令和6年度 学位記授与式(卒業式)学長式辞
令和6年度駒澤大学学位記授与式にあたり、一言、御祝辞を申し上げます。
学部卒業の皆さん、大学院修了の皆さん、本日は誠におめでとうございます。
まず、最初に、皆さんが無事に卒業、そして修了を迎えられますことを心からお祝い申し上げます。そして、この4年間の歩みを支えて下さいました保護者の皆様には、これまでの温かいご支援に対して深く感謝申し上げます。
改めましてご来賓の関係者各位と共に、教職員一同、心よりお祝い申し上げます。
さて、本日、こうして通常に戻りました卒業式が挙行できましたこと、大変嬉しく存じます。皆さんが入学したのは2021年4月、まさにコロナ禍が続いている中でのスタートでした。あの時、誰もが予想していませんでしたが、対面なし、オンラインのみの入学式から始まる大学生活は、厳しい制約と不安に包まれていました。しかし、皆さんはその困難に立ち向かい、学びの道を切り開いてきました。オンライン授業や感染防止策に翻弄されながらも、皆さんは自分自身のペースで着実に知識を積み上げ、仲間たちと共に困難を乗り越えてきたことと思います。
各務 洋子 学長
そして、この4年の間には、コロナ禍以外にも、数多くの厳しい現実が皆さんを待ち受けていました。2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻から端を発した戦争、イスラエルとパレスチナのガザ地区の戦闘、残念な事態は未だに終焉していません。その影響を受けた国際情勢や世界経済の変動。加えて、日本国内でも能登半島地震や、大船渡市の大規模森林火災など、大きな災害が続きました。日本が災害大国であることを思い知らされ、予測不可能な危機に対して、事前にはどうすることもできませんでした。
皆さんは、こうして社会全体が不安定な状況の中で、学業を続け、仲間と助け合いながら一歩一歩前進してこられ、この日を迎えることができました。これこそが、まさに「VUCAの時代」を生き抜く力を身に付けたということではないかと思います。ここで繰り返しておきますが、VUCAとは「Volatility(不安定性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧さ)」の頭文字をとり、現代の世界を表現する言葉です。まさにこの4年間、VUCAの時代を体験した皆さんにとって、激動の時代だったのではないでしょうか。不安定で不確実な時代の中で、複雑で曖昧な問題にどう立ち向かうのかを少なからず学んで来られたことと思います。その中で、皆さんは自身の思考力を深め、柔軟に対応する力を身につけたのではないでしょうか。皆さんは、単に学問を修めたのではなく、人生における数多くの試練を乗り越え、強い意志と柔軟な思考力を培ったことと思います。それこそが、これからの社会に出ていくための大きな力となるはずです。
私は学長に就任して以来、本学の卒業式で、いつもお話していることがあります。それは、私たちを取り巻く外部環境の変化についてです。外部環境の変化は、皆さん一人一人の人生の歩み方に大きな影響を及ぼすからです。毎年3つにまとめてお話していました。コロナウイルスのこと、戦争のこと、気候変動のこと、生成AIの登場、経済活動における日本の立ち位置など様々でしたが、必ず毎年入れていたのが、世界の人口の変化でした。人口動態の変化は、経済、社会保障、教育、地域社会、労働市場など、社会の多くの側面に深く関連しているからです。
皆さんが入学された2021年、世界の人口は約78億人でしたが、国連の推計によれば、2022年11月15日に80億人を突破し、今年2025年には82億人を超えると予想されています。
世界の人口は、18世紀後半から19世紀前半の産業革命による経済や医療の発展を機に急速に増加し、「人口爆発の時代」に入りました。インドの人口が中国を抜いて世界一になったのは2023年、いま世界人口の約18%がインド人です。また、人口の半数以上は8カ国に集中するとの分析は変わりません。その8カ国とは、インド、エジプト、パキスタン、フィリピン、そしてアフリカの4カ国(エチオピア、コンゴ共和国、タンザニア、ナイジェリア)です。
国連の予測によれば、2080年代、皆さんが生きている間に、世界人口が約104億人でピークに達するとのことです。一方で、日本についてはどうでしょう。日本の人口は現在約1億2300万人ですが、2070年に8700万人に減少する見込みとされています。しかし、先月末、昨年2024年に日本で生まれた子供の数は約72万人、9年連続過去最少を更新し、政府の想定よりも15年も早く少子化が進んでいると報告されました。
私の専門のマネジメントでは、人の数は組織の在り方、方向性に大きく影響すると考えます。皆さんが大学時代に専門とされた学問が何であろうとも、こうした世界を巻き込む外部環境の変化に対して、地球に住む一人として、卒業後も共に考え続けなければならないと思います。
さて最後になりますが、私自身、皆さんと共に過ごした4年間は、非常に感慨深いものでした。私の学長としての任期は、皆さんが入学してからの4年間とぴったり重なり、この3月末で学長職を卒業いたします。コロナ対応の前半は試練と挑戦の連続でした。学び舎としての環境をどう守るのか、どのように教育の質を維持しながら変化に対応するのかという問題に、日々向き合って参りました。皆さんと共に歩んできたことを、とても幸せに感じています。
卒業を迎える皆さんに、最後にお伝えしたいことは、本学を卒業される皆さんは、こうした「先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代を力強く生きる「"智慧と慈悲"の精神」をもち、「しなやかな、意思。」を身に付けているということです。誇りをもって大海に乗り出してください。本学で学んだ様々な知識と知見を社会の現場で日々実践して欲しいと思います。
改めまして、お祝い申し上げます。
ご卒業、ご修了おめでとうございました。
各界で活躍される皆さんの姿に思いを馳せつつ、私の祝辞といたします。
令和7年3月23日/24日
駒澤大学学長
各務 洋子