切にして、自分がやりたいこと、できることを思い切り追求してみてください。広く浅くではなく、いくつかのことに深く取り組むことで、必ず自分の力になっていきます。また、OB・OGとの繋がりも大切にしてください。社会に出てからも、駒澤大学の先輩方は気軽に相談に乗ってくれる貴重な存在です。
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おわりに ~インタビュアーの感想~

自分の選択を正解にする力。
日野原先輩は駒大時代のゼミではディベートに精力的に取り組まれたほか、「農業」について学び、前職の新聞社の営業職としては地元・群馬を活気づけるお仕事をされていたそうです。現職までの経歴を伺うと、一貫して地方創生に対する熱い思いやそれを実現してきたキャリアがありましたが、それらは必ずしも自分の目標から逆算して取り組んできた訳ではないと言います。

「最短距離で目標を達成するのではなく、様々な角度からアプローチする」とお話しされていました。「多くの行動を生むことで、ひとつの目標にとらわれていたら達成できなかったことも、アプローチ方法を増やすことでさらなる結果に繋がる」。これはどんな仕事にも通ずることだと思います。

私は春から日野原先輩の前職と同業界の、新聞社で働きます。個人としての目標達成だけに没頭するのではなく、今回教えていただいた、多くの経験と行動が最終的に大きな結果を生み出すということを胸に刻んで、日本全国、たくさんの現場に駆け付けたいと思います。「この職業を選んでやはり正解だった!」と思える日を楽しみに、自分の役割を全うしていきます。卒業直前に貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。これからも駒大でのご縁を大切にしていきたいと改めて感じました。

[著]・[聞] 法学部 法律学科4年_橋本真緒
[写] キャリアセンター_山口魁紀

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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本記事関連リンク
株式会社タイミー
駒澤大学法学部政治学科
襷~先輩の足跡~